2024-06-19
Maxwell方程式, 定在波, 平面波, 波動, 球面波
振動波動論 第10回
出席アンケートに関するお願い
出席アンケートはなるべく早めに出してもらえると嬉しいです!! (コメントへの返答を準備する都合で, 次回の前日 (2024-06-25 12:00) までにもらえないと反映が間に合わない可能性が高いためです)
コメント
コメント
電離層における電磁波のところが難しかった。 つまり、情報がない物体が光速より速く動いていたとしても、観測されないので、 その事象は存在するとはいえない。よって、位相速度が光速を超えてても問題ないってことであってますか?
本当に電離層では位相速度が光速を超えているんですか?もしそうなら、そんなことがありえていいんですか
位相速度が光速より速くなっても群速度を考えると間違っていることが分かり面白かった。
相対性理論では, 「いかなる (情報を伝達する) 信号も光速度
を越えることはない」と要請している電離層では位相速度は光速度
より速い電離層では群速度は光速度
より遅い情報を伝達する信号の速度は波束が伝搬する群速度である
となっています. したがって, 「位相速度が光速度より速いことは間違いではない. 位相速度はそもそも信号速度として考えるべきものではないので, 光速度を超えていても問題ではない」 ということです.
コメント
良かった点: 位相速度と群速度の違いについて具体的な例を通じて学べたことが理解を深める助けになりました。また、複雑な概念を段階的に説明してくれたので、理解がしやすかったです。 悪かった点: 説明のスピードが少し早く感じられました。特に数式の展開部分でついていけないことがありました。 要望: 数式の導出過程についてもう少しゆっくり説明してもらえるとありがたいです。また、途中で小テストやクイズ形式の確認問題を取り入れてもらえると、理解度がチェックしやすくなると思います。
より実用的な知識に近づいていてとても面白かった。ブラックホールのファイアウォール問題について情報が消える具体的な状況を想像できず理解できなかった。
資料が見やすいです。ただ内容が難しくなって式の理解が追いつかないです
大学一年次に実験でうなりに関する実験をしたことがあったが、文字式だけでは正直完全に理解するには時間がかかってしまっている。 出来ればでいいのだが1問でもいいので答えが数字になるものがほしい。
1次元の波
定在波
左右遠方に波源があり, 振幅, 波長, 周期が等しく, 互いに逆向きに進む2つの正弦波が同時に存在する場合を考える. 一定の速さ
となる.
したがって, 右向き (
となり, 左向き (
となる.
任意定数である初期位相について, 2つの波の位相差が
となる. これらの波が同時に存在することを考えているため, 重ね合わせの原理から
となる. この結果の式
のように
実際, 結果の式
空間的な波形をプロットしたアニメが下図である.
コマ送りは下記.
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進行的な波ではなく, 一定の場所に止まって振動している. このような波を 定常波 or 定在波 と呼ぶ.
各位置での振動の振幅の大きさは
呼称 | 特徴 | 対応する位置 |
---|---|---|
腹 | 最も大きく振動する (最大振幅) | |
節 | 振動しない (最小振幅) |
上述の通り, 定在波は進行波についての必要条件を満たしていないので進行波ではないが, 波動方程式
定在波の例 (超音波トラップ)
定在波の応用例として, 波動を用いて実物体を動かしたり, 浮かせたりする技術がある. 具体的には
音波で音を可視化する (クントの実験)
光 (電磁波) で微小な氷 (数十μm ~ 数百μm) を浮かせる (光トラップ)
超音波で小さなビーズ (1mm程度) を浮かせる (超音波トラップ, 音響場浮揚)
などがある. 今回は超音波を用いて小さなビーズを浮かせる超音波トラップについてざっくりと見ていく.
まずは, 下図のような, 壁に向かって音源 (スピーカー等) から音波が出ている場合を考える.
音波は空気の疎密波, すなわち空気が膨張・圧縮する圧力変化が伝搬する波であり, 波動方程式
に従う. 音波が壁にぶつかった際に固定端反射し, 下図のような定在波となる.
アニメにしたものが下図である.
この
また, 球面上に複数個の超音波スピーカーを配置したもの (下図) を用意すれば, 床面等との反射でできる定在波により, 小さなビーズ等を浮かす (浮遊, levitation) こともできる.
実際に浮かせてみた映像が下図である.
![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
---|
ビーズ (サイズは1mm程度) 同士の間隔は節と節の間の距離なので,
となり, 上図と近い値であることが確かめられた.
3次元の波
導入
これまでにやったように, 1次元の場合の波動方程式は
である. これは, ある波源から一直線上に沿って進む波に関する方程式であった.
これは, 弦のように, 弦自身の太さに比べて変位の方が大きいため, 波が一直線上で起こるものとして考えられた. しかし, 棒や管内の気体など, 太さが大きくなるにつれ, 各点の変位の大きさに対して太さが無視できなくなってくる. より一般的には, 媒質は3次元空間的な広がりを持っている. ここでは, そのような場合に波をどう表現していくかを考えていく.
平面波
軸方向
実際に, 上図の波を3次元に拡張してみる. 下図のような3次元空間を考え,
一般的な3次元の波の場合には, ある時刻
この場合, 変位・進行していく方向が
となり, これが従う波動方程式も
となり, これまでと同じである.
任意の方向
次に, 下図のように, ある単位ベクトル
波面上の1点
に対応するので, ある時刻
となる. この面上では
平面波の一般解
という形の関数で表される.
と書くこともできる.
これが正弦波だった場合は
となる. また,
と置き,
平面波 (正弦波) の一般解
となる. この
となる.
波動方程式
平面波の一般解
が満たす微分方程式を求める.
と置くと,
となり,
となる.
これを, 時刻
となり
波動方程式 (3次元) :
が導出できた.
これは, 平面波が従う波動方程式として導出したが, この式には向きを示す変数が含まれていない. 実際, この式は1次元の場合の波動方程式
球面波
3次元の波で平面波以外に重要なものとして球面波がある.
これは下図のように 球面波 : 媒質が一様の場合に, 波動現象が1点の波源から等方的に同じ速さで広がっていく波. 波面が球形. というものである.
球面波の波源から十分遠方においては, 球形の波面が近似的に平面とみなせるため, 平面波に相当する. また, 球面波の等方性 (波源からどこかの向きを特別視してない) ため, 上述の3次元版の波動方程式
波
波源を原点とした直交座標において, 波源
である. この式を用いれば, 位置
となるため,
となる.
したがって, これを波動方程式
となる.
ここで,
となり, 1次元 (1方向) の波動方程式と全く同じ形になる. したがって, その進行波は
という線形結合で記述できる. これを
球面波の一般解 :
となる.
この解において
右辺第1項
は, 波源からあらゆる方向へ速さ で広がる波右辺第2項
は, あらゆる方向から波源へ速さ で集まる波
を意味する.
また,
Maxwell方程式のdivやrotの意味
次回以降で光 (電磁波) を取り扱うため, Maxwell方程式について簡単に紹介しておく.
概要
空間の各点に位置だけでなく何らかの性質があると考えたものを「場」と呼ぶ. 場にはスカラー場, ベクトル場などがある.
スカラー場
空間の各点にスカラー的な性質があると考えたもの
例 : 温度の場
ベクトル場
空間の各点にベクトル的な性質があると考えたもの
例 : 流れの場 (風, 水などの流れ) → 電磁場もベクトル場の一種
基本的に, ベクトル場が発生する原因は下記の2つに大別できる
湧き出し, 吸い込みのある場
取り囲んでいる場
電磁場の法則 (Maxwell方程式) の場合は, 電場, 磁場という2つの場の組み合わせなので, それぞれに対して「湧き出し・吸い込み」「取り囲み」を考えるため, 計4つの法則がある.
1-1) 電場は正電荷から湧き出て, 負電荷に吸い込まれる
1-2) 磁場はN磁荷から湧き出て, S磁荷に吸い込まれる → ただし, 現在までに単磁荷 (magnetic monopole) は発見されておらず, N磁荷とS磁荷は常にセットになっている. → したがって, ひとまずは, 単磁場の湧き出し, 吸い込みはないと考えれば良い
2-1) 電場は「磁荷の流れ」or「磁場の時間変動」のまわりに取り囲む
2-2) 磁場は「電荷の流れ」or「電場の時間変動」のまわりに取り囲む
これら4つの法則を数式化したものがMaxwell方程式となる.
Maxwell方程式 (1-1)
1-1) 電場は正電荷から湧き出て, 負電荷に吸い込まれる
下図のように, ある閉曲面
となる.
閉曲面
下図のように, 閉曲面
その微小面素を内から外へ貫く電場の合計は, 斜めの部分は隣り合う微小面素同士でキャンセルするため, 結局, 面に垂直な方向成分のみが効き
となる.
これを
また,
したがって, 式
と表すことができる. これが電場の湧き出し, 吸い込みに関するMaxwell方程式 (積分形) である.
ここまでは, ある程度の大きさのある閉曲面
すると, この微小体積内から湧き出る電場の総量は
これは, 電場が
となる.
これは微小体積から湧き出ていく電場の総量なので, これをレゴブロックのように3次元的に積み上げて (体積積分), 最初に考えた閉曲面
すると, 各微小体積において, 閉曲面
したがって, これは最初に行った閉曲面
となる. すなわち, 体積積分としての合計が表面での面積分と等価となる.
以上から, 電場の湧き出し, 吸い込みに関するMaxwell方程式 (積分形)
となる. これは両辺ともに同じ体積領域に対する体積分であるから, 被積分関数を比較すれば,
となり, 電場の湧き出し, 吸い込みに関するMaxwell方程式 (微分形) が導出できる.
Maxwell方程式 (1-2)
上記のMaxwell方程式 (1-1)の議論がほぼそのまま利用でき, 電場
となる.
ただし, 単磁荷 (magnetic monopole) がないため,
として, 磁場の湧き出し, 吸い込みに関するMaxwell方程式 (微分形) が導出できる.
Maxwell方程式 (2-1), (2-2)
ここは導出が長くなってしまうため, さらにざっくりになってしまうが, 2-1) 電場は (「磁荷の流れ」or)「磁場の時間変動」のまわりに取り囲む 2-2) 磁場は「電荷の流れ」or「電場の時間変動」のまわりに取り囲む については, 下図のように,
磁荷の流れ
, もしくは, 磁場の時間変化 があった場合, それを取り囲むような電場 が発生し,電荷の流れ
, もしくは, 電場の時間変化 があった場合, それを取り囲むような磁場 が発生する
という関係があり,
と表せる.
ただし, 単磁荷が存在しないことから,
が導出できる.
まとめ
以上より, Maxwell方程式は下記の4式にまとめられる.
1-1) 電場は正電荷から湧き出て, 負電荷に吸い込まれる
1-2) 磁場はN磁荷から湧き出て, S磁荷に吸い込まれる
2-1) 電場は「磁荷の流れ」or「磁場の時間変動」のまわりに取り囲む
2-2) 磁場は「電荷の流れ」or「電場の時間変動」のまわりに取り囲む