照明
表1に画像計測に用いられる一般的な光源を示す。流体の画像計測では時間的に短くパルス状に発光する光源を必要とする。また、流体中の一断面を照らすために光シート(light sheet)が必要となる場合が多い。
写真用ストロボに使われるキセノン・フラッシュランプは比較的安価でありながら発光半値幅が数マイクロ秒程度のパルス光を発生する。光源から放射状に発せられるため、効率的に照射するには放物型ミラー等で集光する必要がある。特に、シート状に照射する場合には出力端が線状に配列された光ファイバー束を通して線光源を作り、シリンドリカルレンズで集光させてシート光とする方法が採られる。しかしながら、光シートの厚さは数mmから数十mm程度と比較的厚くなることが難点である。
薄い光シートを発生させるにはレーザ光源を用いる。レーザ光は広がり角が非常に小さく(mrad〜mradオーダ)ほぼ平行に伝播するため、シリンドリカルレンズによって薄いシート状に広げることが可能である。パルス発振型のNd-YAGレーザは発光半値幅が数ナノ秒程度であり、後述のPIVやLIFに多用される。発光強度は10〜500mJ/パルス程度、発光周波数はフラッシュランプ励起が30Hz程度、半導体励起型は10kHz程度である。PIVで必要となる微小時間隔てられた2回のパルス光(ダブルパルス)を得るためには、2台のレーザから発せられた光ビームを光学系によって平行に重ね合わせ、2台のレーザを微少時間間隔ずらして発光させる方法が採られる。
|
周波数 |
発光時間 |
出力 |
波長 |
シート照明 |
体積照明 |
キセノンランプ |
〜10kHz |
〜10ms |
〜10J/パルス |
白色 |
|
○ |
Nd-YAGレーザ |
〜30Hz (半導体 |
〜10ns |
〜500mJ/パル |
1064,532*,355* |
○ |
|
アルゴンレーザ |
|
連続 |
〜20W |
488,514.50 |
○ |
|
He-Neレーザ |
|
連続 |
〜50mW |
632 |
○ |
|
半導体レーザ |
|
連続 |
〜10W |
青〜赤外 |
○ |
|
LED |
|
連続 |
|
青〜赤外 |
|
○ |
ハロゲンランプ |
|
連続 |
|
白色 |
|
○ |
|
*非線形光学結晶 |
表1 画像計測に用いられる光源 |
カメラおよび画像取り込み装置
被写体から放射された光はレンズを通してカメラ内部の撮像面に集光し結像する。撮像面には光の強度を記録する撮像素子が設置されており、その種類により幾つかに分類される。
最も古くからある撮像素子はフィルムカメラに用いられる銀塩フィルムである。解像度が極めて高く、また、機械的連写装置による動画撮影も可能であるが、フィルムの機械的位置ずれが避けられないため、後述の位置校正には注意が必要である。
画像計測で多用される撮像素子はCCDやC-MOS撮像素子である。CCDは、各画素に設けられたフォトダイオードによって光電変換を行い、その電荷をシフトレジスターで順次転送して読み出す方式をとる。感度が高く低ノイズであることが特徴である。一方、C-MOS撮像素子は各画素にフォトダイオードに加えて増幅用トランジスターを有し、光電変換された電荷を電圧に変換した上で、DRAMなどに用いられるクロスワイア方式により読み出しを行う。C-MOSプロセスを用いることができるため安価で回路集積が容易である上、高速読み出しや部分読み出しが可能である。但し、個々の画素の増幅率にバラツキがあるため、画像には固定ノイズが現れるので、これを補正する処理が必要である。
撮像素子から読み出された映像信号は種々の形式で伝送され、画像取り込み装置に入力される。テレビに用いられているNTSC方式では撮像素子の出力信号はアナログ信号として伝送され、画像取り込み装置でAD変換される。広く普及している方式ではあるが、画面縦方向の解像度が規定されているため高解像度化が図れないこと、偶数ラインと奇数ラインを交互に転送するインターレース方式のため全画面の読み出しが2時刻にわたることなどから画像計測には不向きな面もある。一方、撮像素子の出力をカメラ内部でAD変換して伝送するデジタル出力形式のカメラは、画素数の規定が無く非インターレース方式の読み出しが可能であることから、画像計測によく用いられる。近年、デジタル出力方式カメラと画像取り込み装置のインターフェース規格としてCamera LinkTMが定められ、これに準拠した画像機器が多数入手可能である。秒間数百フレーム以上撮影可能な高速カメラは、画像取り込み装置と一体型の場合もある。
画像取り込み装置に入力された画像情報は同装置のメモリーに蓄えられた後に、PCIバスやIEEE1394インターフェース等を経由してコンピュータ上のメモリまたはハードディスクへ転送される。同装置のメモリーが少ない場合には、画像取り込みと同時にコンピュータへの転送が行われることもある。このとき、画像を連続的に取り込む際にはコマ落ちに注意しなければならない。
同期回路
カメラと照明のタイミングを制御するために同期回路が必要となる。同期回路は通常、任意の時間間隔のパルス発生機能およびそのパルスに対して遅れを伴ったディレイパルス発生機能を有するものである。これにより生成されたパルスをトリガー信号としてカメラおよび照明に入力させることで、タイミング制御を行う。ただし、カメラにトリガー信号の入力ができない場合(たとえばNTSC方式カメラ)には、カメラの同期信号を取り出した上で、その信号に遅れを伴うディレイパルスを生成して照明に入力させる必要がある。
参考文献
1)可視化情報学会編:PIVハンドブック、森北出版、2002, 172-191.
|