実施・提出期間

締切: 2024/06/26 (水) 13:30 までに, 下記の問題を実施し, 提出してください.

 

注意事項

  • 手書きで計算したものを1つのpdfにまとめて提出してください

    • 紙に直筆したものを写真 or スキャンする場合は, 中身がハッキリ読めることを確認してください

    • タブレット等を用いて電子的に手書きするのもOKです

    • 画像ファイルをそのまま何枚も提出したり, zipにまとめて提出したものは受取不可とします

  • 授業資料の解答を丸写しするのではなく, 授業内容を思い出しながら自分の手で計算するようにしてください

  • 授業直後に復習することはもちろん素晴らしいです!! その後, なるべく数日空けてから再学習として本課題を実施し, 提出することを是非試してみてください.

 

問題

1次元の波 (定在波)

左右遠方に波源があり, 振幅, 波長, 周期が等しく, 互いに逆向きに進む2つの正弦波が同時に存在する場合を考える.

一定の速さ v±x 方向に進む波を

v+x:  u1(x,t)=Asin(k(xvt)ϕ1)    (A,k,v. ϕ1)vx:  u2(x,t)=Asin(k(x+vt)ϕ2)    (A,k,v. ϕ2)

と書く場合, 両者を重ね合わせた波について, 以下の問に解答せよ.

  1. 角振動数 ω を用いて u1,u2 を記述せよ

  2. 2つの波の位相差を便宜上 2ϕ だけズレているとした場合の u1,u2 を記述せよ

  3. u1,u2 を重ね合わせた波 u(x,y) を導出し, どのような波であるか記述せよ

  4. u(x,t)が波動方程式を満たすことを実際に計算して示せ

 

3次元の波 (平面波, 球面波)

下図のように, ある単位ベクトル n の方向に進む平面波を考える. 原点からの距離を s とすると, この平面波は距離 s によって表現できる. 上述のx 軸方向に進む平面波の場合のx が今回の場合の距離 s に対応する. r は波面上の1点を示す位置ベクトルである.

なお, n=(nx,ny,nz), r=(x,y,z) とする.

3d-plane2

  1. 波面上の1点の原点からの距離 sr, n を用いて表わせ

  2. ある時刻 t=0 における平面波を s の関数 u(x,y,z,t=0)=f(s)で表す場合, 時刻 tにおける平面波の一般解を導出せよ

  3. 平面波の一般解が満たす微分方程式を導出せよ

  4. 球面波の波源から十分遠方においては, 球形の波面が近似的に平面波とみなせることを利用し, 球面波の一般解を導出せよ

 

まとめ

  1. 今回の授業内容を100文字以上で自分なりにまとめてください. ただし, 写経のように丸写しすることだけはやめてください.

 

解答

1次元の波 (定在波)

左右遠方に波源があり, 振幅, 波長, 周期が等しく, 互いに逆向きに進む2つの正弦波が同時に存在する場合を考える.

一定の速さ v±x 方向に進む波を

v+x:  u1(x,t)=Asin(k(xvt)ϕ1)    (A,k,v. ϕ1)vx:  u2(x,t)=Asin(k(x+vt)ϕ2)    (A,k,v. ϕ2)

と書く場合, 両者を重ね合わせた波について, 以下の問に解答せよ.

角振動数 ω を用いて u1,u2 を記述せよ

右向き (+x方向) に進む進行波は

u1(x,t)=Asin(k(xvt)ϕ1)=Asin(kxkvtϕ1) (kv=2πT=ω)=Asin(kxωtϕ1)

となる. 左向き(x方向)に進む進行波も同様に

u2(x,t)=Asin(k(x+vt)ϕ2)=Asin(kx+kvtϕ2) (kv=2πT=ω)=Asin(kx+ωtϕ2)

となる.

2つの波の位相差を便宜上 2ϕ だけズレているとした場合の u1,u2 を記述せよ

任意定数である初期位相について, 2つの波の位相差を便宜上 2ϕ だけズレているとする. したがって, ϕ1=0,ϕ2=2ϕ とすると, 各波は

+x : u1(x,t)=Asin(kxωt)x : u2(x,t)=Asin(kx+ωt+2ϕ)

となる.

u1,u2 を重ね合わせた波 u(x,y) を導出し, どのような波であるか記述せよ

これらの波が同時に存在することを考えているため, 重ね合わせの原理から

u(x,t)=u1(x,t)+u2(x,t)=Asin(kxωt)+Asin(kx+ωt+2ϕ)

となる. 和積の公式 : sina+sinb=2sina+b2cosab2 から

u(x,t)=2Asin(kxωt)+(kx+ωt+2ϕ)2cos(kxωt)(kx+ωt+2ϕ)2=2Asin2kx+2ϕ2cos2ωt2ϕ2(1)=2Asin(kx+ϕ)cos(ωt+ϕ)

となる. この結果の式 u(x,t) は, 以前にやった一定波形・一定の速さで進む波を表す関数の形についての必要条件 :

(2)u(x,t)=f(xvt)

のように xvt が変数となっていない (=必要条件を満たしていない). すなわち, 一定波形・一定の速さで進む波ではない.

結果の式 u(x,t) (1) は, ある位置 x で観測した場合, 2Asin(kx+ϕ) という固定係数のついた cos(ωt+ϕ) という単振動となる.

 

u(x,t)が波動方程式を満たすことを実際に計算して示せ

上述の通り, 定在波は進行波についての必要条件を満たしていないので進行波ではないが, 波動方程式 2ut2=v22ux2 は満たす. これは定在波が2つの進行波の線形結合で構成された波であることからわかるし, 実際に代入して確認しても良い :

2ut2=v22ux2 2t22Asin(kx+ϕ)cos(ωt+ϕ)=v22x22Asin(kx+ϕ)cos(ωt+ϕ) 2Aω2sin(kx+ϕ)cos(ωt+ϕ)=2Ak2v2sin(kx+ϕ)cos(ωt+ϕ) ω2=k2v2 v=ωkω2=ω2

 

3次元の波 (平面波, 球面波)

下図のように, ある単位ベクトル n の方向に進む平面波を考える. 原点からの距離を s とすると, この平面波は距離 s によって表現できる. 上述のx 軸方向に進む平面波の場合のx が今回の場合の距離 s に対応する. r は波面上の1点を示す位置ベクトルである.

なお, n=(nx,ny,nz), r=(x,y,z) とする.

3d-plane2

波面上の1点の原点からの距離 sr, n を用いて表わせ

波面上の1点 rn 方向成分が原点からの距離 s

nr=s

に対応する.

ある時刻 t=0 における平面波を s の関数 u(x,y,z,t=0)=f(s)で表す場合, 時刻 tにおける平面波の一般解を導出せよ

ある時刻 t=0 における平面波が s の関数

u(x,y,z,t=0)=f(s)

となり, この面上では u は等しい値を持つため, 一定の波形を保ち, 一定の速さ vn の方向に進む平面波の時刻 t における表現は, 時間経過の分 vt だけシフトさせればよく

平面波の一般解

(3)u(x,y,z,t)=f(svt)=f(nrvt)(n, +)

という形の関数で表される.

n=(nx,ny,nz)r=(x,y,z)

なので, 平面波の一般解は

(4)u(x,y,z,t)=f(nxx+nyy+nzzvt)

と書くこともできる.

 

平面波の一般解が満たす微分方程式を導出せよ

平面波の一般解 (3),(4) :

u(x,y,z,t)=f(nrvt)=f(nxx+nyy+nzzvt)

が満たす微分方程式を求める.

nxx+nyy+nzzvtχ

と置くと, f(nxx+nyy+nzzvt)=f(χ) と書けることから, ut,x,y,z についての1階, 2階の偏微分を考えると,

ut=ft=fχχt      (  )  f(χ)fχ,=dfdχχt=vdfdχ2ut2=tut=t(vdfdχ)=ddχ(vdfdχ)χt=vd2fdχ2(v)=v2d2fdχ22ut2=v2d2fdχ2
ux=fx=dfdχχx=nxdfdχ2ux2=xux=x(nxdfdχ)=ddχ(nxdfdχ)χx=nxd2fdχ2(nx)=nx2d2fdχ22ux2=nx2d2fdχ22uy2=ny2d2fdχ22uy2=ny2d2fdχ22uz2=nz2d2fdχ22uz2=nz2d2fdχ2

となり,

2ux2+2uy2+2uz2=nx2d2fdχ2+ny2d2fdχ2+nz2d2fdχ2=(nx2+ny2+nz2)d2fdχ2 n  n2=nx2+ny2+nz2=1=d2fdχ2

となる. これを, 時刻 t での2階偏微分と比較すると

2ut2=v2d2fdχ2=v2(2ux2+2uy2+2uz2)=v22u      (  =(x,y,z),  Δ=2=2x2+2y2+2z2)

となり

波動方程式 (3次元) :

2ut2=v2(2ux2+2uy2+2uz2)(5)=v22u

が導出できた.

これは, 平面波が従う波動方程式として導出したが, この式には向きを示す変数が含まれていない. 実際, この式は1次元の場合の波動方程式 2ut2=v22ux2y,z 方向に拡張したものに相当するため, 3次元空間でx方向を特別視しない場合に適用できるものである.

 

球面波の波源から十分遠方においては, 球形の波面が近似的に平面波とみなせることを利用し, 球面波の一般解を導出せよ

球面波の波源から十分遠方においては, 球形の波面が近似的に平面とみなせるため, 平面波に相当する. また, 球面波の等方性 (波源からどこかの向きを特別視してない) ため, 上述の3次元版の波動方程式 (5) 2ut2=v22u が適用できる.

3d

u は波源から見る向きによらないため, 波源からの距離 r と時刻 t との2変数関数でまとめて表すことができる.

波源を原点とした直交座標において, 波源 O から位置 (x,y,z) への距離 r

r=x2+y2+z2

である. この式を用いれば, 位置 x,y,z についての1, 2階の偏微分は

ux=urrx=ur121r(2x)=xrur2ux2=xux=x(xrur)=11rur+x121r3(2x)ur+xrx(ur)=1rurx2r3ur+xrr(ur)rx=1rurx2r3ur+xr2ur2121r2x=1rurx2r3ur+x2r22ur22uy2=1rury2r3ur+y2r22ur2      (ux)2uz2=1rurz2r3ur+z2r22ur2      (ux)

となるため,

2ux2+2uy2+2uz2=(1rurx2r3ur+x2r22ur2)+(1rury2r3ur+y2r22ur2)+(1rurz2r3ur+z2r22ur2)=3rurx2+y2+z2r3ur+x2+y2+z2r22ur2=3rur1rur+2ur2=2rur+2ur2=1rur+1rur+2ur2=1rur+1rr(rur)=1rr(u+rur)=1rr(rru+rur)=1rr(r(ru))=1r2r2(ru)

となる.

したがって, これを波動方程式 (5) : 2ut2=v2(2ux2+2uy2+2uz2) に代入すると

2ut2=v21r2r2(ru)2(ru)t2=v22r2(ru)

となる. ここで, u~(r,t)r u(r,t) と置き換えれば,

2u~(r,t)t2=v22u~(r,t)r2

となり, 1次元 (1方向) の波動方程式と全く同じ形になる. したがって, その進行波は

u~(r,t)=f1(rvt)+f2(r+vt)

という線形結合で記述できる. これを u の式に戻せば,

球面波の一般解 :

u(r,t)=1rf1(rvt)+1rf2(r+vt)

となる.

この解において

  • 右辺第1項 1rf1(rvt) は, 波源からあらゆる方向へ速さ v で広がる波

  • 右辺第2項 1rf2(r+vt) は, あらゆる方向から波源へ速さ v で集まる波

を意味する.

また, 1r があることにより, 波の振幅が波源からの距離 r に反比例して減少する (=遠くなると弱くなる) ことを示している.