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任意性によってθ=0とθ=πが同じでθ=0になる理由があまりわからなかった
境界条件 (付帯条件) を考える.
■ の場合 (左の壁)
の式 : より,
となる.
という無振動な場合を除けば となりうる.
しかし, の任意性
(は元々任意定数なので正負含めて様々な値を取れる.
また, は番目の基準振動内で一定の定数なので, 値の大小・正負は基準振動の概形に影響を与えない.
ゆえに, は と本質的に同じ)
より, は と同じなので, 結局,
となる.
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今回の内容はこれまでのより難しく感じた。なぜ難しく感じたのか考えてみると、基準振動がいまいち理解できていなかったので、基準振動についてもう一度解説してほしいです。
基準振動とはどういうものだったのでしょうか。
重りの個数分だけ基準振動があるという解釈で大丈夫ですか。
そして基準振動の数だけ固有の振動数と振幅があるということですか
元々, 基準振動とは, 全てのおもりが同じ角振動数で振動している場合の振動のことです.
この基準振動の性質を調べていくと, 前回やったように,
「重りの個数 (個) 分だけ基準振動の種類がある」ことがわかります.
また,
・ここまで取り扱ってきた運動方程式群が, 線形の連立微分方程式であり,
・各基準振動はそれぞれ独立な振動 (それぞれ角振動数が異なる別の振動) である
ことから,
・各基準振動の解を重ね合わせることで一般解が作れる
ということになります.
「基準振動の数だけ固有の振動数と振幅がある」という質問については, 基準振動の定義からYESとなります.
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ちょっと分かりづらかったです。
nとjの使い分けがよく分からなかったです。
何番目のおもりか, という添字を
何番目の基準振動か, という添字を
と書いています.
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普段の授業よりもなぜその操作をしようと思ったのかが分からなかった
前回の自由度2の連成振動はなんとか理解することができたが、数が増えてこんがらがってしまった。
式がとても複雑で、変換が分かりずらく難しく感じた。
よくわからなかった
連成振動 (多自由度の振動)
弦でつながれた個の質量のおもりの微小横振動の一般解の導出
この後に取り扱う連続体の運動につなげやすいように, 下図のような「弦でつながれた個の質量のおもりの微小横振動」を考える.
おもり同士の間隔を, 各おもりの変位を とする. 弦の張力を とし, 伸びによる張力の変化は考えないこととし, 弦の質量も無視する. 各おもりに作用する重力も考慮しないことにする. また, 弦の両端に仮想的なおもり があるものとし, その境界条件 (付帯条件) を静止 (, ) とする.

この時, 各おもりは上下にのみ振動しており,
左右方向 : 釣り合っている
上下方向 : 加速度を持って運動する
となっている. したがって, この系の運動方程式は
となる.
微小振動なので, であるから,
となる.
したがって, 元の運動方程式は
となる.
ここで, 左右の運動方程式から であることがわかるので, 上下の運動方程式は
となる.
さらに, 上図を拡大させたものが下図である.

この図からわかるように, はそれぞれ
という関係にある.
以上より, 上下についての運動方程式 は
となるので, 整理すると
運動方程式
付帯条件
が得られる.
これは, 前回の, バネで繋がれた個のおもりの微小縦振動についての運動方程式
付帯条件
と, 係数が異なるだけで本質的には同じ形の式である.
対応関係としては という違いがあるだけなので,
| バネ 縦振動 | 弦 横振動 |
---|
運動方程式 | | |
違い | | |
固有振動数 | | |
波数 | | 左と同じ |
基準振動の概形 | | 左と同じ |
基準振動 | | 左と同じ |
一般解 | | 左と同じ |
上記 :
として, 弦でつながれた個の質量のおもりの微小横振動においても, 同様に一般解が導出できる.
一般解のプロット アニメ
で の割合を と変えていく.
おもりの数 | | 結果 | アニメ |
---|
3 | モード1 |  |  |
3 | モード1+3(小) |  |  |
3 | モード1+3(中) |  |  |
3 | モード1+3(大) |  |  |
3 | モード1+2+3 |  |  |
の割合をで固定したまま, とおもりの数を増やしていく.
おもりの数 N |
A(j),φj |
結果 |
アニメ |
3 |
A(j)=1,φj=0 |
 |
|
9 |
A(j)=1,φj=0 |
 |
|
20 |
A(j)=1,φj=0 |
 |
|
100 |
A(j)=1,φj=0 |
 |
|
連続体の運動
導入
ここまでは多数の振動子の振動を考えていたが, その数を極限的に増やし, 「無数の振動子の連成振動」を考えたものが連続体の振動に相当する. 具体的には弦, 棒, 膜などの変形する連続物体の弾性振動について考える.
基本的な計算手順はこれまでの連成振動の場合と同じで,
運動方程式を立て,
基準振動を推察して導出し,
その重ね合わせとして一般解を導出する
というものである.
例を挙げて具体的に計算してみよう.
下図のような両端が固定された (固定端) の弦の微小横振動を考える.

なお, 弦の振動には
の2種類があり, 両方同時に起こる場合もあるが, 今回は横振動のみを取り扱う.
今回のような弦の振動現象は
という2変数を用いた関数
によって記述できる.
この例の場合であれば, 弦をピンと張って静止している状態が平衡状態であり, 位置 はある端点からの弦の長さで決まり, その位置での時刻 での弦の揺れが で表現される.
この例は, 前述の「弦でつながれた個の質量のおもりの微小横振動」と似た系であり, 以下の対応関係がある.
| N個のおもりの連成振動 | 連続体の運動 |
---|
変位 | | |
横軸 | : 各おもりの番号 | : 弦の位置 |
運動方程式
弦を下図のような微小な線素の集合体だと考える. 弦の全長を , 線密度 (単位長さ当たりの質量) を , 微小線素の長さを とすると, 微小線素の質量は となる.

微小線素は各端において, それぞれ張力 で引っ張られている. ただし, 弦の微小横振動であるため, 弦の微小線素は上下にのみ振動している. すなわち,
左右 : 左右方向の力が釣り合って0
上下 : 加速度ありで運動している
という状況であるから, 運動方程式は,
左右上下
となる. ここで, 上下の式の左辺の加速度の部分で時刻 での偏微分を用いたのは, 変位 が2変数関数のためである.
微小振動なので, であるから,
となる.
したがって, 元の運動方程式を整理すると,
左右上下
となる.
ここで, 微小線素の右端について考える.
は時刻 における位置 での変位 の方向への傾きに相当するため,
という関係が成り立つ.
これは, 微小振動なので, であるから, (左辺は であり, ) 右辺はテイラー展開をすると
となる. この2次以降の項は が微小であることから無視できるため,
となる.
同様に, 微小線素の左端についても考える.
は時刻 における位置 での変位 の方向への傾きに相当するため,
という関係が成り立つ.
(これは, 微小振動なので, であるから, 左辺は となる. )
以上のことから, 上下についての運動方程式は
となる. 微小線素の質量は ( は線密度) であり, 微小振動による近似を等号で結べば,
となり,
連続体の運動方程式
が導出できた.
これは, 弦で繋がれた 個のおもりの運動方程式 :
付帯条件
を拡張した意味を持つ.
左辺はほぼそのままであるし, 右辺については, 整理する前の式 :
で考えてみよう. 距離 の等間隔に質量 のおもりがつながっていたので, 仮想的な線密度を とすれば,

番目のおもりの変位差番目のおもりの横軸の距離差番目のおもりの変位差番目のおもりの横軸の距離差中点での傾き中点での傾き中点での傾き中点での傾き中点での横軸方向への階偏導関数中点での横軸方向への階偏導関数中点同士の横軸の距離差の横軸方向番目方向への階偏導関数
となり, 横軸方向 ( 番目方向) への2階偏導関数に相当する.
そのため, 連続体の運動方程式のように位置 方向への2階偏導関数 と対応がつく.
弦で繋がれた 個のおもりの例を拡張した意味を持つのであれば, 連続体の運動においても, 弦の各部分が同一の角振動数で振動する基準振動が起こるであろうと推察できる.
また 連続体の運動方程式は, 変位 について線形の方程式であることから, 解の重ね合わせが成立するため, これまで同様に基準振動の線形結合で一般解を表現することができる.
また, 係数について
という を用いれば,
波動方程式
が求まる.
弦の基準振動
実際に, 連続体の運動の一般解を求めるために, まずは, 「弦で繋がれた 個のおもりの連成振動の拡張版」という解釈から, 番目の基準振動について,
基準振動の仮定
自由度連続体
という対応関係で置いてみて, これが先程求めた連続体の運動方程式を満たすかを確かめていく.
実際に連続体の運動方程式 に代入すると,
はのみの関数なので導関数に変更波数
となる.
これは変数が時刻 ではなく位置 という違いはあれど, 式の形としては単振動の式と同じである.
したがって, 基準振動の概形 が
基準振動の概形
となれば, 元の運動方程式を満たすことがわかる.
ここで, 弦の両端の境界条件 (固定端) を考える. 固定端なので
境界条件 (固定端)
左端は固定しているので静止右端は固定しているので静止
と記述できる.
この境界条件を基準振動の式 に代入すると,
となるため, この式が任意の時刻 で成立するためには
を満たす必要がある.
したがって, これを基準振動の概形 に代入すると
となる. これは, という無振動な場合を除けば, 第1式は となるため,
となる ( は という任意性で と本質的には同一視できる).
したがって, 第2式は
整数整数
となる. ここで, については基準振動の概形 から
となり, 無振動なので無意味
となり, という任意性で と同一
となることから, は自然数であることがわかる.
自由度 の際は の上限 があったが, 連続体では位置という連続変数になったため上限はない.
以上より, の範囲がわかったので, 波数は
波数
が求まった.
これにより, 基準振動の概形も
基準振動の概形
と求まる.
がで1周期 → 波長は
そして, 基準振動についても
基準振動
未定定数
として求まった. これは固有振動とも呼ばれる.
各基準振動での結果を表にしたものが下記である.
の定義式 より, 角振動数は と表せる
モード | 概形 | 波数 | 波長 | 角振動数 |
---|
1 |  | | | |
2 |  | | | |
3 |  | | | |
4 |  | | | |
5 |  | | | |
各モードのアニメは下図
一般解
各基準振動の重ね合わせを考えると,
未定定数
となる.
元の方程式が線形なので, この1次結合の式も元の運動方程式を満たす. また, 任意定数の数もちょうどであるため, これが一般解となる.
改めて書くと
一般解
未定定数
である.
したがって, 多自由度の連成振動と同様に, 実際に弦を振動させた場合, 1つの基準振動が単独で起こることは特別な場合であって, 一般には, 多くの基準振動が重なり合った振動が起こる.
その重なり具合, すなわち未定定数 は弦の運動の初期条件が示されれば決定される.
今回の系の場合であれば, 時刻 における弦の各点の位置, 速度を の関数として与えればよい.
このようにして与えられた初期条件から各未定定数を決定する手続きは, フーリエ展開の係数を求めることに相当する.
| 未定定数 | 結果 | アニメ |
---|
5 | モード1 |  |  |
5 | モード1+5(小) |  |  |
5 | モード1+5(中) |  |  |
5 | モード1+5 |  |  |
5 | モード1+2+3+4+5 |  |  |
10 | |  |  |
100 | |  |  |
一般解の唯一性の確認
命題
ここまでで求めた手法は, 元の微分方程式から基準振動という特殊な解を, 推察を利用して求め, その線形結合を作ることで, 与えられた境界条件と初期条件を満たす解 (一般解) を見つける, というものだった.
導出過程に推察を含むことから, もしかすると求めた解以外の解がありうるかもしれない. しかしそれでは一般解が複数存在することになってしまう. したがって, 求めた解の唯一性を確認しておく必要がある.
やるべきことを整理しよう. 今回の証明すべき命題は,
命題
連続体の運動方程式
の解において, 「与えられた境界条件
と初期条件
任意関数任意関数
を満たす解」はただ1つしかないことを証明せよ
である. これを以下で証明していく.
証明
実際に確かめていく.
「以上の境界条件と初期条件を満たす解」が2つあったと仮定し, その不適/適を判断することで上記命題の正/否を考えていく. 各解をそれぞれ とし,
という差の関数 を考える.
元の運動方程式は に関する線形方程式のため, その解同士の線形結合 もまた, 元の運動方程式を満たす:
境界条件についても
の境界条件
となるため, 境界条件を満たすことが確かめられる.
の初期条件は, の初期条件 を用いれば
の初期条件
となる.
ここで, が に関する2階偏導関数まで連続であると仮定し, についての或る積分
を考えてみよう.
差の解 における連続体の運動方程式 の両辺の和に関する積分である.
この積分 を時刻 で微分すると,
連続体の運動方程式
となる. 固定端の境界条件より, という端点では は時刻経過で変化しないため,
となる. すなわち, 端点では常に となる.
したがって, 先の1回微分は
となる. したがって,
となる.
一方, 時刻 における は, 初期条件 , を用いれば
の定積分なので積分値は
となる.
したがって, 式 一定 と合わせれば
となり, 積分 は恒等的に0であることがわかる.
また, 積分
の被積分関数 は, 連続関数であり, 且つ, 各項が2乗項で係数も正であることから非負である.
すると, 積分結果である が恒等的に0であることを踏まえると, その積分範囲 において, 被積分関数内の各項も0 :
である必要がある. すると, 全微分 も0 :
となる. したがって,
となる. の初期条件は式 より であることを踏まえると
である必要がある. は差の関数 なので
が成り立つ. すなわち, 解はただ1つしかなく, 命題が成立することが証明できた.
したがって, 今回求めた解が唯一の解であり, その他の解は存在しないのである.