無人放射線観測ロボットCERES*
大震災による福島第一原子力発電所の事故により,高濃度の放射性物質が放出され,広大な範囲にわたる住民が避難生活を余儀なくされています.様々な軽減化措置がとられようとはしていますが,チェルノブイリの例にもあるとおり,残念ながら汚染は数十年規模で続くと考えられています.

放射線の観測は,必然的に長期間にわたって行われることが求められますが,対象地域が非常に広範囲であるため,人の手による計測活動は被爆時間の増大を招き現実的ではありません.また定点観測用のモニタリングポストも,信頼のおける参考データとしては重要ですが,”測りたい場所”の観測を行うことはできません.
このような理由から,環境放射線の移動観測ができる無人ロボット走行体システムを構築しました.このシステムは,携帯回線を利用した通信機を持ち,自らインターネットに接続してステレオ画像,GPS座標,方位角等の情報を送信するので,理論上,地上のあらゆる場所からの遠隔運転が可能です.また簡易な自律機能も備え,通信の不安定な地域での運用も行うことができます.
活動に必要なすべてのエネルギーは,大型のソーラーセルから自己給電されるため,外から補給する必要がありません.日照の得られる昼間は移動観測し,夜間は省電力モードになり定点観測,または休眠します.この様なシステムにより,CERESは,長期間に亘って独力での観測活動が可能となっています.
(*Continuous Environmental Radioactive Emission Surveyor)
豊穣の神CERES = それは汚染地域復活への願い
本ロボットシステムの名称,"CERES" は,環境放射線観測機の意の英文の頭文字を取ったものですが,同時に,汚染された土地の復活を願って,ローマ神話の豊穣の神の名を頂いたものでもあります.
CERESは,また,大型のソーラーセルとバッテリを装備することから,汚染地域での活動の他,非常時には移動式の非常用電源や照明装置としての応用も考えられています.
2012年2月21日に神奈川県産業技術センターで行われた実証試験から
robonableでアップされた公開時の映像
観測放射線量履歴
nSv/h ... 1時間移動平均値