2-5 生理学指標の使用

明治大学情報コミュニケーション学部教授
メタ超心理学研究室 石川 幹人

 本項では,生理学指標と,そのPSI実験での使われ方について触れる。

<1> 生理学指標が使われる場面

 PSI実験において生理学指標はさまざまな場面に使われる。被験者が明確には意識しない変化が出る生理学指標は,旧来からウソ発見器(ポリグラフ)に使われてきた。PSI実験では,そうした生理学指標を,意識しないうちにPSIを感知していることを判定するのに利用している(3-4)。また遠隔ヒーリングの可能性を示すうえでは,生理学指標の変化そのものをターゲットに使っている(2-4)。さらには,PSIが発揮されやすい意識状態に誘導する手がかりとしても使われる(4-3)。テレパシー実験で,送り手と受け手の生理学指標を比べて時間的な同期関係を見るのも,ひとつの利用形態である。

<2> 代表的な生理学指標

 PSI実験でもっとも多く使われているのは,電気的皮膚活性度(EDA)である。古くは,皮膚電気応答(GSR)とも呼ばれた。通常,被験者の指2本の間に微小な電流を流して測定し,被験者の感情が高まると大きくなり静まると小さくなることが知られている(3-4)。今では,20万円ほどの機器で簡便に測定できる。EDAの先駆的な使用例には,大谷宗司が被験者のEDAとESPスコアの相関を検出した,1955年の研究が挙げられる。これと似たもので,指先の血管の体積を測って血流の流れを調べる「プレシズモグラフ」という方法もある。
 次によく使われるのが脳波(EEG)である。周波数帯に応じてβ波,α波,θ波,δ波などと分けられる。とくにα波の状態は変性意識状態(4-3)に対応すると考えられている。また,ターゲットの提示などを繰返しながら脳波を取り,その信号を重ね合わせると,外部刺激によって誘導された脳波の信号を検出できる(誘発電位)。それによって無意識のPSI感知を示せる可能性がある(3-4)。現在の大脳生理学研究では,脳の活動の時間的変化を調べるMRIやPETという技術が進んでいるので,近い将来は,それらがPSI実験に使われるようになるだろう。

脳波測定(生理学指標の測定,RRC提供)

 生体の電気的変化を測定する他の方法には,眼電位(EOG),筋電位(EMG),心電位(ECG)などがある。眼電位は睡眠時に,PSIが働きやすいとされる夢見状態の検出に使われている(3-1)。筋電位は,リラックス状態を判定するのに使われる。心電位は,心拍数などから精神状態を推し量れるので,例えばDMILSの実験に使われている(2-4)。筋電位はまた,金属曲げなどのマクロPK実験(2-3)で,筋肉が働いてないことを示すのに使われたことがある。
 生理学指標は他にもたくさんあるが,時間的変化の乏しい指標はPSIと他の要因とを区別しにくいので,PSI実験にはあまり向かない。

<3> その他の関連実験

 生理学指標とは言いにくいが,ヒーラーの研究(2-4)では,生体からある種のエネルギーが出ているという発想のもと,生体からの微小な電波,光,磁気,放射線などあらゆるものが測定対象になっている。
 変わったところでは,ロシアのPSI研究家キルリアンが開発した,指先を電極版に触れさせて,皮膚表面でのガス放電を見る方法がある。「オーラ」が見えるかのようで印象的だが,電極版などの設計法,発汗などの水分の影響に大きく左右されるようである。
 また医者でないとできないが,被験者に薬剤を投与して,生理的な変化を人工的に起こしたうえで実験する方法もある(4-3)。

<X> 付記

 本項の内容はSSPにおけるブラウトン氏とノーマン・ドン氏の講演をもとにしている。また,まえがきに掲げた「文献6」で補っている。


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