[京劇城] > このページ

京劇講座 教材集

2008.3.31 最新の更新 2008-10-5
 このページでは、私が、授業や「京劇講座」などで使う教材用のメモをアップしておきます。
参考プリント 悲歌・楽譜 楚歌・楽譜 山歌・楽譜

中国の演劇は2種類ある。
  「戯曲」京劇などの伝統的な音楽劇。
  「話劇」近代的なセリフ中心の演劇。

京劇の三つの特徴「綜合性・虚擬性・程式性」

京劇俳優の「四功五法」
四功 唱(うた)・念(せりふ)・做(しぐさ)・打(たちまわり)
五法 手(手振り)・眼(視線)・身(姿勢)・歩(歩き方)・法(行動)

芝居の演目の分類
演技の性格
物語の時代
上演時間
物語の性格
措 置
文戯 うた中心の芝居

武戯 立ち回り中心の芝居
古典戯
現代戯
新編歴史戯
折子戯

連台本戯
大戯・小戯

耍耍戯・粉戯・骨頭戯
・苦戯・神聖戯・歴史戯など
様板戯

禁演戯 など

京劇の四つの役柄
老生、武生、小生、娃娃生、など。男の役。
青衣、花旦、花衫、武旦、老旦など。女の役。
銅錘花臉、架子花臉、武二花など。くまどりをした男の役。
文丑、武丑、彩旦、婆子。笑いをとる道化役。


京劇界の格言
「不像不成戯、真像不是芸」
道化役の名優だった蕭長華のことば。それらしくなければ芝居じゃない、そのまんまだったら芸じゃない。
「守成法而不拘於成法、脱成法而不背乎成法」。
女形だった程硯秋のことば。成法を守りて成法に拘(こう)せず、成法を脱して成法に背(そむ)かず。型は守るが型にとらわれない。型にはまらぬが型は壊さない。
「戯不離技、技不離戯」
劇評論家だった徐凌霄のことば。戯は技を離れず、技は戯を離れず。
「演人別演行」。
女形だった荀慧生(じゅんけいせい)のことば。人を演じよ、役柄を演ずるな。




京劇『覇王別姫』より  項羽が歌う「悲歌」

 紀元前3世紀の項羽と虞美人の悲劇は、司馬遷の『史記』など漢文でも有名な物語である。
 歌詞は『史記』が伝える項羽の漢詩と同じ。
 旋律は、昆劇(崑曲)の演目『琴挑』の挿入曲「琴曲」をアレンジして、京劇に採用したもの。京劇では、項羽のほか、『群英会』(三国志)の周瑜もこの「琴曲」を歌う(アレンジはかなり違う)。
 紀元前3世紀の項羽が、本当にこのような旋律で歌っていたわけではないが、よく雰囲気が出ている。

 [
MIDIで聴く] [WAVEで聴く]。五線譜が苦手な人はこちらへ


【原詩】
力抜山兮気蓋世li ba shan xi qi gai shiりー ばー シゃん しー ちー がい シー
時不利兮騅不逝shi bu li xi zhui bu shiシー ぶー りー しー ぢゅい ぶー シー
騅不逝兮可奈何zhui bu shi xi ko nai hoぢゅい ぶー シー しー こ ない ほー
虞兮虞兮奈若何yu xi yu xu nai ruo hoゆぃ しー ゆぃ しー ない る゛(濁音)お ほー
  注)「可」「何」は、京劇では北京語と違って「コー」「ホー」のように発音する。

【訓読】
力山を抜き気世を蓋うちから やまをぬき キ よをおおう
時利あらずして騅逝かずとき リあらずして スイ ゆかず
騅の逝かざる奈何すべきスイのゆかざる いかんとすべき
虞や虞や若を奈何せんグや グや なんじを いかんせん
  注) 騅=項羽が乗っていた馬の名前  虞=虞美人のこと



最初はゆっくり
ここから普通の速度

リー
li
ソー

バー
ba
ラー

シャン
shan
ソー

シー
xi
ファー

チ(ヒ)ー
qi
ドー

ガイ
gai
レファ

しー
shi
ドー
休符


しー
shi
ファー

ブー
bu
レファ

リー
li
レー

シー
xi
ドー
休符
ぢゅい
zhui
ラー

ブー
bu
ソファ

しー
shi
ラー
休符


ぢゅい
zhui
ラー

ブー
bu
ラー

しー
shi
ソファ

シー
xi
ラー
伸ばす

ko
ドー

ナイ
nai
レファ

ホー
ho
ドー
伸ばす

だんだんゆっくり
最後は伸ばす

ユィー
yu
ファー

シー
xi
レファ

ユィー
yu
レー

シー
xi
ドー

ナイ
nai
レー

る゛ぉー
ruo
レファ

ホー
ho
ドー




京劇『覇王別姫』より  虞美人が歌う「楚歌」

 京劇では、漢詩を吟じるとき、よく「哭相思」の旋律が使われる。
 劇中で虞美人が歌う「楚歌」は、楚の地方の民謡ではなく、伝統的な「哭相思」の旋律をアレンジしたものである。
 紀元前3世紀の虞美人がこの旋律で歌っていたわけではないが、よく雰囲気は合っている。
 [
MIDIで聴く]  [WAVEで聴く]


【原詩】『史記正義』によると、虞美人は自決の直前、項羽の前で次のような漢詩を詠んだという。

   漢兵已略地、四方楚歌声。大王意気尽、賎妾何聊生。
京劇では「四方」を「四面」に、「大王」を「君王」に替えて、次の歌詞で歌う。
漢兵已略地han bing yi lyuo diはん びん いー りゅお でぃー
楚歌声si mian cu ge shengすー みぇん つー がー シぇん
王意気尽jun wang yi qi zinじゅん わん いー ちー ずぃーん
賎妾何聊生zien cie ho liao shengずぃえん つぃえ ほー りゃお シぇーん
  注)京劇の発音では「略」「楚」「尽」「賎」「妾」「何」などの字は、北京語とやや違う発音になる。
【訓読】
漢兵已に地を略しカンペイすでにチをリャクし
四方 楚歌の声シホウ ソカのこえ
大王の意気尽くダイオウのイキ つく
賎妾何ぞ生を聊んぜんセンショウ なんぞセイをやすんぜん

【参考】劇中、劉邦の陣地から聞こえてくる「楚歌」
 京劇の「哭相思」の旋律。歌詞の「一、二、三・・・」は、七言詩の一句七字の各字と音符の配当を示す。
[
MIDIで聴く}

字割り一二三四五六七、一二三四五六七。
「楚歌」1堂上撇得双親在、朝朝暮暮盼児回。
「楚歌」2沙場壮士軽生死、十年征戦為了誰。




京劇の伝統的な挿入曲『山歌』

 原曲は昆劇(崑曲)の演目『酔打山門』の酒売りの歌。「山歌」はもともと労働者の歌、の意で、芝居の中で酒売り、魚売り、船頭、木こりなどが 七言絶句を口ずさむときによく使う旋律である。
MIDIで聴く[ハ長調(下記の楽譜)] MIDIの[ヘ長調]   WAVE形式で聴く[ヘ長調]


 京劇では、酒売り、魚売り、船頭、木こりなどが口ずさむ歌として使われる。
 新編歴史京劇『赤壁之戦』では、袁世海が扮する曹操は自作の漢詩をこの旋律に乗せて「月明星稀・・・」と歌う。
京劇で曹操が歌う「山歌」の旋律を[MIDIで聴く] 同・[WAVEで聴く] 


 上記の楽譜は、京劇の名優・袁世海氏(2002年に86歳で死去)が演ずる曹操の歌を、京劇映画「赤壁之戦」から加藤が耳で聞いて五線譜に直したもの。
 歌詞は上記の映画の字幕どおり。コードは加藤のアレンジ。
(「哭相思」で唱う)
対酒当歌、どぅい じう だん ごー 人生幾何。れん しょん じー ほー
譬如朝露、びー るー ぢゃお ルー 去日苦多。ちゅい りー くー どぅお
(セリフ)慨当以慷、がい だん いー かん 幽思難忘。よう すー なん わん (「哭相思」で唱う)
何以解憂、ほー いー じえ よう 唯有杜康。うぇい よう どぅー かん
(「山歌」で唱う)
月明星稀、ゆえ みん しん しー 烏鵲南飛。うー ちゅえ なん ふぇい
繞樹三匝、らお しゅー さん ざー 無枝可依。うー ぢー こー いー
山不厭高、しゃん ぶー いぇん がお 水不厭深。しゅい ぶー いぇん しぇん
周公吐哺、ぢょう ごん とぅー ぷー 天下帰心。てぃえん しあ ぐい すぃん
僥倖、僥倖!  じゃお しん (のー)、じゃお しん (のー)


「山歌」は本来、七言詩(一行七字の漢詩)を歌うための旋律である。
曹操の漢詩は四言詩であるので、ところどころ字割りを変え、二字を一字ぶんの長さに縮めて歌ったり、一字を二字ぶんに伸ばしたりして、全体のつじつまをあわせている。
一二三四、五 六七。
月明星稀、烏鵲南飛。
一二三四、五 六七。
繞樹三匝、無枝可依。
一 三四五 六七。
山不高、 水不厭深。
一二三四、五 六七。
周公吐哺、天下帰心。
(曹操の部将一同でリフレイン) 周公吐哺、天下帰心。
(曹操の独唱) 僥倖[口若] 、僥倖[口若] !



[京劇城] > このページ