出席アンケートに関するお願い

出席アンケートはなるべく早めに出してもらえると嬉しいです!! (コメントへの返答を準備する都合で, 次回の前日 (2024-06-18 12:00) までにもらえないと反映が間に合わない可能性が高いためです)

 

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前回の課題についての質問なのですが、基準振動の仮定を立てるところでの自由度Nがうまくイメージできなくて理解が難しいです。

前回 (第7回) の課題の

基準振動の仮定

N:xn(j)=An(j)cos(ωjt+ϕj):u(j)(x,t)=A(j)(x)cos(ωjt+ϕj)

についての質問ですね.

第6回での内容を振り返ると, 自由度2の基準振動は

1:  x1=Acos(ω1t+ϕ),x2=Acos(ω1t+ϕ)(A,ϕ:)2:  x1=Acos(ω2t+ϕ),x2=Acos(ω2t+ϕ)(A,ϕ:)
モード1モード2
animation_2-osc_lateral-representation_mode1.movanimation_2-osc_lateral-representation_mode2.mov

でした. ここから, N個の場合の基準振動は, 両端が固定された状態の正弦波形になると予想します. 実際, 各おもりの釣り合いの位置を横軸, そのおもりの変位 xn を縦軸にプロットする図を考えたとき, j 番目の基準振動の概形も下図のようなsin形になる, という予想です.

spring-N-An

この時, 各おもりの変位 xn(j) も, 2個のおもりの際と同様に

xn(j)=An(j)cos(ωjt+ϕj)      (n=0,,N+1.  ϕ(j):)(: x0(j)(t)=0,  xN+1(j)(t)=0)  (: A0(j)=0,  AN+1(j)=0)

のように単振動となると考えました.

また, 各おもりの振幅 An(j) については, j番目の基準振動の概形を上図のようなsin形と予想しているため,

An(j)=A(j)sin(pjn+θ)  (θ:, pj)

となると考えられ, 実際に pj,θ を計算すると

An(j)=A(j)sinjN+1πn    (j=1,,N.  n=1,,N)

となりました. 実際に N=5 の場合の基準振動の概形は下図の通りです:

モード番号 j
1oscillations-with-spring_N5_j1
2oscillations-with-spring_N5_j2
3oscillations-with-spring_N5_j3
4oscillations-with-spring_N5_j4
5oscillations-with-spring_N5_j5

An(j) が求まったことで, 自由度Nの場合の一般解も求まります:

xn(t)=j=1NAn(j)cos(ωjt+ϕj)=j=1NA(j)sin(jN+1πn)cos(ωjt+ϕj)     (:A(j), ϕj)

このような背景から, 第7回の授業/課題の中の「(弦の) 基準振動の仮定」の論拠として, N個の連成振動の場合を

N:xn(j)=An(j)cos(ωjt+ϕj)

と書いていました.

 

 

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u(x,t)=u(s+,s-)のところがいまいちわからなかった

sxvts+x+vt

という変数変換により, 元々x,tの関数だったu(x,t)を, s+,sの関数であるu(s+,s)に見直したということになります.

 

 

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線形結合の式を導くために積分をする理由がよくわからなかった。

前回の「関係式 → 一定波形・一定の速さで進む波を表す関数」では, 2ut2=v22ux2 という関係式を満たす関数u(x,t)を導出したい, という動機で計算しています. そこで, 実際に2ut2=v22ux2を式変形してみると 2uss+=0 という結果が得られました.

ここから関数u(x,t)を導出するためには, 現在偏微分しているs+,sで積分すれば良いと考えます. これが, 積分をする理由です.

実際, s+,sで積分した結果, 目的の関数 u(x,t)=f1(xvt)+f2(x+vt) (線形結合の式) が導出できました.

 

 

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偏微分がよくわからなかった。講義動画今回は上がりませんか? (2024/06/09 01:20:01)

偏微分については上記の質問の意味ですかね...? であれば上記の通りです.

講義動画をアップするのが遅れて, 06/09 12:25になりました. 失礼しました.

 

 

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頭で式の変換を理解する前に次の式に進んでしまうのでもう少し式変形の時ゆっくりのスピードにしてほしい

計算量が多くて大変きびしい

 

波動

位相速度と分散

前回やったように, 一定速さv+x方向に進む場合の進行波 (正弦波) は u(x,t)=Asin(kxωtϕ) であり, この系の特性を表す物理量は,

名称意味
波数k2π 空間長さあたりの波の数
波長λ2πk1周期の空間的な長さ
周期T2πkv1周期の時間的な長さ
振動数ν1T単位時間あたりの波の数
角振動数ω2πν2π 時間あたりの中の波の数

である. したがって, 角振動数と波数の関係式で見てみると

ω=2πν=2π1T=2πkv2π=vk

となる. これがこの系の分散関係 :

(1)ω(k)=vk

であり, 比例関係にある. ω(k) という表記は角振動数 ω が波数 k に依存することを明示的に記述したものである.

波の一定速さ v に関する式に書き直せば

(2)v=ωk

である.

これは, 両端が固定された連続体 (弦) の運動における j 番目の基準振動の波数 pj と角振動数 ωj との関係

pj=σTωj=ωjTσ=ωjv    v=ωjpj    (σ, T, v2Tσ)

と同形である. したがって, 分散関係は境界条件の有無に依らないことがわかる.

 

ところで, 位相速度は, 前回やったように, 位相一定の点の進む速度である. そこで, ある進行波 u(x,t) において, 時刻 tt+Δt とで位相を比較してみる.

時間差 Δt の間に位相一定の点が進んだ移動距離を Δx と書く場合, その進行波の位相は

u(x,t)=u(x+Δx,t+Δt)

となる. 今, 進行波を u(x,t)=Asin(kxωtϕ) と記述しているので, その位相部分 kxωtϕ に対しても

kxωtϕ=k(x+Δx)ω(t+Δt)ϕ  0=kΔxωΔt  ΔxΔt=ωk

となる. この ΔxΔt が前回紹介した位相速度 vϕ なので,

位相速度

(3)vϕΔxΔt=ωk

となる. これは, 分散関係から導かれた一定速さの式 (2):v=ωk と同じ形の式であるため,

vϕ=v

となり, 位相速度が波の進行する一定速さと一致し, 一定であることがわかる. すなわち, 位相速度は波数 k がいかなる値をとっても, その分を角振動数 ω が相殺し, 一定となることを示す.

このように, 位相速度が波数 k の値に依らず一定の場合を 分散がない という. 一方, 位相速度が波数 k の値に依って変わる場合を 分散がある という

 

情報と波

情報

私達は「データ」という単語を気軽に使っているが, そもそもデータとはdata (datumの複数形) と書き, 「実験や調査などを実施した結果に得られた文字や数値のまとまり」 を意味する.

そして, 人間や組織がそのデータに触れることで, 知識等の価値が増えた場合, その価値の増分を情報 (information)と呼ぶ.

たとえば, 何かしらの文章を読んだ際に, その内容が知識等の価値が増えるものであったなら, その「新しい知識という価値」が本来の意味での「情報」となる.

 

そのような情報をやり取りするためには, 前提として, データの受け手と送り手との間に一定のルールが決まっている必要がある. なぜなら, 両者がルールを理解していない場合, 送り手が何を送ろうとも受け手は何も理解できないためである.

 

実際のデータの伝達方法として, 代表的なものが波を用いたデータ通信である.

データの伝達方法には大まかに2種類ある:

  1. アナログ信号

    連続に変化する波形をそのまま他方に送信し, 波形のパターンを利用して表現する. 従来型の固定電話やラジオ波のように, 波形の振幅の強弱でデータを表現する.

  2. デジタル信号

    波を流す / 止めるによって 1 / 0 という情報単位を表現し, その組み合わせで文字などを表現する. モールス信号のようにライトを点灯するか / 消灯するかを利用する.

info_digital

 

したがって, データの伝達という観点から情報の有無を考えると,

  • 情報がある

    • 何かしらの量が, 特定の取り決めに従って変化する状態

  • 情報がない

    • 何かしらの量が, 全く変化しない or 無秩序に変化する状態

      • ホワイトノイズ (完全にランダムな変化)

      • ブラックホールのファイアウォール問題 (情報がブラックホールに入ると, 熱 [情報なし] として放射される)

といった違いがある.

 

我々が日常的に利用しているコンピュータを例に挙げる. このようなコンピュータは, 全てのデータを1/0の羅列で表現している.

 

文字の場合, 世界的に使われている例で言えば, Unicodeというルールによって「コードポイントと呼ばれる数字」と「文字」とを一意に対応づけている. さらに, そのコードポイントをUTF-8という符号化形式によって1/0の羅列に変換している.

1/0の羅列 (2進数表記)コードポイント (2進数表記)コードポイント (10進数表記)文字
001100110110011513
01000001100000165A
11001111 1000000001111000000960π
11100011 10000001 10000010001100000100001012354

画像や音, 動画などもコンピュータ内部では, このような1/0の羅列で処理している.

 

したがって, インターネット等を介して, これらの情報を送受信する際は, 実際には, この「1/0」の羅列を「波を流す/止める」によって送受信している.

 

なお, デジタルデータにおける 1/0 という情報の基本単位をbitと呼び, 1秒間に送ることができるbit数をbps (bit per second)という.

また, 現行のコンピュータの世界においては, 人間が扱いやすいように, 8 bitsで1つのまとまりとした情報単位 (byte) として扱っている. したがって1秒間に送ることができるbyte数をbpsと区別してBps (Byte per second) と書くこともある.

bpsの値が大きいほど, 短時間に多くの情報を相手に送ることができる (動画の高画質など). 一方, 通話などの際のラグ (時間差) は, 各信号が送信者から受信者までにどれだけかかるかによるため, bpsの大小とは異なる点に注意.

 

正弦波を利用して情報を送る

1つの正弦波を送り続けるだけでは値の変化が定常的なため, せいぜい波数や角振動数などの情報しか伝達できない. アナログ信号として声の波形などの複雑な情報を表現するには複雑な波形が必要となる.

そこで, 複数の正弦波を重ねることによって, より複雑な情報を表現することができる.

info_sin-merge

複数の正弦波を重ねるなどして, 波の振幅を時間的に変動させることを 振幅変調 (AM, amplitude modulation) という. 具体例としてはうなり, AMラジオなどがある. うなり現象自体は以前にもやったことがあるが, 進行波についてのうなりを例に, 振幅変調と情報の例を見ていく.

 

群速度

波長・周期の異なる2つの進行波 (正弦波) が重なり合う場合を考える. それぞれの進行波 (正弦波) を波数 k1, k2, 角振動数 ω1, ω2, 初期位相 ϕ1, ϕ2 を用いて表すと

u1(x,t)=A1sin(k1xω1tϕ1)u2(x,t)=A2sin(k2xω2tϕ2)

となる. このとき, 2つの波を重ね合わせた波は, 重ね合わせの原理より,

u(x,t)=u1(x,t)+u2(x,t)=A1sin(k1xω1tϕ1)+A2sin(k2xω2tϕ2)

となる.

ここで簡単のために, 特に,

  • 初期位相がともに0 : ϕ1=ϕ2=0

  • 振幅も共通で A : A1=A2=A

  • 波数, 角振動数ともに近い値 : k1k2, ω1ω2

という場合を考える. すると上式は,

u(x,t)=A1sin(k1xω1tϕ1)+A2sin(k2xω2tϕ2) u(x,t)=Asin(k1xω1t)+Asin(k2xω2t)    sina+sinb=2sina+b2cosab2=2Asin(k1xω1t)+(k2xω2t)2cos(k1xω1t)(k2xω2t)2=2Asin(k1+k2)x(ω1+ω2)t2cos(k1k2)x(ω1ω2)t2(4)=2Acos(k2k1)x(ω2ω1)t2sin(k1+k2)x(ω1+ω2)t2

と書くことができる. 今回, 波数と角振動数がそれぞれほぼ等しい場合を考えているため, それらの差分をそれぞれ Δk, Δω として

Δkk2k1k1,k2Δωω2ω1ω1,ω2

と書くことにする. また, 両者の平均を kav, ωav とすれば,

kavk1+k22k1,k2ωavω1+ω22ω1,ω2

となる. すると, 重ね合わせた波 u(x,t) (4)

u(x,t)=2Acos(k2k1)x(ω2ω1)t2sin(k1+k2)x(ω1+ω2)t2=2Acos(Δk2xΔω2t)sin(kavxωavt)

となる.

波数 k1, k2, 角振動数 ω1, ω2 がそれぞれほぼ等しいことから, Δk2, Δω2k1, ω1 と比べて小さな値となる. すなわち, 2π 空間長あたりの波の数, 2π 時間あたりの波の数が小さいということなので, cos(Δk2xΔω2t) という振動は sin(kavxωavt) という振動に比べて空間的にも時間的にも緩やかな振動であることがわかる. 実際にプロットしたものが下図である.

時刻 t=0 におけるプロット (空間的なうなり)位置 x=0 におけるプロット (時間的なうなり)
wave-packet_x-u_t_0_k1_2_k2_2.1_omega1_1000_omega2_1010wave-packet_t-u_x_0_k1_2_k2_2.1_omega1_1000_omega2_1010

上図からわかるように, sin(kavxωavt) という細かい振動の振幅が cos(Δk2xΔω2t) にしたがってゆるやかに変化 (包絡線) しており, 波数が近いことで空間的なうなりが, 角振動数が近いことで時間的なうなりが発生している. このような波のかたまりを波束と呼ぶ.

波束の典型的な例は, 以前に波の種類として紹介した, 波のかたまりが1つだけのタイプだが, 今回のようなうなりも波束の1種として呼ばれる.

さらに, これが実際に時間経過で進行していく様子をアニメにしたものが下図である.

beat1010.mov

(a) うなりとなっている緩やかな概形の波束が右 (+x) 方向に進行している (緑点) ことに加えて, (b) その波束の中の細かい振動も右 (+x) 方向に進行している  (青点) という現象が発現している.

(a) の速度を群速度, (b) の速度を位相速度と呼ぶのだが, それらを実際に計算してみよう.


今回の場合は, 振幅の変化が波数 Δk/2 , 角振動数 Δω/2 による余弦波 cos(Δk2xΔω2t) となっているため, 空間的なうなり構造 (波の概形, 波束) が進む速さは,

cos(Δk2xΔω2t)=cos{Δk2(xΔωΔkt)}

となることから, ΔωΔk となる. これは群速度と呼ばれ, vg と置くことにすると

vgΔωΔk

となる.

一般には Δk,Δω を小さくした極限を考え,

群速度 (group velocity) :

vgdω(k)dk

と記述する. ここで, ω(k) は分散関係で示したような波数 k の関数として記述される角振動数を意味する.


また, 細かく振動する部分 sin(kavxωavt) については

sin(kavxωavt)=sinkav(xωavkavt)=sinkav(xω1+ω2k1+k2t)

となっているため, 位相部分の進む速度 vϕ は,

vϕωavkav

となり, これがこの系の平均的な位相速度となる.

一般には, 単一の進行波の場合と同じで,

位相速度 (phase velocity) :

vϕω(k)k

と記述される.


まとめると

位相速度 vϕ群速度 vg
vϕω(k)k(=ωavkav)vgdω(k)dk(=ΔωΔk)

となる.

上図のアニメは,

  1. k1=2, k2=2.1, ω1=1000, ω2=1010

という設定で描いたものなので,

vϕ,1=ωavkav=1000+10102+2.1=20104.1vg,1=ΔωΔk=101010002.12=100.1

となる.

 

  1. k1=2, k2=2.1, ω1=500, ω2=510

のようにωを約半分に変更した設定にすれば,

vϕ,2=ωavkav=500+5102+2.1=10104.112vϕ,1vg,2=ΔωΔk=5105002.12=100.1=vg,1

となり, 位相速度が約半分に遅くなる.

 

  1. k1=2, k2=2.1, ω1=1000, ω2=1020

のようにΔωを2倍に変更した設定にすれば,

vϕ,3=ωavkav=1000+10202+2.1=20204.1vϕ,1vg,3=ΔωΔk=102010002.12=200.1=2 vg,1

となり, 群速度が2倍に速くなる.

 

実際にアニメで見てみたのが下記である.

k1k2ω1ω2備考アニメ
22.110001010基準beat1010.mov
22.1500510位相速度 (青点群) が
約半分に遅くなる
beat510.mov
22.110001020群速度 (緑点群) が
2倍に速くなる
beat1020.mov

 

 

群速度と位相速度の例

一定速さv+x方向に進む場合の進行波 (正弦波)

波動方程式 2ut2=v22ux2 にしたがい, 一定速さv+x方向に進む場合の進行波 (正弦波) u(x,t)=Asin(kxωtϕ) についての分散関係 (1)

ω(k)=vk

となる. したがって,

:vϕ=ω(k)k=vkk=v:vg=dω(k)dk=ddk(vk)=v

となるため,

vϕ=vg=v

となり, 位相速度と群速度が一致する.

真空中の電磁波 (光) の場合は ω=ck  (c:) なので,

vϕ=vg=c

となり, 光速に一致する.

 

電離層における電磁波 (光)

電離層における電磁波 (光) の分散関係は

ω(k)=ωp2+c2k2  (ωp:)

となる. したがって, 位相速度は

vϕ=ω(k)k=ωp2+c2k2k=c2+ωp2k2>c

となり, 光速より速くなってしまう.

物理学においてこの世界で最も速い速度は光速なのだが, これはそれを超えてしまっている. すると光速を超えた情報のやり取りができてしまい, 世紀の大発見となるのだが, 本当にそうだろうか?

実は, 観測者が相対的に世界を体感していくことを基礎として構成された相対性理論の世界では, 情報を行き来させることで世界の事象を観測していく.

情報は, ① 複数の正弦波を重ね合わせた複雑な波形自体が他方に届くこと (アナログ信号) や ② 波が届くか否か (デジタル信号) で伝達する.

②のデジタル信号は, 光自体が届くか否かという話なので, 光速度を超えることはない. 今回, 問題としているのは, ①のアナログ信号の場合である.

アナログ信号として情報を伝えるためには, 複雑な波形自体を他方に伝達する必要がある. したがって, 情報を伝達する際に重要な速度は位相速度ではなく, 群速度となる.

そこで, この系の群速度を計算してみると,

vg=dω(k)dk=ddk(ωp2+c2k2)=12(ωp2+c2k2)12×2c2k=c2kωp2+c2k2=c2c2+ωp2k2<c

となり, 光速度より遅いことがわかる. したがって, 実際に情報が伝わる速度 (群速度) は問題なかったことがわかる.

 

位相速度と群速度の関係性は

vϕ×vg=c2+ωp2k2×c2c2+ωp2k2=c2

となる.

一定の波形・一定の速さで進む進行波同士の重ね合わせ

一定の波形・一定の速さで進む進行波同士が互いに逆方向から進み, ぶつかって重なり合う場合を考える.

一定速さ v±x 方向に進む進行波は, 前回やったように, 一般的には任意関数 f(x), g(x) を用いて

v+x : u1(x,t)=f(xvt)vx : u2(x,t)=g(x+vt)

として記述できる. 今回はこの両者の波形がぶつかり, 重なり合うときの内容をみていく.

これらの波は (前回確認したように) 波動方程式 2ut2=v22ux2 を満たすため, 重ね合わせの原理が成り立つ. したがって, 重ね合わせた波 u(x,t)

u(x,t)=f(xvt)+g(x+vt)

となる.

波形はf,g ともに任意なので, 正弦波の山を1つだけを取り出したような波形を考え, 実際に重ね合わせたアニメが下図である.

overlay

t1t2t3t4
overlay1overlay2overlay3overlay4

両波が同じ位置にいる際は, 両者を足し合わせた揺れ幅となるが, その後は互いに別々の波に分かれたため, 互いに透過したことが見て取れる.

 

反射

波が何かしらの境界に達すると反射する. 十分長いひもなどを考えた時,

  • 固定端 : 壁等に固定されている端点

  • 自由端 : 固定されておらず自由に動ける端点

という2種類がある. 1つずつ見ていく.

固定端

具体的には, 下図のように, 一定速さ v+x 方向に進む進行波が x0 に存在する壁にぶつかって反射する場合を考える.

reflection-fix

この場合,

  • x 遠方から来て +x 方向に進む波 (入射波, incident wave) 自体の波形: f(xvt)

  • 壁にぶつかって反射し x 方向に進む波 (反射波, reflected wave) の波形: g(x+vt)

の両方を考慮する必要がある. したがって, 両者が混ざった波は, これらを重ね合わせた

u(x,t)=f(xvt)+g(x+vt)

となる. ここで, ひもは x=0 の端点で固定されているので

:u(x=0,t)=0u(0,t)=f(0vt)+g(0+vt)=0g(vt)=f(vt)

という関係式が得られる. これは任意の時刻で成り立つ.

波形 g は元々 x+vt についての関数であることから, vt の代わりに x+vt と書いても x=0 でこの関係は成り立つ :

g(x+vt)=f((x+vt))

この g は, 位置と振幅が f の逆であることから, 位置 x=0 を中心に点対称な波形となる. すなわち x 方向に速さ v で進行していく波を表しており, 反射後の波 (反射波) 部分に対応する.

端点 x=0 でひもの高さを変えないように下向きの力が加わり続けるため, 反射波は下に振れた波となる

したがって, 壁に向かう元々の波との重ね合わせは

u(x,t)=f(xvt)+g(x+vt)=f(xvt)f((x+vt))=f(xvt)f(xvt)

となる.

これをプロットしたアニメが下図である.

reflection-fixed

t1t2t3t4
reflection-fix-1reflection-fix-2reflection-fix-3reflection-fix-4

 

自由端

次に, 下図のように, 一定速さ v+x 方向に進む進行波が x=0 で自由端反射する場合を考える.

reflection-free

この場合,

  • x 遠方から来て +x 方向に進む波 (入射波) 自体の波形は f(xvt)

  • 自由端反射し x 方向に進む波 (反射波) の波形 g(x+vt)

の両方を考慮する必要がある. したがって, 両者が混ざった波は, これらを重ね合わせた

u(x,t)=f(xvt)+g(x+vt)

となる.

 

自由端の境界条件

自由端とは弦の端点が拘束されず, 自由に動けることを指す. すなわち, 弦が端に固定されず, 摩擦のない輪等で棒に括られているような状況に相当する.

弦の微小線素についての力は以前やったように下図の通り:

continum_string_close-up

この内, 右端が摩擦ゼロの輪に括られているとしよう.

free

棒と輪の間に摩擦がないため, 弦の右端をどんな方向に引っ張っても引っかかることがない. すなわち, 摩擦がないことにより, 弦の右端の棒と輪の間には上下方向の力がかかっていない.

摩擦のない斜めの台の上に箱を置いた際, 箱には台からの垂直抗力のみ働き, 斜め方向の摩擦力は働いていないことと同様である.

steep

したがって, 右端にかかる張力 T は水平方向のみにかかっていることになる. 張力 T は弦の傾きに沿ってかかる力なので, 右端は常に水平であるといえる.

弦の微小線素の右端の傾きは, 上図のように tanθ=u(x+Δx,t)x で表すことができた. 今, 弦の右端 (x=0) を考えているので,

tanθ=u(x,t)x|x=0

と表せる.

上記の議論で, 弦の右端が水平だということがわかったため, 右端の傾きは θ=0 となる. ゆえに,

tan0=u(x,t)x|x=0 (5)0=u(x,t)x|x=0

となる. この式 (5) が, 自由端の境界条件である.

自由端反射波との合成

以上より, 自由端での境界条件は傾きが常に0なので,

u(x,t)x|x=0=0

となるため,

u(x,t)x|x=0=f(0vt)+g(0+vt)=0g(vt)=f(vt)

という関係式が得られる. 波形 g は元々 x+vt についての関数であることから, vt の代わりに x+vt と書いても x=0 でこの関係は成り立つ :

g(x+vt)=f((x+vt))

sx+vt として変数を置き換えてs で積分すれば

g(s)ds=f(s)ds  g(s)=f(s)+C    (C:)

となる. この g は, 位置が f の逆であることから, 位置 x=0 を中心に軸対称な波形となる. すなわち x 方向に速さ v で進行していく波を表しており, 反射後の波 (反射波) 部分に対応する. したがって, 壁に向かう元々の波との重ね合わせは

u(x,t)=f(xvt)+g(x+vt)=f(xvt)+f((x+vt))+C=f(xvt)+f(xvt)+C

となる. また, t<0 という反射前においては

u(x,t)=f(xvt)

という入射波のみであり, 反射項 f(xvt) がないことから, C=0 となることがわかる. ゆえに,

u(x,t)=f(xvt)+f(xvt)

となる.

これをプロットしたアニメが下図である.

reflection-free

t1t2t3
reflection-free-1reflection-free-2reflection-free-3