情報処理系科目の意義


機械工学科にとって情報処理関連は縁遠い分野と思う学生もいるかと思われる.
しかしながら,以下の点で機械工学とのつながりが深いことを理解して欲しい.

メカトロニクス機器
センサがあって制御されたモータがあるような装置はすべてメカトロニクスの恩恵を
受けたものである.近年は機構のみあるいはアナログ回路のみで制御される装置は
稀であり,何らかのマイコンを利用するのが主流となっているのは既知の通りであろう.
マイコンとの親和性からディジタル系が主流であるため,プログラムを必要とする.
従って,機械を自在に動かすためには機械のみならず,電気やプログラムについて,
その考え方を理解できるようになっておく必要がある.

設計支援ツール,解析
機械系技術者にとって設計は必須のスキルであるが,CADを用いた設計を行う上で,
1)構造解析,2)振動解析,3)運動解析,4)温度解析,5)流体解析,6)干渉チェック,
7)ハーネス(配線)引き回し解析などの支援ツールを用い,解析結果を勘案しながら
設計にフィードバックすることも行うような手順を踏むのが実情である.
エンドユーザとしてこれらのツールを使うだけでは結果を正確に評価できないため,
数値演算の性質を知っておくことが,機械の設計者として大きなスキルとなる.

論理思考
プログラミング言語は,融通がまるで利かないのは想像に難くない.
約束事通り,手続き通りの動作を忠実に実行するだけである.従って,再現性のある
結果を得ることができるのも特徴であり,プログラムを有効に動作させる流れとしてアル
ゴリズムがある.
特に条件と紐付けて処理を考えるプログラムを作るという考え方が論理的思考との
つながりがあるので,よいトレーニングになると言えよう.

データの処理と数値演算の性質
実測であれ,数値シミュレーションであれ,測定したデータに関して何らかの処理を行う
ことが多々ある.また,対象とする現象が連続体である,または,多数の要素から構成
されるものである場合,数値演算を行うが,単に条件のみならず,計算機演算の性質を
知っていることで,演算結果の妥当性を判断できるようになるいことができることも
確かである.


技術者が使えるようになるべき対象はPC
情報端末の形態は多様となり,必ずしもPCが必要だとは言われなくなって久しい.
しかも個人用のPCの普及率は下がっていると言われてもいるくらいである.
情報端末を用いて何かの作業をするために,アプリケーション・ソフトウェアを用いるが,
以前のソフトウェアやソフトという略称であったのから,いつの間にかアプリと言われる
ようにもなっている.
モバイル情報端末を利用して,記事を閲覧したり,画像や音声や動画を記録したり,用意
された処理方法に従って加工するのであれば,携帯型の端末だけで事足りるとすら言われ
ているが,果たして本当にそうであるか考えて欲しい.
以前のPCよりも処理能力の遥かに優れたプロセッサが実装されていることも間違いない.
また,起動の速さからも使い勝手に優れることも間違いない.

しかし,現在もなお,自ら制作・創造を行うにはPCとその周辺機器のインターフェイスが
遥かに優れていることは間違いないので,これを利用できることは必須のスキルであると
考えてよい.
外部機器を含め,ハードウェア構成の工夫によって,性能も機能も拡張性が大きいことも
考慮しておいて欲しい.
同じ情報処理端末と言っても別物であると理解し,それぞれの特徴を活用することが重要で
ある.
技術に携わるプロフェッショナルになるのであれば,PCは作業し,アウトプットしていく
ための有効な道具であることはやはり間違いないと考えられるであろう.