日本超心理学会月例会

2005年5月22日(日曜)


(1) ベムの予知実験

解説:石川幹人

著名な心理学者ダリル・ベム氏が考案した予知実験である、予知的馴化(precognitive habituation)、予知的回避、予知的デジャヴについて解説した。

ダリル・べム(Daryl Bem)は、自己知覚理論などで有名な社会心理学者、認知心理学者であり、コーネル大学の教授である(http://www.dbem.ws/)。奇術師でもあり、ライン研究センターの夏期研修会では、奇術のトリックをもとに信念形成の心理学について講じていた。

彼は、45年以上にわたって版を重ね使われてきた心理学の教科書『ヒルガードの心理学』の執筆陣に加わっており、この本の第6章「意識」の最終節「サイ現象」の執筆を担当している。なお、この本の第13版に対する邦訳本が、2002年にブレーン出版から発刊された(1,540頁、19,950円)

彼は、ホノートンらのガンツフェルト法のメタ分析をホノートンとともに行ない、本流科学者の立場から実験分析方法の厳密性をチェックし、懐疑論者たちの不用意な批判に対して超心理学研究を擁護した(JP、1994年)。

彼がはじめて企画実施した超心理学実験が、予知的馴化(precognitive habituation)である。予知的馴化実験は、(a)特異能力者でなくて一般被験者を対象に、(b)特殊装置なしにコンピュータだけで実験ができ、(c)簡単な統計的検定で判定できるため、(d)懐疑論者でも誰でも追試ができるのが特徴である。

予知的馴化実験の1試行で被験者は、恐怖画像(かまたは性的画像)を1組(2枚)見せられ、どちらが好きかを選択する。その直後にコンピュータがランダムにどちらかの画像を馴化ターゲットに選び、サブリミナル呈示する。仮説によると、この将来のサブリミナル呈示が画像の印象を馴化させるので、恐怖画像の場合は馴化ターゲット画像がより好ましく、性的画像の場合は馴化ターゲットでない画像がより好ましく選択されるはずである。また、風景画などの中性的画像は差異がでないと予想される。

9回の実験にわたり集計したところ、恐怖画像259試行につき馴化ターゲットが選ばれた割合が52.6%(p=0.0008)、性的画像149試行につき馴化ターゲットが選ばれた割合が48.0%(p=0.031)で、ともに有意であった(PA、2003年)。

さらに彼は、予知的回避(precognitive avoidance)と予知的デジャヴの実験を提案している(PA、2004年)。

予知的回避実験は、将来の恐怖画像の全画面呈示を回避する実験である。2枚の中性的画像を呈示し、好ましいほうを選択させるのであるが、選択の直後にコンピュータがランダムにどちらかの画像を回避ターゲットに選び、そちらが選択されているときだけ、恐怖画像の全画面呈示がなされる。

パイロット実験では、個人差(心配傾向の者にヒッティング、感動傾向の者にミッシング)はあるが、顕著な傾向が示されている。恐怖画像を性的画像に替えた実験では、まだ顕著な傾向は見られていない。

予知的デジャヴ実験では、被験者には意識下での目撃認識を調べる実験と説明される。「目撃者はかすかな記憶をもとに容疑者の判別を求められますが、この実験では、サブリミナルに呈示された写真を、呈示されなかった写真と見分けていただきます」と教示する。被験者はサブリミナル呈示に引き続いて、2枚の画像のどちらに馴染みがあるかを選択するよう求められるのだが、実際のところ、サブリミナル呈示は選択の「あと」に行なわれる。

サイ実験と告げて行なったパイロット実験では、とくに開放的性格の者に顕著な効果が得られた。また、全体的印象を記述したときのほうが、部分的な分析的記述をしたときよりもスコアがよい傾向がある。この実験は、人の顔、動物や風景画などの中性的画像を使えばよく、他の実験に比べて心理的な負担が少ない。


(2) 大会反省会

昨年12月に開いた超心理学会大会の内容について、当日のビデオを見ながら意見交換 および討議した。


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