2024-07-03
干渉, 波長スペクトルと認識
コメント
コメント
資料5の「となる. ただし, これは 方向に一様な電場, 磁場があるという解であり, 電磁波の伝搬を考える際には無関係なのでC=C’=0 とおいて」の意味がよくわかりませんでした。
これは,
式をそれぞれ
で積分すると となる. ただし, これは
方向に一様な電場, 磁場があるという解であり, 電磁波の伝搬を考える際には無関係なので, と置いて とする.
の部分ですね.
コメント
偏微分の式が毎回長いので、何か省略できるコツがあれば教えていただきたいです。
授業では, できる限り簡単に式変形を追うことができるようにあえて細かく書いていますが, 自分で計算する場合は自分の分かる範囲で省略して構いません.
テクニカルな意味で省略したいのであれば,
コメント
光の分散について、水滴は空気中に無数にあると思うのですが、そうなると屈折が無数に起こってしまうのではないでしょうか。なぜ、きれいに色が並んで出るのかの理由が知りたいです
実際, 水滴の密度があまりに高いと再度屈折等が起こり, 虹として見えないと思います. 水滴の界面での屈折と水滴内部での反射によって分光された光がそのまま我々の地上までに届くためには, 一定の水滴の密度が必要だと考えられます.
コメント
実際にxとyの係数が一致する事があるのか気になった
現実の反射・屈折の現象を説明できる, という意味では実際に係数が一致すると考えて良いと思います.
コメント
偏光板をのぞいたがいまいち何なのかわからなかった
偏光板を通すと特定の方向の直線偏光となります. ・2枚の偏光板の方向を揃えると, 同じ方向の直線偏光となるので光は透過します (=向こう側が見えます). ・2枚の偏光板の方向を互いに90度ずらすと, 1枚目から通過してきた直線偏光は2枚目では透過できません (=向こう側が見えず, 真っ暗になります). この性質を利用して, 両面に2枚ずつの偏光板 (計4枚) を設置する時, 対角要素同士の偏光板の方向を90度回転させるとその組み合わせは真っ暗になり, 斜面が実在するかのように錯覚します.
横から (1) | 横から (2) | 穴から覗くと何も無い |
---|---|---|
![]() | ![]() | ![]() |
コメント
"電磁波の一般解"というのがなんかぼんやりとして何を表していて、実生活では何に使われているのだろうと思った。
電磁波の平面波の一般解は, 遠方からの光などに相当します.
コメント
資料の積分するところ、積分したのにdtがそのままになっていますので訂正の程宜しくお願いします。
どこでしょう... 特定できなかったので, ページ番号や, どの式か等の詳細をもう少し教えていただけますか?
コメント
授業内容が理論的で難しかったですが、電磁波の一般解の導出過程が理解できたことが良かった点です。具体例や図をもっと使って説明してもらえると、さらに理解が深まると思います。
Maxwell方程式もよくわかっていないのに今回それを使っての式変形でさっぱりわからなかった。
波長 (振動数) スペクトルと認識
認識, 知覚
平面波の一般解
で書かれるように, 波は波長もしくは振動数によって, 特徴づけられている.
この振動数の違いを, 我々の認識, 知覚する差として考えると, 音の場合は音の高さ, 光の場合は色の違いとなる. また, 振動数の異なる複数の波の重ね合わせとは, 光の場合は色の違いとして認識されるが, 音の場合は音色の違いに相当し, 特に言葉の場合は母音の違いとして認識される.
目は基本的にはカメラと同じで, レンズの役割を果たす角膜と水晶体, フィルムに相当する網膜を用いて, 光の来る方向を感知している.
光は電磁波の一種であり, 特に目で感じることのできる光を可視光とよぶ. これは波長では
程度の範囲の電磁波である. この範囲に限られるのは, 目の水晶体と網膜の間を満たしている硝子体という器官がほとんど水からできており, 水は可視光以外の光はほとんど通さないことによる.
水中でゴーグルをつけないと視界がぼやけるのは, 水と水晶体との屈折率が近いためにあまり屈折せず, 網膜で像を結ぶように焦点が合わないためである.
単一の正弦波のように, 単色波の場合には, 可視光の長波長の端は赤で, 短波長の端は紫と感じられる. その間の波長の光は赤橙黄緑青藍紫といった順番で連続的に変化する色として観測される.
可視光の振動数は
程度の範囲となる.
しかし, この振動数は人間には細かすぎて振動として観測することは不可能のため, 網膜上の各点に用意されている3種類の錘体 (赤, 緑, 青) と桿体 (光の強さ) によって, 光を知覚している.
実際, 3種類の錘体の方はそれぞれ分担する振動数の範囲 (赤周辺, 緑周辺, 青周辺) があり, 出てくる信号に違いがあるため, この3種類の相互の比によって脳は光の振動数, すなわち色を知覚している.
したがって, 人間が知覚可能な任意の色の光は3原色 (赤, 緑, 青) の光を混ぜることによって作ることができ, 様々な振動数が混ざり合った光を振動数の関数として表し, 光の強さを示したものをスペクトル (spectrum) と呼ぶ.
なお, 生物がすべて3つの錐体を持つわけではなく, 例えば犬は2種類, 魚は種類によっては4種類, 鳥には5, 6つの錐体を持つものもいるらしい. その場合, 2原色, 4原色, 5, 6原色として世界を知覚していることになる. 2原色の場合は大雑把にいえば白黒映像のようなものを想像すればよいが, 4原色以上については, 人間には知り得ないこととなる.
可視光外を捉えるカメラと画像解析を使用した応用例
可視光領域の外の振動数の電磁波も当然存在する.
例として, 可視光のやや外側に位置する紫外線, 赤外線や, 電子レンジで使用されているマイクロ波や, ラジオ, 携帯電話の電波などがある. ただし, そういった光の強度が強い環境に, 人間がいても可視光領域外のため, 目で知覚することはできない.
ただし, 専用のカメラ等を利用すれば, そういった可視光領域外の光について我々が知覚, 認識, 利用することが可能となる.
その応用例として, 下図のように, スクリーン上に手をかざすと, スクリーン上の映像が動く, というものがある.
このような体験の実装にはいくつか手法があるのだが, ここでは赤外線ライト (光源) と赤外線領域を知覚するカメラ (IRカメラ) を利用した手法について紹介する.
具体的には下図のようにセッティングする手法である. プロジェクターを利用することや, 赤外線カメラを利用することから, 赤外線も含む太陽光を避けるために, 暗い屋内部屋にセッティングすることが多い.
通常のプロジェクターは可視光領域内で色を表現することが多い.
したがって, 上図 (a) のように, プロジェクターから投影された映像を通常のカメラで捉えると, 当然, その映像内容も含めて入力として捉える.
しかし, この方式だと, 人に合わせて映像を変えたいとしたとき, 「人の動きと映像の変化とが合わさった映像」をそのままカメラの入力として捉えることになってしまう. そのため, その入力映像の変化から人のみを抽出することは困難である (真面目に画像解析をやれば可能ではある).
一方, 上図 (b) のように, 赤外線カメラを利用すると, プロジェクターから投影されたスクリーン映像の内容 (可視光) がカメラ映像として入力されない. そのため, 人の動きのみを捉えた入力映像となる. すると, 事前に, 人が居ない場合の映像を用意しておけば, その映像との差分を取ることで人等の実物体のみを抽出することが可能となる.
実際に教室でテストしてみた映像が下図である.
確かに, 人の動きに合わせて映像を変化させることができている.
干渉
干渉
下図のように平面波が進んできた先に, 2つのスリットがあいた板を置いたとする. 平面波が各スリットを通過すると, 図のように各スリットを波源とするかのような波として考えることができる. これをホイヘンスの原理という.
ホイヘンスの原理を使うと, 各々のスリットの位置から
すると, 右側に設置されたスクリーン上の波は, 2つのスリットから来る2つの波の重ね合わせとして表現できる. ここで,
波の山と山が重なれば波は増幅され,
逆に, 波の山と谷が重なると相殺して振幅がゼロとなる
という現象が発生する. この現象を波の干渉という.
実際に, 2つのスリットからスクリーン上の位置
となる.
ここで, sinの部分は時刻
一方,
: 振幅が0. すなわち, 波の干渉により光が消える (暗くなる). : 振幅が最大. すなわち, 波の干渉により光が最も大きく振動する (明るくなる).
ということを示している. すなわち, スクリーン上に 明 暗 明 暗 明 暗 ... という縞模様ができる.
すると, 明るくなる位置においては,
となる.
すなわち, 2つのスリットから出た光路差
下図のように, 2つのスリットの間隔を
すると, 光路差
となる.
したがって, スクリーン上に等
干渉しない波
ここで, 2つのスリットの代わりに振動数の等しい2つの単色光源を用意するとどうなるだろうか?
2つのスリットの場合とほとんど同様だが, 2つの光源が互いに独立なので, 初期位相は揃っていない.
単色光源1の初期位相を
となる.
ここで, sinの部分は時刻
一方,
したがって, 波が強め合う条件の位置は位相差
しかし, 実際にこれを実験してみると干渉縞を確認することは難しい. これは, 現実には単色光源から発する光の波数と振動数が厳密に1種類のみになっていないことに由来する.
単色光源が実際に放つ光の角振動数の差を
したがって, この位相差が
となる.
したがって, この実験において, 干渉縞を観測する際に, カメラを用いるとするとき,
よりもある程度短い時間内で露光して撮影すれば, 位相差がほぼ一定とみなせるので, 干渉縞を観測できるが, よりも長い時間内で露光して撮影してしまうと, 撮影中に位相が1周以上変化してしまうため, 各時刻で起こっているはずの干渉縞の明暗を足し上げて撮影してしまう. そのため, 干渉縞を見ることができない.
すなわち, 角振動数差
光子の裁判
光は実際には, 粒としての性質と波としての性質の両方を持っている. その内容を比喩的に語ったものとして, 朝永振一郎の光子の裁判という話がある.
ここでは, 下図のような2重スリットの実験のような部屋があり, 「光子 (こうし or みつこ) と呼ばれる被告が, 入口の門から侵入した後, どのような経路を通って壁面に到達したか?」ということが問われる裁判が開かれている.
事実上, 光子の存在を確認したのは入口の門番のタイミングと, 壁面に到着したタイミングの2回のみであった. この時, 検察官や判事は, 光子が当然「窓A, Bのいずれかを通って壁まで到達したのだ」と主張するのだが, 光子の弁護士は「その両方を同時に通ったのだ」と主張する.
そこで, 検察官や判事は, 同時に窓を通過するなんてありえないと語る. しかし, 弁護士による様々な実証により,
入口と壁面でのみ光子の姿を1人 (粒) だと観測したとしても, その途中経過 (窓A, B) でも不可分の1人であるかどうかは観測していない限り, 不明であること
部屋内を警官で埋め尽くして, その経路を逐一辿るように観測し続けた場合は, 光子は常に1人であること. そして壁面のどこにたどり着くかはランダム (干渉縞ができない) であること
途中の経路を一切観測しなかった場合は, 一見壁面のどこにたどり着くかはランダムのように見える. しかし, 何度も同じ実証実験を実施し, 到着した位置の頻度をみると縞模様になっていること (=干渉縞ができる)
といったことがわかっていく.
すなわち, 量子という小さな世界では, 「観測という事象が常人の肌感覚以上に大きな意味を持ち, 結果に影響を与えるということ」と, 「光子のもつ粒と波の2重性があること」をこの話で示唆している.
実際, これと同等の物理実験を電子を用いて行われた. 日立研究所での外村彰氏のグループによる実験で, 世界で最も美しい実験の1つとされている.
Interference pattern (without narration) | Interference pattern (with narration) | 誰も見たことのない世界を観る【前篇】 |
回折
下図のように, 幅のあるスリットを通過した波の干渉を考える. スリットの幅を
ホイヘンスの原理を使うと, スリットの位置
スリット内の位置
となる.
この結果の
式
の場合である. この場合の角度を
となる.
このように
となる. この
一方, 距離
の範囲となる.
したがって, 幅
式
この具体例としては,
可視光 (数百nm) は, 壁があるとはっきりとした影ができるが, 可聴域の音波 (20Hz ~ 20000Hz : 17m ~ 0.017m) は, 壁があっても回り込んで聞こえる
AMラジオ (数百m) は建物の裏側まで入り込むことができるが, FMラジオやテレビの電波 (数m) は建物の裏側では受信しづらい
無線通信システムの5Gの方が4Gよりも周波数が高い (=波長が短い) ので, 建物があると減衰しやすい (つながりにくい)
などがある.