実施・提出期間

締切: 2024/06/05 (水) 13:30 までに, 下記の問題を実施し, 提出してください.

 

注意事項

  • 手書きで計算したものを1つのpdfにまとめて提出してください

    • 紙に直筆したものを写真 or スキャンする場合は, 中身がハッキリ読めることを確認してください

    • タブレット等を用いて電子的に手書きするのもOKです

    • 画像ファイルをそのまま何枚も提出したり, zipにまとめて提出したものは受取不可とします

  • 授業資料の解答を丸写しするのではなく, 授業内容を思い出しながら自分の手で計算するようにしてください

  • 授業直後に復習することはもちろん素晴らしいです!! その後, なるべく数日空けてから再学習として本課題を実施し, 提出することを是非試してみてください.

 

問題

下図のような両端が固定された (固定端) の弦の微小横振動を考える.

continum_string

弦を下図のような微小な線素の集合体だと考える. 弦の全長を L , 線密度 (単位長さ当たりの質量) を σ , 微小線素の長さを Δx とすると, 微小線素の質量は Δm=σ Δx となる.

continum_string_close-up

  1. 連続体の運動方程式を求めよ.

  2. 基準振動の仮定は何との対応からどのような式に置くとよいか

  3. 弦の基準振動を求めよ

  4. 弦の一般解を求めよ

  5. 一般解の唯一性を確かめよ

 

まとめ

  1. 今回の授業内容を100文字以上で自分なりにまとめてください. ただし, 写経のように丸写しすることだけはやめてください.

 

解答

連続体

下図のような両端が固定された (固定端) の弦の微小横振動を考える.

continum_string

弦を下図のような微小な線素の集合体だと考える. 弦の全長を L , 線密度 (単位長さ当たりの質量) を σ , 微小線素の長さを Δx とすると, 微小線素の質量は Δm=σ Δx となる.

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連続体の運動方程式を求めよ.

微小線素は各端において, それぞれ張力 T,T で引っ張られている. ただし, 弦の微小横振動であるため, 弦の微小線素は上下にのみ振動している. すなわち,

  • 左右 : 左右方向の力が釣り合って0.

  • 上下 : 加速度ありで運動している

という状況であるから, 運動方程式は,

(1):0=TcosθTcosθ:Δm2u(x,t)t2=TsinθTsinθ

となる. ここで, 上下の式の左辺の加速度の部分で時刻 t での偏微分を用いたのは, 変位 u(x,t) が2変数関数のためである.

微小振動なので, |θ|1,|θ|1 であるから,

(2)cosθ1, cosθ1sinθθ, sinθθ

となる. したがって, 元の運動方程式を整理すると,

(3):TT:Δm2u(x,t)t2T(θθ)

となる.

 

ここで, 微小線素の右端について考える. tanθ は時刻 t における位置 x+Δx での変位 u(x+Δx,t)x方向への傾きに相当するため,

tanθ=u(x+Δx,t)x

という関係が成り立つ. これは, 微小振動なので, |θ|1 であるから, 左辺は tanθθ であり, 右辺はテイラー展開をすると

(4)u(x+Δx,t)x=u(x,t)xΔx0+x(u(x,t)x)Δx1+

となる. この2次以降の項は Δx が微小であることから無視できるため,

(5)u(x+Δx,t)xu(x,t)x+2u(x,t)x2Δx

となる.

同様に, 微小線素の左端についても考える. tanθ は時刻 t における位置 x での変位 u(x,t)x方向への傾きに相当するため,

tanθ=u(x,t)x

という関係が成り立つ. これは, 微小振動なので, |θ|1 であるから, 左辺は tanθθ となる.

 

以上のことから, 上下についての運動方程式は

(6)Δm2u(x,t)t2T(θθ)T(tanθtanθ)T((u(x,t)x+2u(x,t)x2Δx)u(x,t)x)=T2u(x,t)x2Δx

となる. 微小線素の質量は Δm=σ Δx であり, 微小振動による近似を等号で結べば,

連続体の運動方程式

(7)2u(x,t)t2=Tσ2u(x,t)x2

が導出できた.

基準振動の仮定は何との対応からどのような式に置くとよいか

実際に, 連続体の運動の一般解を求めるために, まずは, 弦で繋がれたN 個のおもりの連成振動の拡張版という解釈から, j 番目の基準振動について,

基準振動の仮定

(8)N:xn(j)=An(j)cos(ωjt+ϕj)(9):u(j)(x,t)=A(j)(x)cos(ωjt+ϕj)

という対応関係で置くとよい.

 

弦の基準振動を求めよ

上記が元の運動方程式を満たすかを確かめていく.

実際に元の運動方程式 (7) に代入すると,

(10)2u(x,t)t2=Tσ2u(x,t)x2 2t2(A(j)(x)cos(ωjt+ϕj))=Tσ2x2(A(j)(x)cos(ωjt+ϕj)) A(j)(x)ωj2cos(ωjt+ϕj)=Tσ2A(j)(x)x2cos(ωjt+ϕj) A(j)(x)ωj2=Tσ2A(j)(x)x2 2A(j)(x)x2=σωj2TA(j)(x) d2A(j)(x)dx2=σωj2TA(j)(x)

となる. ここで, 波数 pj

pj2σωj2T    pj=σTωj

と置くと,

d2A(j)(x)dx2=pj2A(j)(x)

となる. これは変数が時刻 t ではなく位置 x という違いはあれど, 式の形としては単振動の式と同じである. したがって, 基準振動の概形 A(j)(x)

基準振動の概形 A(j)(x)

(11)A(j)(x)=A(j)sin(pjx+θ)

となる.

 

ここで, 弦の両端の境界条件 (固定端) を考える. 固定端なので

境界条件 (固定端)

u(0,t)=0u(L,t)=0

と記述できる. この境界条件を基準振動の式 (9)

u(j)(x,t)=A(j)(x)cos(ωjt+ϕj)

に代入すると,

0=u(j)(0,t)=A(j)(0)cos(ωjt+ϕj)0=u(j)(L,t)=A(j)(L)cos(ωjt+ϕj)

となるため, この式が成立するためには

A(j)(0)=0A(j)(L)=0

を満たす必要がある. したがって, これを基準振動の概形 (11)

A(j)(x)=A(j)sin(pjx+θ)

に代入すると

0=A(j)(0)=A(j)sin(0+θ)0=A(j)(L)=A(j)sin(pjL+θ)

となる. これは, A(j)=0 という無振動な場合を除けば, sinθ=0 となるため,

θ=0

となる (θ=πA(j)A(j) という任意性で θ=0 と同一視できる). したがって,

sinpjL=0pjL=jπ  (j)pj=jπL  (j)

となる. ここで, j については

  • j=0    pj=0    A(j)(x)=0 となり, 無振動なので無意味

  • j<0    pj<0    A(j)(x)=A(j)sin(pjx) となり, A(j)A(j) という任意性で j>0 と同一

となることから, j は正の整数であることがわかる. 自由度 N の際はj の上限 N があったが, 連続体では位置xという連続変数になったため上限はない.

 

以上より, j の範囲がわかったので, 波数

pj=jπL  (j=1,2,...)

が求まった. これにより, 基準振動の概形も

(12)A(j)(x)=A(j)sin(pjx)=A(j)sin(jπLx)    (j=1,2,...)

と求まる.

そして, 基準振動についても

u(j)(x,t)=A(j)sin(jπLx)cos(ωjt+ϕj)(:A(j), ϕj)

として求まった.

弦の一般解を求めよ

各基準振動の重ね合わせを考えると,

(13)u(x,t)=j=1u(j)(x,t)=j=1A(j)sin(jπLx)cos(ωjt+ϕj)     (:A(j), ϕj)     (j=1,2,...)

となる. 元の方程式が線形なので, この1次結合の式も元の運動方程式を満たす. また, 任意定数の数もちょうどであるため, これが一般解となる.

 

一般解の唯一性を確かめよ

導入と命題

ここまでで求めた手法は, 元の微分方程式から基準振動という特殊な解を, 推察を利用して求め, その線形結合を作ることで, 与えられた境界条件と初期条件を満たす解 (一般解) を見つける, というものだった.

導出過程に推察を含むことから, もしかすると求めた解以外の解がありうるかもしれない. しかしそれでは一般解が複数存在することになってしまう. したがって, 求めた解の唯一性を確認しておく必要がある.

やるべきことを整理しよう. 今回の証明すべき命題は,


命題

連続体の運動方程式

2u(x,t)t2=Tσ2u(x,t)x2

の解において, 「与えられた境界条件

u(0,t)=0u(L,t)=0

と初期条件

u(x,t=0)=f(x):(14)|u(x,t)t|t=0=g(x):

を満たす解」はただ1つしかないことを証明せよ


である. これを以下で証明していく.

証明

実際に確かめていく.

「以上の境界条件と初期条件を満たす解」が2つあったと仮定し, その不適/適を判断することで上記命題の正/否を考えていく. 各解をそれぞれ u1(x,t),u2(x,t) とし,

(15)D(x,t)u1(x,t)u2(x,t) 

という差の関数 D(x,t) を考える.

元の運動方程式は u(x,t) に関する線形方程式のため, その解同士の線形結合 D(x,t) もまた, 元の運動方程式を満たす. 境界条件についても

D(x,t) の境界条件

(16)D(0,t)=u1(0,t)u2(0,t)=00=0D(L,t)=u1(L,t)u2(L,t)=00=0

となるため, 境界条件を満たすことが確かめられる.

D(x,t) の初期条件は, u(x,t) の初期条件 (14) u(x,0)=f(x), |u(x,t)t|t=0=g(x) を用いれば D(x,t) の初期条件

D(x,0)=u1(x,0)u2(x,0)=f(x)f(x)(17)=0|D(x,t)t|t=0=|u1(x,t)t|t=0|u2(x,t)t|t=0=g(x)g(x)(18)=0

となる.

ここで, D(x,t)x,t に関する2階偏導関数まで連続であると仮定し, x についての或る積分

(19)J(t)120L{(D(x,t)t)2+Tσ(D(x,t)x)2}dx

を考えてみよう. この積分 J(t) を時刻 t で微分すると,

dJ(t)dt=120L{ddt(D(x,t)t)2+Tσddt(D(x,t)x)2}dx=120L{2D(x,t)t2D(x,t)t2+Tσ2D(x,t)x2D(x,t)t x}dx=0L{D(x,t)t2D(x,t)t2+TσD(x,t)x2D(x,t)t x}dx=0L{D(x,t)t2D(x,t)t2+Tσx(D(x,t)xD(x,t)t)Tσ2D(x,t)x2D(x,t)t}dx=0L{D(x,t)t(2D(x,t)t2Tσ2D(x,t)x2)+Tσx(D(x,t)xD(x,t)t)}dx      : 2u(x,t)t2=Tσ2u(x,t)x2=0LTσx(D(x,t)xD(x,t)t)dx=Tσ[D(x,t)xD(x,t)t]0L

となる. 固定端の境界条件より, x=0, L という端点では u(x,t) は時刻経過で変化しないため,

|D(x,t)t|x=0=|u1(x,t)t|x=0|u2(x,t)t|x=0=00=0|D(x,t)t|x=L=|u1(x,t)t|x=L|u2(x,t)t|x=L=00=0

となる. すなわち, 端点では常に Dt=0となる. したがって, 先の1回微分は

dJ(t)dt=Tσ[D(x,t)xD(x,t)t]0L=Tσ{|D(x,t)xD(x,t)t|x=L|D(x,t)xD(x,t)t|x=0}=Tσ{|D(x,t)x|x=L|D(x,t)t|x=L|D(x,t)x|x=0|D(x,t)t|x=0}=Tσ{|D(x,t)x|x=L×0|D(x,t)x|x=0×0}=0

となる. したがって,

(20)J(t)=

となる. 一方, 時刻 t=0 における J(t=0) は, 初期条件 (17) D(x,0)=0, (18) |D(x,t)t|t=0=0 を用いれば

J(0)=120L{(|D(x,t)t|t=0)2+Tσ(|D(x,t)x|t=0)2}dx=120L{02+Tσ(D(x,0)x)2}dx=120L{Tσ( 0x)2}dx=120L{Tσ02}dx=0    ( 00)

となる. したがって, 式 (20) J(t)= と合わせれば

J(t)=0

となり, 積分 J(t) は恒等的に0であることがわかる.

また, 積分 J(t) (19)

J(t)=120L{(D(x,t)t)2+Tσ(D(x,t)x)2}dx

の被積分関数 (D(x,t)t)2+Tσ(D(x,t)x)2 は, 連続関数であり, 且つ, 各項が2乗項で係数も正であることから非負である.

すると, 積分結果である J(t) が恒等的に0であることを踏まえると, その積分範囲 0xL において, 被積分関数内の各項も0 :

D(x,t)t=0D(x,t)x=0

である必要がある. すると, 全微分 dD(x,t) も0 :

dD(x,t)=D(x,t)tdt+D(x,t)xdx=0+0=0

となる. したがって,

D(x,t)=

となる. D(t) の初期条件は式 (17) より D(x,0)=0 であることを踏まえると

D(x,t)=0

である必要がある. D(x,t) は差の関数 (15) D(x,t)=u1(x,t)u2(x,t) なので

u1(x,t)=u2(x,t)

が成り立つ. すなわち, 解はただ1つしかなく, 命題が成立することが証明できた.

したがって, 今回求めた解が唯一の解であり, その他の解は存在しないのである.