
我々の身の回りにある物質は、宇宙の天体現象を通して作られた様々な「元素」によって構成されています。誕生(ビックバン)直後の宇宙は、水素やヘリウムといった軽い元素しか持っていませんでした。その中でも、地球の主成分でもある「鉄」は、下の図のような宇宙で起きる星の大爆発「超新星」で作られてきました。つまり、このような天体現象無しでは我々人類は地球上に存在できていません。そして、「鉄」は人類にも大きな影響を与えてきた存在です。一方で、現在地球上に住む多くの人々は、目の前にある鉄がどのようにして作られここにあるのかを、知らずに生活していると思います(これらに関して知っているのは、地学や宇宙物理・天文学を学んだ一部の人だけだと思います)。例えば、下の図の超新星は、白色矮星という太陽ほどの重さで地球ぐらいの大きさを持つ天体の大爆発だと考えられており、一度の爆発で太陽の半分以上の重さの鉄を生み出していると考えられています。宇宙に存在する鉄の半分程度はこの超新星で出来ているとされているため、まさに宇宙の鉄工場と言えます。この宇宙の鉄工場の存在を知ってもらう企画を考えてきました。
(Credit: NASA/CXC, 左図: ティコの超新星, 右図: ケプラーの超新星)
明治大学 宇宙物理実験研究室では、「鉄」の技術と「宇宙物理学」の科学の面白さを繋ぐ「鉄を星に戻すプロジェクト」を進めています。鉄の技術に関しては、岩手県の南部鉄器の老舗及富さんにご協力頂き、下の写真のように鉄で超新星を再現して頂いています。南部鉄器では、鉄を溶かし鋳型へと流しこむことで、様々な形へと変形出来ます。古くから鉄瓶や鉄釜など人々の生活に浸透しており、夏には綺麗な音色の風鈴も見たことがある人が多いと思います。南部鉄器の表現力は非常に豊かで、超新星の見た目を綺麗に再現しながらも、手に持つとずっしりと鉄の重みを感じることが出来ます。この南部鉄器の技術や特徴と宇宙の面白さを融合し、手に持つことで「あ、この鉄は宇宙で作られて今ここにあるんだな」と思える作品、多くの人が宇宙を身近に感じれる作品を作りたいと考えています。
(南部鉄器工房 及富さんに再現して頂いた南部鉄器超新星 左図: ティコの超新星, 右図: ケプラーの超新星)
ちなみに、これらの及富さんに再現して頂いた超新星はそれぞれ西暦1572年、1604年に天文学者のティコ・ブラーエとヨハネス・ケプラーによって記録された超新星で、それぞれ「ティコの超新星」「ケプラーの超新星」と呼ばれています。南部鉄器の歴史も、おおよそ400年と言われており、偶然にもこれらの超新星の発見と南部鉄器の始まりは一致しています。これも何かの縁だと思い、現代において超新星と南部鉄器を繋げられたら嬉しいなと思っています。
このプロジェクトは、2024年あたりから本格的に始動したいと考えています。まだまだ、どのような作品にするかは未確定で、可能であれば手伝ってくれる人がいると助かります。もし、プロジェクトに興味がある人(明大の学生さんなど)いましたら、お声掛けてください。
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