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2017年8月1日、国際武器移転史研究所は、新たな国際共同研究プロジェクト「パーリア・ウェポンズ」(Pariah Weapons)を立ち上げました。

概要

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■より詳細な概要は、こちらから英語でご覧いただけます。
■ 明治大学より発表したプレスリリース(日本語)は、こちらでご覧ください。

「パーリア・ウェポンズ」(Pariah Weapons)プロジェクトの目的

冷戦終結後の軍縮・軍備管理に関する先行研究を振り返ると、軍縮・軍備管理政策を基礎づける概念枠組みや、軍縮・軍備管理のグローバルな装置全体が果たした機能を批判的に考察する研究が極めて少ないことがわかります。このプロジェクトは、日本内外の歴史学者・法学者・国際政治学者らによる学際的研究を通じて、近現代の軍縮・軍備管理の発想やその概念枠組み自体を問う、世界的にも極めて新しい試みです。具体的には、特定の兵器をパーリア(他の兵器に比べて特段に憎悪すべき存在)と捉える見方や、その見方を可能にする概念枠組みの構築と変遷の歴史を解明し、「大量破壊兵器」「非人道兵器」といったカテゴリーの構築とその変遷を歴史的に検証します。そして、特定の兵器をパーリアと見做し、その使用等を禁止すべしとする規範の基礎となる概念や前提を問い、それぞれの規範が形成された社会的・文化的・政治的・歴史的文脈を考察します。

パーリア・ウェポンズとは

このプロジェクトにおけるパーリア・ウェポンズ(pariah weapons)とは、各時代の国際的な政策論議においてパーリア(他の兵器に比べて特段に憎悪すべき存在)と見做され、その使用等がタブー視された兵器を意味します。このプロジェクトでは、パーリア・ウェポンズを、法的拘束力のある国際的合意によって使用が明示的に禁止された兵器だけでなく、国際的な政策論議において使用の禁止が検討された兵器も含む概念として捉えます。中世ヨーロッパのクロスボウをはじめ、人間はその歴史のなかでしばしば特定兵器の使用について問題視したり禁止したりしてきましたが、このプロジェクトでは、19世紀から現代までの期間を扱います。

なぜパーリア・ウェポンズなのか

このプロジェクトでは、パーリア・ウェポンズという用語を用いることによって、兵器をめぐる概念枠組み自体が持つ、社会的に構築された側面を強調します。そして、特定の兵器をパーリアと捉える枠組みを正当化する概念や前提を問い、その枠組みが暗黙に構築している「正当で通常の」兵器の領域にも着目します。このプロジェクトにおけるパーリア・ウェポンズの定義は、ある時代・社会において、なぜ特定の兵器だけが「特段に憎悪すべき存在」と見做されたのかを考察することを可能にするとともに、パーリア視された兵器のうち、なぜ条約等により「明示的に禁止された兵器」と「そうでない兵器」が生じたのかを検討することも可能にします。また、この定義により、幅広い種類の兵器が「攻撃的兵器」と呼ばれて使用禁止の対象と見做された戦間期の交渉を再考し、第二次世界大戦後における「大量破壊兵器」、「特定通常兵器」といった狭い枠組みの形成を再検証することも可能になります。このプロジェクトでは、「攻撃的兵器」、「非人道的兵器」、「大量破壊兵器」、「特定通常兵器」といった概念を無批判に使用するのではなく、むしろ、これらの用語・概念が形成された特定の歴史的文脈に焦点を当てます。

プロジェクトの構成メンバー

プロジェクト・リーダー 榎本珠良 明治大学
メンバー
(2017年10月28日
アップデート)
イド・オレン(Ido Oren) フロリダ大学
岩本誠吾 京都産業大学
小谷賢 日本大学
嘉指信雄 神戸大学
佐藤丙午 拓殖大学
タイ・ソロモン(Ty Solomon) グラスゴー大学
竹内真人 日本大学
福田毅 拓殖大学
マシュー・ボルトン(Matthew Bolton) ペース大学
松永友有 横浜国立大学
ミシェル・ベントレー(Michelle Bentley) ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校
ミロシュ・ヴェッツ(Miloš Vec) ウィーン大学/ 人間科学研究所 (IWM)
森山隆 「武器と市民社会」研究会
山下雄司 日本大学

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