4.新制大学と交通学研究

 1947(昭和22)年,教育基本法・学校教育法が公布され,1949(昭和24)年明治大学は法・商・政経・文・工・農の6学部をもって新制大学としてスタートしました。旧制時代の交通論に対して各論が整備され,戦後の日本資本主義の構造的な変化と交通部門の新局面に応ずる講義が追加されました。この時以降「交通総論・交通論」「倉庫論」「労働問題・労働経済論・労使関係論」「海運論」「公益企業論・公益事業論」「陸運論」「産業概説」などの科目が設置されています。

 麻生先生の門下から1949(昭和24)年に清水義汎先生,1950(昭和25)年に石井常雄先生,1968(昭和43)年に大久保哲夫先生がそれぞれ交通学の研究を始め,研究を続けています。

 清水義汎先生は,中国経済の分析を通じて中国交通を研究し,さらに都市交通問題・交通労働問題などで独自な研究分野を展開しています。特に都市交通問題を具体的・実体的に研究し,交通公害,交通事故の防止について地域社会の中で理論を実践に活用する努力をしていました。

 石井常雄先生は,鉄道・自動車資本の基本的性格を資本主義の形成・発展の中で史的に分析しその日本的特質を研究するとともに,トラック輸送を中心とする物的流通の実態と直面する諸問題を研究対象としています。

 大久保哲夫先生は,イギリスに於ける交通経済史の研究を基調に,現段階に於ける国鉄,海運が直面する政策・経営問題を研究の対象としています。
 清水・石井・大久保先生の他にも,私たちのゼミナールの指導教授である生田保夫先生(流通経済大学教授),政治経済学部で交通経済学とゼミナールを担当されている小淵洋一先生(城西大学教授),千葉商科大学の下沢洋一先生,立正大学の鈴木繁先生などが麻生先生のもとで学んでいました。

 なお,清水義汎先生は平成5年に逝去され,石井常雄先生は平成9年度で定年にて明治大学を退官なされています。

 なお,麻生先生の下で学んだ先生方が中心となり,駿台交通研究会が組織され,現在でも交通学の研究が進められています。この駿台交通研究会には前出の先生方をはじめ,日本福祉大学の米山譲先生,国際鈴鹿大学の折立昭雄先生,大東文化大学の鈴木孝明先生などが参加されています。

このページの制作に当たっては,交通学説史研究会編「交通学説史の研究(そのU)」(昭和60年,財団法人運輸経済研究センター発行)に収められている「第1部 諸大学等における交通論の展開 第3章 明治大学」を利用させていただきました。

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