実施・提出期間

締切: 2024/04/24 (水) 13:30 までに, 下記の問題を実施し, 提出してください.

 

注意事項

  • 手書きで計算したものを1つのpdfにまとめて提出してください

    • 紙に直筆したものを写真 or スキャンする場合は, 中身がハッキリ読めることを確認してください

    • タブレット等を用いて電子的に手書きするのもOKです

    • 画像ファイルをそのまま何枚も提出したり, zipにまとめて提出したものは受取不可とします

  • 授業資料の解答を丸写しするのではなく, 授業内容を思い出しながら自分の手で計算するようにしてください

  • 授業直後に復習することはもちろん素晴らしいです!! その後, なるべく数日空けてから再学習として本課題を実施し, 提出することを是非試してみてください.

 

問題

単振動の一般解の様々な表現

下図のようなバネによるおもりの微小な単振動について考える. おもりの質量をm, 振動中心からの変位をx, ばね定数をkとする.

simple-harmonic-oscillation_spring_solution

このような単振動となる物理系の運動方程式は, ω=kmとおくと

(1)d2xdt2=ω2x

という2階の線形微分方程式で表される.

  1. この系におけるsin形の一般解を求めよ

  2. 1で求めたsin形の一般解が, cos形の一般解と等価であることを確かめよ

  3. 複素関数の微分方程式:

    (2)d2zdt2=ω2z

    において, zの複素解を導出せよ

  4. 3で求めたzの複素解の実部をとり, 単振動のcos形の一般解と対応することを確かめよ

  5. 3で求めたzの複素解の虚部をとり, 単振動のsin形の一般解と対応することを確かめよ

 

重ね合わせの原理

  1. 重ね合わせの原理はどのような微分方程式に対して成り立つか?

  2. 単振動の共通の運動方程式 :

    d2xdt2=ω2x

    において, 重ね合わせの解が導かれることを確認せよ.

  3. 微分方程式にどのような項があると重ね合わせの原理は成立しないか?

  4. 実際に問3のような項がある場合に重ね合わせの原理が成立しないことを確認せよ.

 

まとめ

  1. 今回の授業内容を100文字以上で自分なりにまとめてください. ただし, 写経のように丸写しすることだけはやめてください.

 

 

 

解答

単振動の一般解の様々な表現

下図のようなバネによるおもりの微小な単振動について考える. おもりの質量をm, 振動中心からの変位をx, ばね定数をkとする.

simple-harmonic-oscillation_spring_solution

このような単振動となる物理系の運動方程式は, ω=kmとおくと

(3)d2xdt2=ω2x

という2階の線形微分方程式で表される.

 

1. この系におけるsin形の一般解を求めよ

運動方程式:

(4)d2xdt2=ω2x

から計算していき, 積分

(5)1A2x2dx=±ωdt

の結果,

(6)cos1xA=±(ωt+ϕ)    (ϕ: 積分定数)

となる.

ここで, ϕは積分定数のため, 任意の値である. そこで,

(7)ϕϕπ2

と置きかえる. すると,

(8)cos1xA=±(ωt+ϕπ2)

となる. 両辺余弦をとると,

(9)x=Acos(±(ωt+ϕπ2))

となる. cosは偶関数なので, ±+にまとめることができるため,

(10)x=Acos(ωt+ϕπ2)

となる.

cosの加法定理

(11)cos(α±β)=cosαcosβsinαsinβ

から,

(12)cos(απ2)=cosαcosπ2+sinαsinπ2=sinα

なので, 式(10)

(13)x=Asin(ωt+ϕ)

となり, sin形の一般解が導出できた.

 

2. 1で求めたsin形の一般解が, cos形の一般解と等価であることを確かめよ

問1のsin形の解において, 任意の積分定数ϕを,

(14)ϕϕ+π2

と置きかえると,

(15)x=Asin(ωt+ϕ+π2)

となる.

sinの加法定理

(16)sin(α±β)=sinαcosβ±cosαsinβ

から,

(17)sin(α+π2)=sinαcosπ2+cosαsinπ2=cosα

なので, 式 (15) は,

(18)x=Acos(ωt+ϕ)

となり, cos形の一般解に帰着した. よって, 問1のsin形の一般解と, 本問で求めたcos形の一般解は等価である.

 

3. 複素関数の微分方程式: d2zdt2=ω2z において, zの複素解を導出せよ

(19)z=CeΛt     (C,Λ:)

と仮定し, 代入すると,

(20)C(Λ2+ω2)eΛt=0

となる.

ここで, C=0は意味のない解であり, eΛtは0にならないため,

(21)Λ2+ω2=0

となるようにΛを決めればよい. したがって,

(22)Λ=±iω

となる.

Λ=iωの場合を考えると,

(23)z=Ceiωt

となる.

ここで, 任意の複素数Cは複素平面上の極座標表示を考えて

(24)C=Aeiϕ   (A,ϕ:)

と置くことができる. したがって, これを代入すると

(25)z=Aeiϕeiωt=Aei(ωt+ϕ)

として, 複素解が導出できた.

4. 3で求めたzの複素解の実部をとり, 単振動のcos形の一般解と対応することを確かめよ

オイラーの公式から

(26)z=Aei(ωt+ϕ)=A(cos(ωt+ϕ)+isin(ωt+ϕ))

となることから, 複素解zの実部Re z

(27)Re z=Acos(ωt+ϕ)

となり, cos形の一般解と対応することが確認できた.

 

5. 3で求めたzの複素解の虚部をとり, 単振動のsin形の一般解と対応することを確かめよ

虚部をとってやれば, 複素解zの虚部Im z

(28)Im z=Asin(ωt+ϕ)

となり, sin形の一般解と対応することが確認できた.

 

 

重ね合わせの原理

1. 重ね合わせの原理はどのような微分方程式に対して成り立つか?

線形微分方程式において成り立つ.

 

2. 単振動の共通の運動方程式 : d2xdt2=ω2x において, 重ね合わせの解が導かれることを確認せよ.

単振動の共通の運動方程式 :

(29)d2xdt2=ω2x

において, 重ね合わせの解が導かれることを確認する.

2つの解をx1, x2とすると, 

(30)d2x1dt2=ω2x1(31)d2x2dt2=ω2x2

という2つの等式が成り立つ.

任意定数a, bに対し, a倍した式(30)と, b倍した式(31)を足し合わせると

(32)ad2x1dt2+bd2x2dt2=aω2x1+bω2x2

となり, 両辺をまとめると

(33)d2(ax1+bx2)dt2=ω2(ax1+bx2)

となる.

この式 (33) は, 元の単振動の共通の運動方程式 (29)と同じ形である. したがって, ax1+bx2も元の運動方程式 (29)の解となり, 解の重ね合わせが確認できた.

 

3. 微分方程式にどのような項があると重ね合わせの原理は成立しないか?

非線形項が混ざった微分方程式では重ね合わせの原理が成立しない.

 

4. 実際に問3のような項がある場合に重ね合わせの原理が成立しないことを確認せよ.

(34)d2xdt2=cx2

という非線形微分方程式を考える. ここで, cx2の部分がxについての非線形項である.

この微分方程式 (34)の解がx1, x2 (0) であったとすると,

(35)d2x1dt2=cx12(36)d2x2dt2=cx22

が成り立つ.

簡単のため, これらの重ね合わせの解として x1+x2が存在すると仮定する.

この重ね合わせの解 x1+x2を, 元の微分方程式 (34) に代入すると,

(37)d2(x1+x2)dt2=c(x1+x2)2

となる.

両辺を分解すると,

(38)d2x1dt2+d2x2dt2=cx12cx222cx1x2

となる.

ここで, 解x1, x2に関する方程式(35) (36)が成り立つため,

(39)(d2x1dt2+cx12)+(d2x2dt2+cx22)=2cx1x2

と整理した場合の左辺は0になる.

一方, x1, x2はそれぞれ無意味な解 (0) ではないため, 右辺の 2cx1x2 は0にはならない.

したがって, 2cx1x2 という余計な項により, 仮の重ね合わせの解 x1+x2を代入した式 (37) の不成立が確かめられた.

ゆえに, 非線形微分方程式 (34) には x1+x2といった重ね合わせの解が存在しないことが確認できた.