主な研究テーマ

1.氷結晶中の分子拡散

南極氷床は、過去数十万年の間に雪と共に堆積した様々な物質を保存しているため、過去の地球環境についての貴重な情報源となります。ところが最近になり、過去の大気組成の指標である大気分子や、地表温度の指標である水分子等が、氷床内部を拡散していることが分かりました[1,2]。このメカニズムを解き明かすため、分子動力学計算による研究を進めています[3-6]。

[1] T. Ikeda, H. Fukazawa, S. Mae, L. Pepin, P. Duval, B. Champagnon,V. Ya. Lipenkov, T. Hondoh: Geophys. Res. Lett. (1999) 91.
[2] T. Ikeda-Fukazawa, T. Hondoh, T. Fukumura, H. Fukazawa, S. Mae: J. Geophys. Res. 106 (2001) 17799.
[3] T. Ikeda-Fukazawa, S. Horikawa, T. Hondoh, K. Kawamura: J. Chem. Phys. 117 (2002) 3886.
[4] T. Ikeda-Fukazawa, K. Kawamura, T. Hondoh: Chem. Phys. Lett. 385 (2004) 467.
[5] T. Ikeda-Fukazawa, K. Kawamura, T. Hondoh: Molec. Sim. 30 (2004) 973.
[6] T. Ikeda-Fukazawa, K. Fukumizu, K. Kawamura, S. Aoki, T. Nakazawa, T. Hondoh: Earth Planet. Sci. Lett. 229 (2005) 183.
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2.氷表面の構造とダイナミクス

氷結晶表面には、融点以下の低温においても液体状の層(構造無秩序層)が存在します。この層が存在することにより、氷の表面は様々な興味深い現象を引き起こすことが知られています。本研究室では、分子動力学法やラマン分光法により、氷表面の構造と物性をミクロな視点から研究しています[1,2]。

[1] T. Ikeda-Fukazawa, K. Kawamura: J. Chem. Phys. 120 (2004) 1395.
[2] T. Ikeda-Fukazawa, K. Kawamura: Chem. Phys. Lett. 417 (2006) 561.

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3.クラスレートハイドレートのゲスト-ホスト相互作用

クラスレートハイドレートは、気体分子を高密度、かつ安定に固化することが可能なため、天然ガスの輸送法や、温室効果ガスの回収法、冷媒の貯蔵法等の媒体として注目されています。本研究室では、ゲスト分子の運動に伴なうホスト格子の歪みに着目し、クラスレートハイドレートのゲスト-ホスト相互作用のメカニズムを研究しています[1-7]。

[1] T. Ikeda, H. Fukazawa, S. Mae, T. Hondoh, C. C. Langway, Jr.: J.Phys. Chem. B 101 (1997) 6180.
[2] T. Ikeda, S. Mae, T. Uchida, J. Chem. Phys. 108 (1998) 1352.
[3] T. Ikeda, O. Yamamuro, T. Matsuo, K. Mori, S. Torii, T. Kamiyama, F. Izumi, S. Ikeda, S. Mae: J. Phys. Chem. Solids 60 (1999) 1527.
[4] T. Ikeda, S. Mae, O. Yamamuro, T. Matsuo, S. Ikeda, R. M. Ibberson: J. Phys. Chem. A 104 (2000) 10623.
[5] T. Ikeda-Fukazawa, T. Hondoh, H. Fukazawa, S. Ikeda: J. Phys. Soc. Jpn. 70 (2001) 289.
[6] T. Ikeda-Fukazawa, Y. Yamaguchi, K. Nagashima, K. Kawamura: J. Chem. Phys. 129 (2008) 224506.
[7] T. Ikeda-Fukazawa, Y. Kawahara: J. Phys. Soc. Jpn. 85 (2015) 014801.
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4.ポリマーハイドロゲルにおける水の構造と機能

ポリマーハイドロゲルは、構成成分の80%以上を水とするため、その物性は、水の構造に支配されます。本研究室では、ハイドロゲルにおける水の構造と機能をミクロな視点から探るため、ラマン分光法、X線回折法、示差熱測定法等を用いた研究を行っています[1-7]。

[1] Y. Sekine, T. Ikeda-Fukazawa: J. Chem. Phys. 130 (2009) 034501.
[2] Y. Sekine, T. Ikeda-Fukazawa: J. Phys. Chem. B 114 (2010) 3419.
[3] T. Ikeda-Fukazawa, N. Ikeda, M. Tabata, M. Hattori, M. Aizawa, S. Yunoki, and Y. Sekine: J. Polym. Sci. B 51 (2013) 1017.
[4] K. Kudo, J. Ishida, G. Syuu, Y. Sekine, T. Ikeda-Fukazawa: J. Chem. Phys. 140 (2014) 044909.
[5] Y. Sekine, H. Takagi, S. Sudo, Y. Kajiwara, H. Fukazawa, T. Ikeda-Fukazawa: Polymer 55 (2014) 6320.
[6] Y. Takeuchi, T. Ikeda-Fukazawa: J. Phys. Soc. Jpn 85 (2016) 114604.
[7] R. Naohara, K. Narita, T. Ikeda-Fukazawa: Chem. Phys. Lett. 670 (2017) 84.
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5.アモルファス氷の構造と物性

宇宙空間には、酸素、炭素、窒素、水素等の元素が大量に存在します。これらの元素は、星間空間では気体として存在しますが、低温の星形成領域では塵粒子表面に凝集し、氷および有機分子(宇宙低温物質)を形成します。宇宙低温物質は、アミノ酸の構成元素から成るため、生命起源物質へと進化する可能性を秘めていますが、その進化のメカニズムは明らかではありません。宇宙低温物質の進化の過程を探る上では、原子反応の場となるアモルファス氷の構造や物性を理解することが重要です。本研究室では,アモルファス氷の構造と物性を明らかにするため,分子動力学法を用いた研究を進めています[1]。

[1] Y. Kumagai, T. Ikeda-Fukazawa: Chem. Phys. Lett. 678 (2017) 153. サンプルイメージ

   

6.フォルステライトガラスの構造と物性

フォルステライト(苦土かんらん石)結晶は、地球上に存在する主要な鉱物のひとつとして知られています。一方、隕石や星間物質にはガラス状態のフォルステライトが見つかっており、星間分子雲における分子進化過程を理解する上でも重要な物質です。しかし、フォルステライトガラスについての研究例は少なく、その構造や物性には不明な点が多く残されています。本研究室では,フォルステライトガラスの構造と物性を明らかにするため,分子動力学法を用いた研究を進めています[1].

[1] T. Ikeda-Fukazawa: J. Soc. Inorg. Mater. Jpn 23 (2016) 130. サンプルイメージ

7.発泡ポリマーの構造と物性

ポリメタクリル酸メチル(PMMA)は、その発泡特性により、軽量・高強度・高断熱性の材料として、建材や梱包材等、様々な用途で利用されています。近年になって、脱フロンを鑑み、素材完成後に、高圧ガス等を用いて微小気泡を発生させる新しい発泡技術が開発されました。本研究室では、ラマン分光法により、高圧ガスによる加圧・減圧過程におけるポリマー鎖の局所構造の変化を研究しています[1]。

[1] T. Ikeda-Fukazawa, D. Kita, K. Nagashima, J. Polym. Sci. B 46 (2008) 831.
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