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質問があります。微分方程式が線形であるかないかの判別の方法を教えてください。

詳しくは前回のコメント参照ですが, ・線形微分方程式: の1次のみを含む微分方程式 ・非線形微分方程式: の1次以外を含む微分方程式

 

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p1-p2>0だと元の一般解と同じ形になると言えるのはなぜですか?

おそらく抵抗が大きい場合の過減衰の時の話ですよね.

次に, 抵抗が大きい場合, すなわち γ が大きい場合を考える. 具体的にどの程度大きいかは, 小さい場合と反対で, 「pについての解の式 :

p=γ±γ24ω022=γ2±γ24ω02

の第2項の根号の中身が正になる程度」として考える. すなわち,

γ24ω02>0γ2>ω0

という場合である. これにより, p

(1)p=γ2±γ24ω02

と記述できる. ここで, 第2項の根号部分は γ2>ω0 であることから

0<γ24ω02<γ2

となるため, 式 (1)の正負記号がどちらであっても, pは負になる:

p=γ2±γ24ω02<0  (2)p1=γ2+γ24ω02<0(3)p2=γ2γ24ω02<0(4)  p1p2=2γ24ω02>0

 

したがって, 一般解は

抵抗力が大きい場合の一般解 (過減衰) :

(5)x(t)=C1ep1t+C2ep2t   (C1, C2:)

となり, 元の一般解の式と同じ形のままとなる.

p1, p2がともに負の実数のため, この解は振動せずに減衰する. したがって, この解は 過減衰 と呼ばれる.

p1P2>0 ということよりも, p<0 となり p が負の実数であることがポイントです. 抵抗が小さい (減衰振動) の場合は, pが複素数であったため, 式変形により物理現象を読み取りやすくしましたが, 抵抗が大きい (過減衰) の場合は, pが負の実数であり, すでに物理現象を読み取ることができるため, これ以上式変形をしませんでした.

 

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余談のケプラー問題について気になった。実際にどうk/mを使っているのか?

ケプラー問題の場合は, 運動エネルギーの項と万有引力によるエネルギー項によって構成できます. その際に km などで無次元化することがあります.

 

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ポテンシャルの2回微分が0だと平坦なポテンシャルになること。バネ振動の一般解のCは複素数の任意定数であるのにA1=C1+C2 A2が実数になること。A1=cosφ A2=-sinφになる理由がよく分からなかったです。

ポテンシャルの1回微分が0の点は, 極小/極大点なので平坦ではあります. ただし, ポテンシャルの2回微分が0の点は, その極小/極大点において凹凸もないことになるので, より広範囲で平坦といえます.

 

したがって, 元の一般解の式 x(t)=C1ep1t+C2ep2t

x(t)=C1eiω0t+C2eiω0t    :eiθ=cosθ+isinθ=C1(cosω0t+isinω0t)+C2(cos(ω0t)+isin(ω0t))=C1(cosω0t+isinω0t)+C2(cosω0tisinω0t)=(C1+C2)cosω0t+i(C1C2)sinω0t

となる. C1, C2は任意定数であり, は実数なので, 2つの実数A1, A2

A1=C1+C2A2=i(C1C2)

と置き換えると,

の部分かと思います. これは, C1, C2自体は任意定数なのですが, x(t)=A1cosω0t+A2sinω0t と置き換えた場合, 左辺のx(t)が実数, 右辺のcosω0t,sinω0tも実数であることから, その係数のA1,A2も実数といえます.

 

このままでもよいが, 極座標を意識して, さらに2つの実数, ϕ

A1=AcosϕA2=Asinϕ

に置き換える

に関しては, 任意定数をA1,A2 という2つのセットから, A,ϕという2つのセットに置き換えたということになります. これは, 2次元平面内のある点について, (x,y) という直交座標系から (r,θ) という極座標系に置き換えたことに似ています.

 

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導出がかなり難しくて内容が全然分かりませんでした

授業はとてもわかりやすいです。少し進むのが早いと思いました。

 

強制振動のための準備

強制振動現象の運動方程式は, これまでに計算してきた単振動, 減衰振動の運動方程式とは異なる形の方程式 (線形非斉次微分方程式) となる. そこで, この章では準備として, その線形非斉次微分方程式の一般解の導出方法を紹介する.

線形非斉次微分方程式の一般解の導出

線形非斉次微分方程式とは

線形微分方程式として

(6)d2x(t)dt2+P(t)dx(t)dt+Q(t)x(t)=R(t)(P(t), Q(t), R(t):)

を考える. ここで, R(t)について

  • R(t)=0 の場合 : 線形斉次 (同次) 微分方程式

  • R(t)0 の場合 : 線形非斉次 (非同次) 微分方程式

と呼ぶ.

 

なお, これまでにやってきた単振動, 減衰振動とは

  • P(t)=0,R(t)=0 の場合 : 単振動 (d2xdt2+ω2x=0)

  • P(t)0,R(t)=0 の場合 : 減衰振動 (d2xdt2+γdxdt+ω02x=0)

として対応する.

しかし, 強制振動においては, R(t)が0ではない, 時刻についての何らかの関数となる.

そのため, これまでの一般解の導出方法のままでは解くことができず, 少し手を加えた手法が必要となる

 

線形非斉次微分方程式の一般解の導出手順

線形非斉次微分方程式の一般解を導出する手順は

線形非斉次微分方程式の一般解の導出手順 : 1. R(t)=0 の場合 (線形斉次微分方程式) の一般解 x0(t) を求める [斉次の一般解] 2. R(t)0 の場合 (線形非斉次微分方程式) の特解 X0(t) を求める [非斉次の特解] 3. 2つの解 x0(t), X0(t) の足し合わせ x(t) が, 元の線形非斉次微分方程式の一般解となる [非斉次の一般解]

である. ここで, 特解とは, 元の線形非斉次微分方程式を満たす解であれば (本当に) 何でも良い.

 

導出手順の確認

上記の3つの手順で線形非斉次微分方程式の一般解が求められることを確かめる.

1. 斉次の一般解

まず, R(t)=0 の場合 (線形斉次微分方程式) の一般解 x0(t) が求められたとする. ここで, x0(t)は, 2階の微分方程式の一般解なので, 2つの任意定数を含んでいる. このとき,

(7)d2x0(t)dt2+P(t)dx0(t)dt+Q(t)x0(t)=0

が成り立つ.

 

2. 非斉次の特解

次に, R(t)0 の場合 (線形非斉次微分方程式) の特解 X0(t) が求められたとする. このとき,

(8)d2X0(t)dt2+P(t)dX0(t)dt+Q(t)X0(t)=R(t)

が成り立つ.

 

3. 非斉次の一般解

さらに, それらの解の足し合わせを

(9)x(t)=x0(t)+X0(t)

と書くことにする. この x(t) の1, 2階微分は

dx(t)dt=dx0(t)dt+dX0(t)dtd2x(t)dt2=d2x0(t)dt2+d2X0(t)dt2

となる. したがって, これらを元の線形非斉次微分方程式 (6) の左辺に代入すると,

d2x(t)dt2+P(t)dx(t)dt+Q(t)x(t)=(d2x0(t)dt2+d2X0(t)dt2)+P(t)(dx0(t)dt+dX0(t)dt)+Q(t)(x0(t)+X0(t))=(d2x0(t)dt2+P(t)dx0(t)dt+Q(t)x0(t))+(d2X0(t)dt2+P(t)dX0(t)dt+Q(t)X0(t))=0+R(t)    (  (7), (8))=R(t)

となり, 元の線形非斉次微分方程式 (6) の右辺となる. このことから, x(t)は元の線形非斉次微分方程式 (6) を満たす解である」 ことが確認できた.

また, x(t)の中のx0(t)が2つの任意定数を含むことから, 当然, x(t)も2つの任意定数を含む.

以上より, x(t) は元の2階の線形非斉次微分方程式 (6) を満たす一般解である」 ことが確認できた.

なお, 2つの解の足し合わせの式 (9) x(t)=x0(t)+X0(t) は, 元の線形非斉次微分方程式 (6) d2x(t)dt2+P(t)dx(t)dt+Q(t)x(t)=R(t) の線形性から解の重ね合わせが成り立つことに由来している.

 

これで線形非斉次微分方程式の解法が確認できたため, 強制振動現象を具体的に見ていく.

 

強制振動

概要

強制振動 :

外力が働く場合の運動を強制振動という.

振り子に周期的な力を加えた場合は, 自由に振動させた際とは異なった振動となる. この場合の振動現象は外力自体の性質と, 外力がない場合の自由な振動の性質とによって決まる.

例えば, ブランコに乗っている人の周期的に背中を押してやることで, そのブランコの揺れを大きくできたり, 小さくさせたりするような場合を想像すれば良い.

ブランコに乗っている人が屈伸運動 (=重心位置をずらす) でブランコの揺れを大きくしていく現象は自励振動と呼ぶ.

 

以下では具体的に

  • 単振動 + 周期的な外力

  • 単振動 + 速度に比例する抵抗 + 周期的な外力

について見ていく.

 

単振動+周期的な外力

概要

まずは, 下図のようなバネによる単振動に周期的な外力を作用させた系を考える.

spring_forced-oscillation

ここでは最も基本的な例として, 単振動に

(10)F(t)=F0cosωft   (F0,ωf:)

という周期的な外力F(t)が加わった場合を考える.

より複雑な一般的な形をした関数はフーリエ級数によって, cos 関数等の和として表現できる. 今回扱う系は線形な微分方程式なので, 最も基本的な cos タイプの外力での一般解を解くことができれば, 一般の関数についてもその足し合わせで求めることができる.

この場合の運動方程式は

md2xdt2=kx+F(t)=kx+F0cosωft  d2xdt2=kmx+F0mcosωft     ω02km,  f0F0md2xdt2=ω02x+f0cosωft(11)   d2xdt2+ω02x=f0cosωft

となる. これは上述の線形非斉次微分方程式 (6) d2x(t)dt2+P(t)dxdt+Q(t)x(t)=R(t) における,

P(t)=0Q(t)=ω02R(t)=f0cosωft

という場合に対応する.

 

一般解の導出

上述の線形非斉次微分方程式の一般解の導出手順にしたがって, 一般解を求めていく.

斉次の一般解 x0(t)

斉次 (R(t)=0 ) の場合は

d2xdt2+ω02x=0

となり, 単振動の運動方程式に帰着する. したがって, この一般解は

(12)x(t)=Acos(ω0t+ϕ)   (A,ϕ:)

となる.

 

非斉次の特解 X0(t)

特解X0(t) については, 外力 R(t)cosωft という関数を含んでいることに着目し, 仮に

X0(t)=Afcosωft   (Af:)

と置くことにする.

この特解を運動方程式 (11) d2xdt2+ω02x=f0cosωft に代入すると,

d2X0dt2+ω02X0=f0cosωft  d2dt2(Afcosωft)+ω02(Afcosωft)=f0cosωft  Afωf2cosωft+ω02Afcosωft=f0cosωft  Af=f0ω02ωf2

となる. したがって特解は

(13)X0(t)=f0ω02ωf2cosωft

として求まった.

 

非斉次の一般解 x(t)

以上より, x0(t) の式 (12), X0(t) の式 (13) を足し合わせることで, 元の運動方程式 (11) d2xdt2+ω02x=f0cosωft の一般解

一般解 (単振動+周期的な外力) :

x(t)=x0(t)+X0(t)(14)=Acos(ω0t+ϕ)+f0ω02ωf2cosωft   (A,ϕ:)

が導出できた.

これは, 下図のような運動となる.

forced-oscillation-1_template

アニメ (スクショ) アニメ
forced-spring.mov

一般解の解釈

一般解 (14) x(t)=Acos(ω0t+ϕ)+f0ω02ωf2cosωft は, ・右辺 第1項 : 外力がない場合の単振動 (振動子の固有振動とも呼ばれる) ・右辺 第2項 : 外力の影響そのもの を表す.

 

非常に大きいf0 or ω0ωf の場合

この一般解 x(t)=Acos(ω0t+ϕ)+f0ω02ωf2cosωft f0が非常に大きい, もしくは ω0ωf といった場合に, 右辺第2項 (外力) がこの系をほぼ支配的 :

x(t)f0ω02ωf2cosωft

となる. 外力は式 (10) F(t)=F0cosωft であるので, 外力 F(t) とおもりの変位 x(t) を比較すると

ω0, ωf の大小おもりの変位 x(t)x(t) の位相 外力 F(t) の位相F(t), x(t)の位相差F(t), x(t)の振動の向き
ω0>ωff0ω02ωf2cosωftωft ωft0同じ向きに振動
ω0<ωff0(ωf2ω02)cosωft=f0ωf2ω02cos(ωft±π)ωft±π ωftπ逆向きに振動

となる (下図参照).

ω0, ωf の大小グラフ
ω0>ωfforced-oscillation-1_omega0-greater-omegaf
ω0<ωfforced-oscillation-1_omega0-less-omegaf

 

ω0=ωfの場合

ω0=ωfの場合は, 一般解 (14) x(t)=Acos(ω0t+ϕ)+f0ω02ωf2cosωft の外力の項 (右辺 第2項) は発散して無限大になるため, x(t) も無限大になる. これを振幅共振 (振幅共鳴) と呼ぶ.

ただし, x(t) がある程度よりも大きくなると, ・バネによる復元力が kx では表せなくなる dxdt が大きくなりすぎて空気抵抗の影響を考慮する必要が出てくる などして, そもそもの運動方程式 (11) d2xdt2+ω02x=f0cosωft が成立しなくなるため, 系が変わってしまう.

また, 振り子は紐による構造的なx(t)の制限があるため, x(t) が無限大になるような現象は発生しない.

 

単振動 + 速度に比例する抵抗 + 周期的な外力

概要

次に, 下図のような, バネによる単振動に速度に比例する抵抗 (摩擦) と周期的な外力を作用させた系を考える.

spring_damped-forced-oscillation

ここでも前述と同様に

(15)F(t)=F0cosωft   (F0,ωf:)

という周期的な外力F(t)が加わった場合を考える.

この場合の運動方程式は

md2xdt2=kxΓdxdt+F(t)=kxΓdxdt+F0cosωft  d2xdt2=kmxΓmdxdt+F0mcosωft     ω02km,  γΓm,  f0F0md2xdt2=ω02xγdxdt+f0cosωft(16)   d2xdt2+γdxdt+ω02x=f0cosωft

となる.

これは, より一般的な線形非斉次微分方程式 (6) d2x(t)dt2+P(t)dxdt+Q(t)x(t)=R(t) における

P(t)=γQ(t)=ω02R(t)=f0cosωft

という場合に対応する.

 

一般解の導出

上述の線形非斉次微分方程式の一般解の導出手順にしたがって, 一般解を求めていく.

斉次の一般解 x0(t)

斉次 ( R(t)=0 ) の場合は

d2xdt2+γdxdt+ω02x=0

となり, 抵抗のある場合のバネによる運動 (減衰振動等) の運動方程式に帰着する.

したがって, この一般解は

(17)x0(t)=C1ep1t+C2ep2t(C1, C2:.  p1γ2+γ24ω02,  p2γ2γ24ω02)

となる. また, 抵抗が小さい場合 γ2<ω0の一般解は

(18)x0(t)=eγ2tAcos(ω~t+ϕ)    (  ω~ω02γ24)

となる.

 

非斉次の特解 X0(t) (準備)

前節の 単振動+周期的な外力 の場合と同様に X0(t)を仮にcos形と置いて計算しても特解は求まる. しかし, ここでは計算がより楽な, 複素数を用いた方法で行ってみる. 以前に紹介した, 複素指数関数を用いた単振動の一般解を導出する方法と同様である.

まず, 運動方程式 (16) d2xdt2+γdxdt+ω02x=f0cosωftにおいて, 位置

(19)z=x+iy

と置き換える. さらに, 運動方程式 (16) の外力の項 (右辺) が実数部になるような複素関数

(20)f0eiωft=f0(cosωft+isinωft)

を考える. すると, 運動方程式 (16)

拡張された運動方程式 :

(21)d2zdt2+γdzdt+ω02z=f0eiωft

と拡張することができる. この場合, 一般的な線形非斉次微分方程式 (6) との対応は

P(t)=γQ(t)=ω02R(t)=f0eiωft

となる.

あとは, 拡張された運動方程式 (21) の複素解を求め, その実部を取ると, 元の運動方程式 (16) の解を求めたことになる. 今回はこれを特解に対して計算していく.

 

確認

単振動の際と同様だが, 複素化して解く手法で問題ないことを, 念の為確認しておく. 複素解zが得られたとして, 複素拡張された運動方程式 (21) に, 複素数zの定義式 (19) z=x+iy , 複素化した外力のオイラーの公式 (20) f0eiωft=f0(cosωft+isinωft)​​ を代入し, 整理すると

d2zdt2+γdzdt+ω02z=f0eiωft  d2(x+iy)dt2+γd(x+iy)dt+ω02(x+iy)=f0(cosωft+isinωft)(d2xdt2+γdxdt+ω02xf0cosωft)+i(d2ydt2+γdydt+ω02yf0sinωft)=0

となる.

複素数が0になるということは, 実部も虚部もともに0になることと等価であり,

(22)d2xdt2+γdxdt+ω02xf0cosωft=0d2ydt2+γdydt+ω02yf0sinωft=0

が同時に成立することを意味する. この式 (22) は元の運動方程式 (16) そのものである.

したがって, 複素関数の微分方程式だと思って複素解を求めた後に, その実部をとれば, 元の運動方程式 (16) の解に対応することが確認できた.

元の外力がf0sinωft で, かつ, 同様の複素化 f0eiωft=f0(cosωft+isinωft) をしていた場合は, 得られた複素解の虚部を取ることで元の運動方程式の解に対応する.

 

非斉次の特解 X0(t) (本編)

拡張された運動方程式 (21) :

d2zdt2+γdzdt+ω02z=f0eiωft

について考える. 右辺がeiωftという因子をもった複素指数関数なので, 特解Z0(t)を仮に

Z0(t)=Cfeiωft   (Cf:)

と置くことにする.

この特解を拡張された運動方程式 (21) に代入すると,

d2Z0dt2+γdZ0dt+ω02Z0=f0eiωft  d2dt2(Cfeiωft)+γddt(Cfeiωft)+ω02(Cfeiωft)=f0eiωft  Cf(ωf2)eiωft+γCf(iωf)eiωft+ω02Cfeiωft=f0eiωft  Cf(ωf2+iγωf+ω02)eiωft=f0eiωft  Cf=f0ω02ωf2+iγωf

となり, 定めるべき Cf が求まった. したがって特解は

(23)Z0(t)=f0ω02ωf2+iγωfeiωft

として求まった.

実部, 虚部を分けやすいように係数をもう少し整理してみよう. 係数の分母 ω02ωf2+iγωf は複素平面で考えると下図のようになる.

spring_damped-forced-oscillation_complex-plane

したがって, 極座標表示 (z=reiθ) と対応させると

ω02ωf2+iγωf=(ω02ωf2)2+γ2ωf2eiθ    (  tanθγωfω02ωf2)

となる. これを特解の式 (23) Z0(t)=f0ω02ωf2+iγωfeiωft の係数の分母に代入すると

Z0(t)=f0(ω02ωf2)2+γ2ωf2eiθeiωft=f0(ω02ωf2)2+γ2ωf2ei(ωftθ)(24)  Aff0(ω02ωf2)2+γ2ωf2=Afei(ωftθ)

となる. あとはこの実部をとれば, 特解 X0(t)

X0(t)=Re Z0=Re(Afei(ωftθ))(25)=Afcos(ωftθ)

が求められた.

 

非斉次の一般解 x(t)

以上より, 斉次の一般解 (17) x0(t)=C1ep1t+C2ep2t, 非斉次の特解 (25) X0(t)=Afcos(ωftθ) を足し合わせることで, 一般解

一般解 (単振動+速度に比例する抵抗+周期的な外力 (強制振動) ) :

(26)x(t)=C1ep1t+C2ep2t+Afcos(ωftθ)   (C1,C2:)(p1γ2+γ24ω02,  p2γ2γ24ω02,  Aff0(ω02ωf2)2+γ2ωf2,  tanθγωfω02ωf2)

が導出できた.

特に, 抵抗力が小さい場合 (γ2<ω0) は斉次の一般解が (18) x0(t)=eγ2tAcos(ω~t+ϕ) となるので,

一般解 (減衰振動+周期的な外力 (強制振動) ) :

(27)x(t)=eγ2tAcos(ω~t+ϕ)+Afcos(ωftθ)   (A,ϕ:)(ω~ω02γ24,  Aff0(ω02ωf2)2+γ2ωf2,  tanθγωfω02ωf2)

となる.

これは, 下図のように, 減衰振動によって小さく揺れながら, 全体としては外力の振動に近づいていく振動となる.

forced-oscillation-2_damped_small-residence

 

アニメ (スクショ) アニメ
forced-damped-spring.mov

 

一般解の解釈

一般解 (26) x(t)=C1ep1t+C2ep2t+Afcos(ωftθ) は, ・右辺 第1, 2項 : 外力がない場合の, 抵抗のある場合のバネによる運動. 十分時間が経てば0になる. ・右辺 第3項 : 外力と同じ角振動数の振動. 強制振動の項とも呼ばれる. を表し,

特に, 抵抗力が小さい場合の一般解 (27) x(t)=eγ2tAcos(ω~t+ϕ)+Afcos(ωftθ) は, ・右辺 第1項 : 外力がない場合の減衰振動. 十分時間が経てば0になる. ・右辺 第2項 : 外力と同じ角振動数の振動. 強制振動の項とも呼ばれる. を表す.

上図では, 抵抗が小さい場合を例に図示したため, 運動初期においては減衰振動と強制振動が混ざりあった複雑な運動となっている.

ただし, 十分時間がたった後は, 抵抗力の大小に関わらず抵抗のある場合のバネによる運動 (or 減衰振動) の部分は0となり, 強制振動部分 (特解 (25)) のみが残る :

(28)x(t)=X0(t)=Afcos(ωftθ)=f0(ω02ωf2)2+γ2ωf2cos(ωftθ)

このような状態を定常状態と呼ぶ.

 

振幅共鳴, 感受率

共鳴曲線

外力を与える頻度 (角振動数 ωf ) によって強制振動の振幅がどれだけ大きくなるか, を見てみよう. これは, ブランコに乗っている人の背中を, どの頻度 (角振動数 ωf ) で押してやれば, そのブランコの振幅を大きくできるか, という内容に近い.

実際に, 外力の角振動数 ωf と外力部分の振幅 Af との関係を, Af の定義式 (24) Aff0(ω02ωf2)2+γ2ωf2 から考えていく.

Af=f0(ω02ωf2)2+γ2ωf2=f0ω02(1(ωfω0)2)2+(γω0)2(ωfω0)2     ωf~ωfω0, γ~γω0=f0ω02(1ωf~2)2+γ~2ωf~2(29)    ω02f0Af=1(1ωf~2)2+γ~2 ωf~2

となる. 角振動数比 ωf~ に対する, スケールされた外力部分の振幅 ω02f0Af の変化率を見るために, 両辺をωf~ で微分すると

ddωf~(ω02f0Af)=ddωf~(1(1ωf~2)2+γ~2 ωf~2)=ddωf~((1ωf~2)2+γ~2 ωf~2)12=12((1ωf~2)2+γ~2 ωf~2)32(2(1ωf~2)(02ωf~)+2γ~2 ωf~)=12((1ωf~2)2+γ~2 ωf~2)32(4ωf~+4ωf~3+2γ~2 ωf~)=((1ωf~2)2+γ~2 ωf~2)32(2ωf~2+γ~22)ωf~=((1ωf~2)2+γ~2 ωf~2)32(ωf~2+γ~222)2ωf~

となる. したがって, 「スケールされた外力部分の振幅 ω02f0Af の傾きが0となる」, すなわち, 「変化率 ddωf~(ω02f0Af)=0 となる」 のは,

(30)ωf~2+γ~222=0    ωf~=1γ~22

となる場合である (ωf~=0 を除く).

以上より, 各 γ~ に対して, 横軸: ωf~, 縦軸: ω02f0Afでプロットしたものが下図である. 各曲線は共鳴曲線と呼ばれる.

frequency-vs-amplitude_for_force

γ~=0 の場合は, γ~=γω0=0γ=0 となるので抵抗がない場合に対応し, 単振動と外力との角振動数が一致する箇所 ωf~=ωfω0=1​で, 振幅が発散して無限大になっている. これは, 前述の振幅共鳴の際の発散に対応する.

 

振幅共鳴

また, スケールされた外力部分の振幅 ω02f0Af の傾きが0となる ωf~ を式 (30) ωf~=1γ~22 :

ωf~=1γ~22    ωfω0=1(γω0)22    ωf=ω02γ22

で求めたが, これは, 0<γ~<2 の範囲での共鳴曲線が極大となる箇所を意味する. このように振幅が極大となる場合を振幅共鳴 (振幅共振)と呼ぶ.

これは例えば, ブランコに乗っている人の背中を, この頻度 (角振動数 ωf=ω02γ22 ) で押してやった場合にブランコの振幅が最も大きくなる, ということを意味する.

 

直感的には「ωf=ω0 となる場合に共鳴が起きる」と考えがちだが, 振幅にとっては少しずれる. 実は, この直感はエネルギーの観点から見た場合に正しい. 外力が単位時間あたりに与える仕事は ωf=ω0 で最大となる. 今回の系では, 外力から加わったエネルギーは摩擦抵抗によって熱となって放出されるわけだが, そのエネルギーの吸収しやすさは ωf=ω0 で最大となる.

 

2γ~ の範囲では, ωf~=0 で最大となり, ωf~ が大きくなるにつれて, スケールされた外力部分の振幅 ω02f0Af は単調減少する.

感受率

なお, これらの外力部分の振幅 Af と角振動数 ωf との関係は,

χ(ωf)Aff0=1(ω02ωf2)2+γ2ωf2

感受率 χ(ωf) と定義し, 角振動数 ωf と感受率 χ(ωf) とで関係性を見ることもある. しかし, これは, 前述の角振動数比 ωf~=ωfω0 と, スケールされた外力部分の振幅 ω02f0Af とで見る関係性と本質的に同じものである (ω02だけ定数倍されている).

実際にプロットしたものが下図であり, 上図と同形であることが確認できる.

omegaf-vs-chi_for_force

 

共鳴現象の例
  • 電波の受信

現在は空気中に, 様々な振動数の電波が飛び交っている. ラジオ, テレビ, 携帯などの各デバイスでは, そのような環境から必要な特定の電波のみを拾い出さなくてはいけない. 基本的には受信するアンテナの大きさで, 拾い出せる振動数をある程度制限できるのだが, それでもまだ様々な振動数の起電力が混ざり合っている. アンテナをω0 で振動する共振回路につなぐと, 各振動数による電流が生じるのだが, その内の 振動数ω0によって起電する電流のみが, 共鳴現象のおかげで, 圧倒的に大きくなる. このことにより, 特定の電波を受信することが可能となっている.

 

  • 音で割るワイングラス

ワイングラスを叩くと高く澄んだ音がする. 叩くことで, そのワイングラスが振動し, その振動が空気を振動させることで音として聞こえるわけである. したがって, この音はそのワイングラスに固有な振動数を持った音である. そこで, ワイングラスの近くで, その固有な音と同じ振動数を持った音をスピーカーやソプラノ歌手等から発生させると, その音波によってワイングラスが振動し, ついには割れるという現象が発生する.

安いワイングラスだとエネルギーの吸収が小さいそうなので, 実験したい場合は高級なワイングラスを用いた方が割りやすいらしい.

 

  • 虎落笛 (もがりぶえ), エオリアンハープ

電線等の細い線が風で音が鳴る現象を日本では虎落笛と呼び, ヨーロッパではエオリアンハープと呼ぶ.

これは, 風が細い線などの障害物にあたることで, カルマン渦列が発生し, その障害物の後方の空気が交互に上下に振動することで音として聞こえる現象である.

https://youtu.be/7arKn59tk78

 

  • アメリカのつり橋の崩壊

アメリカのワシントン州のタコマ海峡橋というつり橋が1940年に完成した. しかし, この橋には, 橋のねじれ振動の周期と上下振動の周期とがほぼ一致するという設計上の問題があった.

そのため, 橋に強い横風を受けた際に, (エオリアンハープの際と同様に) カルマン渦列が生じ, 橋の後方の空気が交互に上下振動することで, 橋自体の上下振動が生じる. この上下振動が橋のねじれ振動と共鳴することで振動がどんどん大きくなり, ついには橋の崩壊といたったのである.

実際, 設計時に上下振動に対しては考慮していたそうだが, ねじれ振動と共鳴することは考慮していなかったために, その崩壊を招いたと言われている.

https://youtu.be/j-zczJXSxnw