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任意性によってθ=0とθ=πが同じでθ=0になる理由があまりわからなかった

境界条件 (付帯条件) を考える.

A0(j)=0 の場合 (左の壁)

An(j) の式 : An(j)=A(j)sin(pjn+θ) より,

A0(j)=A(j)sinθ  (:A0(j)=0)0=A(j)sinθ

となる. A(j)=0という無振動な場合を除けば θ=0,π となりうる. しかし, A(j) の任意性 (A(j)は元々任意定数なので正負含めて様々な値を取れる. また, A(j)j番目の基準振動内で一定の定数なので, 値の大小・正負は基準振動の概形に影響を与えない. ゆえに, θ=πθ=0 と本質的に同じ) より, θ=πθ=0 と同じなので, 結局,

θ=0

となる.

 

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今回の内容はこれまでのより難しく感じた。なぜ難しく感じたのか考えてみると、基準振動がいまいち理解できていなかったので、基準振動についてもう一度解説してほしいです。 基準振動とはどういうものだったのでしょうか。 重りの個数分だけ基準振動があるという解釈で大丈夫ですか。 そして基準振動の数だけ固有の振動数と振幅があるということですか

元々, 基準振動とは, 全てのおもりが同じ角振動数で振動している場合の振動のことです. この基準振動の性質を調べていくと, 前回やったように, 「重りの個数 (N個) 分だけ基準振動の種類がある」ことがわかります.

また, ・ここまで取り扱ってきた運動方程式群が, 線形連立微分方程式であり, ・各基準振動はそれぞれ独立な振動 (それぞれ角振動数が異なる別の振動) である ことから, ・各基準振動の解を重ね合わせることで一般解が作れる ということになります.

「基準振動の数だけ固有の振動数と振幅がある」という質問については, 基準振動の定義からYESとなります.

 

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ちょっと分かりづらかったです。 nとjの使い分けがよく分からなかったです。

何番目のおもりか, という添字を n=(0,) 1,,N (,N+1) 何番目の基準振動か, という添字を j と書いています.

 

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普段の授業よりもなぜその操作をしようと思ったのかが分からなかった

前回の自由度2の連成振動はなんとか理解することができたが、数が増えてこんがらがってしまった。

式がとても複雑で、変換が分かりずらく難しく感じた。

よくわからなかった

 

連成振動 (多自由度の振動)

弦でつながれたN個の質量mのおもりの微小横振動の一般解の導出

この後に取り扱う連続体の運動につなげやすいように, 下図のような「弦でつながれたN個の質量mのおもりの微小横振動」を考える.

おもり同士の間隔をa, 各おもりの変位を x1,...,xn,...,xN とする. 弦の張力を T,T とし, 伸びによる張力の変化は考えないこととし, 弦の質量も無視する. 各おもりに作用する重力も考慮しないことにする. また, 弦の両端に仮想的なおもり x0, xN+1 があるものとし, その境界条件 (付帯条件) を静止 (x0(t)=0, xN+1(t)=0) とする.

line-N

この時, 各おもりは上下にのみ振動しており,

  • 左右方向 : 釣り合っている

  • 上下方向 : 加速度を持って運動する

となっている. したがって, この系の運動方程式は

:0=TcosθTcosθ:md2xn(t)dt2=TsinθTsinθ

となる. 微小振動なので, |θ|1,|θ|1 であるから,

cosθ1, cosθ1sinθtanθ, sinθtanθ

となる. したがって, 元の運動方程式は

:0=TT:md2xn(t)dt2=TtanθTtanθ

となる. ここで, 左右の運動方程式から T=T であることがわかるので, 上下の運動方程式は

:md2xn(t)dt2=T(tanθtanθ)

となる.

さらに, 上図を拡大させたものが下図である.

line-N_close-up

この図からわかるように, tanθ, tanθ はそれぞれ

tanθ=xn+1(t)xn(t)atanθ=xn(t)xn1(t)a

という関係にある. 以上より, 上下についての運動方程式 md2xn(t)dt2=T(tanθtanθ)

(1)md2xn(t)dt2=T(xn+1(t)xn(t)axn(t)xn1(t)a)

となるので, 整理すると

運動方程式

(2)d2xn(t)dt2=Tma(2xn(t)xn+1(t)xn1(t))      (n=1,...,N)(:x0(t)=0, xN+1(t)=0)

が得られる.

これは, 前回の, バネで繋がれたN個のおもりの微小縦振動についての運動方程式

d2xndt2=km(2xnxn1xn+1)      (n=1,...,N)(:x0(t)=0,  xN+1(t)=0)

と, 係数が異なるだけで本質的には同じ形の式である.

対応関係としては kTa という違いがあるだけなので,

 バネ 縦振動弦 横振動
運動方程式d2xndt2=km(2xnxn1xn+1)d2xndt2=Tma(2xnxn1xn+1)
違いkTa
固有振動数 ωj2kmsinj2(N+1)π2Tmasinj2(N+1)π
波数 pjjN+1π左と同じ
基準振動の概形 An(j)A(j)sinjN+1πn左と同じ
基準振動 xn(j)xn(j)=An(j)cos(ωjt+ϕj)左と同じ
一般解 xn(t)j=1NA(j)sin(jN+1πn)cos(ωjt+ϕj)左と同じ

上記 : j=1,...,N,    n=1,...,N

として, 弦でつながれたN個の質量mのおもりの微小横振動においても, 同様に一般解が導出できる.

 

基準振動のプロット アニメ

実際に基準振動をプロットしたアニメが下図である.

おもりの数 N モード 結果 アニメ
5 1 normal-node_N5_j1.mov
5 2 normal-node_N5_j2.mov
5 3 normal-node_N5_j3.mov
5 4 normal-node_N5_j4.mov
5 5 normal-node_N5_j5.mov
15 5 normal-node_N15_j5.mov

 

一般解のプロット アニメ

N=3A(j) の割合を[1,0,0][1,0,1][1,1,1] と変えていく.

おもりの数 NA(j), ϕj結果アニメ
3モード1
A(j)=[1,0,0] ϕj=0
normal-node_general-x_N3_A1-0-0.mov
3モード1+3(小)
A(j)=[1,0,0.1] ϕj=0
normal-node_general-x_N3_A1-0-0.1.mov
3モード1+3(中)
A(j)=[1,0,0.5] ϕj=0
normal-node_general-x_N3_A1-0-0.5.mov
3モード1+3(大)
A(j)=[1,0,1] ϕj=0
normal-node_general-x_N3_A1-0-1.mov
3モード1+2+3
A(j)=[1,1,1] ϕj=0
normal-node_general-x_N3_A1-1-1.mov

 

A(j) の割合を[1,...,1]で固定したまま, N=3, 9, 20, 100 とおもりの数を増やしていく.

おもりの数 N A(j),φj 結果 アニメ
3 A(j)=1,φj=0 normal-node_general-x_N3_A1-1-1.mov
9 A(j)=1,φj=0 normal-node_general-x_N9_A1.mov
20 A(j)=1,φj=0 normal-node_general-x_N20_A1.mov
100 A(j)=1,φj=0 normal-node_general-x_N100_A1.mov

 

連続体の運動

導入

ここまでは多数の振動子の振動を考えていたが, その数を極限的に増やし, 「無数の振動子の連成振動」を考えたものが連続体の振動に相当する. 具体的には弦, 棒, 膜などの変形する連続物体の弾性振動について考える.

基本的な計算手順はこれまでの連成振動の場合と同じで,

  • 運動方程式を立て,

  • 基準振動を推察して導出し,

  • その重ね合わせとして一般解を導出する

というものである.

例を挙げて具体的に計算してみよう.

下図のような両端が固定された (固定端) の弦の微小横振動を考える.

continum_string

なお, 弦の振動には

  • 横振動 : 弦の各微小部分が弦の長さの方向と垂直の方向に振動する現象

  • 縦振動 : 弦の各微小部分が弦の長さの方向に振動する現象

の2種類があり, 両方同時に起こる場合もあるが, 今回は横振動のみを取り扱う.

 

今回のような弦の振動現象は

  • t : ある時刻,

  • x : ある位置

という2変数を用いた関数

  • u(x,t) : 平衡 (釣り合い) 位置からどれくらい変位しているか

によって記述できる.

この例の場合であれば, 弦をピンと張って静止している状態が平衡状態であり, 位置 x はある端点からの弦の長さで決まり, その位置での時刻 t での弦の揺れが u(x,t) で表現される.

この例は, 前述の「弦でつながれたN個の質量mのおもりの微小横振動」と似た系であり, 以下の対応関係がある.

 N個のおもりの連成振動連続体の運動
変位xn(t)u(x,t)
横軸 : 各おもりの番号x : 弦の位置

 

運動方程式

弦を下図のような微小な線素の集合体だと考える. 弦の全長を L , 線密度 (単位長さ当たりの質量) を σ , 微小線素の長さを Δx とすると, 微小線素の質量は Δm=σ Δx となる.

continum_string_close-up

微小線素は各端において, それぞれ張力 T,T で引っ張られている. ただし, 弦の微小横振動であるため, 弦の微小線素は上下にのみ振動している. すなわち,

  • 左右 : 左右方向の力が釣り合って0

  • 上下 : 加速度ありで運動している

という状況であるから, 運動方程式は,

:0=TcosθTcosθ:Δm2u(x,t)t2=TsinθTsinθ

となる. ここで, 上下の式の左辺の加速度の部分で時刻 t での偏微分を用いたのは, 変位 u(x,t) が2変数関数のためである.

微小振動なので, |θ|1,|θ|1 であるから,

cosθ1, cosθ1sinθtanθ, sinθtanθ

となる. したがって, 元の運動方程式を整理すると,

:TT:Δm2u(x,t)t2T(tanθtanθ)

となる.

 

ここで, 微小線素の右端について考える. tanθ は時刻 t における位置 x+Δx での変位 u(x+Δx,t)x方向への傾きに相当するため,

tanθ=u(x+Δx,t)x

という関係が成り立つ. これは, 微小振動なので, |θ|1 であるから, (左辺は tanθθ であり, ) 右辺はテイラー展開をすると

u(x+Δx,t)x=10!u(x+0,t)xΔx0+11!x(u(x+0,t)x)Δx1+12!22x(u(x+0,t)x)Δx2+=u(x,t)x+2u(x,t)2xΔx+123u(x,t)3xΔx2+

となる. この2次以降の項は Δx が微小であることから無視できるため,

u(x+Δx,t)xu(x,t)x+2u(x,t)x2Δx

となる.

同様に, 微小線素の左端についても考える. tanθ は時刻 t における位置 x での変位 u(x,t)x方向への傾きに相当するため,

tanθ=u(x,t)x

という関係が成り立つ. (これは, 微小振動なので, |θ|1 であるから, 左辺は tanθθ となる. )

 

以上のことから, 上下についての運動方程式は

Δm2u(x,t)t2T(tanθtanθ)T((u(x,t)x+2u(x,t)x2Δx)u(x,t)x)=T2u(x,t)x2Δx

となる. 微小線素の質量は Δm=σ Δx (σ は線密度) であり, 微小振動による近似を等号で結べば,

2u(x,t)t2=TΔxΔm2u(x,t)x2=TΔxσΔx2u(x,t)x2=Tσ2u(x,t)x2

となり,

連続体の運動方程式

(3)2u(x,t)t2=Tσ2u(x,t)x2

が導出できた.

これは, 弦で繋がれた N 個のおもりの運動方程式 (2) :

d2xn(t)dt2=Tma(2xn(t)xn+1(t)xn1(t))      (n=1,...,N)(:x0(t)=0, xN+1(t)=0)

を拡張した意味を持つ. 左辺はほぼそのままであるし, 右辺については, 整理する前の式 (1) :

md2xn(t)dt2=T(xn+1(t)xn(t)axn(t)xn1(t)a)

で考えてみよう. 距離 a の等間隔に質量 m のおもりがつながっていたので, 仮想的な線密度を σNma とすれば,

line-N_close-up

d2xn(t)dt2=Tm(xn+1(t)xn(t)axn(t)xn1(t)a)=TσNa(xn+1(t)xn(t)axn(t)xn1(t)a)=TσNa((n,n+1)(n,n+1)(n1,n)(n1,n))=TσNa((xn+1(t)+xn(t)2)(xn(t)+xn1(t)2))=TσN(xn+1(t)+xn(t)2)(xn(t)+xn1(t)2)a=TσN(xn+1(t)+xn(t)21)(xn(t)+xn1(t)21)()=TσN(xn(t)(n)2)

となり, 横軸方向 ( 番目方向) への2階偏導関数に相当する. そのため, 連続体の運動方程式のように位置 x 方向への2階偏導関数 2u(x,t)x2 と対応がつく.

弦で繋がれた N 個のおもりの例を拡張した意味を持つのであれば, 連続体の運動においても, 弦の各部分が同一の角振動数で振動する基準振動が起こるであろうと推察できる.

また 連続体の運動方程式は, 変位 u について線形の方程式であることから, 解の重ね合わせが成立するため, これまで同様に基準振動の線形結合で一般解を表現することができる.

 

また, 係数について

v2Tσ

という v を用いれば,

波動方程式

2u(x,t)t2=v22u(x,t)x2

が求まる.

 

弦の基準振動

実際に, 連続体の運動の一般解を求めるために, まずは, 「弦で繋がれたN 個のおもりの連成振動の拡張版」という解釈から, j 番目の基準振動について,

基準振動の仮定

N:xn(j)=An(j)cos(ωjt+ϕj) (nx)(4):u(j)(x,t)=A(j)(x)cos(ωjt+ϕj)

という対応関係で置いてみて, これが先程求めた連続体の運動方程式を満たすかを確かめていく.

実際に連続体の運動方程式 (3) 2u(x,t)t2=Tσ2u(x,t)x2 に代入すると,

2u(x,t)t2=Tσ2u(x,t)x2 2t2(A(j)(x)cos(ωjt+ϕj))=Tσ2x2(A(j)(x)cos(ωjt+ϕj)) A(j)(x)ωj2cos(ωjt+ϕj)=Tσ2A(j)(x)x2cos(ωjt+ϕj) A(j)(x)ωj2=Tσ2A(j)(x)x2 d2A(j)(x)dx2=σωj2TA(j)(x)    (  A(j)(x)x)(5)=pj2A(j)(x)    (   pjσTωj)

となる. これは変数が時刻 t ではなく位置 x という違いはあれど, 式の形としては単振動の式と同じである. したがって, 基準振動の概形 A(j)(x)

基準振動の概形 A(j)(x)

(6)A(j)(x)=A(j)sin(pjx+θ)

となれば, 元の運動方程式を満たすことがわかる.

 

ここで, 弦の両端の境界条件 (固定端) を考える. 固定端なので

境界条件 (固定端)

:u(0,t)=0:u(L,t)=0

と記述できる. この境界条件を基準振動の式 (4) u(j)(x,t)=A(j)(x)cos(ωjt+ϕj) に代入すると,

0=u(j)(0,t)=A(j)(0)cos(ωjt+ϕj)0=u(j)(L,t)=A(j)(L)cos(ωjt+ϕj)

となるため, この式が任意の時刻 t で成立するためには

A(j)(0)=0A(j)(L)=0

を満たす必要がある. したがって, これを基準振動の概形 (6) A(j)(x)=A(j)sin(pjx+θ) に代入すると

0=A(j)(0)=A(j)sin(0+θ)0=A(j)(L)=A(j)sin(pjL+θ)

となる. これは, A(j)=0 という無振動な場合を除けば, 第1式は sinθ=0 となるため,

θ=0

となる (θ=πA(j)A(j) という任意性で θ=0 と本質的には同一視できる). したがって, 第2式は

sin(pjL+0)=0  sinpjL=0  pjL=jπ  (j)  pj=jπL  (j)

となる. ここで, j については基準振動の概形 A(j)(x)=A(j)sin(pjx+θ)=A(j)sin(pjx) から

  • j=0    pj=0    A(j)(x)=0 となり, 無振動なので無意味

  • j<0    pj<0    A(j)(x)=A(j)sin(pjx) となり, A(j)A(j) という任意性で j>0 と同一

となることから, j は自然数であることがわかる. 自由度 N の際はj の上限 N があったが, 連続体では位置xという連続変数になったため上限はない.

 

以上より, j の範囲がわかったので, 波数は

波数

pj=jπL  (j=1,2,...)

が求まった. これにより, 基準振動の概形も

基準振動の概形

A(j)(x)=A(j)sin(pjx)=A(j)sin(jπLx)    (j=1,2,...)

と求まる.

pjx2πで1周期 → 波長は pjλj=2πλj=2πpj

そして, 基準振動についても

基準振動

u(j)(x,t)=A(j)sin(jπLx)cos(ωjt+ϕj)(:A(j), ϕj)

として求まった. これは固有振動とも呼ばれる.

各基準振動での結果を表にしたものが下記である.

pjの定義式 (5) pjσTωj より, 角振動数は ωj=Tσpj と表せる

モード j概形 A(j)(x)=A(j)sin(jπLx)波数 pj波長 角振動数 ωj
1oscillation-shape-continuum_j1λ1=2L
2oscillation-shape-continuum_j2
3oscillation-shape-continuum_j3
4oscillation-shape-continuum_j4
5oscillation-shape-continuum_j5ω5=Tσ5p1=5ω1

 

各モードのアニメは下図

モード j結果アニメ
1animation_oscillations-continuum_mode1.movanimation_oscillations-continuum_mode1.mov
2animation_oscillations-continuum_mode2.movanimation_oscillations-continuum_mode2.mov
3animation_oscillations-continuum_mode3.movanimation_oscillations-continuum_mode3.mov
4animation_oscillations-continuum_mode4.movanimation_oscillations-continuum_mode4.mov
5animation_oscillations-continuum_mode5.movanimation_oscillations-continuum_mode5.mov

 

一般解

各基準振動の重ね合わせを考えると,

u(x,t)=j=1u(j)(x,t)=j=1A(j)sin(jπLx)cos(ωjt+ϕj)     (:A(j), ϕj)     (j=1,2,...)

となる. 元の方程式が線形なので, この1次結合の式も元の運動方程式を満たす. また, 任意定数の数もちょうどであるため, これが一般解となる.

改めて書くと

一般解

u(x,t)=j=1A(j)sin(jπLx)cos(ωjt+ϕj)     (:A(j), ϕj)     (j=1,2,...)

である.

したがって, 多自由度の連成振動と同様に, 実際に弦を振動させた場合, 1つの基準振動が単独で起こることは特別な場合であって, 一般には, 多くの基準振動が重なり合った振動が起こる.

その重なり具合, すなわち未定定数 A(j),ϕj は弦の運動の初期条件が示されれば決定される. 今回の系の場合であれば, 時刻 t=0 における弦の各点の位置, 速度を x の関数として与えればよい.

このようにして与えられた初期条件から各未定定数を決定する手続きは, フーリエ展開の係数を求めることに相当する.

 

jmax未定定数結果アニメ
5モード1
A(j)=[1,0,0,0,0] ϕj=0
animation_oscillations-continuum_general_jmax5_1-0-0-0-0.movanimation_oscillations-continuum_general_jmax5_1-0-0-0-0.mov
5モード1+5(小)
A(j)=[1,0,0,0,0.1] ϕj=0
animation_oscillations-continuum_general_jmax5_1-0-0-0-0.1.movanimation_oscillations-continuum_general_jmax5_1-0-0-0-0.1.mov
5モード1+5(中)
A(j)=[1,0,0,0,0.5] ϕj=0
animation_oscillations-continuum_general_jmax5_1-0-0-0-0.5.movanimation_oscillations-continuum_general_jmax5_1-0-0-0-0.5.mov
5モード1+5
A(j)=[1,0,0,0,1] ϕj=0
animation_oscillations-continuum_general_jmax5_1-0-0-0-1.movanimation_oscillations-continuum_general_jmax5_1-0-0-0-1.mov
5モード1+2+3+4+5
A(j)=[1,1,1,1,1] ϕj=0
animation_oscillations-continuum_general_jmax5_1-1-1-1-1.movanimation_oscillations-continuum_general_jmax5_1-1-1-1-1.mov
10A(j)=[1,...,1] ϕj=0animation_oscillations-continuum_general_jmax10_1--1.movanimation_oscillations-continuum_general_jmax10_1--1.mov
100A(j)=[1,...,1] ϕj=0animation_oscillations-continuum_general_jmax100_1--1.movanimation_oscillations-continuum_general_jmax100_1--1.mov

 

一般解の唯一性の確認

命題

ここまでで求めた手法は, 元の微分方程式から基準振動という特殊な解を, 推察を利用して求め, その線形結合を作ることで, 与えられた境界条件と初期条件を満たす解 (一般解) を見つける, というものだった.

導出過程に推察を含むことから, もしかすると求めた解以外の解がありうるかもしれない. しかしそれでは一般解が複数存在することになってしまう. したがって, 求めた解の唯一性を確認しておく必要がある.

やるべきことを整理しよう. 今回の証明すべき命題は,


命題

連続体の運動方程式

2u(x,t)t2=Tσ2u(x,t)x2

の解において, 「与えられた境界条件

u(0,t)=0u(L,t)=0

と初期条件

u(x,t=0)=f(x):(7)|u(x,t)t|t=0=g(x):

を満たす解」はただ1つしかないことを証明せよ


である. これを以下で証明していく.

証明

実際に確かめていく.

「以上の境界条件と初期条件を満たす解」が2つあったと仮定し, その不適/適を判断することで上記命題の正/否を考えていく. 各解をそれぞれ u1(x,t),u2(x,t) とし,

(8)D(x,t)u1(x,t)u2(x,t) 

という差の関数 D(x,t) を考える.

元の運動方程式は u(x,t) に関する線形方程式のため, その解同士の線形結合 D(x,t) もまた, 元の運動方程式を満たす:

(9)2D(x,t)t2=Tσ2D(x,t)x2

境界条件についても

D(x,t) の境界条件

(10)D(0,t)=u1(0,t)u2(0,t)=00=0D(L,t)=u1(L,t)u2(L,t)=00=0

となるため, 境界条件を満たすことが確かめられる.

D(x,t) の初期条件は, u(x,t) の初期条件 (7) u(x,0)=f(x), |u(x,t)t|t=0=g(x) を用いれば D(x,t) の初期条件

D(x,0)=u1(x,0)u2(x,0)=f(x)f(x)(11)=0|D(x,t)t|t=0=|u1(x,t)t|t=0|u2(x,t)t|t=0=g(x)g(x)(12)=0

となる.

ここで, D(x,t)x,t に関する2階偏導関数まで連続であると仮定し, x についての或る積分

(13)J(t)120L{(D(x,t)t)2+Tσ(D(x,t)x)2}dx

を考えてみよう.

差の解 u(x,t)=D(x,t) における連続体の運動方程式 2D(x,t)t2=Tσ2D(x,t)x2 の両辺の和に関する積分である.

この積分 J(t) を時刻 t で微分すると,

dJ(t)dt=120L{ddt(D(x,t)t)2+Tσddt(D(x,t)x)2}dx=120L{2D(x,t)t2D(x,t)t2+Tσ2D(x,t)x2D(x,t)t x}dx=0L{D(x,t)t2D(x,t)t2+TσD(x,t)x2D(x,t)t x}dx=0L{D(x,t)t2D(x,t)t2+Tσx(D(x,t)xD(x,t)t)Tσ2D(x,t)x2D(x,t)t}dx=0L{D(x,t)t(2D(x,t)t2Tσ2D(x,t)x2)+Tσx(D(x,t)xD(x,t)t)}dx      : 2u(x,t)t2=Tσ2u(x,t)x2=0LTσx(D(x,t)xD(x,t)t)dx=Tσ[D(x,t)xD(x,t)t]0L

となる. 固定端の境界条件より, x=0, L という端点では u(x,t) は時刻経過で変化しないため,

|D(x,t)t|x=0=|u1(x,t)t|x=0|u2(x,t)t|x=0=00=0|D(x,t)t|x=L=|u1(x,t)t|x=L|u2(x,t)t|x=L=00=0

となる. すなわち, 端点では常に Dt=0となる. したがって, 先の1回微分は

dJ(t)dt=Tσ[D(x,t)xD(x,t)t]0L=Tσ{|D(x,t)xD(x,t)t|x=L|D(x,t)xD(x,t)t|x=0}=Tσ{|D(x,t)x|x=L|D(x,t)t|x=L|D(x,t)x|x=0|D(x,t)t|x=0}=Tσ{|D(x,t)x|x=L×0|D(x,t)x|x=0×0}=0

となる. したがって,

(14)J(t)=

となる. 一方, 時刻 t=0 における J(t=0) は, 初期条件 (11) D(x,0)=0, (12) |D(x,t)t|t=0=0 を用いれば

J(0)=120L{(|D(x,t)t|t=0)2+Tσ(|D(x,t)x|t=0)2}dx=120L{02+Tσ(D(x,0)x)2}dx=120L{Tσ( 0x)2}dx=120L{Tσ02}dx=0    ( 00)

となる. したがって, 式 (14) J(t)= と合わせれば

J(t)=0

となり, 積分 J(t) は恒等的に0であることがわかる.

また, 積分 J(t) (13)

J(t)=120L{(D(x,t)t)2+Tσ(D(x,t)x)2}dx

の被積分関数 (D(x,t)t)2+Tσ(D(x,t)x)2 は, 連続関数であり, 且つ, 各項が2乗項で係数も正であることから非負である.

すると, 積分結果である J(t) が恒等的に0であることを踏まえると, その積分範囲 0xL において, 被積分関数内の各項も0 :

D(x,t)t=0D(x,t)x=0

である必要がある. すると, 全微分 dD(x,t) も0 :

dD(x,t)=D(x,t)tdt+D(x,t)xdx=0+0=0

となる. したがって,

D(x,t)=

となる. D(t) の初期条件は式 (11) より D(x,0)=0 であることを踏まえると

D(x,t)=0

である必要がある. D(x,t) は差の関数 (8) D(x,t)=u1(x,t)u2(x,t) なので

u1(x,t)=u2(x,t)

が成り立つ. すなわち, 解はただ1つしかなく, 命題が成立することが証明できた.

したがって, 今回求めた解が唯一の解であり, その他の解は存在しないのである.

 

 

N個の連成振動と連続体の基準振動の形の対応について

 N個の連成振動連続体
固有振動数2Tmasinj2(N+1)πTσjπL
基準振動の概形An(j)=A(j)sinjN+1πnA(j)(x)=A(j)sin(jπLx)
基準振動xn(j)=An(j)cos(ωjt+ϕj)u(j)(x,t)=A(j)(x)cos(ωjt+ϕj)

基準振動の概形は任意のNだと, 連続体の場合の概形上に離散的にポツポツと存在することになる. N の極限では一致 :

(N)=A(j)sinjN+1πn=A(j)sinj(N+1)aπna=A(j)sinjLπ×(n)    ( (n)=na, L=a(N+1))      (N()) N (,a0)A(j)sinjLπx    ( (n)x)=()      (N)

N が小さい場合, 連成振動と連続体の固有振動数は一致しないが, Nを大きくした極限を考えると両者は一致する:

(N)=2Tmasinj2(N+1)π N2Tmaj2(N+1)π    ( |x|1sinxx)=Tσaaj(N+1)π    ( m=σa)=Tσja(N+1)π=TσjπL    ( L=a(N+1))=()

実際に図にしたものが下記.

基準振動の概形:

連続体の基準振動の概形 (青線) の上に, 離散的にポツポツとN個の振動子が存在. N で一致

jN=3N=5N=10N=100
1oscillation-shape-continuum-N_N3.0_j1.0oscillation-shape-continuum-N_N5.0_j1.0oscillation-shape-continuum-N_N10.0_j1.0oscillation-shape-continuum-N_N100.0_j1.0
2oscillation-shape-continuum-N_N3.0_j2.0oscillation-shape-continuum-N_N5.0_j2.0oscillation-shape-continuum-N_N10.0_j2.0oscillation-shape-continuum-N_N100.0_j2.0
3oscillation-shape-continuum-N_N3.0_j3.0oscillation-shape-continuum-N_N5.0_j3.0oscillation-shape-continuum-N_N10.0_j3.0oscillation-shape-continuum-N_N100.0_j3.0
4(無振動)
oscillation-shape-continuum-N_N3.0_j4.0
oscillation-shape-continuum-N_N5.0_j4.0oscillation-shape-continuum-N_N10.0_j4.0oscillation-shape-continuum-N_N100.0_j4.0
5(反転)
oscillation-shape-continuum-N_N3.0_j5.0
oscillation-shape-continuum-N_N5.0_j5.0oscillation-shape-continuum-N_N10.0_j5.0oscillation-shape-continuum-N_N100.0_j5.0
6(反転)
oscillation-shape-continuum-N_N3.0_j6.0
(無振動)
oscillation-shape-continuum-N_N5.0_j6.0
oscillation-shape-continuum-N_N10.0_j6.0oscillation-shape-continuum-N_N100.0_j6.0
7(反転)
oscillation-shape-continuum-N_N3.0_j7.0
(反転)
oscillation-shape-continuum-N_N5.0_j7.0
oscillation-shape-continuum-N_N10.0_j7.0oscillation-shape-continuum-N_N100.0_j7.0
8(無振動)
oscillation-shape-continuum-N_N3.0_j8.0
(反転)
oscillation-shape-continuum-N_N5.0_j8.0
oscillation-shape-continuum-N_N10.0_j8.0oscillation-shape-continuum-N_N100.0_j8.0
9(反転)
oscillation-shape-continuum-N_N3.0_j9.0
(反転)
oscillation-shape-continuum-N_N5.0_j9.0
oscillation-shape-continuum-N_N10.0_j9.0oscillation-shape-continuum-N_N100.0_j9.0
10(反転)
oscillation-shape-continuum-N_N3.0_j10.0
(反転)
oscillation-shape-continuum-N_N5.0_j10.0
oscillation-shape-continuum-N_N10.0_j10.0oscillation-shape-continuum-N_N100.0_j10.0

 

基準振動のアニメ:

連続体の基準振動 (青線) とN 個の連成振動 (緑の点群) は, N が小さい場合, 連続体との固有振動数が異なるせいで時間経過とともにずれていく. N で一致.

jN=3N=5N=10N=100 (10倍速)
1animation_oscillations-continuum-with-N_mode_N3-j1.movanimation_oscillations-continuum-with-N_mode_N5-j1.movanimation_oscillations-continuum-with-N_mode_N10-j1.movanimation_oscillations-continuum-with-N_mode_N100-j1.mov
2animation_oscillations-continuum-with-N_mode_N3-j2.movanimation_oscillations-continuum-with-N_mode_N5-j2.movanimation_oscillations-continuum-with-N_mode_N10-j2.movanimation_oscillations-continuum-with-N_mode_N100-j2.mov
3animation_oscillations-continuum-with-N_mode_N3-j3.movanimation_oscillations-continuum-with-N_mode_N5-j3.movanimation_oscillations-continuum-with-N_mode_N10-j3.movanimation_oscillations-continuum-with-N_mode_N100-j3.mov