(1) | 瞞天過海 |
囲魏救趙 |
借刀殺人 |
以逸待労 |
趁火打劫 |
声東撃西 |
(2) | 無中生有 |
暗渡陳倉 |
隔岸観火 |
笑裏蔵刀 |
李代桃僵 |
順手牽羊 |
(3) | 打草驚蛇 |
借屍還魂 |
調虎離山 |
欲擒姑縦 |
抛磚引玉 |
擒賊擒王 |
(4) | 釜底抽薪 |
混水摸魚 |
金蝉脱殻 |
関門捉賊 |
遠交近攻 |
仮道伐虢 |
(5) | 偸梁換柱 |
指桑罵槐 |
仮痴不癲 |
上屋抽梯 |
樹上開花 |
反客為主 |
(6) | 美人計 |
空城計 |
反間計 |
苦肉計 |
連環計 |
走為上 |
(広島大学総合科学部助教授)
![]() 「兵法三十六計」は、(1)5世紀の故事をもとに、(2)誰かが17世紀くらいにまとめた民衆の知恵が、(3)20世紀に再発見されたものである。 (1)淵源は5世紀 「三十六計、逃げる(逃ぐる)にしかず」ということわざの語源は、『南斉書』王敬則伝の「檀公三十六策、走為上計(檀公の三十六策、走るを上計と為す)」という記述。 南朝宋の将軍・檀道済(?−436)は、三十六種の作戦を得意としたが、逃げるのを上策としたという。檀道済の「三十六策」の具体的内容は不明。たぶん現行の「兵法三十六計」と直接の関係はない。 (2)明清時代(17世紀ごろ?)に現在の形に 檀道済の時代から千年以上もたってから、故事やことわざでよく知られている作戦名を三十六個選び「兵法三十六計」にまとめあげた人がいた。 それが誰か、時代も名前もわからない。明末清初(十七世紀半ば)の動乱の時代にまとめられた、と推定する向きもあるが、真相は不明。 ただ、作者はあまり頭の良い人ではなかったらしい。(^^;; というのも「兵法三十六計」にはアラが多いからである。 例えば、本来なら当然三十六計に入れるべき「十面埋伏」や「減灶撤軍」などを漏らしている反面、作戦名として「?」というものを採用している。 また、権威付けのため(?)『易経』の文句を援用した「解語」(解説文)が書いてあるが、達意の名文であるとは言い難い。(^^;; また、6段階ごとに6計を配列しているが、入れ換えたほうが良い箇所も散見される。 こんなせいもあってか、「兵法三十六計」は歴史に埋もれてしまった。 (3)20世紀の戦争中に再発見 数百年埋もれていた「兵法三十六計」は、20世紀に再発見され、有名になった。 1941年、邠州(現・陝西省邠県)で、一冊の古い手抄本(印刷ではなく手で筆写した本)が発見された。この手抄本の前半部は養生についての談義だったが、末尾には「兵法三十六計」が書いてあった。 当時は、苛烈な抗日戦争の最中である。三十六計の内容は時宜にあっていたため、同年、成都瑞琴楼という書店から中国在来の手漉きの紙を使って翻印・出版された(印刷は成都興華印刷厰)。 現行「兵法三十六計」の「原本」は、この成都翻印本である。 1943年、叔和という人が、成都の古本屋でこの翻刻本を入手した。1961年、叔和は『光明日報』紙上で「兵法三十六計」の内容を世に紹介した。その後、彼が所有していた成都翻印本は中国人民解放軍政治学院に寄贈された。ときあたかも東西冷戦の最中であり、兵法三十六計は人民に有用な「大衆兵法」としてもてはやされた。 これ以後、中国や日本で「兵法三十六計」の解説書が続々と出版され、ふつうの書店でも簡単に手に入るようになった。書店には、漫画版やビジネスマン向けの概説書など、いろいろな「兵法三十六計」関連本が並んでいる。 |