出席アンケートに関するお願い

出席アンケートはなるべく早めに出してもらえると嬉しいです!! (コメントへの返答を準備する都合で, 次回の前日 (2024-06-25 12:00) までにもらえないと反映が間に合わない可能性が高いためです)

 

コメント

コメント

電離層における電磁波のところが難しかった。 つまり、情報がない物体が光速より速く動いていたとしても、観測されないので、 その事象は存在するとはいえない。よって、位相速度が光速を超えてても問題ないってことであってますか?

本当に電離層では位相速度が光速を超えているんですか?もしそうなら、そんなことがありえていいんですか

位相速度が光速より速くなっても群速度を考えると間違っていることが分かり面白かった。

  • 相対性理論では, 「いかなる (情報を伝達する) 信号も光速度cを越えることはない」と要請している

  • 電離層では位相速度は光速度c​より速い

  • 電離層では群速度は光速度cより遅い

  • 情報を伝達する信号の速度は波束が伝搬する群速度である

となっています. したがって, 「位相速度が光速度より速いことは間違いではない. 位相速度はそもそも信号速度として考えるべきものではないので, 光速度を超えていても問題ではない」 ということです.

 

 

コメント

良かった点: 位相速度と群速度の違いについて具体的な例を通じて学べたことが理解を深める助けになりました。また、複雑な概念を段階的に説明してくれたので、理解がしやすかったです。 悪かった点: 説明のスピードが少し早く感じられました。特に数式の展開部分でついていけないことがありました。 要望: 数式の導出過程についてもう少しゆっくり説明してもらえるとありがたいです。また、途中で小テストやクイズ形式の確認問題を取り入れてもらえると、理解度がチェックしやすくなると思います。

より実用的な知識に近づいていてとても面白かった。ブラックホールのファイアウォール問題について情報が消える具体的な状況を想像できず理解できなかった。

資料が見やすいです。ただ内容が難しくなって式の理解が追いつかないです

大学一年次に実験でうなりに関する実験をしたことがあったが、文字式だけでは正直完全に理解するには時間がかかってしまっている。 出来ればでいいのだが1問でもいいので答えが数字になるものがほしい。

1次元の波

定在波

左右遠方に波源があり, 振幅, 波長, 周期が等しく, 互いに逆向きに進む2つの正弦波が同時に存在する場合を考える. 一定の速さ v±x 方向に進む波は以前やったように

v+x:  u1(x,t)=Asin(k(xvt)ϕ1)    (A,k,v. ϕ1)vx:  u2(x,t)=Asin(k(x+vt)ϕ2)    (A,k,v. ϕ2)

となる. したがって, 右向き (+x方向) に進む進行波は

u1(x,t)=Asin(k(xvt)ϕ1)=Asin(kxkvtϕ1) (kv=2πT=ω)=Asin(kxωtϕ1)

となり, 左向き (x方向) に進む進行波も同様に

u2(x,t)=Asin(k(x+vt)ϕ2)=Asin(kx+kvtϕ2) (kv=2πT=ω)=Asin(kx+ωtϕ2)

となる. 任意定数である初期位相について, 2つの波の位相差が 2ϕ だけズレているとする (係数2をつけたのは後の計算のため). すなわち ϕ1=0,ϕ2=2ϕ とすると, 各波は

+x : u1(x,t)=Asin(kxωt)x : u2(x,t)=Asin(kx+ωt+2ϕ)

となる. これらの波が同時に存在することを考えているため, 重ね合わせの原理から

u(x,t)=u1(x,t)+u2(x,t)=Asin(kxωt)+Asin(kx+ωt+2ϕ):sina+sinb=2sina+b2cosab2=2Asin(kxωt)+(kx+ωt+2ϕ)2cos(kxωt)(kx+ωt+2ϕ)2=2Asin2kx+2ϕ2cos2ωt2ϕ2(1)=2Asin(kx+ϕ)cos(ωt+ϕ)

となる. この結果の式 u(x,t) は, 以前にやった一定波形・一定の速さで進む波を表す関数の形についての必要条件 :

(2)u(x,t)=f(xvt)

のように xvt が変数となっていない (= 一定波形・一定速さの進行波の必要条件を満たしていない). したがって, 一定波形・一定の速さで進む波ではないことがわかる.

実際, 結果の式 u(x,t) (1) は, ある位置 x で観測した場合, 2Asin(kx+ϕ) という固定係数のついた cos(ωt+ϕ) という単振動となる.

空間的な波形をプロットしたアニメが下図である.

 

コマ送りは下記.

t1t2t3t4
standing-wave_1standing-wave_2standing-wave_3standing-wave_4

進行的な波ではなく, 一定の場所に止まって振動している. このような波を 定常波 or 定在波 と呼ぶ.

各位置での振動の振幅の大きさは sin(kx+ϕ) に依存しており, 特徴的な部分については下記のように腹, 節と呼ばれる :

呼称特徴対応する位置 x
最も大きく振動する (最大振幅)sin(kx+ϕ)=±1 となる位置
振動しない (最小振幅)sin(kx+ϕ)=0 となる位置

上述の通り, 定在波は進行波についての必要条件を満たしていないので進行波ではないが, 波動方程式 2ut2=v22ux2 は満たす. これは定在波が2つの進行波の線形結合で構成された波であることからわかるし, 実際に代入して確認しても良い :

2ut2=v22ux2 2t22Asin(kx+ϕ)cos(ωt+ϕ)=v22x22Asin(kx+ϕ)cos(ωt+ϕ) 2Aω2sin(kx+ϕ)cos(ωt+ϕ)=2Ak2v2sin(kx+ϕ)cos(ωt+ϕ) ω2=k2v2 v=ωkω2=ω2

 

定在波の例 (超音波トラップ)

定在波の応用例として, 波動を用いて実物体を動かしたり, 浮かせたりする技術がある. 具体的には

  • 音波で音を可視化する (クントの実験)

kunt

  • 光 (電磁波) で微小な氷 (数十μm ~ 数百μm) を浮かせる (光トラップ)

  • 超音波で小さなビーズ (1mm程度) を浮かせる (超音波トラップ, 音響場浮揚)

などがある. 今回は超音波を用いて小さなビーズを浮かせる超音波トラップについてざっくりと見ていく.

まずは, 下図のような, 壁に向かって音源 (スピーカー等) から音波が出ている場合を考える.

standing-wave-ex1

音波は空気の疎密波, すなわち空気が膨張・圧縮する圧力変化が伝搬する波であり, 波動方程式

2ut2=Kρ2ux2    (  K:, ρ:, v=Kρ)

に従う. 音波が壁にぶつかった際に固定端反射し, 下図のような定在波となる.

standing-wave-ex2

アニメにしたものが下図である.

 

この x 軸上にビーズ等の軽い物体を置けば, 音波の圧力変化により, ビーズは腹の位置から節の位置へ揺り動かされ, その節の位置で固定される. これをトラップと呼ぶ. この原理で音波を可視化したものが1年次の基礎物理学実験で行ったクントの実験である.

また, 球面上に複数個の超音波スピーカーを配置したもの (下図) を用意すれば, 床面等との反射でできる定在波により, 小さなビーズ等を浮かす (浮遊, levitation) こともできる.

equipment

 

実際に浮かせてみた映像が下図である.

trap-uppertrap-side-aomuketrap-sidetrap-side

ビーズ (サイズは1mm程度) 同士の間隔は節と節の間の距離なので, λ/2 である. ・人間の可聴域 : 振動数 f が16 ~ 20000 [Hz] 程度 ・超音波 : 振動数 f が 20000 [Hz] 以上の音波. 本実験機材では約40000 [Hz] に調整済み. であり, 音の速度 v (=fλ) は約340 [m/s] なので,

()=λ2=12vf=12340 [m/s]40000 [1/s]=0.00425 [m]=4.25 [mm]

となり, 上図と近い値であることが確かめられた.

 

 

3次元の波

導入

これまでにやったように, 1次元の場合の波動方程式は

2ut2=v22ux2

である. これは, ある波源から一直線上に沿って進む波に関する方程式であった.

1d

これは, 弦のように, 弦自身の太さに比べて変位の方が大きいため, 波が一直線上で起こるものとして考えられた. しかし, 棒や管内の気体など, 太さが大きくなるにつれ, 各点の変位の大きさに対して太さが無視できなくなってくる. より一般的には, 媒質は3次元空間的な広がりを持っている. ここでは, そのような場合に波をどう表現していくかを考えていく.

 

平面波

x 軸方向

実際に, 上図の波を3次元に拡張してみる. 下図のような3次元空間を考え, x軸に垂直な面ではいたる所で位相が等しいとする.

3d-plane1

一般的な3次元の波の場合には, ある時刻 t における位相一定の点を連ねた面は曲面となり, そのような面を波面と呼ぶ. しかし, 今回の場合はその波面は x 軸に垂直な平面になっているため, このような波は平面波と呼ばれる.

この場合, 変位・進行していく方向が x 軸のみで, y,z 軸方向には変位しないため, 波形は

u(x,t)=f(xvt)

となり, これが従う波動方程式も

2ut2=v22ux2

となり, これまでと同じである.

 

任意の方向

次に, 下図のように, ある単位ベクトル n の方向に進む平面波を考える. 原点からの距離を s とすると, この平面波は距離 s によって表現できる. 上述の x 軸方向に進む平面波の場合の x が今回の場合の距離 s に対応する. r は波面上の1点を示す位置ベクトルである.

3d-plane2

波面上の1点 rn 方向成分が原点からの距離 s

nr=s

に対応するので, ある時刻 t=0 における平面波は s の関数で表すことができ,

u(x,y,z,t=0)=f(s)

となる. この面上では u は等しい値を持つため, 一定の波形を保ち, 一定の速さ vn の方向に進む平面波の時刻 t における表現は, 時間経過の分 vt だけシフトさせればよく

平面波の一般解

(3)u(x,y,z,t)=f(svt)=f(nrvt)(n, +)

という形の関数で表される.

n=(nx,ny,nz), r=(x,y,z) とすれば, 平面波の一般解は

(4)u(x,y,z,t)=f(nxx+nyy+nzzvt)

と書くこともできる.


これが正弦波だった場合は

u(x,y,z,t)=Asin(k(nxx+nyy+nzzvt)+ϕ)      (  A,ϕ)

となる. また,

knxkx,    knyky,    knzkz,    kvω

と置き, kx, ky, kz を成分とするベクトル k を考えると,

平面波 (正弦波) の一般解

u(x,y,z,t)=Asin(krωt+ϕ)

となる. この k波数ベクトルと呼ばれ, 波の進む方向を示す. 平面波の波長を λ とすれば, 波数ベクトルの大きさ k

k=2πλ

となる. ω はこれまで同様, 角振動数を意味する.

 

波動方程式

平面波の一般解 (3),(4) :

u(x,y,z,t)=f(nrvt)=f(nxx+nyy+nzzvt)

が満たす微分方程式を求める.

nxx+nyy+nzzvtχ

と置くと, f(nxx+nyy+nzzvt)=f(χ) と書けることから, ut,x,y,z についての1階, 2階の偏微分を考えると,

ut=ft=fχχt      (  )  f(χ)fχ,=dfdχχt=vdfdχ2ut2=tut=t(vdfdχ)=ddχ(vdfdχ)χt=vd2fdχ2(v)=v2d2fdχ22ut2=v2d2fdχ2
ux=fx=dfdχχx=nxdfdχ2ux2=xux=x(nxdfdχ)=ddχ(nxdfdχ)χx=nxd2fdχ2(nx)=nx2d2fdχ22ux2=nx2d2fdχ22uy2=ny2d2fdχ22uy2=ny2d2fdχ22uz2=nz2d2fdχ22uz2=nz2d2fdχ2

となり,

2ux2+2uy2+2uz2=nx2d2fdχ2+ny2d2fdχ2+nz2d2fdχ2=(nx2+ny2+nz2)d2fdχ2 n  n2=nx2+ny2+nz2=1=d2fdχ2

となる. これを, 時刻 t での2階偏微分と比較すると

2ut2=v2d2fdχ2=v2(2ux2+2uy2+2uz2)=v22u      (  =(x,y,z),  Δ=2=2x2+2y2+2z2)

となり

波動方程式 (3次元) :

2ut2=v2(2ux2+2uy2+2uz2)(5)=v22u

が導出できた.

これは, 平面波が従う波動方程式として導出したが, この式には向きを示す変数が含まれていない. 実際, この式は1次元の場合の波動方程式 2ut2=v22ux2y,z 方向に拡張したものに相当するため, 3次元空間でx方向を特別視しない場合に適用できるものである.

 

球面波

3次元の波で平面波以外に重要なものとして球面波がある.

これは下図のように 球面波 : 媒質が一様の場合に, 波動現象が1点の波源から等方的に同じ速さで広がっていく波. 波面が球形. というものである.

球面波の波源から十分遠方においては, 球形の波面が近似的に平面とみなせるため, 平面波に相当する. また, 球面波の等方性 (波源からどこかの向きを特別視してない) ため, 上述の3次元版の波動方程式 (5) 2ut2=v22u が適用できる.

3d

u は波源から見る向きによらないため, 波源からの距離 r と時刻 t との2変数関数でまとめて表すことができる.

波源を原点とした直交座標において, 波源 O から位置 (x,y,z) への距離 r

r=x2+y2+z2

である. この式を用いれば, 位置 x,y,z についての1, 2階の偏微分は

ux=urrx=ur121r(2x)=xrur2ux2=xux=x(xrur)=11rur+x121r3(2x)ur+xrx(ur)=1rurx2r3ur+xrr(ur)rx=1rurx2r3ur+xr2ur2121r2x=1rurx2r3ur+x2r22ur22uy2=1rury2r3ur+y2r22ur2      (ux)2uz2=1rurz2r3ur+z2r22ur2      (ux)

となるため,

2ux2+2uy2+2uz2=(1rurx2r3ur+x2r22ur2)+(1rury2r3ur+y2r22ur2)+(1rurz2r3ur+z2r22ur2)=3rurx2+y2+z2r3ur+x2+y2+z2r22ur2=3rur1rur+2ur2=2rur+2ur2=1rur+1rur+2ur2=1rur+1rr(rur)=1rr(u+rur)=1rr(rru+rur)=1rr(r(ru))=1r2r2(ru)

となる.

したがって, これを波動方程式 (5) : 2ut2=v2(2ux2+2uy2+2uz2) に代入すると

2ut2=v21r2r2(ru)2(ru)t2=v22r2(ru)

となる. ここで, u~(r,t)r u(r,t) と置き換えれば,

2u~(r,t)t2=v22u~(r,t)r2

となり, 1次元 (1方向) の波動方程式と全く同じ形になる. したがって, その進行波は

u~(r,t)=f1(rvt)+f2(r+vt)

という線形結合で記述できる. これを u の式に戻せば,

球面波の一般解 :

u(r,t)=1rf1(rvt)+1rf2(r+vt)

となる.

この解において

  • 右辺第1項 1rf1(rvt) は, 波源からあらゆる方向へ速さ v で広がる波

  • 右辺第2項 1rf2(r+vt) は, あらゆる方向から波源へ速さ v で集まる波

を意味する.

また, 1r があることにより, 波の振幅が波源からの距離 r に反比例して減少する (= 遠くなると弱くなる) ことを示している.

 

Maxwell方程式のdivやrotの意味

次回以降で光 (電磁波) を取り扱うため, Maxwell方程式について簡単に紹介しておく.

概要

空間の各点に位置だけでなく何らかの性質があると考えたものを「場」と呼ぶ. 場にはスカラー場, ベクトル場などがある.

  • スカラー場

    • 空間の各点にスカラー的な性質があると考えたもの

    • 例 : 温度の場

  • ベクトル場

    • 空間の各点にベクトル的な性質があると考えたもの

    • 例 : 流れの場 (風, 水などの流れ) → 電磁場もベクトル場の一種

 

基本的に, ベクトル場が発生する原因は下記の2つに大別できる

  1. 湧き出し, 吸い込みのある場

vector1

  1. 取り囲んでいる場

vector2

 

電磁場の法則 (Maxwell方程式) の場合は, 電場, 磁場という2つの場の組み合わせなので, それぞれに対して「湧き出し・吸い込み」「取り囲み」を考えるため, 計4つの法則がある.

1-1) 電場は正電荷から湧き出て, 負電荷に吸い込まれる

1-2) 磁場はN磁荷から湧き出て, S磁荷に吸い込まれる → ただし, 現在までに単磁荷 (magnetic monopole) は発見されておらず, N磁荷とS磁荷は常にセットになっている. → したがって, ひとまずは, 単磁場の湧き出し, 吸い込みはないと考えれば良い

2-1) 電場は「磁荷の流れ」or「磁場の時間変動」のまわりに取り囲む

2-2) 磁場は「電荷の流れ」or「電場の時間変動」のまわりに取り囲む

 

これら4つの法則を数式化したものがMaxwell方程式となる.

 

Maxwell方程式 (1-1)

1-1) 電場は正電荷から湧き出て, 負電荷に吸い込まれる

下図のように, ある閉曲面 S 上にある電荷から電場が湧き出ていると考えた場合,

(6)(S)(S)

となる.

E-S

閉曲面 S を通過する (= 閉曲面S内に入っていって, 出ていく) ような電場は差し引きゼロであり「湧き出し」とは言えないのでカウントしなくて良い.

下図のように, 閉曲面 S 内の微小面素 dS を考えたとき,

E-ds

その微小面素を内から外へ貫く電場の合計は, 斜めの部分は隣り合う微小面素同士でキャンセルするため, 結局, 面に垂直な方向成分のみが効き

|E|cosθ  dS=En dS

となる. これをS 全体に渡って足し合わせ (積分) れば, 閉曲面 S の表面から湧き出ていく電場の総量が表せる.

また, S内の全電気量はS内の電荷の合計 Q に等しい.

したがって, 式 (6)

En dSQ  (7)En dS=1ϵ0Q

と表すことができる. これが電場の湧き出し, 吸い込みに関するMaxwell方程式 (積分形) である.

 

ここまでは, ある程度の大きさのある閉曲面 S を考えたが, 次はそのサイズを小さくして, 下図のように微小体積 dV として考える:

E-ds2

すると, この微小体積内から湧き出る電場の総量は x+dx でのdS を貫く電場の合計とx でのdS を貫く電場の合計の差として表現できる:

Ex(x+dx,y,z) dSEx(x,y,z) dS=(Ex(x+dx,y,z)Ex(x,y,z))dS=Ex(x+dx,y,z)Ex(x,y,z)dxdxdS=Ex(x+dx,y,z)Ex(x,y,z)dxdV=ExxdV

これは, 電場がx 方向のみに向いた場合の表現なので, 任意の方向への表現に拡張すると

(Exx+Eyy+Ezz)dV=EdV

となる. これは微小体積から湧き出ていく電場の総量なので, これをレゴブロックのように3次元的に積み上げて (体積積分), 最初に考えた閉曲面 S を形作るとする:

EdV

すると, 各微小体積において, 閉曲面 S の内部で隣り合う微小体積同士での湧き出し, 吸い込みは互いにキャンセルし, 結局, 閉曲面 S の表面における湧き出しのみが残る:

E-ds3

したがって, これは最初に行った閉曲面 S の表面からの湧き出しの総量 (式 (7) の左辺) に等しく,

EdV=En dS

となる. すなわち, 体積積分としての合計が表面での面積分と等価となる.

以上から, 電場の湧き出し, 吸い込みに関するMaxwell方程式 (積分形) (7) より

EdV=En dS=1ϵ0Q=1ϵ0ρ dV       (  ρ)

となる. これは両辺ともに同じ体積領域に対する体積分であるから, 被積分関数を比較すれば,

E=ρϵ0 ordivE=ρϵ0

となり, 電場の湧き出し, 吸い込みに関するMaxwell方程式 (微分形) が導出できる.

 

Maxwell方程式 (1-2)

上記のMaxwell方程式 (1-1)の議論がほぼそのまま利用でき, 電場E を磁場Bに置き換え, 電荷密度 ρ を磁荷密度 ρm , ϵ0ϵm,0 と置き換えれば良く,

divB=ρmϵm,0

となる. ただし, 単磁荷 (magnetic monopole) がないため, ρm は0となり,

divB=0

として, 磁場の湧き出し, 吸い込みに関するMaxwell方程式 (微分形) が導出できる.

 

Maxwell方程式 (2-1), (2-2)

ここは導出が長くなってしまうため, さらにざっくりになってしまうが, 2-1) 電場は (「磁荷の流れ」or)「磁場の時間変動」のまわりに取り囲む 2-2) 磁場は「電荷の流れ」or「電場の時間変動」のまわりに取り囲む については, 下図のように,

rot

  • 磁荷の流れ jm , もしくは, 磁場の時間変化 Bt があった場合, それを取り囲むような電場 rotE が発生し,

  • 電荷の流れ j , もしくは, 電場の時間変化 Et があった場合, それを取り囲むような磁場 rotB が発生する

という関係があり,

rotE+BtjmrotBϵ0μ0Et=μ0j

と表せる. ただし, 単磁荷が存在しないことから, jm=0 となり, 電場, 磁場についての取り囲みと時間変化に関するMaxwell方程式 (微分形) :

rotE=BtrotB=ϵ0μ0Et+μ0j

が導出できる.

 

まとめ

以上より, Maxwell方程式は下記の4式にまとめられる.

1-1) 電場は正電荷から湧き出て, 負電荷に吸い込まれる

divE=ρϵ0

1-2) 磁場はN磁荷から湧き出て, S磁荷に吸い込まれる

divB=0

2-1) 電場は「磁荷の流れ」or「磁場の時間変動」のまわりに取り囲む

rotE=Bt

2-2) 磁場は「電荷の流れ」or「電場の時間変動」のまわりに取り囲む

rotB=μ0j+ϵ0μ0Et