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線形振動

前回習ったcosの一般解や今日習ったsinは線形振動と教わりましたが、cos関数やsin関数は非線形の関数だと教わりました。線形振動とは運動方程式に累乗や三角関数が含まれていないもののことを言うんですか?少し理解がごちゃついているので、教えて欲しいです。

①線形振動と非線形振動, ②線形項と非線形項, という2点が混ざっているんですね.

①線形振動と非線形振動: ・線形振動 : 振動現象の運動方程式が線形項のみで構成されている場合 ・非線形振動: 振動現象の運動方程式が非線形項も含んでいる場合

②線形項と非線形項: xの関数として考えた場合, ・線形項 : xの1次の関数 (例: x, dxdt 等) ・非線形項: xの1次以外の関数 (例: x2, sinx, cosx, ex 等)

 

 

声もしっかり聞こえやすく分かりやすかったが、たんたんと100分聞くというのが少しきつかったです。あと、導出の説明も分かりやすいのですがほんの少し早かったのでちょこっと遅めて頂けるとありがたいです、、

スライダクランク機構の実演やペンデュラムウェーブなどが授業を飽きさせない工夫がうれしかった。 式変形において第1種完全楕円積分の部分が天下り的でもやもやした。

 

ポテンシャル中の運動

一般的な力 f(x) の場合のエネルギーの概要

一般的な力 f(x) がかかる運動方程式:

md2xdt2=f(x)

について考える.

両辺にdxdtをかけ, 時刻tで積分すると

md2xdt2dxdtdt=f(x)dxdtdt12mddt(dxdt)2dt=f(x)dx12mdv2dtdt=f(x)dx    (  v=dxdt)12mv2C=f(x)dx    (  C:)

となり,

エネルギー保存則:

(1)12mv2f(x)dx=C

となる. ここで, 左辺 第2項を

ポテンシャル:

U(x)=f(x)dx

と書くとき, このU(x)を系のポテンシャルエネルギー, あるいはポテンシャル, 位置エネルギーという.

このように, 力の積分がポテンシャルエネルギーなのだから, 両辺 x で微分すれば

ポテンシャルと力:

f(x)=dU(x)dx

も成り立つ. また, エネルギー保存則 (1) の左辺 第1項を

運動エネルギー:

K=12mv2

と呼ぶ. したがって, エネルギー保存則 (1)

K+U(x)=C

と書き換えられる. この運動エネルギーKと位置エネルギーU(x)の和を

力学的エネルギー:

E=K+U

と書く. Eはもともと積分定数 C だったので時刻に依らず一定である.

このように, 力が位置だけで決まる1次元の運動においては, 力はポテンシャルから導かれ, 全エネルギーは保存され, エネルギー保存の法則が成り立つ. また, その力を保存力と呼ぶ.

2次元, 3次元の運動では, 保存力は下記のようにもう少し厳密に定義される.

保存力 (より厳密な定義) : ある物体が力Fによって, 点P1から点P2へと移動した場合, その力がなす仕事W

W=P1P2Fdr

となる. ここでWが経路によらず一定の場合, その力Fを保存力と呼ぶ.

また, その場合のポテンシャルをU(r)とする場合, 保存力F

F=U(r)=(Ux,Uy,Uz)

と記述できる.

p1p2

 

単振動のポテンシャル

md2xdt2=mω2xmd2xdt2+mω2x=0md2xdt2dxdt+mω2xdxdt=012mddt((dxdt)2)+12mω2dx2dt=012mddt((dxdt)2)dt+12mω2dx2dtdt=0dt12m(dxdt)2+12mω2x2=C12mv2+12mω2x2=C    (  vdxdt)K+U=E

単振動のエネルギーは

:  K=12mv2:  U=12mω2x2

となり, ポテンシャルは下図のような放物線を描く.

energy_simple-oscillation

位置xにおいてポテンシャルからかかる力は

f(x)=dU(x)dx=ddx(12mω2x2)(2)=mω2x

である. したがって, ポテンシャルの傾きに応じて, 内側の方向 (上図ならx方向) の力がかかっている.

 

一般的なポテンシャル

x の制限なし

一方, 下図のような, 放物線ではないポテンシャルの中での運動も考えられる. この場合も極小点 x0 を中心に振動自体はする.

energy_general-potential

ポテンシャル U(x) を極小点 x0 近傍でテイラー展開すると

U(x)=U(x0)+dU(x0)dx(xx0)+12!d2U(x0)dx2(xx0)2+13!d3U(x0)dx3(xx0)3+=U(x0)+0+12!d2U(x0)dx2(xx0)2+13!d3U(x0)dx3(xx0)3+    ( x00dU(x0)dx=0)

となる. 位置xにおいてポテンシャルからかかる力は f(x)=dU(x)dx なので,

f(x)=dU(x)dx=0212!d2U(x0)dx2(xx0)313!d3U(x0)dx3(xx0)2(3)=d2U(x0)dx2(xx0)12d3U(x0)dx3(xx0)2

となる.

振動の中心となる極小点 x0 を簡単のために0と置いても (x00)

f(x)=d2U(0)dx2x12d3U(0)dx3x2

となる,

これは, 単振動の場合の力の式 (2) f(x)=mω2x とは異なり, x の2次以上の項が出てしまっている. したがって, これは単振動とはならない.

例: 伸び切ったバネによる単振動

 

極小点x0 近傍での微小な振動 (単振動)

そこで, 極小点x0 近傍での微小な振動として考えてみよう.

この場合, xx0 は微小量となるため, 位置xにおいてポテンシャルからかかる力 (3)

f(x)=d2U(x0)dx2(xx0)12d3U(x0)dx3(xx0)2

における, xx0 の2次以上の項の寄与は十分小さいとみなすことができる. その結果,

(4)f(x)d2U(x0)dx2(xx0)=d2U(0)dx2x    ( x00)

となり, 単振動の場合の力の式 (2) f(x)=mω2x と同じ形の式となる.

したがって, ポテンシャルの形が一般的な場合であっても, ほとんどの場合において, 極小点x0 近傍での微小な振動であれば単振動とみなせることがわかった.

 

極小点x0 近傍での微小な振動 (非単振動)

ここで, 「ほとんどの場合において」と言ったのには理由がある. すなわち, 式 (4) において, d2U(x0)dx2=0 となる場合である.

この場合は,

f(x)0

となってしまい, 極小点 x0 近傍から開始しても力がかかっていないため振動しない. そのため単振動とならない.

d2U(x0)dx2=0 というのは, 凹でも凸でもない平坦なポテンシャルであることを意味しているため, 下図のようなポテンシャルの場合に対応する.

energy_general-potential-flat

 

単振動とならない場合のまとめ

以上から, 単振動とならない場合については

  • 変数xが大きく, ポテンシャルの概形が放物線ではない場合

  • 極小点x0近傍が d2U(x0)dx2=0 のように平坦で, 放物線とならない場合

であることがわかった.

 

 

抵抗のある場合の運動 (減衰振動)

概要

ここまでに見たように, 多くの現象が (部分的であったとしても) 単振動として扱うことができる.

一方, 現実世界で何かしらの振動現象を起こしたとしても, 実際には何かしらの振動を妨げる要因が働いて, 振動は減衰してしまう. 以下では, そのような減衰する振動 (減衰振動) の中でも最も簡単な, 速さに比例する抵抗力が作用する場合を考える.

例えば,

  • 摩擦抵抗のあるバネ運動

  • 水中におけるバネ運動 (水の粘性抵抗)

などが挙げられる.

下記では摩擦抵抗がある場合のバネによる運動について, 具体的に見ていく.

 

例: 抵抗がある場合のバネによる運動

運動方程式

spring_damped-vibration

のような摩擦 (抵抗力) のある系を考える. 摩擦抵抗や空気抵抗は質点の速度に比例する. この系の運動方程式は, 摩擦 (抵抗力) の項を追加して

(5)md2xdt2=kxΓdxdt

となる.

一般解の導出

この運動方程式から系の一般解を導出していく. 運動方程式の両辺を質量mで割って, 整理すると

d2xdt2+Γmdxdt+kmx=0

となる. ここで,

(6)γΓm,  ω02km

とおくと,

(7)d2xdt2+γdxdt+ω02x=0

という形に整理できる. これはxについての線形な微分方程式であるため, 解について重ね合わせの原理が成り立つ.

 

この方程式は時刻tで 2, 1, 0階微分したもの (左辺) で構成され, その和が0 (右辺) となっている. したがって, xの概形としては, tで2, 1階微分しても元のxと同じ形になるような関数が想定できる (例えば指数関数). ゆえに, 解の概形を

(8)x(t)=Cept   (C,p:)

とおく. これを運動方程式 (7) に代入して整理すると

d2dt2Cept+γddtCept+ω02Cept=0p2ept+γpept+ω02ept=0p2+γp+ω02=0

となるので

二次方程式の解の公式 :

ax2+bx+c=0x=b±b24ac2a

pについて解くと

(9)p=γ±γ24ω022

となり,

p1=γ2+γ24ω02p2=γ2γ24ω02

のように, それぞれ独立した解が導かれる.

したがって, これらを重ね合わせた解として, 一般解

抵抗がある場合のバネによる運動の一般解:

(10)x(t)=C1ep1t+C2ep2t   (C1, C2:)

が導出された.

 

これで一般解が導出できたのだが, 抵抗力の大きさによって, 系の特徴をより捉えることができる. 具体的には

  1. 抵抗力がない場合

  2. 抵抗力が小さい場合

  3. 抵抗力が大きい場合

  4. 抵抗力が中間の大きさの場合

の4種類についてそれぞれ見ていく.

抵抗力がない場合

一般解

spring_damped-vibration

運動方程式:

d2xdt2+γdxdt+ω02x=0   (γΓm,  ω02km)

という系において, 抵抗力がない場合というのは, これまでにやってきた系と同じことを意味する. すなわち, Γ=0γ=0となり, 摩擦力の項がないという場合に相当する.

γ=0 なので, 式 (9):p=γ±γ24ω022

p1=γ+γ24ω022=0+04ω022=iω0p2=γγ24ω022=004ω022=iω0

となる. したがって, 元の一般解の式 (10):x(t)=C1ep1t+C2ep2t

x(t)=C1eiω0t+C2eiω0t    :eiθ=cosθ+isinθ=C1(cosω0t+isinω0t)+C2(cos(ω0t)+isin(ω0t))=C1(cosω0t+isinω0t)+C2(cosω0tisinω0t)=(C1+C2)cosω0t+i(C1C2)sinω0t

となる. C1, C2は任意定数であり, x は実数なので, 2つの実数A1, A2

A1=C1+C2A2=i(C1C2)

と置き換えると,

x(t)=A1cosω0t+A2sinω0t

となる. このままでもよいが, 極座標を意識して, さらに2つの実数A, ϕ

A1=AcosϕA2=Asinϕ

に置き換えると,

x(t)=Acosϕcosω0tAsinϕsinω0t=A(cosϕcosω0tsinϕsinω0t)    cos:cos(x1±x2)=cosx1cosx2sinx1sinx2=Acos(ω0t+ϕ)

となり, これまでに求めたことのある単振動の一般解に帰着した.

グラフ アニメ (スクショ) アニメ
harmonic-oscillation gamma0.mov

 

抵抗力が小さい場合

一般解

次に, 抵抗が小さい場合, すなわち γ が小さい場合を考える. 具体的にどの程度小さいかについては, 「pについての解の式 (9) :

p=γ±γ24ω022=γ2±γ24ω02

の第2項の根号の中身が負になる程度」として考える. すなわち,

γ24ω02<0γ2<ω0

という場合である. これにより, p

p=γ2±iω02γ24

のように根号内の正負を明示的に記述できる. さらに, 簡単のため

(11)ω~=ω02γ24

とおくと,

p=γ2±iω~

となる. これを元の一般解の式 (10):x(t)=C1ep1t+C2ep2t に代入すると

x(t)=C1e(γ2+iω~)t+C2e(γ2iω~)t=eγ2t(C1eiω~t+C2eiω~t)

となる. この右辺の括弧内を, 抵抗力なしの場合と同様に計算すると

C1eiω~t+C2eiω~t=C1(cosω~t+isinω~t)+C2(cos(ω~t)+isin(ω~t))=(C1+C2)cosω~t+i(C1C2)sinω~t=A1cosω~t+A2sinω~t      (A1C1+C2, A2i(C1C2))=Acosϕcosω~tAsinϕsinω~t      (A1Acosϕ, A2Asinϕ)=Acos(ω~t+ϕ)

となり, 単振動の一般解に帰着する.

したがって, x(t)について書くと

抵抗力が小さい場合の一般解 (減衰振動) :

(12)x(t)=eγ2tAcos(ω~t+ϕ)

となる. この一般解は

  • Acos(ω~t+ϕ)は単振動を表し

  • 振幅 eγ2tAtについての指数関数のため, 時刻とともに指数的に減少する

ことから, 時刻とともに減衰していく単振動を表す. ゆえに 減衰振動 と呼ばれる.

また, 式 (11):ω~=ω02γ24 において, 摩擦係数 γ は非負 且つ γ24<ω02のため,

ω~<ω0

となる. これは, 摩擦抵抗があることによって, 通常の単振動よりも遅い振動となっていることを示す.

グラフ アニメ (スクショ) アニメ
damped-oscillation gamma0.2.mov

 

初期値を設定した場合の解の例

具体例として, ある位置 x0 までバネを伸ばし, 静止した状態から手を離す, という場合を考える. すなわち,

  • 初期位置: x(t=0)=x0

  • 初速度: dxdt|t=0=0

という場合の解を考える.

抵抗の小さい場合の一般解 (???):x(t)=eγ2tAcos(ω~t+ϕ) から

x(0)=e0Acos(0+ϕ)=Acosϕ

となるので, 初期条件から,

(13)x0=Acosϕ

となる. また, 速度についても同様に計算する. 抵抗の小さい場合の一般解 $\eqref{damped-vibration-solution-small-resistance} : x(t) = e^{-\frac{\gamma}{2} t} A \cos (\tilde{\omega} t + \phi) $ を1階微分し

dx(t)dt=ddt(eγ2tAcos(ω~t+ϕ))=γ2eγ2tAcos(ω~t+ϕ)+eγ2tA(ω~)sin(ω~t+ϕ)

となる. 時刻t=0の場合を考えれば

dxdt|t=0=γ2e0Acos(0+ϕ)e0Aω~sin(0+ϕ)=γ2AcosϕAω~sinϕ

となるので, 初期条件 dxdt|t=0=0 から

γ2AcosϕAω~sinϕ=0

となる. ここで, cosϕ, sinϕについて整理すると,

sinϕcosϕ=γ2AAω~=γ21ω0ω~1ω0

となるので,

sinϕ=γ2ω0cosϕ=ω~ω0

となり, ϕについて求めることができた. これを 式 (13) に代入すると

x0=Aω~ω0  A=ω0x0ω~

として, Aについても求めることができた.

以上より, 2つの任意定数A, ϕが求まったため, 抵抗の小さい場合の一般解 (12)

x(t)=eγ2tAcos(ω~t+ϕ)=eγ2tA(cosω~tcosϕ+sinω~tsinϕ)

と整理して代入すると,

x(t)=eγ2t(ω0x0ω~)(cosω~t(ω~ω0)+sinω~t(γ2ω0))=x0eγ2t(cosω~tγ2ω~sinω~t)

となり, 具体的な解が求められた.

 

抵抗力が大きい場合

一般解

次に, 抵抗が大きい場合, すなわち γ が大きい場合を考える. 具体的にどの程度大きいかは, 小さい場合と反対で, 「pについての解の式 (9) :

p=γ±γ24ω022=γ2±γ24ω02

の第2項の根号の中身が正になる程度」として考える. すなわち,

γ24ω02>0γ2>ω0

という場合である. これにより, p

(14)p=γ2±γ24ω02

と記述できる. ここで, 第2項の根号部分は γ2>ω0 であることから

0<γ24ω02<γ2

となるため, 式 (14)の正負記号がどちらであっても, pは負になる:

p=γ2±γ24ω02<0  (15)p1=γ2+γ24ω02<0(16)p2=γ2γ24ω02<0(17)  p1p2=2γ24ω02>0

 

したがって, 一般解は

抵抗力が大きい場合の一般解 (過減衰) :

(18)x(t)=C1ep1t+C2ep2t   (C1, C2:)

となり, 元の一般解の式 (10):x(t)=C1ep1t+C2ep2t と同じ形のままとなる.

p1, p2がともに負の実数のため, この解は振動せずに減衰する. したがって, この解は 過減衰 と呼ばれる.

グラフ アニメ (スクショ) アニメ
over-damping_v0-greater-0 over-damping_v0-greater-0.mov

 

初期条件との対応

初期条件を決めてやることで, 定数C1, C2との対応をみていく. 時刻t=0において,

  • 初期位置: x(t=0)=x0

  • 初速度: dxdt|t=0=v0

とする.

過減衰の式 (18):x(t)=C1ep1t+C2ep2t で時刻t=0を考えると,

x(0)=C1e0+C2e0=C1+C2

となるので, 初期位置を考えると

(19)C1+C2=x0

となる.

また, 過減衰の式 (18):x(t)=C1ep1t+C2ep2t を時刻tで微分すると,

(20)dx(t)dt=C1p1ep1t+C2p2ep2t

となる. 時刻t=0において

dxdt|t=0=C1p1e0+C2p2e0=C1p1+C2p2

となるので, 初速度 dxdt|t=0=v0 を考えると

(21)C1p1+C2p2=v0

となる.

したがって, 式 (19), (21)C1, C2について解くと, 式 (19) C1+C2=x0

C2=x0C1

となるから

C1p1+(x0C1)p2=v0C1(p1p2)+x0p2=v0C1=v0x0p2p1p2

となり,

C2=x0v0x0p2p1p2=x0p1x0p2v0+x0p2p1p2=v0x0p1p1p2

となる.

まとめると

C1=v0x0p2p1p2C2=v0x0p1p1p2

である. これでC1, C2が求まった.

ここで, x0>0として, 様々なv0の値を取った場合のx(t)を考えてみる.

 

v0>0の場合

(15), (16), (17) から

p1<0p2<0p1p2>0|p1|<|p2|

であり, 条件から

x0>0v0>0

なので, C1, C2

C1=v0x0p2p1p2=()()()()>0C2=v0x0p1p1p2=()()()()<0

となり,

C1|C2|=v0x0p2p1p2v0x0p1p1p2=x0(p1p2)p1p2=x0>0

となる. したがって, 過減衰の一般解:

x(t)=C1ep1t+C2ep2t=(&)e(&)t+(&)e(&)t

から, x(t)は常に正であることがわかる.

実際にプロットしてみると下図のようになる.

グラフ アニメ (スクショ) アニメ
over-damping_v0-greater-0 over-damping_v0-greater-0.mov

このように, 初速度の影響で一度正に移動した後, x=0 に向かって単調に減少する.

 

この初速度の影響によって極大になる時刻taを求めてみよう. すなわち, 時刻 ta において過減衰の式の一階微分 (速度) (20)0になる場合を考えると

dx(t)dt|t=ta=C1p1ep1ta+C2p2ep2ta=0

なので, 時刻taについて解くと,

C2p2ep2ta=C1p1ep1taep2taep1ta=C1p1C2p2e(p2p1)ta=C1p1C2p2

となり,

ta=1p1p2log(C1p1C2p2)

として, taが求められた.

上図におけるtaを計算してみると,

ta0.55

となるので, 確かにこの時刻taにて極大になっていることが確かめられる.

 

v0=0の場合

(15), (16), (17) から

p1<0p2<0p1p2>0|p1|<|p2|

であり, 条件から

x0>0v0=0

なので, C1, C2

C1=v0x0p2p1p2=0()()()>0C2=v0x0p1p1p2=0()()()<0

となり,

C1|C2|=0x0p2p1p20x0p1p1p2=x0(p1p2)p1p2=x0>0

となる. したがって, 過減衰の一般解:

x(t)=C1ep1t+C2ep2t=(&)e(&)t+(&)e(&)t

から, x(t)は常に正であることがわかる.

実際にプロットしてみると下図のようになる.

グラフ アニメ (スクショ) アニメ
over-damping_v0-equal-0 over-damping_v0-equal-0.mov

t=0xは最大であり, 以後は単調に減少してx=0 に近づく.

 

v0<0の場合

(15), (16), (17) から

p1<0p2<0p1p2>0p1<p2|p1|<|p2|

であり, 条件から

x0>0v0<0

なので, C1, C2

(22)C1=v0p2x0p1p2=()()()()=()+()()C2=v0p1x0p1p2=()()()()=()+()()

となる.

p1x0, p2x0の正負は下図:

over-damping_v0-less-0-pattern

の通りなので, |v0|はその大きさによって

  1. |v0|p1x0 の場合

  2. p1x0<|v0|p2x0 の場合

  3. p2x0<|v0| の場合

の3つの場合が考えられる.

 

|v0|p1x0 の場合
|v0|p1x0v0p1x0

なので,

v0p1x0v0p2x0p1x0p2x0v0p2x0p1p2p1x0p2x0p1p2C1p1x0p2x0p1p2=x0>0C1>0

v0p1x0v0+p1x0p1x0+p1x0v0+p1x0p1p20C20

C1|C2|=C1(C2)=v0p2x0p1p2(+v0p1x0p1p2)=x0>0C1>|C2|

となる. 以上をまとめると

p1<0p2<0p1>p2|p1|<|p2|C1>0C20C1>|C2|

である. これを過減衰の式 (18) :

x(t)=C1ep1t+C2ep2t

に当てはめると,

x(t)=(&)e(&)t+(&)e(&)t

となるので, x(t)は常に正であることがわかる.

また,

C1|p1||C2||p2|=C1(p1)(C2)(p2)=v0p2x0p1p2p1+(+v0p1x0p1p2)p2=v0p1p2p1p2=v0>0C1|p1|>|C2||p2|

となるため, 過減衰の式の一階微分 (20)

dx(t)dt=C1p1ep1t+C2p2ep2t=(&)e(&)t+(&)e(&)t<0

のように常に負となるため, 単調減少であるとわかる.

実際にプロットしてみると下図のようになる.

グラフ アニメ (スクショ) アニメ
over-damping_v0-less-0-pattern1 over-damping_v0-less-0-pattern1.mov

確かに単調に減少してx=0 に近づくことが確かめられた.

 

p1x0<|v0|p2x0 の場合
p1x0<|v0|p2x0p1x0<v0p2x0

なので,

v0p2x0v0p2x0p2x0p2x0v0p2x0p1p20C10

p1x0<v0p1x0+p1x0<v0+p1x00<v0+p1x0p1p2C2>0

となる. 以上をまとめると

p1<0p2<0p1>p2|p1|<|p2|C10C2>0

である. これを過減衰の式 (18) :

x(t)=C1ep1t+C2ep2t

に当てはめると,

x(t)=()e(&)t+()e(&)t

となるので, x(t)は常に正であることがわかる.

また, 過減衰の式の一階微分 (20)

dx(t)dt=C1p1ep1t+C2p2ep2t=()e(&)t+()e(&)t<0

のように常に負となるため, 単調減少であるとわかる.

実際にプロットしてみると下図のようになる.

グラフ アニメ (スクショ) アニメ
over-damping_v0-less-0-pattern2 over-damping_v0-less-0-pattern2.mov

確かに単調に減少してx=0 に近づくことが確かめられた.

 

p2x0<|v0| の場合
p2x0<|v0|p2x0<v0

なので,

v0<p2x0v0p2x0<p2x0p2x0v0p2x0p1p2<0C1<0

p2x0<v0p2x0+p1x0<v0+p1x0p2x0+p1x0p1p2<v0+p1x0p1p20<x0<C20<C2

C2|C1|=C2(C1)=v0+p1x0p1p2(v0p2x0p1p2)=x0>0C2>|C1|

となる. 以上をまとめると

p1<0p2<0p1>p2|p1|<|p2|C1<0C2>0C2>|C1|

である.

実際にプロットしてみると下図のようになる.

グラフ アニメ (スクショ) アニメ
over-damping_v0-less-0-pattern3 over-damping_v0-less-0-pattern3.mov

したがって, 一度極小値に到達した後, 今度は負の側から単調にx=0 に近づくことが確かめられた.

 

抵抗力が中間の大きさの場合

一般解

最後に, 抵抗力が中間の大きさ, すなわち,

γ2=ω0

という場合を考える.

このとき, pについての解の式 (9) :

p=γ±γ24ω022=γ2±γ24ω02

の第2項の根号の中身が0になるので,

p=γ2

となる. 独立解の概形 (8) から,

x(t)=Cept=Ceγ2t

は得られるが, この1つしかないため, 式 (10) :

x(t)=C1ep1t+C2ep2t

のように一般解を作ることができない.

そこで, 時刻 t に関する何らかの関数 u(t) を考え, 仮に

x(t)=u(t)eγ2t

と置き, これが元の運動方程式 (7):

d2xdt2+γdxdt+ω02x=0

を満たすようにu(t)を決められるかどうか試してみる.

実際,

dxdt=ddt(u(t)eγ2t)=du(t)dteγ2tγ2u(t)eγ2t=(du(t)dtγ2u(t))eγ2t

であり,

d2xdt2=ddt(du(t)dteγ2tγ2u(t)eγ2t)=d2u(t)dt2eγ2tγ2du(t)dteγ2tγ2du(t)dteγ2t+γ222u(t)eγ2t=(d2u(t)dt2γdu(t)dt+γ222u(t))eγ2t

なので, 運動方程式 (7) に代入すると,

(d2u(t)dt2γdu(t)dt+γ222u(t))eγ2t+γ(du(t)dtγ2u(t))eγ2t+ω02u(t)eγ2t=0

から,

(d2u(t)dt2γ24u(t)+ω02u(t))eγ2t=0

となる. ここで, γ2=ω0なので,

d2u(t)dt2=0

となる. したがって, u(t)

u(t)=C1t+C2   (C1, C2:)

となるため, 一般解:

抵抗力が中間の大きさの場合の一般解 (臨界減衰) :

(23)x(t)=(C1t+C2)eγ2t

が導出できた. これは振動解ではなく, 臨界減衰と呼ばれる.

 

初期条件との対応

初期条件を決めてやることで, 定数C1, C2との対応をみていく. 時刻t=0において,

  • 初期位置: x(t=0)=x0

  • 初速度: dxdt|t=0=v0

とする.

臨界減衰の式 (23) で時刻t=0を考えると,

x(0)=(C10+C2)e0=C2

となるので, 初期位置を考えると

C2=x0

となる.

また, 臨界減衰の式 (23) を時刻tで微分すると,

dx(t)dt=C1eγ2tγ2(C1t+C2)eγ2t=(C1γ2C2γ2C1t)eγ2t

となる. 時刻t=0において

dxdt|t=0=(C1γ2C2γ2C10)eγ20=C1γ2C2

となるので, 初速度を考えると

C1γ2C2=v0C1=v0+γ2x0

となる.

ゆえに一般解とその速度は

x(t)=((v0+γ2x0)t+x0)eγ2tdx(t)dt=(v0γ2(v0+γ2x0)t)eγ2t

となる.

 

初速度によって,

  • v0>0

  • v0=0

  • v0<0, |v0|γ2x0

  • v0<0, |v0|>γ2x0

の4パターンに分かれる.

具体的な計算は省くが, 実際にプロットすると下図のようになる.

場合分けアニメ (スクショ)アニメ
v0>0critical-damping_v0-greater-0critical-damping_v0-greater-0.movcritical-damping_v0-greater-0.mov
v0=0critical-damping_v0-equal-0critical-damping_v0-equal-0.movcritical-damping_v0-equal-0.mov
v0<0, |v0|γ2x0critical-damping_v0-less-0-pattern1critical-damping_v0-less-0-pattern1.movcritical-damping_v0-less-0-pattern1.mov
v0<0, |v0|>γ2x0critical-damping_v0-less-0-pattern2critical-damping_v0-less-0-pattern2.movcritical-damping_v0-less-0-pattern2.mov

 

エネルギーの散逸

概要

今回の系では, 抵抗力の大小で変化の仕方は異なるとはいえ, 元々, 大きく運動していたものがだんだんと動かなくなっていく点は共通である.

すると, 元々動いていたエネルギーはどこへいったのか? → 摩擦 (抵抗力) が熱に変換され, 外界へとエネルギーが放出されることで, バネとおもりの部分のエネルギーが減少している. (もちろん, 熱として放出された部分も含めた全体の系なら, エネルギーは保存している)

このような現象を エネルギーの散逸 と呼ぶ.

具体例

上記の, 摩擦のある場合のバネによる運動において, 抵抗力が非常に小さい場合:

γ2ω0

に, どのようにエネルギーが散逸していくかをみていく.

運動方程式は, 同じで

md2xdt2=kxΓdxdt

である.

ここから前回までと同様にエネルギー積分をしていく. 左辺にまとめて, dxdtをかけ

md2xdt2dxdt+kxdxdt+Γ(dxdt)2=0

さらにtで積分をすると

md2xdt2dxdtdt+kxdxdtdt+Γ(dxdt)2dt=0 dt

から, エネルギー保存の式

12m(dxdt)2+12kx2+Γ(dxdt)2dt=C   (C:)

が導出できる. 各項はそれぞれ

  • 12m(dxdt)2 : おもりの運動エネルギー

  • 12kx2: バネの弾性エネルギー

  • Γ(dxdt)2dt: 抵抗によって熱として散逸するエネルギー

を意味する. 抵抗を含む全体系としてはエネルギーが保存していることがわかる.

 

ここで, 抵抗の項を含まない, おもりの力学的エネルギーE(t)

E(t)12m(dxdt)2+12kx2

とすれば, この部分からエネルギーが段々と減っていくはずである.

 

具体的に計算してみる.

E(t)に抵抗が小さい γ2<ω0 場合の一般解 (12) :

x(t)=eγ2tAcos(ω~t+ϕ)

を代入すると,

E(t)=12m(ddt(eγ2tAcos(ω~t+ϕ)))2+12k(eγ2tAcos(ω~t+ϕ))2=12m(γ2eγ2tAcos(ω~t+ϕ)+eγ2tA(ω~)sin(ω~t+ϕ))2+12keγtA2cos2(ω~t+ϕ)=12meγtA2ω~2(12γω~cos(ω~t+ϕ)+sin(ω~t+ϕ))2+12keγtA2cos2(ω~t+ϕ)=eγt[12mA2ω~2(12γω~cos(ω~t+ϕ)+sin(ω~t+ϕ))2+12kA2cos2(ω~t+ϕ)]

となる. γは正の実数なので, おもりの力学的エネルギーは指数関数的に減少していくことがわかる.

 

ここで, 特に, 抵抗が特に小さい場合 : γ2ω0 を考える. この時, ω~は定義式 (11):ω~=ω02γ24 より

ω~=ω02γ24ω0

となる. また,

γω~0

ともなるので, E(t)は,

E(t)=12meγtA2ω02(120cos(ω0t+ϕ)+sin(ω0t+ϕ))2+12keγtA2cos2(ω0t+ϕ)=12meγtA2ω02sin2(ω0t+ϕ)+12keγtA2cos2(ω0t+ϕ)

となる. さらに, ω0の定義式 (6) ω02km を用いると

E(t)=12keγtA2sin2(ω0t+ϕ)+12keγtA2cos2(ω0t+ϕ)=12keγtA2(sin2(ω0t+ϕ)+cos2(ω0t+ϕ))=12keγtA2

となり, 力学的エネルギーE(t)の時間的変化の式を導出できた.

γは正の実数なので, おもりの力学的エネルギーは指数関数的に減少していくことがわかる. また, その減少分は, 抵抗力が熱として放出していった分に相当する.