自己相関法


CCDなどの固体撮像素子が使用できない場合や超高解像度の画像が必要な場合には写真フィルムに粒子像を撮影する。その際、1枚のフィルム(あるいは1枚の画像フレーム)に2時刻の粒子像を撮影した画像、すなわち2重露光画像を取得する。下図はその例である。

この2重露光画像から、粒子の移動量を求めるには、画像の自己相関関数を求める。1次元の関数f(x)の自己相関関数は

で与えられ、それを規格化した自己相関係数は


である。これを模式的に示すと、下図になる。f(x)は固定しておき、同じf(x)をx方向にずらしながら積和演算をする。すなわち、ξを変化させながらf(x)とf(x+ξ)の積和を求める。すると、2つのピークの間隔分ずらした、すなわちξが2つのピークの間隔に相当するときに、相関係数は正の極大を迎える。よって、この極大となるξが粒子の間隔である。

2次元に拡張すると次式になる。

ここで、


2次元の相関関数は下図のようになる。ここで、ξ=η=0に高いピークがあるが、これは2つの関数を全くずらさない場合、つまりピッタリ重ねたときの相関係数である。重要なのはこれではなく、そのとなりにある小さなピークである。この位置(ξ,η)が粒子の移動距離と方向を表す。ちなみに、ピークは反対側にもあるので、どちらに移動したかはこの結果からは判別出来ない。その判別のためには画像に機械光学的なオフセットを加えるイメージシフトが用いられる。


積和演算によって相関関数を求める他に、高速フーリエ変換(FFT)を用いる方法がある。関数f(x)のフーリエ変換は、

であらわされ、そのパワースペクトルS(k)は次式になる。

ここで*は共役複素数を表す。このパワースペクトルの逆フーリエ変換は自己相関関数と等しく、また、自己相関関数のフーリエ変換はパワースペクトルと等しい。

これをウイナー・ヒンチン(Wiener-Khimtchine)の公式という。2次元に拡張すると下図のようになる。2重露光画像の2次元FFTを求め、パワースペクトルを算出し、その逆フーリエ変換を求めればそれが自己相関関数となる。


上記のFFTを光学的に行う方法が採られることもある。2重露光されたフィルムの中の速度ベクトルを求めたい位置にレーザビームを照射すると、光が回折してフィルムの向こう側に置かれたスクリーン上に干渉縞が観察される。 この干渉縞がパワースペクトルと等価であり、これをCCDカメラで撮影してコンピュータ上で逆フーリエ変換を求めれば、自己相関関数が求められる。この方法は1980年代から1990年代にかけて用いられた方法であり、レーザビームを当てて速度を求めることをinterrogationと呼んだ。