出席アンケートに関するお願い

出席アンケートはなるべく早めに出してもらえると嬉しいです!! (コメントへの返答を準備する都合で, 次回の前日 (2024-06-11 12:00) までにもらえないと反映が間に合わない可能性が高いためです)

 

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微小振動として近似できない場合はありますか?

はい, あります. 弦の振幅を大きくした場合, 微小振動ではなくなるため近似できません. この場合は, 計算が複雑になります.

 

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ベンハムの駒による錯視の実験が興味深かった。ただ、色の違いは色盲だからかよくわからなった。

私も2型2色覚 (緑の視細胞がない or 反応しない) ですが, ベンハムのコマの色の違いはわかりました. ベンハムのコマの錯視は視細胞の発火後の遅延が原因とされていますので, 平時の色の区別ができれば (2色覚以上) 錯視体験もできると考えられています. ですので, この方がどういう事情で錯視体験ができなかったのかは興味深いです.

 

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復習相変わらずしやすいです。 テストはどれくらいのレベルが解けてれば点数とれますか?

復習問題を解くことができれば, テストも解答できるレベルにする予定です. 過去に, 十分勉強したと思われる方は100点, あまり勉強してこなかったと思われる方はかなり低い点というケースがあります.

 

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課題について、内容を理解していても書くのが長くて苦しいです。難しいけど分かれば一瞬という課題にはなりませんか?

場合によると思いますが, 基本的には「難しいけど分かれば一瞬」という課題はしないと思います.

元々, 復習課題を課している目的は, ・授業内容を (写すのではなく) 思い出しながら自分で計算するという想起学習 ・試験直前に詰め込む負荷を下げ, 長期記憶化しやすくする分散学習 を促すためです.

物理モデルを見るだけで一般解まで暗算できる, といった計算力を持っている場合は, 途中計算をある程度端折ることは可能です. ですが, その場合でも解答に整合性がなければ試験では減点になります. また, ズルをして, 途中計算を書かず, 解だけを記述する場合は, 学習効果のない無意味な作業になるので, 試験で不可になる可能性が上がります.

上述の別件への解答の通り, 復習問題に近い内容を試験で出題する予定ですし, 復習課題自体が, 単なる平常点稼ぎではなく, 上記の学習効果を狙ったものですので, 「難しいけど分かれば一瞬」といったものにはしない予定です. (もちろん, 学習効果もあるような適切な課題を思いつけばそれを課すようにします)

 

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解の唯一性の証明が何をしているのか全く分からず難しかった。証明の手順は覚えた方がよいのか気になった。

証明手順自体を覚える必要はないと思いますが, 計算の流れは理解した方が良いと思います.

 

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バネではなく弦で考えたのが興味深く面白かった。連続体になった途端運動方程式も複雑になって興味深かった。積分J(t)を時刻tで微分した式の3個目から4個目の式変形があまりわからなかった。

dJ(t)dt=120L{ddt(D(x,t)t)2+Tσddt(D(x,t)x)2}dx=120L{2D(x,t)t2D(x,t)t2+Tσ2D(x,t)x2D(x,t)t x}dx=0L{D(x,t)t2D(x,t)t2+TσD(x,t)x2D(x,t)t x}dx      : (fg)=fg+fg    fg=(fg)fg      D(x,t)xx(D(x,t)t)=x(D(x,t)xD(x,t)t)x(D(x,t)x)D(x,t)t=0L{D(x,t)t2D(x,t)t2+Tσx(D(x,t)xD(x,t)t)Tσ2D(x,t)x2D(x,t)t}dx  

 

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解の唯一性の確認からついていけなくなった。 ベンハムのコマが、実際に色が変わるのを見れて面白かった。

今回もやはり難しかった。完璧に理解したと思うのが珍しいくらい。

考えることが多くて難しかった。

途中の話がかなり複雑で授業中に最後まで理解しきれなかった

だんだん計算量も増えテクニカルに置いたりする所もあって難しくなってきたように感じた。

今回はいつもより式が多く、複雑になってきて分からない部分が少しあった。

今日の授業では、弦の振動の基礎から応用まで体系的に学べて非常に良かったです。特に、連続体の運動方程式の導出から一般解の唯一性の証明までの過程が詳しく説明されていて理解が深まりました。ただし、数式が複雑で一部理解しにくい部分もあったため、もう少し例題を交えた解説があるとさらに良いと思います。

最後の証明が難しくて何もわからなかったです

J(t)を使いたいと思うモチベーションが分からなかった

連続体の運動方程式から波動方程式を求めるまでの過程が計算が多く難しかったです。

一般性の証明がよくわからなかった。

前回の連成振動の無限個の問題ですら全然追いつけていなくて大変だったのに、またそれの発展形になるものが出てきてめちゃめちゃおいて行かれた感がありました。

宿題の五番が特に難しいので自分で頑張って理解したいです

一般解の唯一性のところが難しかった。

解の導出や証明において、なぜそのような計算をするのかと疑問に思う個所が多くあったが、なぜは解決しようとせず暗記するしかないのかと思った。 計算量が多く結局何が重要なのかわからなくなってしまった。

弦の一般解の導出までは頑張ってついてこれたが、唯一性を確かめるところで理解できなくなった。

前回と似た多自由度の振動について学んだが、一般解の唯一性の確かめ方が難しかった。

証明の計算が膨大でついていけなかった。

N個の連成振動と連続体の基準振動の形の対応について

 N個の連成振動連続体
固有振動数2Tmasinj2(N+1)πTσjπL
基準振動の概形An(j)=A(j)sinjN+1πnA(j)(x)=A(j)sin(jπLx)
基準振動xn(j)=An(j)cos(ωjt+ϕj)u(j)(x,t)=A(j)(x)cos(ωjt+ϕj)

基準振動の概形は任意のNだと, 連続体の場合の概形上に離散的にポツポツと存在することになる. N の極限では一致 :

(N)=A(j)sinjN+1πn=A(j)sinj(N+1)aπna=A(j)sinjLπ×(n)    ( (n)=na, L=a(N+1))      (N()) N (,a0)A(j)sinjLπx    ( (n)x)=()      (N)

N が小さい場合, 連成振動と連続体の固有振動数は一致しないが, Nを大きくした極限を考えると両者は一致する:

(N)=2Tmasinj2(N+1)π N2Tmaj2(N+1)π    ( |x|1sinxx)=Tσaaj(N+1)π    ( m=σa)=Tσja(N+1)π=TσjπL    ( L=a(N+1))=()

実際に図にしたものが下記.

基準振動の概形:

連続体の基準振動の概形 (青線) の上に, 離散的にポツポツとN個の振動子が存在. N で一致

jN=3N=5N=10N=100
1oscillation-shape-continuum-N_N3.0_j1.0oscillation-shape-continuum-N_N5.0_j1.0oscillation-shape-continuum-N_N10.0_j1.0oscillation-shape-continuum-N_N100.0_j1.0
2oscillation-shape-continuum-N_N3.0_j2.0oscillation-shape-continuum-N_N5.0_j2.0oscillation-shape-continuum-N_N10.0_j2.0oscillation-shape-continuum-N_N100.0_j2.0
3oscillation-shape-continuum-N_N3.0_j3.0oscillation-shape-continuum-N_N5.0_j3.0oscillation-shape-continuum-N_N10.0_j3.0oscillation-shape-continuum-N_N100.0_j3.0
4(無振動)
oscillation-shape-continuum-N_N3.0_j4.0
oscillation-shape-continuum-N_N5.0_j4.0oscillation-shape-continuum-N_N10.0_j4.0oscillation-shape-continuum-N_N100.0_j4.0
5(反転)
oscillation-shape-continuum-N_N3.0_j5.0
oscillation-shape-continuum-N_N5.0_j5.0oscillation-shape-continuum-N_N10.0_j5.0oscillation-shape-continuum-N_N100.0_j5.0
6(反転)
oscillation-shape-continuum-N_N3.0_j6.0
(無振動)
oscillation-shape-continuum-N_N5.0_j6.0
oscillation-shape-continuum-N_N10.0_j6.0oscillation-shape-continuum-N_N100.0_j6.0
7(反転)
oscillation-shape-continuum-N_N3.0_j7.0
(反転)
oscillation-shape-continuum-N_N5.0_j7.0
oscillation-shape-continuum-N_N10.0_j7.0oscillation-shape-continuum-N_N100.0_j7.0
8(無振動)
oscillation-shape-continuum-N_N3.0_j8.0
(反転)
oscillation-shape-continuum-N_N5.0_j8.0
oscillation-shape-continuum-N_N10.0_j8.0oscillation-shape-continuum-N_N100.0_j8.0
9(反転)
oscillation-shape-continuum-N_N3.0_j9.0
(反転)
oscillation-shape-continuum-N_N5.0_j9.0
oscillation-shape-continuum-N_N10.0_j9.0oscillation-shape-continuum-N_N100.0_j9.0
10(反転)
oscillation-shape-continuum-N_N3.0_j10.0
(反転)
oscillation-shape-continuum-N_N5.0_j10.0
oscillation-shape-continuum-N_N10.0_j10.0oscillation-shape-continuum-N_N100.0_j10.0

 

基準振動のアニメ:

連続体の基準振動 (青線) とN 個の連成振動 (緑の点群) は, N が小さい場合, 連続体との固有振動数が異なるせいで時間経過とともにずれていく. N で一致.

jN=3N=5N=10N=100 (10倍速)
1animation_oscillations-continuum-with-N_mode_N3-j1.movanimation_oscillations-continuum-with-N_mode_N5-j1.movanimation_oscillations-continuum-with-N_mode_N10-j1.movanimation_oscillations-continuum-with-N_mode_N100-j1.mov
2animation_oscillations-continuum-with-N_mode_N3-j2.movanimation_oscillations-continuum-with-N_mode_N5-j2.movanimation_oscillations-continuum-with-N_mode_N10-j2.movanimation_oscillations-continuum-with-N_mode_N100-j2.mov
3animation_oscillations-continuum-with-N_mode_N3-j3.movanimation_oscillations-continuum-with-N_mode_N5-j3.movanimation_oscillations-continuum-with-N_mode_N10-j3.movanimation_oscillations-continuum-with-N_mode_N100-j3.mov

 

波動

ここまででは, 有限の自由度や有限の長さの系について扱ってきた. ここからは系を囲っていた境界をなくし, 波がどう伝搬するかについて考えていく.

概要

波, 波動がどういうものかを考えていくために, 現実の例をいくつか見てみる.

  • 水面波 (円, 楕円)

海の波や静かな湖に石を落としたときに丸く広がっていく波紋などのこと. いわゆる水面波と呼ばれるもので, 水面の上下運動によって振動が伝播していく.

ex_water-wave

  • ひも (横波)

ひもの一部を上げ下げするとその分の変位が, 山型のひものたわみとして他方に向かって伝搬していく.

ex_string

  • バネ (縦波)

長いバネを用意し, 滑らかな水平面上に置いた場合を考える. この時, バネの一端を軽く叩くと, バネの端が一時的に圧縮される. そして, その圧縮が1つのかたまりとなって他方へ伝搬していく.

ex_spring

  • 音 (縦波)

空気中で物体を振動させると, その周囲の空気の圧力に微小な変化が生じ, その微小変化が空間に伝搬していくものが音である. 圧縮が伝わるという意味でバネと似ている.

ex_sound

  • 電磁波 (横波)

アンテナ等に振動電流が流れると, 周囲の電磁場に振動的な変化が生じる. これが次々と広がって遠方に伝搬していく. これが電磁波である.

animation_Ez-By.mov

 

共通の性質

上記の例の間には, 「ある場所に生じた振動的変化がだんだんと他方へ移動していく」という共通する性質がある. このような性質を持つ現象を波もしくは波動と呼ぶ. すなわち,

波, 波動 : 空間のある場所に生じた物理状態の振動的変化が, 次々と隣合う部分に影響を与えることにより他の場所へと移動して伝わっていく現象

である. ここで, 波を伝えるものを媒質 (媒体, medium)と呼ぶ. 水面波における水, 音における空気を指す.

波の種類

波には,

  • 媒質の運動を伴うもの (弾性体の波, 水の波 等)

  • 場の変化のみが伝わるもの (電磁波 等)

という種類がある.

 

また, 媒質の変位の方向と波が伝わる方向の組み合わせによって縦波, 横波という種類がある. これは, 以前に連成振動の際に扱った縦振動, 横振動と発想は同じで,

  • 縦波 : 媒質の変位の方向と波の伝わる方向とが一致するもの ex_spring

  • 横波 : 媒質の変位の方向と波の伝わる方向とが互いに垂直なもの ex_string

という分類になる.

ただし, 弾性体の中を伝わる波では縦波, 横波の両方が存在するように, どちらか一方のみが存在するわけではない. また, 水の波は横波のように思えるが, 実際には縦波と横波が混ざったような円 (楕円) 運動が起きている.

電磁波は場の変位が伝わる波ではあるが, 変化する電場と磁場が波の進行方向と垂直なので, 横波として扱われる.

横波においては, その振動方向と波の進行方向とが一定の平面内に収まる場合, 特に偏波と呼ばれる.

 

波の数学的表現

波の性質を理論的に扱うために, まずは波の数学的表現をみていく. 簡単のため, ひものような一直線上を伝わる波を考える.

波の形

連続体の際と同様に, 下図のように, 波の伝わる方向をx軸にとった場合, 変位する物理量u(x,t)は位置xと時刻tの関数となる.

wave

任意の時刻 t0 において,

u(x,t0)f(x)

とすれば, f(x) は, 時刻 t0 における空間的な波の形を表している. 上図は一般的な形の波を記述したが, その波形は大まかに下記の3種類に分類できる.

  1. 周期的な波

規則的に繰り返される場合の波. 代表的なものとして正弦波, 矩形波, パルス波, 三角波, のこぎり波などがある.

wave_periodic

  1. 不規則な波

全く不規則な場合の波.

wave_random

  1. 波束

限られた狭い範囲に波が固まっていて, その他の範囲では f(x)=0 となっている場合の波.

wave_packet

 

この波形 f(x) が,

  • 一定の形を保ったまま

  • 一定速度で進行

することを考える.

実際には時刻や進行とともに波が弱まったり, 波形が変化することが多いが, その場合でも波形一定の波の性質を理解することが基礎となる.

 

下記では, 一定の波形, 一定速度で ±x 方向に進むという各波動現象を

  • 各時刻でスライスし, 波全体を見る場合

  • 各位置でスライスし, その位置での波の時間変化を見る場合

の2つの視点から見ていく. これら2つの視点は1つの波動現象の視点を変えただけなので, 本質的には同じ結果となる.

 

各時刻でスライスして見る

先のような一定の波形を保ちつつ, 一定速度で進むという現象について, まずは各時刻でスライスして見ていこう.

この見方は, 波の空間的な概形を俯瞰して見ることができる観測者が, 各時刻におけるその概形を記録していったことに相当する.

一定波形・一定速さv+x方向に進む場合

波が形を変えずに, 一定速さv+x方向に進む場合, その波は下図のように進行していく.

wave_time-slice_+x_t

上から下の順で3つの時刻 t0Δt, t0, t0+Δt でスライスしている. 一定波形なので, 波形自体は変わらず, 進行速度も一定なので, その位置間隔も一定 (vΔt) である.

時刻 t0+Δt における波の空間的な形は, f(x) がそのまま vΔt だけ右に平行移動したものなので,

u(x,t0+Δt)=f(xvΔt)

と表すことができる. 同様に, 時刻 t0Δt における波の空間的な形は, f(x) がそのまま vΔt だけ左に平行移動したものなので,

u(x,t0Δt)=f(x+vΔt)

と表すことができる.

したがって,

  • t00 : 任意の時刻 t0 を時間の原点とし,

  • Δtt : そこからの時間差 Δtt と置く

という書き直しをすれば, 時刻 t0+Δt が時刻 t となるので,

(1)u(x,t)=f(xvt)

と表すことができる.

 

一定波形・一定速さvx方向に進む場合

今度は逆に, 波が形を変えずに, 一定速さvx方向に進む場合を考える. +x 方向に進む場合と同様で, その進行の様子は下図のようになる.

wave_time-slice_-x_t

したがって, 時刻 t0+Δt における波の空間的な形は, f(x) がそのまま vΔt だけ左に平行移動したものなので,

u(x,t0+Δt)=f(x+vΔt)

と表すことができ, 時刻 t0Δt における波の空間的な形は, f(x) がそのまま vΔt だけ右に平行移動したものなので,

u(x,t0Δt)=f(xvΔt)

と表すことができる. したがって,

  • t00 : 任意の時刻 t0 を時間の原点とし,

  • Δtt : そこからの時間差 Δtt と置く

という書き直しをすれば,

(2)u(x,t)=f(x+vt)

と表すことができる.

 

まとめ (時刻スライス)

以上の ±x の両パターン (1),(2)

+x:u(x,t)=f(xvt)x:u(x,t)=f(x+vt)

をまとめて書くと, 変位 u(x,t) は,

一定波形・一定の速さで進む波を表す関数の形についての必要条件 :

(3)u(x,t)=f(xvt)

のように書くことができる. これは, 一定波形・一定の速さで進む波を表す関数の形についての最も基本的な要請であり, xvt を変数とした任意の関数であることを示している. 関数 f は波の形に関するものなので, 波の形がどんなものであっても良いということも意味している.

上図では, 山が1つの波を考えたが, 実際の波としては u(x,t)x,t ともに周期的である場合が多い. その場合には,

  • 波長 : 位置 x についての周期

  • 周期 : 時刻 t についての周期

と呼ぶ.

 

各位置でスライスして見る

一定の波形を保ちつつ, 一定速度で進むという上記と同じ現象を, 各位置でスライスして見ていってもよい. この場合, 任意の位置 x0 において,

u(x0,t)F(t)

と記述することにする. F(t) は位置 x0 における時間的な波の形を表している.

この見方は, ある位置 x に固定された観測者がその位置での波の変位の時間変化を記録していったことに相当する.

一定波形・一定速さv+x方向に進む場合

波が形を変えずに, 一定速さv+x方向に進む場合, その波は下図のように進行していく.

wave_time-slice_+x_x

左から右の順で3つの位置 x0Δx, x0, x0+Δx でスライスしている. 一定波形なので, 波形自体は変わらず, 進行速度も一定なので, その時間間隔も一定 (Δxv) である.

位置 x0+Δx における波の空間的な形は, F(t) がそのまま Δxv だけ下 (+t 方向) に平行移動したものなので,

u(x0+Δx,t)=F(tΔxv)

と表すことができる. 同様に, 位置 x0Δx における波の空間的な形は, F(t) がそのまま Δxv だけ上 (t 方向) に平行移動したものなので,

u(x0Δx,t)=F(t+Δxv)

と表すことができる.

したがって,

  • x00 : 任意の位置 x0 を位置の原点とし,

  • Δxx : そこからの空間差 Δxx と置く

という書き直しをすれば, 位置 x0+Δx が位置 x となるので,

(4)u(x,t)=F(txv)

と表すことができる.

 

一定波形・一定速さvx方向に進む場合

今度は逆に. 波が形を変えずに, 一定速さvx方向に進む場合, その波は下図のように進行していく.

wave_time-slice_-x_x

位置 x0+Δx における波の空間的な形は, F(t) がそのまま Δxv だけ上 (t 方向) に平行移動したものなので,

u(x0+Δx,t)=F(t+Δxv)

と表すことができる. 同様に, 位置 x0Δx における波の空間的な形は, F(t) がそのまま Δxv だけ下 (+t 方向) に平行移動したものなので,

u(x0Δx,t)=F(tΔxv)

と表すことができる.

したがって,

  • x00 : 任意の位置 x0 を位置の原点とし,

  • Δxx : そこからの空間差 Δxx と置く

という書き直しをすれば, 位置 x0+Δx が位置 x となるので,

(5)u(x,t)=F(t+xv)

と表すことができる.

 

まとめ (位置スライス)

以上の ±x の両パターン (4),(5)

+x:u(x,t)=F(txv)x:u(x,t)=F(t+xv)

をまとめて書けば, 変位 u(x,t) は,

一定波形・一定の速さで進む波を表す関数の形についての必要条件 :

(6)u(x,t)=F(txv)

のように書くことができる. 同じ現象を各位置でスライスして見直しただけなので, タイムスライスした際の結果 (3) u(x,t)=f(xvt) と意味は同様である.

 

まとめ

時刻スライス, 位置スライスのまとめが下記である.

             +x:u(x,t)  =  f(xvt)  =  F(txv)x:u(x,t)  =  f(x+vt)  =  F(t+xv)

正弦波

上述したように, 波の種類には, 周期的な波, 不規則的な波, 波束などがあるが, その中で特に数学的に簡単, 且つ, 重要なものが正弦波

正弦波 :

(7)v+x:  u(x,t)=Asink(xvt)    (A,k,v)vx:  u(x,t)=Asink(x+vt)    (A,k,v)

である. A振幅, k(xvt)位相と呼ばれる. cos を用いた余弦関数で表現しても良い.

wave-sin_x-t

この正弦波をある時刻で見た場合の図が上図 (a) であり, ある位置で観測した場合の図が下図 (b) である. どちらも単振動をしており, 振幅, 周期 T , 波長 λ との対応は上図の通りである.

 

さらに, この正弦波を, t-x 平面上に描いたものが下図である.

wave-sin_x-t-plane

この平面内で, 位相が等しい直線 (例えば, u(x,t) の変位が山となる箇所をつなげた直線) では, その付近での u(x,t) の変化の様子も全く等しい.

また, tΔt だけ増加したときに, 位相一定の点が x 方向に移動する距離を Δx とすると,

ΔxΔt=±v

となる. したがって, これまで単に波の速さと呼んでいた v は, 実は位相一定の点が移動する速さを意味していたことがわかる. この意味で, v位相速度と呼ばれる.

 

また, +x 方向に進む正弦波の式 (7) : u(x,t)=Asink(xvt)

u(x,t)=Asink(xvt)=Asin(k(xvt)+2π)=Asink(x+2πkvt)=u(x+2πk,t)

となるため, 空間としての1周期である波長 λ

λ=2πk

となる. これを k について書き直すと

k=2πλ=2π×()

となる. 1波長の長さの波形を1つの波として数えることにすれば, この k は「長さ 2π の区間の中にある波の数」に相当し, 波数と呼ばれる.

定義によっては, 単位長さ当たりの波の数ということで 1λ を波数と呼ぶこともある.

 

今度は, +x 方向に進む正弦波の式 (7) : u(x,t)=Asink(xvt) に対して

u(x,t)=Asink(xvt)=Asin(k(xvt)2π)=Asink(xv(t+2πkv))=u(x,t+2πkv)

として計算してみる. すると, 時刻差 2πkv で同じ変位になることから, 周期 T

T=2πkv=λv

となる. また, その逆数

ν=1T=( [Hz])

は, これまでと同様に振動数と呼ばれる. 振動数は単位時間当たりの時間的な波の数を示し, 単位は Hz で表される.

さらに, 2π 時間当たりの時間的な波の数

ω=2π×ν=2πT

について考えれば, この ω はこれまでと同様に角振動数と呼ばれる.

 

以上をまとめると, 正弦波は

u(x,t)=Asink(xvt)=Asin(kxkvt)=Asin(kx2πTt)=Asin(kxωt)

となる. これに任意定数である初期位相 ϕ を加えたものが

進行波 (正弦波)

u(x,t)=Asin(kxωtϕ)

である.

 

実際にプロットしたアニメが下図である.

 k=1k=2
ω=1wave_omega1_k1wave_omega1_k2
ω=10wave_omega10_k1wave_omega10_k2

 

波動方程式

一定波形・一定の速さで進む波を表す関数の形についての必要条件は 式 (3) u(x,t)=f(xvt) より

(8)v+x:  u(x,t)=f(xvt)(9)vx:  u(x,t)=f(x+vt)

のように書くことができる.

これらの関数から, 一定波形・一定の速さで進む波についての重要な関係式 (波動方程式) が導かれることを示す.

一定波形・一定の速さで進む波を表す関数 → 関係式

ここで, 式 (8)x,t についての2階導関数を求めてみる. 関数 f の変数部分を

sxvt

として置いた場合, x についての1階の偏導関数は

ux=dudssx  ()=duds×1=duds

となり, x についての2階の偏導関数は

2ux2=x(ux)=dds(ux)sx=dds(duds)×1(10)=d2uds2

となる.

次に, t についての1階の偏導関数は

ut=dudsst=duds×(v)=vduds

となり, t についての2階の偏導関数は

2ut2=t(ut)=dds(ut)st=dds(vduds)×(v)(11)=v2d2uds2

となる.

以上より, 式 (10) 2ux2=d2uds2, (11) 2ut2=v2d2uds2から,

(12)2ut2=v22ux2

という関係式が導かれた.

 

これは, 一定の速さvx方向に進む波の式 (9) u(x,t)=f(x+vt) や, (8), (9) の線形結合 :

(13)u(x,t)=f1(xvt)+f2(x+vt)

であっても, 計算すれば同じ関係式が得られる.

 

関係式 → 一定波形・一定の速さで進む波を表す関数

次に, 上述の逆として, 関係式 (12)

2ut2=v22ux2

を満たす関数は式 (8), (9), (13)

v+x:  u(x,t)=f(xvt)vx:  u(x,t)=f(x+vt):  u(x,t)=f1(xvt)+f2(x+vt)

のような形であることを示す.

 

まず,

sxvts+x+vt

とおく. x,t の式に書き直すと

x=12(s+s+)t=12v(s+s)

となる. すると変位 u

u(x,t)=u(s,s+)

のように s,s+ の関数として見直すことができる.

そこで, 関係式 (12) 2ut2=v22ux2 の両辺をそれぞれ計算してみる.

()=2ut2=t(ut)=t(usst+us+s+t)=t(us×(v)+us+×(v))=s(vus+vus+)st+s+(vus+vus+)s+t=s(vus+vus+)×(v)+s+(vus+vus+)×(v)=v22us2v22uss+v22us+s+v22us+2=v2(2us222uss++2us+2)
()=v22ux2=v2x(ux)=v2x(ussx+us+s+x)=v2x(us×1+us+×1)=v2s(us+us+)sx+v2s+(us+us+)s+x=v2s(us+us+)×1+v2s+(us+us+)×1=v2(2us2+22uss++2us+2)

となる. これらを関係式 (12) 2ut2=v22ux2 に代入すると,

2ut2=v22ux2  v2(2us222uss++2us+2)=v2(2us2+22uss++2us+2)  2uss+=0

となる.

ここから s+, s で積分して u(x,t) を求める. s+ で積分すると

2uss+ds+=0×ds+s+(us)ds+=0×ds+us=f1(s)    (f1(s):s+)

となる.

更に s で積分すると

usds=f1(s)ds+0×dsu=f1(s)+f2(s+)    (f1(s):s+, f2(s+):s)(14)u=f1(xvt)+f2(x+vt)

となる. これはまさに 線形結合の式 (13) u(x,t)=f1(xvt)+f2(x+vt)である.

また, f1(xvt), f2(x+vt) はそれぞれ任意関数なので, 恒等的に0でもよい. したがって, この式 (14) は, 一定の速さ v±x 方向に進む波の式 (8) f(xvt), (9) f(x+vt) を含んでいる.

 

以上より, 関係式 (12)

2ut2=v22ux2

を満たす関数は式 (8), (9), (13)

v+x:  u(x,t)=f(xvt)vx:  u(x,t)=f(x+vt):  u(x,t)=f1(xvt)+f2(x+vt)

のような一定波形・一定の速さで進む波を表す関数形であることを示せた.

 

関係式の意味 : 波動方程式

以上より,

  • 一直線上を一定の波形・一定の速さで伝わる波を表現する関数は その波の機構や媒質によらず, 関係式 2ut2=v22ux2 を満たし,

  • 逆に, 関係式 2ut2=v22ux2 を満たす関数は, 一直線上を一定の波形・一定の速さで伝わる波を表現するものとなりうる

ということがわかった.

 

このような関係式を

波動方程式

2ut2=v22ux2

と呼ぶ. これは, 連続体の際に求めた運動方程式と同じ形である.

 

波動方程式は u について線形の方程式なので, 重ね合わせの原理が成り立つ. 実際, ある時刻, ある位置に2つ以上の波が到達した場合, そこで引き起こされる現象は, 各波による変化を足し合わせたものとなる.