振動波動論 第9回
出席アンケートに関するお願い
出席アンケートはなるべく早めに出してもらえると嬉しいです!! (コメントへの返答を準備する都合で, 次回の前日 (2024-06-18 12:00) までにもらえないと反映が間に合わない可能性が高いためです)
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前回の課題についての質問なのですが、基準振動の仮定を立てるところでの自由度Nがうまくイメージできなくて理解が難しいです。
前回 (第7回) の課題の
基準振動の仮定
についての質問ですね.
第6回での内容を振り返ると, 自由度2の基準振動は
モード1 | モード2 |
---|---|
![]() | ![]() |
でした.
ここから, N個の場合の基準振動は, 両端が固定された状態の正弦波形になると予想します.
実際, 各おもりの釣り合いの位置を横軸, そのおもりの変位
この時, 各おもりの変位
のように単振動となると考えました.
また, 各おもりの振幅
となると考えられ, 実際に
となりました.
実際に
モード番号 | 図 |
---|---|
1 | ![]() |
2 | ![]() |
3 | ![]() |
4 | ![]() |
5 | ![]() |
このような背景から, 第7回の授業/課題の中の「(弦の) 基準振動の仮定」の論拠として,
と書いていました.
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u(x,t)=u(s+,s-)のところがいまいちわからなかった
という変数変換により, 元々
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線形結合の式を導くために積分をする理由がよくわからなかった。
前回の「関係式 → 一定波形・一定の速さで進む波を表す関数」では,
ここから関数
実際,
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偏微分がよくわからなかった。講義動画今回は上がりませんか? (2024/06/09 01:20:01)
偏微分については上記の質問の意味ですかね...? であれば上記の通りです.
講義動画をアップするのが遅れて, 06/09 12:25になりました. 失礼しました.
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頭で式の変換を理解する前に次の式に進んでしまうのでもう少し式変形の時ゆっくりのスピードにしてほしい
計算量が多くて大変きびしい
波動
位相速度と分散
前回やったように, 一定速さ
名称 | 式 | 意味 |
---|---|---|
波数 | ||
波長 | 1周期の空間的な長さ | |
周期 | 1周期の時間的な長さ | |
振動数 | 単位時間あたりの波の数 | |
角振動数 |
である. したがって, 角振動数と波数の関係式で見てみると
となる. これがこの系の分散関係 :
であり, 比例関係にある.
波の一定速さ
である.
これは, 両端が固定された連続体 (弦) の運動における
番目の基準振動の波数 と角振動数 との関係 と同形である. したがって, 分散関係は境界条件の有無に依らないことがわかる.
ところで, 位相速度は, 前回やったように, 位相一定の点の進む速度である.
そこで, ある進行波
時間差
となる.
今, 進行波を
となる. この
位相速度
となる.
これは, 分散関係から導かれた一定速さの式
となり, 位相速度が波の進行する一定速さと一致し, 一定であることがわかる.
すなわち, 位相速度は波数
このように, 位相速度が波数
情報と波
情報
私達は「データ」という単語を気軽に使っているが, そもそもデータとはdata (datumの複数形) と書き, 「実験や調査などを実施した結果に得られた文字や数値のまとまり」 を意味する.
そして, 人間や組織がそのデータに触れることで, 知識等の価値が増えた場合, その価値の増分を情報 (information)と呼ぶ.
たとえば, 何かしらの文章を読んだ際に, その内容が知識等の価値が増えるものであったなら, その「新しい知識という価値」が本来の意味での「情報」となる.
そのような情報をやり取りするためには, 前提として, データの受け手と送り手との間に一定のルールが決まっている必要がある. なぜなら, 両者がルールを理解していない場合, 送り手が何を送ろうとも受け手は何も理解できないためである.
実際のデータの伝達方法として, 代表的なものが波を用いたデータ通信である.
データの伝達方法には大まかに2種類ある:
アナログ信号
連続に変化する波形をそのまま他方に送信し, 波形のパターンを利用して表現する. 従来型の固定電話やラジオ波のように, 波形の振幅の強弱でデータを表現する.
デジタル信号
波を流す / 止めるによって 1 / 0 という情報単位を表現し, その組み合わせで文字などを表現する. モールス信号のようにライトを点灯するか / 消灯するかを利用する.
したがって, データの伝達という観点から情報の有無を考えると,
情報がある
何かしらの量が, 特定の取り決めに従って変化する状態
情報がない
何かしらの量が, 全く変化しない or 無秩序に変化する状態
例
ホワイトノイズ (完全にランダムな変化)
ブラックホールのファイアウォール問題 (情報がブラックホールに入ると, 熱 [情報なし] として放射される)
といった違いがある.
例
我々が日常的に利用しているコンピュータを例に挙げる. このようなコンピュータは, 全てのデータを1/0の羅列で表現している.
文字の場合, 世界的に使われている例で言えば, Unicodeというルールによって「コードポイントと呼ばれる数字」と「文字」とを一意に対応づけている. さらに, そのコードポイントをUTF-8という符号化形式によって1/0の羅列に変換している.
1/0の羅列 (2進数表記) | コードポイント (2進数表記) | コードポイント (10進数表記) | 文字 |
---|---|---|---|
00110011 | 0110011 | 51 | 3 |
01000001 | 1000001 | 65 | A |
11001111 10000000 | 01111000000 | 960 | π |
11100011 10000001 10000010 | 0011000001000010 | 12354 | あ |
画像や音, 動画などもコンピュータ内部では, このような1/0の羅列で処理している.
したがって, インターネット等を介して, これらの情報を送受信する際は, 実際には, この「1/0」の羅列を「波を流す/止める」によって送受信している.
なお, デジタルデータにおける 1/0 という情報の基本単位をbitと呼び, 1秒間に送ることができるbit数をbps (bit per second)という.
また, 現行のコンピュータの世界においては, 人間が扱いやすいように, 8 bitsで1つのまとまりとした情報単位 (byte) として扱っている. したがって1秒間に送ることができるbyte数をbpsと区別してBps (Byte per second) と書くこともある.
bpsの値が大きいほど, 短時間に多くの情報を相手に送ることができる (動画の高画質など). 一方, 通話などの際のラグ (時間差) は, 各信号が送信者から受信者までにどれだけかかるかによるため, bpsの大小とは異なる点に注意.
正弦波を利用して情報を送る
1つの正弦波を送り続けるだけでは値の変化が定常的なため, せいぜい波数や角振動数などの情報しか伝達できない. アナログ信号として声の波形などの複雑な情報を表現するには複雑な波形が必要となる.
そこで, 複数の正弦波を重ねることによって, より複雑な情報を表現することができる.
複数の正弦波を重ねるなどして, 波の振幅を時間的に変動させることを 振幅変調 (AM, amplitude modulation) という. 具体例としてはうなり, AMラジオなどがある. うなり現象自体は以前にもやったことがあるが, 進行波についてのうなりを例に, 振幅変調と情報の例を見ていく.
群速度
波長・周期の異なる2つの進行波 (正弦波) が重なり合う場合を考える.
それぞれの進行波 (正弦波) を波数
となる. このとき, 2つの波を重ね合わせた波は, 重ね合わせの原理より,
となる.
ここで簡単のために, 特に,
初期位相がともに0 :
振幅も共通で
:波数, 角振動数ともに近い値 :
という場合を考える. すると上式は,
と書くことができる.
今回, 波数と角振動数がそれぞれほぼ等しい場合を考えているため, それらの差分をそれぞれ
と書くことにする. また, 両者の平均を
となる. すると, 重ね合わせた波
となる.
波数
時刻 | 位置 |
---|---|
![]() | ![]() |
上図からわかるように,
波束の典型的な例は, 以前に波の種類として紹介した, 波のかたまりが1つだけのタイプだが, 今回のようなうなりも波束の1種として呼ばれる.
さらに, これが実際に時間経過で進行していく様子をアニメにしたものが下図である.
(a) うなりとなっている緩やかな概形の波束が右 (
(a) の速度を群速度, (b) の速度を位相速度と呼ぶのだが, それらを実際に計算してみよう.
今回の場合は, 振幅の変化が波数
となることから,
となる.
一般には
群速度 (group velocity) :
と記述する. ここで,
また, 細かく振動する部分
となっているため, 位相部分の進む速度
となり, これがこの系の平均的な位相速度となる.
一般には, 単一の進行波の場合と同じで,
位相速度 (phase velocity) :
と記述される.
まとめると
位相速度 | 群速度 |
---|---|
となる.
上図のアニメは,
という設定で描いたものなので,
となる.
のように
となり, 位相速度が約半分に遅くなる.
のように
となり, 群速度が2倍に速くなる.
実際にアニメで見てみたのが下記である.
備考 | アニメ | ||||
---|---|---|---|---|---|
2 | 2.1 | 1000 | 1010 | 基準 | ![]() |
2 | 2.1 | 500 | 510 | 位相速度 (青点群) が 約半分に遅くなる | ![]() |
2 | 2.1 | 1000 | 1020 | 群速度 (緑点群) が 2倍に速くなる | ![]() |
群速度と位相速度の例
一定速さ で 方向に進む場合の進行波 (正弦波)
波動方程式
となる. したがって,
となるため,
となり, 位相速度と群速度が一致する.
真空中の電磁波 (光) の場合は
となり, 光速に一致する.
電離層における電磁波 (光)
電離層における電磁波 (光) の分散関係は
となる. したがって, 位相速度は
となり, 光速より速くなってしまう.
物理学においてこの世界で最も速い速度は光速なのだが, これはそれを超えてしまっている. すると光速を超えた情報のやり取りができてしまい, 世紀の大発見となるのだが, 本当にそうだろうか?
実は, 観測者が相対的に世界を体感していくことを基礎として構成された相対性理論の世界では, 情報を行き来させることで世界の事象を観測していく.
情報は, ① 複数の正弦波を重ね合わせた複雑な波形自体が他方に届くこと (アナログ信号) や ② 波が届くか否か (デジタル信号) で伝達する.
②のデジタル信号は, 光自体が届くか否かという話なので, 光速度を超えることはない. 今回, 問題としているのは, ①のアナログ信号の場合である.
アナログ信号として情報を伝えるためには, 複雑な波形自体を他方に伝達する必要がある. したがって, 情報を伝達する際に重要な速度は位相速度ではなく, 群速度となる.
そこで, この系の群速度を計算してみると,
となり, 光速度より遅いことがわかる. したがって, 実際に情報が伝わる速度 (群速度) は問題なかったことがわかる.
位相速度と群速度の関係性は
となる.
一定の波形・一定の速さで進む進行波同士の重ね合わせ
一定の波形・一定の速さで進む進行波同士が互いに逆方向から進み, ぶつかって重なり合う場合を考える.
一定速さ
として記述できる. 今回はこの両者の波形がぶつかり, 重なり合うときの内容をみていく.
これらの波は (前回確認したように) 波動方程式
となる.
波形は
![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
両波が同じ位置にいる際は, 両者を足し合わせた揺れ幅となるが, その後は互いに別々の波に分かれたため, 互いに透過したことが見て取れる.
反射
波が何かしらの境界に達すると反射する. 十分長いひもなどを考えた時,
固定端 : 壁等に固定されている端点
自由端 : 固定されておらず自由に動ける端点
という2種類がある. 1つずつ見ていく.
固定端
具体的には, 下図のように, 一定速さ
この場合,
遠方から来て 方向に進む波 (入射波, incident wave) 自体の波形:壁にぶつかって反射し
方向に進む波 (反射波, reflected wave) の波形:
の両方を考慮する必要がある. したがって, 両者が混ざった波は, これらを重ね合わせた
となる. ここで, ひもは
という関係式が得られる. これは任意の時刻で成り立つ.
波形
この
端点
でひもの高さを変えないように下向きの力が加わり続けるため, 反射波は下に振れた波となる
したがって, 壁に向かう元々の波との重ね合わせは
となる.
これをプロットしたアニメが下図である.
![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
自由端
次に, 下図のように, 一定速さ
この場合,
遠方から来て 方向に進む波 (入射波) 自体の波形は自由端反射し
方向に進む波 (反射波) の波形
の両方を考慮する必要がある. したがって, 両者が混ざった波は, これらを重ね合わせた
となる.
自由端の境界条件
自由端とは弦の端点が拘束されず, 自由に動けることを指す. すなわち, 弦が端に固定されず, 摩擦のない輪等で棒に括られているような状況に相当する.
弦の微小線素についての力は以前やったように下図の通り:
この内, 右端が摩擦ゼロの輪に括られているとしよう.
棒と輪の間に摩擦がないため, 弦の右端をどんな方向に引っ張っても引っかかることがない. すなわち, 摩擦がないことにより, 弦の右端の棒と輪の間には上下方向の力がかかっていない.
摩擦のない斜めの台の上に箱を置いた際, 箱には台からの垂直抗力のみ働き, 斜め方向の摩擦力は働いていないことと同様である.
したがって, 右端にかかる張力
弦の微小線素の右端の傾きは, 上図のように
と表せる.
上記の議論で, 弦の右端が水平だということがわかったため, 右端の傾きは
となる.
この式
自由端反射波との合成
以上より, 自由端での境界条件は傾きが常に0なので,
となるため,
という関係式が得られる.
波形
となる. この
となる. また,
という入射波のみであり, 反射項
となる.
これをプロットしたアニメが下図である.
![]() | ![]() | ![]() |