最近の著書から


たくさんの研究仲間と一緒に書いた本


杉原厚吉:「データ構造とアルゴリズム」, 共立出版,2001

 データ構造とアルゴリズムは,コンピュータで問題を解くための 効率のよい手続きを記述するための基本技術です.これをいくつかの 大学で十数年にわたって講義してきた講義ノートをもとにできるだけ やさしく解説しました.ディジタルコンピュータとは異なる計算原理に ついて考える「カーペンターズアルゴリズム」という道草記事や,NP完全 という概念のやさしい解説も含んでいます.

杉原厚吉: 「トポロジー」, 朝倉書店,2001

 トポロジーの基本であるホモトピー理論とホモロジー理論の 初歩を工学者の立場から解説した教科書です.具体例を たくさん入れました.たとえば,ミシンがなぜ縫えるかを結び目の 理論の観点から論じたり,一筆書きの理論が機械で図を描く ときの筆順最適化に応用できることを紹介したりしてあります. 戻る

杉原厚吉: 「どう書くか―理科系のための論文作法」, 共立出版,2001

 この本で伝えたいメッセージは「エンタティメント小説を書くように 科学技術論文を書こう」というものです.ふざけているのではありません. 自分の研究成果を人に理解してもらうためにも,科学技術という財産を できるだけ多くの人が共有できるようにするためにも,わかりやすくて 楽しい論文を書くことがとても大事だと信じています.この信念に基づ いてこの本を書きました.

A. Okabe, B. Boots, K. Sugihara and S.-N. Chiu: 「Spatial Tessellation ― Concepts and Applications of Voronoi Diagrams」, 2nd Edition, John Wiley and Sons,Chichester, 2000

 1991年に出版した同名の本の第2版です.ボロノイ図とよばれる 勢力分割図形とその応用を広く集めた本です.初版はNatureを始め 多くの雑誌で紹介されました.初版でも532ページありましたが,この 第2版はさらに厚くなって671ページもあります.自分から言うのは少し 恥ずかしいですが,海外の研究者からボロノイ図に関するバイブルだと 言っていただいています.

杉原厚吉, 今井敏行:「工学のための応用代数」, 共立出版,1999

 代数とは,さまざまな数学的対象の中に潜む共通の構造を 「群」,「環」,「体」などの形で抽出して解析する学問です.この 考え方は,そのまま工学の中の種々の対象の中の共通の数理的 構造を横断的にとらえるのに役立ちます.この本では,そのような 工学的実用例をたくさん取り入れました.鍵を公開しても破られる 心配のない「公開鍵暗号系」,良質な乱数を発生することのできる 「M系列」,微分方程式の初期値問題を代数的に扱うことのできる 「ミクシンスキーの演算子法」,図形の柔軟な操作を可能にする 「ミンコフスキー演算」,幾何アルゴリズムにおいて例外処理の わずらわしさを避けることのできる「記号摂動法」,連立方程式を 小問題に分解して解くのに役立つ「DM分解」などです.ですから, 数学者が書く代数の本とはかなり異なります.

杉原厚吉: 「FORTRAN計算幾何プログラミング」, 岩波書店,1998

幾何問題を解くためのプログラミング技術を,計算幾何学の 基本的問題を題材に用いながら解説しました.プログラミングと いうと,理論的にはすでに完成しているアルゴリズムを計算機 言語へ翻訳する単純作業だと思われるかもしれませんが, 決してそんなものではありません.なぜなら,理論が提供する アルゴリズムは「無限に高い計算精度があれば」という現実離れ した仮定のもとで正しさが保証されているだけで,有限精度で 計算が行われる現実のコンピュータで正常に動く保証などない からです.この本では,ユーザがどんなに過酷な使い方をしても 決して破綻しないソフトウェアの作り方を伝授してあります. これは私の研究テーマ「ロバスト幾何計算」の成果の一端でも あります.

杉原厚吉, 茨木俊秀, 浅野孝夫, 山下雅史(編): アルゴリズム工学―計算困難問題への挑戦」, 共立出版,2001

アルゴリズムを理論のための理論ではなく,実用に役立つ技術へ 高めようという志をもった日本の代表的アルゴリズム研究者が集まって 行った文部科学省科学研究費補助金「特定領域研究 アルゴリズム 工学」のもとでの3年間の研究の成果の一つとしてでき上がった本です.

東京大学工学部計数工学科数理情報工学コース(編):「数理工学 への誘い」, 日本評論社, 2002

 東京大学工学部計数工学科で数理工学を担当している 教官がオムニバス形式で書いた本です.雑誌「数学セミナー」に 2001年4月から1年間にわたって連載した同名の連載記事が もとになっていますが,新しく書き下ろした3つの章も加わっています.

杉原厚吉: グラフィックスの数理, 共立出版, 1995

 コンピュータグラフィックスに必要な数学の基礎をまとめたものです. 各種の座標変換に対して,幾何的諸量がどのように変化するかを, 反変と共変の区別,擬の量と擬でない量の区別などを含めて論じていること, 曲線や曲面の表現について,補間法と近似法を統一的に論じていること, などの特徴をもちます.

杉原厚吉: 理科系のための英文作法, 中公新書 1216, 中央公論社, 1994

 語彙と文法の知識はあるが,文をつないで文章を作り上げるのが むつかしいと感じている人のために,文と文をなめらかにつなぐために 著者が使っている四つの技術を紹介しています.これらは,コンピュータ による文章解析や,談話文法の知見を利用するもので,文章の良さを 肌で感じるほどに習得する時間のない人のために役立つものです.

杉原厚吉, 早川司寿乃: だまし絵であそぼう, 科学であそぼう 12, 岩波書店, 1997

 だまし絵の描き方,だまし絵と同じイリュージョンを引き起こす 立体の作り方などを通して,人間の視覚の機能と錯覚について学ぶこと をめざした子供向けの絵本です.ここに盛り込んだ素材の多くは, コンピュータビジョンに関する私自身の研究成果に基づいています.

佐々木建昭, 今井浩, 浅野孝夫, 杉原厚吉:計算代数と計算幾何, 岩波講座応用数学, 方法9, 岩波書店, 1993

 計算代数と計算幾何の数理的基礎の部分をまとめたものです. 計算幾何の部分では,諸概念と諸性質を“一般の次元”に通用 する形式でまとめたところが特徴の一つです.

杉原厚吉: 計算幾何工学, アドバンストエレクトロニクスシリーズ, II-2, 培風館, 1994

 計算は無限に高い精度でできるという前提の上に作られている 計算幾何学の理論を,有限の精度しかもたない現実のコンピュータでの 計算に耐える「工学」へ書きかえることをめざしたものです. この新しい体系で作られた幾何アルゴリズムは,そのまま計算機言語へ 翻訳するだけで,安定に動作するソフトウェアになります.すなわち, 計算幾何工学は,プログラマーを誤差対策という泥沼の作業から 解放するものであり,この本はそれを体系化したものです.

杉原厚吉: 不可能物体の数理, 森北出版, 1993

 不可能物体とは,絵から人が頭の中に思い浮かべることは できるが,実際には作ることのできない構造のことです. そのような構造をもたらす絵は,だまし絵と呼ばれます. この本は,だまし絵が表す不可能物体の数理構造を,人間の 錯視現象とからめて論じたものです.

Kokichi Sugihara: Machine Interpretation of Line Drawings, MIT Press, Massachusetts, 1986

 線図形から,そこに描かれている立体構造を自動的に抽出する ための計算アルゴリズムを紹介したものです.線図形の中には, 立体を表しているのに表していないように見えるものや, 逆に立体を表していないのに表しているように見えるものがあります. そのために,純粋に数学的に処理をしても,人と同じように 立体を読み取ることはできません.人の視覚と数理のギャップを 埋め,人と同じように柔軟に立体を認識する私自身の研究成果を まとめたものです.

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