実施・提出期間

締切: 2024/06/12 (水) 13:30 までに, 下記の問題を実施し, 提出してください.

 

注意事項

  • 手書きで計算したものを1つのpdfにまとめて提出してください

    • 紙に直筆したものを写真 or スキャンする場合は, 中身がハッキリ読めることを確認してください

    • タブレット等を用いて電子的に手書きするのもOKです

    • 画像ファイルをそのまま何枚も提出したり, zipにまとめて提出したものは受取不可とします

  • 授業資料の解答を丸写しするのではなく, 授業内容を思い出しながら自分の手で計算するようにしてください

  • 授業直後に復習することはもちろん素晴らしいです!! その後, なるべく数日空けてから再学習として本課題を実施し, 提出することを是非試してみてください.

 

問題

下図のように, 波の伝わる方向をx軸にとった場合, 変位する物理量u(x,t)は位置xと時刻tの関数となる.

wave

任意の時刻 t0 における空間的な波の形を

u(x,t0)f(x)

とする.

  1. 各時刻でスライスして見ていく時, 波が形を変えずに, 一定速さv+x方向に進む場合の波の関数を導出せよ

  2. 波の形として正弦波を考えた場合, 進行波の式で記述せよ

  3. 一定波形・一定の速さで進む波を表す関数から波動方程式を導出せよ

  4. 波動方程式から一定波形・一定の速さで進む波を表す関数を導出せよ

  5. 波動方程式を記述せよ

 

まとめ

  1. 今回の授業内容を100文字以上で自分なりにまとめてください. ただし, 写経のように丸写しすることだけはやめてください.

 

解答

下図のように, 波の伝わる方向をx軸にとった場合, 変位する物理量u(x,t)は位置xと時刻tの関数となる.

wave

任意の時刻 t0 における空間的な波の形を

u(x,t0)f(x)

とする.

各時刻でスライスして見ていく時, 波が形を変えずに, 一定速さv+x方向に進む場合の波の関数を導出せよ

波が形を変えずに, 一定速さv+x方向に進む場合, その波は下図のように進行していく.

wave_time-slice_+x_t

上から下の順で3つの時刻 t0Δt, t0, t0+Δt でスライスしている. 一定波形なので, 波形自体は変わらず, 進行速度も一定なので, その位置間隔も一定 (vΔt) である.

時刻 t0+Δt における波の空間的な形は, f(x) がそのまま vΔt だけ右に平行移動したものなので,

u(x,t0+Δt)=f(xvΔt)

と表すことができる.

したがって,

  • t00 : 任意の時刻 t0 を時間の原点とし,

  • Δtt : そこからの時間差 Δtt と置く

という書き直しをすれば, 時刻 t0+Δt が時刻 t となるので,

u(x,t)=f(xvt)

と表すことができる.

波の形として正弦波を考えた場合, 進行波の式で記述せよ

まず, 正弦波を考えているため

Asin(kxϕ)    (A,k,ϕ)

というsin形の波形の式で表現する. A は振幅, ϕ は初期位相である.

今回は, 一定の速さv+x方向に進む波形を考えているため, 時刻経過につれて波形が空間的にずれて (伝搬して) いく影響を vt 分の平行移動として追加し,

u(x,t)=Asin{k(xvt)ϕ}    (A,k,ϕ,v)

となる.

ここで,

(1)u(x,t)=Asin{k(xvt)ϕ}=Asin{k(xvt)ϕ +2π}=Asin{k((x+2π/k)vt)ϕ }=u(x+2π/k,t)

となるので, 空間的な1周期である波長 λ

λ2πk

となる. さらに,

(2)u(x,t)=Asin{k(xvt)ϕ}=Asin{k(xvt)ϕ2π}=Asin{k(xvt2π/k)ϕ}=Asin{k(xv(t+2π/kv))ϕ}=u(x,t+2π/kv)

となるので, 時間的な1周期である周期 T

T2πkv

となる. また, その逆数は振動数 ν となり,

ν1T

であり, 単位時間あたりの波の数を示す.

さらに, 角振動数 ω2π 時間あたりの中の波の数なので,

ω2πν

となる. 以上をまとめれば, u(x,t)

(3)u(x,t)=Asin{k(xvt)ϕ}=Asin(kxkvtϕ)=Asin(kx(2π/T)tϕ)=Asin(kx(2πν)tϕ)=Asin(kxωtϕ)

となる.

したがって, 進行波 (正弦波) の式は

u(x,t)=Asin(kxωtϕ)

と記述できる.

一定波形・一定の速さで進む波を表す関数から波動方程式を導出せよ

一定波形・一定の速さで進む波を表す関数の形についての必要条件は

(4)v+x:  u(x,t)=f(xvt)(5)vx:  u(x,t)=f(x+vt)

もしくは, それらの線形結合

(6):  u(x,t)=f1(xvt)+f2(x+vt)

のように書くことができる.

これらの関数から, 一定波形・一定の速さで進む波についての重要な関係式 (波動方程式) が導かれることを示す.

ここで, 式 (4) の x,t についての2階導関数を求めてみる. 関数 f の変数部分を

sxvt

として置いた場合, x についての1階の偏導関数は

(7)ux=dudssx=duds×1=duds

となる. したがって x についての2階の偏導関数は

2ux2=x(ux)=dds(ux)sx=dds(duds)×1(8)=d2uds2

となる.

次に, t についての1階の偏導関数は

(9)ut=dudsst=duds×(v)=vduds

となる. したがって t についての2階の偏導関数は

2ut2=t(ut)=dds(ut)st=dds(vduds)×(v)(10)=v2d2uds2

となる.

以上より, 式 (8), (10) から,

(11)2ut2=v22ux2

という関係式が導かれた.

波動方程式から一定波形・一定の速さで進む波を表す関数を導出せよ

関係式 (11)

2ut2=v22ux2

を満たす関数は式 (4), (5), (6)

v+x:  u(x,t)=f(xvt)vx:  u(x,t)=f(x+vt):  u(x,t)=f1(xvt)+f2(x+vt)

のような形であることを示す.

 

まず,

sxvts+x+vt

とおく. x,t の式に書き直すと

x=12(s+s+)t=12v(s+s)

となる. すると u

u(x,t)=u(s,s+)

となる.

そこで, 関係式 (11) 2ut2=v22ux2 の両辺をそれぞれ計算してみる.

(12)()=2ut2=t(ut)=t(usst+us+s+t)=t(us×(v)+us+×(v))=s(us×(v)+us+×(v))st+s+(us×(v)+us+×(v))s+t=s(us×(v)+us+×(v))×(v)+s+(us×(v)+us+×(v))×(v)=v22us2v22uss+v22us+s+v22us+2=v2(2us222uss++2us+2)
(13)()=v22ux2=v2x(ux)=v2x(ussx+us+s+x)=v2x(us×1+us+×1)=v2s(us+us+)sx+v2s+(us+us+)s+x=v2s(us+us+)×1+v2s+(us+us+)×1=v2(2us2+22uss++2us+2)

となる. これらが関係式 (11) 2ut2=v22ux2 に代入すると,

(14)2ut2=v22ux2  v2(2us222uss++2us+2)=v2(2us2+22uss++2us+2)  2uss+=0

となる.

これを s+ で積分すると

(15)2uss+ds+=0×ds+s+(us)ds+=0×ds+us=f1(s)    (f1(s):s+)

となる.

これを更に s で積分すると

usds=f1(s)ds+0×dsu=f1(s)+f2(s+)    (f1(s):s+, f2(s+):s)(16)u=f1(xvt)+f2(x+vt)

となる. これはまさに 線形結合の式 (6) u(x,t)=f1(xvt)+f2(x+vt)である.

また, f1(xvt), f2(x+vt) はそれぞれ任意関数なので, 恒等的に0でもよい. したがって, この式 (16) は, 一定の速さ v±x 方向に進む波の式 (4), (5) を含んでいる.

 

以上より, 関係式 (11)

2ut2=v22ux2

を満たす関数は式 (4), (5), (6)

v+x:  u(x,t)=f(xvt)vx:  u(x,t)=f(x+vt):  u(x,t)=f1(xvt)+f2(x+vt)

のような一定波形・一定の速さで進む波を表す関数形であることを示せた.

波動方程式を記述せよ

一直線上を一定の波形・一定の速さで伝わる波を表現する関数は その波の機構や媒質によらず, 関係式 2ut2=v22ux2 を満たし,

逆に, 関係式 2ut2=v22ux2 を満たす関数は, 一直線上を一定の波形・一定の速さで伝わる波を表現するものとなりうる

ということが成り立つ.

したがって, このような関係式を

波動方程式

2ut2=v22ux2

と呼ぶ.