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(速度による抵抗がある場合)ωf = ω0の時には振幅は最大にはならないが、共鳴はするということですか?

はい, 共鳴自体はしています.

 

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ReとImの使い分けがわからなかったです。

基本的には実部 (Re) を取ることが多いです.

ただし, 先週の例では, 計算の簡便さを目的として運動方程式を複素化しました. したがって, その複素化の取り方によって, 実部 (Re), 虚部 (Im) のどちらをとるべきかが決まります.

(1) 実部 (Re) の例

先週の講義内の例では, という外力に合わせて, f0eiωft=f0(cosωft+isinωft) のようにオイラーの公式を生かした複素化をしたかったため,

z=x+iy のように位置も複素化し, 最終的に, 元の x​ を取り出すために実部 (Re) を取りました.

(2) 虚部 (Im) の例

一方, 先週の復習問題内の例では, という外力に合わせて, f0eiωft=f0(cosωft+isinωft) のようにオイラーの公式を生かした複素化をしたかったため,

z=y+ix のように位置も複素化し, 最終的に, 元の x を取り出すために虚部 (Im) を取りました.

 

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説明していることはなんとなくわかったが、どこを目指してなにをしているかがよくわからないことが多かった。

話が難しくて途中ぽかんとしてしまった

 

 

外力のある場合の運動 (余談. カオスとなる模型の紹介)

前回は, 外力が常にかかり続ける場合の振動現象を紹介した. ここでは, 外力が撃力である場合に, カオス現象が発生する例を紹介する.

1つは, 回転子模型 (KR: Kicked Rotator) :

H=p22+Kcos(x+α)j=+δ(tjT)(xR1)

chaos_KR

である. さらに, その亜種として, 無限大ポテンシャルに挟まれた中において一定時間間隔でキックを受ける粒子模型 (KPIP: Kicked Particle in Infinite Potential) を例に挙げる.

これは, 「左右に壁に挟まれた中で往復するピンポン玉に対して, 一定時間間隔で撃力を与えるという模型」に相当する. 具体的なハミルトニアンは下記:

H=p22+V0(x)+Kcos(x+α)j=+δ(tjT)(V0(x)= for 0,π)(V0(x)=0 for elsewhere)

このとき, 位置xを横軸, 運動量pを縦軸にして, 撃力が当たった瞬間をplotしていくと, 下図のような蜘蛛の巣状を形成する. これをweb of chaosと呼ぶ.

chaos_KPIP-1chaos_KPIP-2-scale

 

連成振動 (自由度2の振動)

連成振動とは

ここまでの内容は, 孤立した1つの振動子についてであった. しかし現実には, 複数の振動子が相互作用しあうことで複雑な振動を引き起こすことが多い. そのような振動は連成振動と呼ばれる.

すなわち, 「2つ以上の振動子が何らかの機構で相互作用しながら行う振動」を連成振動と呼ぶ.

 

今回は連成振動の基礎である, 2つの振動子の場合を考える. この場合, それぞれの振動子がそれぞれ自由度を持っていることから, 自由度2の振動となる.

 

連成振動 (自由度2) の例

  • バネで繋がれた2つの振り子

2-pendulums-with-spring

片方の振り子だけ振動させるように始めると, その振動がやがてもう片方へと移り, その後, 自らに戻ってくるように振動する.

 

  • 2重振り子

double-pendulum

微小振動のうちは解析的に解くことができるが, 振動角が大きくなるとカオス的 (予測不可能 [困難] 的) な振る舞いになる.

double-pendulum1

軌道例1軌道例2軌道例3
double-pendulum2double-pendulum3double-pendulum4
動画例1 動画例2

 

YouTube:

https://youtu.be/25feOUNQB2Y

 

  • バネで繋がれた2つのおもり

2-balls_3-springs_simple

最も基礎的な例の1つ.

 

その他として,

  • 分子の振動

  • ねじれ+バネ振動

  • 2重のねじれ振動 (1年次の基礎物理学実験)

なども例に挙げられる.

 

バネで繋がれた2つのおもりの縦振動 (解法1)

概要

最も基礎的な例として, 下図のようなバネで繋がれた2つのおもりの縦振動を考える. 質点の質量はいずれもmで, バネの質量は無視できるほど軽く, つりあいの位置において各バネは伸び縮みのない自然長であるとする. バネ定数は左からk1, k2, k3とする. 釣り合いの位置からの変位をそれぞれx1, x2とする.

2-balls_3-springs_solution

このとき, 各バネの伸び縮みに応じて, 各おもりに力がかかる. 真ん中のバネについては, 各おもりの変位の差 x2x1 だけ伸び縮みするため, その分が真ん中のバネによる力となる.

したがって, 各おもりの運動方程式は

md2x1dt2=k1x1+k2(x2x1)md2x2dt2=k3x2k2(x2x1)

となる.

バネについては, 各ばね定数や各おもりの質量がバラバラであっても計算できるが, 煩雑になる. そこで今回は, 簡単のために,

k1=k, k2=k, k3=k

という場合 (両端に同じバネを使用) を考えることにする.

もちろんk1, k2, k3をそのままにして計算しても良い. ここではあくまで計算が面倒なので, 簡単なケースを考えるという意味.

すると, 運動方程式は

(1)md2x1dt2=kx1+k(x2x1)(2)md2x2dt2=kx2k(x2x1)

となる. 各式の右辺 第2項は, 2つのおもりの間の相互作用を示している. この項があることによって, これらの運動方程式 (1), (2)連立微分方程式となる.

 

基準振動の推察とそのふるまい

2つのおもりはそれぞれ異なる振動数で振動するのが一般的である. ただし, 特別な初期条件をとってやれば, 各おもりが同じ振動数 ω で振動することもありうると推察しよう. 相互作用項がなければ各々は単振動の運動方程式であることから, 試しに,

(3)x1=A1cos(ωt+ϕ)x2=A2cos(ωt+ϕ)(A1,A2,ϕ:)

とおいて, これが元の運動方程式を満たすように A1, A2, ω, ϕ を決めることができるかどうかを考えてみる.

実際に運動方程式 (1), (2) に代入すると,

md2dt2(A1cos(ωt+ϕ))=kA1cos(ωt+ϕ)+k(A2cos(ωt+ϕ)A1cos(ωt+ϕ))md2dt2(A2cos(ωt+ϕ))=kA2cos(ωt+ϕ)k(A2cos(ωt+ϕ)A1cos(ωt+ϕ))mω2A1cos(ωt+ϕ)+kA1cos(ωt+ϕ)kA2cos(ωt+ϕ)+kA1cos(ωt+ϕ)=0mω2A2cos(ωt+ϕ)+kA2cos(ωt+ϕ)+kA2cos(ωt+ϕ)kA1cos(ωt+ϕ)=0(4)(mω2kk)A1+kA2=0(5)kA1+(mω2kk)A2=0

となる.

これらの式 (4), (5)A1, A2についての連立方程式と考える. 式を書き直すと

(mω2kkkkmω2kk)(A1A2)=0

となるので, 自明な解 (A1=A2=0 : 振幅0の無振動解) を除けば, 行列式が

|mω2kkkkmω2kk|=0

である必要がある. したがって,

(mω2kk)2k2=0(mω2kk+k)(mω2kkk)=0(mω2k)(mω2k2k)=0

となる. ゆえに ω は大別して2種類の値をもち,

ω1=±km,    ω2=±k+2km

となる. 仮置きした解 (3)cos(ωt+ϕ)という偶関数であり, ϕ は任意定数であることから, ω の正負は無視してよく, 実質的に

(6)ω1=km,    ω2=k+2km

となる.

したがって, 各 ω が式 (6) のような値をとる場合, 仮置きした解 (3) は実際に今回の系の解となりうる.

すなわち, 各おもりが全体として同じ振動数 ω1 もしくは ω2 で振動する現象が起こりうるという意味である. このように, 2つ以上の連成振動子の全体が1つの振動数で振動する場合, その振動の様子を基準振動 (normal mode, モード) と呼ぶ.

 

実際に各振動数の場合を見てみよう.

ω=ω1

ω1=km なので, 式 (4) (mω2kk)A1+kA2=0 から,

(mω12kk)A1+kA2=0(mkmkk)A1+kA2=0A1=A2

となるので, このときの A1,A2,ϕ

A1=A2Aϕϕ

とおけば, 解 (3)

(7)x1=Acos(ω1t+ϕ)x2=Acos(ω1t+ϕ)(A,ϕ:)

となる.

実際にプロットしたものが下図である.

2-oscillations-with-spring_omega1

結果 アニメ
animation_2-osc_mode1.mov

 

同じ形の式なので, 当然ではあるが, 各おもり (x1,x2) はそれぞれ同じように振動する.

2-balls-3-springs_motion_omega1

 

ω=ω2

ω2=k+2km なので, 式 (5) kA1+(mω2kk)A2=0 から,

kA1+(mω22kk)A2=0kA1+(mk+2kmkk)A2=0A1=A2

となるので, このときの A1,A2,ϕ

A1=A2Aϕϕ

とおけば, 解 (3)

(8)x1=Acos(ω2t+ϕ)x2=Acos(ω2t+ϕ)(A,ϕ:)

となる.

実際にプロットしたものが下図である.

2-oscillations-with-spring_omega2

結果 アニメ
animation_2-osc_mode2.mov

 

振幅の正負が逆なので, 各おもり (x1,x2) は互いに逆向きに振動する.

2-balls-3-springs_motion_omega2

 

基準振動からの一般解の導出

ここで求めた2つの基準振動はあくまで特別な解である. 元の運動方程式 (1), (2) :

md2x1dt2=kx1+k(x2x1)md2x2dt2=kx2k(x2x1)

は線形な微分方程式なので, 解の重ね合わせが成り立つ.

実は, 2つの基準振動の解の重ね合わせが 一般解 :

(9)x1(t)=Acos(ω1t+ϕ)+Acos(ω2t+ϕ)x2(t)=Acos(ω1t+ϕ)Acos(ω2t+ϕ)(A,A,ϕ,ϕ:)

となる.

実際, この解は元の運動方程式 (1), (2) を満たす.

線形微分方程式と一般解の性質として, 「n階の線形微分方程式の一般解はn個の任意定数を含む」というものがある.

今回は元の運動方程式 (1), (2) が2つの2階の線形微分方程式なので, その一般解は2×2=4 個の任意定数を持つ必要があるが, この重ね合わせの解も計4つの任意定数を含む解である.

したがって, この重ね合わせの解 (9) こそが元の運動方程式 (1), (2) の一般解となる.

2-oscillations-with-spring_omega

結果 アニメ
animation_2-osc_general.mov

 

 

初期条件を入れてふるまいを見る

片側のおもりだけ伸ばし, 両者ともに静止した状態からスタートする初期条件を考え, その振る舞いをみてみよう. すなわち,

t=0 : x1=a , x2=0 , dx1dt=0 , dx2dt=0

という初期条件での振る舞いをみていく. この初期条件を一般解 (9) とその1階微分に代入すると,

x1(t)=Acos(ω1t+ϕ)+Acos(ω2t+ϕ)x2(t)=Acos(ω1t+ϕ)Acos(ω2t+ϕ)
a=x1(0)=Acos(0+ϕ)+Acos(0+ϕ)0=x2(0)=Acos(0+ϕ)Acos(0+ϕ)0=dx1dt|t=0=Aω1sin(0+ϕ)Aω2sin(0+ϕ)0=dx2dt|t=0=Aω1sin(0+ϕ)+Aω2sin(0+ϕ)  (10)a=Acosϕ+Acosϕ(11)0=AcosϕAcosϕ(12)0=Aω1sinϕAω2sinϕ(13)0=Aω1sinϕ+Aω2sinϕ

となる. したがって,

(12)+(13):  0=2Aω1sinϕ  ϕ=0(12)(13):  0=2Aω2sinϕ  ϕ=0(11):  0=Acos0Acos0  A=A(10):  a=Acos0+Acos0  A=a2

となる. ゆえに

x1(t)=a2(cosω1t+cosω2t)x2(t)=a2(cosω1tcosω2t) cos1:cosx+cosy=2cosxy2cosx+y2 cos2:cosxcosy=2sinxy2sinx+y2x1(t)=acosω1ω22t  cosω1+ω22tx2(t)=asinω1ω22t  sinω1+ω22t

となる. したがって, ω1, ω2 の値が近い場合, 各おもりはともに大きい振動数 ω1+ω22 で細かく振動しつつ, 全体では小さな振動数 ω1ω22 で緩やかに振動することがわかる.

実際にプロットしたものが下図である.

2-oscillations-with-spring_initial-condition

結果 アニメ
animation_2-osc_initial.mov

 

図から, 細かい振動と緩やかな振動の共存が見て取れる. また,

  • x1が大きく振動している時は, x2が小さく振動し,

  • x1が小さく振動している時は, x2が大きく振動する

こともわかる. これは, 2つの振動子 (おもり) 同士でエネルギーをやり取りしていることを意味する.

 

基準座標と基準振動 (解法2)

概要と導入

ここまででは, バネで繋がれた2つのおもりの縦振動は基準振動の形を仮定して解いていった. ここからは他の系にも適用できる, より一般的な解法を考えていく.

先程と同じ系を考える.

2-balls_3-springs_solution

各ばね定数や各おもりの質量も先程と同様に, 簡単のため k1=k, k2=k, k3=k となる場合を考えることにしよう. この場合の運動方程式は先ほどと同じく式 (1),(2)

(14)md2x1dt2=kx1+k(x2x1)(15)md2x2dt2=kx2k(x2x1)

となる.

一般的な解法では, これらの運動方程式が x1, x2について線形である (重ね合わせの原理が成り立つ) ことを利用する. すなわち,

  • x1, x2 の適当な1次結合を作って変数変換を行う

  • その変数変換によって, 新しい変数の組に対する方程式が互いに独立になるようにする.

  • 新しい変数による2つの微分方程式を別々に解く

  • 新しい変数による解から逆算して, 元のx1, x2 の解を求める

という手順である.

 

変数変換を用いて一般解を求める

運動方程式 (14), (15) について, 未定定数pを用いて, (14)+p×(15) を計算すると,

m(d2x1dt2+pd2x2dt2)=k(x1+px2)+k(1p)(x2x1)  md2dt2(x1+px2)=k(x1+px2)+k(p1)(x1x2)  md2dt2(x1+px2)=k(x1+px2)+k(p1)(x1p1p1x2)  md2dt2(x1+px2)=k(x1+px2)+k(p1)(x1+1pp1x2)

となる.

未定定数 p の要件

ここで, 未定定数 p

(16)1:p=1:1pp1    1:p=(p1):(1p)

を満たすようなものであったなら, 上式は

md2dt2(x1+px2)=k(x1+px2)+k(p1)(x1+px2)=(k+k(1p))(x1+px2)

となる. ここで

(17)2qx1+px2

という変数qを定義する. この 2 をつける意味については後に説明するが, 一般解を求めるだけであれば無くてもよい. この定義式で置き換えてやれば,

md2qdt2=(k+k(1p))q

となり, 独立な単振動の式に帰着することができる.

要件を満たす p と一般解の導出

実際に, 式 (16) 1:p=(p1):(1p) を満たすような p は,

p(p1)=(1p)(p+1)(p1)=0p=±1

となる. したがって, 各 p に対して,

   md2dt2(x1+px2)=(k+k(1p))(x1+px2)p=+1 : md2dt2(x1+x2)=k(x1+x2)p=1 : md2dt2(x1x2)=(k+2k)(x1x2)(18)   2q1x1+x2(19)   2q2x1x2p=+1 : md22q1dt2=k2q1p=1 : md22q2dt2=(k+2k)2q2p=+1 : md2q1dt2=kq1p=1 : md2q2dt2=(k+2k)q2

となる. 上述の通り, これらは通常の単振動の運動方程式なので,

ω12km, ω22k+2km

と置けば, q1,q2 についての一般解は

(20)q1=Acos(ω1t+ϕ)q2=Acos(ω2t+ϕ)(A,A,ϕ,ϕ:)

となる. あとは, 関係式 (18), (19) から 一般解 :

(21)x1=q1+q22=12Acos(ω1t+ϕ)+12Acos(ω2t+ϕ)x2=q1q22=12Acos(ω1t+ϕ)12Acos(ω2t+ϕ)

が導出できた.

これは, 前節で導出した一般解 (9)

x1(t)=Acos(ω1t+ϕ)+Acos(ω2t+ϕ)x2(t)=Acos(ω1t+ϕ)Acos(ω2t+ϕ)(A,A,ϕ,ϕ:)

12倍分の係数が異なるだけで, 本質的には同じ式である. 違いが気になる人は任意定数 A, A

A2A,  A2A

と置き換えてやれば, 前節の一般解と係数も一致する. この置き換えは A, A が任意定数であるがゆえに本質ではない.

 

変数変換の意味 (q1,q2 平面)

上記で行った変数変換 (17) 2qx1+px2 及び (18), (19)

p=+1 : 2q1x1+x2p=1 : 2q2x1x2

の解釈を考えていく. (18), (19) より q1, q2

q1=12x1+12x2=x1cosπ4+x2sinπ4q2=12x112x2=x1sinπ4x2cosπ4

と書くことができる. これは, 下図のように x1, x2q1, q2 軸に向かって射影を取った者同士の和 (差) を意味する.

x1-x2-q1-q2

そして, その和 (差) の結果の座標 (q1,q2) は元の座標 (x1,x2) に一致し, 点 P となることがわかる. q1,q2 は式 (20)

q1=Acos(ω1t+ϕ)q2=Acos(ω2t+ϕ)

より, それぞれ独立に単振動を行うため, 全体としての点 P は, q1,q2 軸に平行な矩形の中で運動する. ここで描かれるような, 直交する単振動を合成して得られる図形はリサジュー図形と呼ばれる.

実際に描かれる図形の例が下図である.

 

ω2ω1=2πω1=4πω1=6π
2π2-oscillations-with-spring_x1x2_w1p2pi_1.0_w2p2pi_1.0_w1w2ratio_1.0_phidd-phid_1.5712-oscillations-with-spring_x1x2_w1p2pi_2.0_w2p2pi_1.0_w1w2ratio_2.0_phidd-phid_1.5712-oscillations-with-spring_x1x2_w1p2pi_3.0_w2p2pi_1.0_w1w2ratio_3.0_phidd-phid_1.571
4π2-oscillations-with-spring_x1x2_w1p2pi_1.0_w2p2pi_2.0_w1w2ratio_0.5_phidd-phid_1.5712-oscillations-with-spring_x1x2_w1p2pi_2.0_w2p2pi_2.0_w1w2ratio_1.0_phidd-phid_1.5712-oscillations-with-spring_x1x2_w1p2pi_3.0_w2p2pi_2.0_w1w2ratio_1.5_phidd-phid_1.571
6π2-oscillations-with-spring_x1x2_w1p2pi_1.0_w2p2pi_3.0_w1w2ratio_0.333_phidd-phid_1.5712-oscillations-with-spring_x1x2_w1p2pi_2.0_w2p2pi_3.0_w1w2ratio_0.667_phidd-phid_1.5712-oscillations-with-spring_x1x2_w1p2pi_3.0_w2p2pi_3.0_w1w2ratio_1.0_phidd-phid_1.571

上図 : ϕϕ=π/2 の場合の各 ω1,ω2 の有理数比の場合のリサジュー図形 (閉軌道).

 

また, ω1,ω2 が無理数比の場合は下図のように軌道は閉じず, 開軌道となる.

2-oscillations-with-spring_x1x2_w1p2pi_1.414_w2p2pi_1.0_w1w2ratio_1.414_phidd-phid_1.571

 

アニメにすると下図の通り:

ω1:ω2結果アニメ
2π:2π1-1.mov1-1.mov
2π:4π1-2.mov1-2.mov
2π:6π1-3.mov1-3.mov
4π:2π2-1.mov2-1.mov
4π:4π2-2.mov2-2.mov
4π:6π2-3.mov2-3.mov
6π:2π3-1.mov3-1.mov
6π:4π3-2.mov3-2.mov
6π:6π3-3.mov3-3.mov
22π:2π0-0.mov0-0.mov

 

変数変換の意味 (エネルギー)

次にエネルギーの観点から, この変数変換の意味を捉える.

元の運動方程式が

md2x1dt2=kx1+k(x2x1)md2x2dt2=kx2k(x2x1)

なので, 第1式に dx1dt , 第2式に dx2dt をかけてエネルギー積分をしてやれば,

md2x1dt2dx1dtdt+(k+k)x1dx1dtdtkx2dx1dtdt=()md2x2dt2dx2dtdt+(k+k)x2dx2dtdtkx1dx2dtdt=()12m(dx1dt)2+12(k+k)x12kx2dx1dtdt=()12m(dx2dt)2+12(k+k)x22kx1dx2dtdt=()

両式を足し合わせて

12m(dx1dt)2+12m(dx2dt)2+12(k+k)x12+12(k+k)x22k(x2dx1dt+x1dx2dt)dt=()12m(dx1dt)2+12m(dx2dt)2+12(k+k)x12+12(k+k)x22kddt(x1x2)dt=()12m(dx1dt)2+12m(dx2dt)2+12(k+k)x12+12(k+k)x22kx1x2=()

となる. したがって, 運動エネルギーと位置エネルギーは

()=12m(dx1dt)2+12m(dx2dt)2()=12(k+k)x12+12(k+k)x22kx1x2

となる. 各おもりの相互作用項として, x1x2というクロスタームが出てきている.

 

では, このエネルギーの式をq1,q2 という変数で見てみよう. 上式に関係式 (18), (19) を式変形した

x1=q1+q22 , x2=q1q22

を代入すると

()=12m12(dq1dt+dq2dt)2+12m12(dq1dtdq2dt)2=12m(dq1dt)2+12m(dq2dt)2()=12kx12+12kx2212k(x122x1x2+x22)=12kx12+12kx2212k(x1x2)2=12k(q1+q22)2+12k(q1q22)212k(q1+q22q1q22)2=12k(q1+q2)22+12k(q1q2)2212k(2q2)22=12k(q12+2q1q2+q22)2+12k(q122q1q2+q22)212k4q222=12kq12+12(k+2k)q22

となり, q1q2,dq1dtdq2dt といったクロスタームが出てこない. したがって, エネルギーの観点からも, q1,q2 という座標系はそれぞれ独立な単振動であることが確認できた.

 

以上のように, 2つのおもりの連成振動において, 別の1組の座標軸 q1,q2 を見つけ出し, その新たな座標軸への射影成分が, 互いに単振動となっている場合, その新たな座標系に沿った運動が, 基準振動 に相当し, その新たな座標系そのものを, 基準座標と呼ぶ.

 

うなり

現象

一般に, 2つの異なる振動数を持った単振動の重ね合わせは うなり (beat) という現象を引き起こす.

わかりやすい例は, 前節でやった片側のおもりだけ伸ばし両者ともに静止した状態からスタートする初期条件 :

t=0 : x1=a , x2=0 , dx1dt=0 , dx2dt=0

での振る舞いである. このとき, 各おもりの位置は

x1(t)=acosω1ω22t  cosω1+ω22tx2(t)=asinω1ω22t  sinω1+ω22t

であり, ω1, ω2 の値が近い場合, 下図のように, 各おもりは大きい振動数 ω1+ω22 で細かく振動しつつ, 全体では小さな振動数 ω1ω22 で緩やかに振動することを確認した.

2-oscillations-with-spring_initial-condition

うなりの英語がbeatであるように, 細かい振動を内部に保持しつつ全体的に緩やかに脈動する現象を指し, 2つの単振動の振動数が近い場合に発生する. 今回の場合であれば, 振動数の差 Δωω2ω1 が相対的に非常に小さい場合であるから,

Δωω1k+2kmkmkmk+2km2kmk+2km4km2km3kmk32k

となり, 真ん中のバネ係数 k が両サイドのバネ係数 k に比べて非常に弱い場合に起こる現象であることがわかる.

 

また, うなり現象は音の調律などにも利用されている. 音叉と楽器を同時に鳴らし, 音程 (振動数) が微妙にずれていればうなりが発生するため, うなりが完全に消える (振動数が完全に一致する) ように調整する作業である.

上記の x1

x1(t)=acosω1ω22t  cosω1+ω22t

を参考に, 合わせたい音程とうなりの振動数を計算してみる.

C4のドの周波数を例に考えてみよう. C4のドの周波数は, f261.626 [Hz]なので, 角振動数に直すと ω2πf となる. そこで, C4のドの周波数の音 (f) と, その1%ずれた周波数の音 (f=1.01f) とを考える. すなわち, 角振動数においては

ω2=2πfω1=2πf=2π×(1.01f)=1.01×ω2

と置いてみる. うなりの角振動数は x1 の式の緩やかな振動部分 ω1ω22 なので,

()=ω1ω22

となる. ただし, 人間の耳は振幅の絶対値によって音の強弱を感知しているので, 音として聞こえる振動数はその倍となり,

()=2×()=2×()×12π=2ω1ω2212π=(ω1ω2)12π=0.01×ω212π=0.01×2πf12π=0.01f0.01×261.6262.6 [Hz]

となる. すなわち, 約2.6 [Hz] のうなりとして聞こえるはずである.

実際にプロットしてみたものが下図である.

beat

確かに約2.6 [Hz] の振動 (1秒間に2.6回の振動) をしていることがわかる.

 

  • C4のドの周波数の音 (f) : 約261.626 Hz

  • C4の1%ずれた周波数の音 (f=1.01f) : 約264.242 Hz

  • うなり : 約2.6 Hz