ブリティッシュ・ワールド―帝国紐帯の諸相―

  • 概 要
    本書の課題は、18世紀から1970年代にかけて、イギリスが自国の勢力圏としての「ブリティッシュ・ワールド」をいかに構築し、それが現代のコモンウェルスにどのように変容してきたのかを、イギリスと植民地間の紐帯に注目しながら解明することにある。本書でいう紐帯とは、ブリティッシュ・ワールド内での共通性を創出する広義の権力作用であり、ブリティッシュ・ワールドを支える共通の三つの要素である。具体的には、①「ブリティッシュネス」 という感情的紐帯、②貿易・金融・生産構造に関連する経済的紐帯、③武器移転や軍事援助による軍事的紐帯である。本書は、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカというドミニオン諸国(「狭義」のブリティッシュ・ワールド)だけでなく、アイルランドやインドを含む「最広義」のブリティッシュ・ワールドも分析し、それぞれの紐帯がいかに歴史的に変化しながらブリティッシュ・ワールドを構築し、そして解体させたのかを考察している。

    目 次
    総 論 ブリティッシュ・ワールド論の射程(竹内 真人)
    第1章 ブリテン・アイルランド間の民兵互換
        ―ブリティッシュ・ワールド「本国」における紐帯―(勝田 俊輔)

    第2章 インドにおけるイギリス自由主義的帝国主義(竹内 真人)
    第3章 時計時間の移植と管理
        ―イギリス帝国の植民地天文台と時報技術―(石橋 悠人)

    第4章 ジェントルマン資本主義論が言わずにすませ、見ずにすませていること
        ―ブリティッシュ・ワールド論との関連で―(アンドリュー・ディリー)

    第5章 帝国特恵関税同盟構想の理想と現実
        ―ジョゼフ・チェンバレンのヴィジョンの挫折―(松永 友有)

    第6章 カナダ自由党と自由主義的帝国主義論(福士 純)
    第7章 コモンウェルスという神話
        ―殖民・植民地主義、大ブリテン構想、
        ラウンド・テーブル運動をめぐる系譜学―(馬路 智仁)

    第8章 第二次大戦戦時中にブリティッシュなるものを放送する
        ―ラジオとブリティッシュ・ワールド―(サイモン・ポッター)

    第9章 アトリー政権期のコモンウェルス防衛と南アジア(渡辺 昭一)
    第10章 独立後インドの「軍事的自立化」とイギリスの位置(横井 勝彦)