「組織には不断の新陳代謝を」

   西川伸一  * 『政経論叢』(明治大学政治経済研究所)第71巻第1・2号「編集後記」掲載掲載

 2002年10月1日付けで、飯田和人教授を学部長とする政治経済学部の新たな執行部がスタートした。前執行部との平均年齢を比べてみると、前執行部は発足時(2000年10月1日)で51.2歳であったのに対して、新執行部は49.2歳である。平均年齢でちょうど2歳も若返ったことになる。この2歳の若返りは学部運営にいっそうのバイタリティーを与えることであろう。

 もちろん、なんでも若ければいいというものではない。老・壮・青がうまくかみあってこそ、組織体は健全に運営される。このバランスを無視するといかに組織体は衰退するか。その典型例を旧ソ連の指導部にみることができる。

 『ゴルバチョフ回想録』(新潮社、1996年)によれば、48歳の若さで党政治局員に昇格したゴルバチョフがみたものはブレジネフ政権末期のもうろくぶりだった。

 ブレジネフを疲れさせないために、政治局会議はわずか15〜20分で終了。ブレジネフは冒頭、用意されたテキストを読み上げるだけ。自由な討議など許される雰囲気ではなく、「レオニード・イリイチ(ブレジネフのこと)の意見に同意しようではないか。では、本件は採択とします」と決まり文句が発せられて会議は閉じられる。新参としてゴルバチョフはいやというほど砂をかむ思いを味わう。

 もしかしたら、どこぞの会社の重役会もこのようなものかもしれない。

 そして、ゴルバチョフがソ連共産党書記長の座に就いたのは1985年。彼が53歳のときであった。周知のとおり、彼はペレストロイカ、グラスノスチを押し進め、体制の立て直しを必死にはかるが、ときすでに遅く、1991年12月をもってソ連は崩壊する。

 組織体がこのような動脈硬化を起こさないためには、不断の新陳代謝が不可欠であろう。それが自由にものが言える風通しのよさを保証する。これに対して、「余人をもって代えがたい」という例外は許されない。長い目でみれば、決して引き合わないからである。

 政治経済学部が今後とも活力あふれる学部であり続けるためには、この点に留意してしすぎることはあるまい。学部のスタッフは老・壮・青とりまぜて100名を超える。当然、そこには多種多様な意見が存在する。その円滑な表出、集約、そして実行―新執行部のバイタリティーが試されている。

  2002年12月10日


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