研究の概要


 我々の身の回りには化学製品や医薬品などに代表される有機化合物が溢れています。これらは生活する上で必要不可欠なものであり、酸素・窒素・リン・硫黄・ハロゲンなどのヘテロ原子を含むのが一般的です。しかし、根幹を支えているのは炭素−炭素結合からなる炭素骨格です。従って、炭素と炭素の間に結合をつくる反応は有機合成化学においては極めて重要な反応に位置付けることができます。これまでに様々な炭素−炭素結合形成反応が報告されていますが、全ての反応が効率面や環境調和の点で必ずしも最良であるとは言えません。そこで本研究室では、高効率で且つ、環境にも優しい新規触媒的炭素−炭素結合形成反応の開発を中心に研究を展開しています。特に学術面において革新的なブレークスルーになると期待できる研究テーマを立案し、これを実験科学的に実現・立証することで世界に一つだけの反応開発を目指して日夜精進しています。我々の研究グループのメンバーになって、自らの新反応を歴史の一ページに刻んでみませんか。

具体的な研究内容


 当研究室では主に、ルイス酸と呼ばれる金属塩を触媒に用いて新反応の開発を行なっています。ルイス酸を触媒あるいは量論量の活性化剤として用いる炭素−炭素結合形成反応は、最も重要な研究対象の一つであり、例えば、Friedel–Crafts 反応、向山アルドール反応、カルボニルエン反応、細見−桜井反応などが代表的かつ重要なルイス酸触媒反応として広く知られています。上記の反応は何れも、含へテロ原子化合物をルイス酸で活性化することで進行する反応であり、従来のルイス酸触媒反応といえば、含へテロ原子化合物の活性化によるものが殆どでした。そこで我々が注目したのが、炭化水素のルイス酸触媒による活性化です。後周期遷移金属触媒が炭化水素の活性化に有効なことは知られていましたが、後周期遷移金属とルイス酸では基質の活性化様式が全く異なるので、ルイス酸で炭化水素を活性化し、それを芳香族化合物との反応を中心に展開すれば、後周期遷移金属触媒反応とは違ったタイプの新反応が開発できると同時に、材料への応用が可能な π-共役化合物の合成も実現できると期待しました。以上のコンセプトを基に、各種炭化水素の活性化を通して開発した最近の反応例を以下に紹介します。なお、以下の反応のことについては、一部を除いて有機合成化学協会誌の総合論文に詳細に記述してありますので、そちらも是非ご一読下さい。[1,2]


注記1 : [4, 8, 12] の反応においては、反応の進行過程で C=C が活性化されます。
注記2 : [12] の反応においては、反応の進行過程で C–C が活性化されます。

References

 [1] Tsuchimoto, T. J. Synth. Org. Chem. Jpn. 2006, 64, 752–765.
 [2] Tsuchimoto, T. J. Synth. Org. Chem. Jpn. 2011, 69, 889–903.
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 [11] Tsuchimoto, T. Chem. Eur. J. 2011, 17, 4046–4075.
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 [13] Tsuchimoto, T.; Kamiyama, S.; Negoro, R.; Shirakawa, E.; Kawakami, Y. Chem. Commun. 2003, 852–853.
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 [15] Tsuchimoto, T.; Ozawa, Y.; Negoro, R.; Shirakawa, E.; Kawakami, Y. Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 4231–4233.
 [16] Tsuchimoto, T.; Igarashi, M.; Aoki, K. Chem. Eur. J. 2010, 16, 8975–8979.

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