『政経の歩き方』がめざすもの 西川伸一『明治』第41号(2009年1月)12-13頁。 はじめに ![]() 『政経の歩き方2008』の編集会議風景 2 『政経の歩き方』のポリシー こうした『政経の歩き方』のポリシーは、2006年に刊行した1冊目の「はじめに」に明確に宣言されている。書いたのは当時の3年生スタッフである。 「かゆいところに手が届くラインナップで、あなたの疑問を解消します。何か困った、何かわからない、何か不安だと思ったときに一番はじめに手に取る本。もしくは、あなたにとって一番最初の「信頼できる先輩」になりたい、と願っています。」 導入教育の重要性は論をまたない。導入ゼミなど少人数教育を行い、担当教員が個々の新入生の名前を覚えてやれば、「入ってよかった」と彼らの学部への信頼感は高まる。政経学部では2008年度施行の新カリキュラムで、1・2年生を対象とした新たなゼミ(基本演習)を開設した。これにより、既存の演習A(2008年度から教養演習と改称)とあわせて、新入生のゼミ履修機会は拡大した。 とはいえ、1学年1000人を超える1年生全員をゼミに入れるのは不可能に近い。少なくない1年生が、かつての私のように寂寥感にもがいているかもしれない。そんな彼らを、『政経の歩き方』が「一番最初の「信頼できる先輩」」となって勇気づけられたら、と学生スタッフは熱い思いで活動している。 3 『政経の歩き方』のこれから 新入生はオリエンテーションの折、シラバスをはじめさまざまな印刷物を一度に受け取る。これらといっしょに『政経の歩き方』を配っても、インパクトが弱いのではないか、と学生スタッフと常々話してきた。いま出されているプランは、入学手続者全員の自宅に3月中に送るというものである。 予算面でむずかしいかもしれないが、こうすれば抜群の効果があろう。それこそ、学部は自分たちを歓迎してくれているという強烈なメッセージになる。3月中であれば熟読し、政経学部生としての学生生活に思いをはせ、期待に胸をふくらませてくれるのではないか。一方、不本意ながら入学手続をした者にも「癒し」を与えられればよい。 さらに「悪のり」したい誘惑に駆られる。夏休み中に開催されるオープンキャンパスで、政経学部のブースに来てくれた高校生に配布する、政経学部に多くの入学者を出している高校に送付する、などなど。ただ、「実習料」で作成している趣旨からははずれてしまうのが難点である。 いずれにせよ、こうしたPRが進めば進むほど、新入生は学部への期待値をますます高めることになる。それに応える授業を行い、事務態勢を整えているかとブーメランは私たちに返ってくる。 あろうことか、いまでは私が大教室で1年生相手の授業を担当している。彼らを匿名のマス扱いしていないか、自問自答している日々である。 |