冷房病というヘンな病気

   西川伸一  * 『QUEST』第2号(1999年7月)「編集後記」掲載

 ☆また暑い夏がやってきた。マンションなど集合住宅を裏から見あげると、きれいに室外機が並んでいる。いうまでもなく、クーラーはここから温風を出し、中を冷やすしかけになっている。

 ☆暖房と比較すると興味深い。暖房では中を温める代わりに、外に冷風を吐き出すということはありえない。一方、冷房は、中を冷やし外を温めることで気温をさらに上昇させる。いわば悪循環を抱えている。そのためもあって、都心部は郊外より平均気温が高い。

 ☆また、暖房病とはきいたことがないが、冷房病は身近な存在である。真夏でもスーツを着るという商慣行が、冷房の設定温度を低くさせているためだ。電力をむだに消費し、夏に寒いとはこっけいなパラドクスである。

 ☆こうした悪循環やパラドクスが、地球温暖化を後押しし、原発建設に電力需要の増加という口実を与えているとしたら、なんともやりきれない。

 ☆ところで、さる5月24日にガイドライン関連法が成立した。「戦争に参加する話」という自由党小沢党首の発言が、はしなくもその本質を衝いている。武力に武力で立ち向かうことがいかに不毛かは、今回のNATO軍のユーゴ空爆でも明らかであろう。

 ☆「9条を捨てて世界に出よう」という若手議員まで出てきた。世界に出る前に、交通戦争という足下の現実で、むごい死の現場を知ってはいかがか。


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