加藤徹 創作漢詩のページ モバイル版 通常版はこちらです 一部に合成文字を使ってます。 例:[王里]=理 [草/化]=花 |
1978.9「祇王寺」 | 「ギオウジ」 |
翠竹青苔逕、 | スイチク セイタイの こみち、 |
烟山踏跡稀。 | エンザン トウセキ まれなり。 |
祇王何処泣? | ギオウ いずくにか なく? |
尋思雨霏霏。 | ジンシすれば あめ ヒヒたり。 |
1980.8「偶成」 | 「グウセイ」 |
鳥啼猿嘯静於蝉。 | とり なき さる うそむきて せみよりも しずかなり。 |
空翠環湖嶺[手主]天。 | クウスイ みずうみを めぐりて みね テンを ささう。 |
独泛扁舟窺水底、 | ひとり ヘンシュウを うかべ スイテイを うかがえば、 |
透明千尺老龍眠。 | トウメイ センセキ ロウリュウ ねむる。 |
1982.3「偶成」 | 「グウセイ」 |
独坐疎燈雪案前。 | ひとり ザす ソトウ セツアンの まえ。 |
時疑父母未成眠。 | ときに うたごう フボの いまだ ねむりを なさざるかと。 |
風飄夜雨知春急、 | かぜ ヤウを ひるがえして はるの キュウなるを しる、 |
苦学明朝又一年。 | クガク ミョウチョウ また イチネン。 |
1982夏「寄景天」 | 「ケイテンに よす」 |
閑居尽日無来客、 | カンキョ ジンジツ ライカク なし、 |
独愛吟詩愛読文。 | ひとり シを ギンずるを アイし ブンを よむを アイす。 |
門外犬眠人漫漫 、 | モンガイ いぬ ねむりて ひと マンマン、 |
庭前蝶舞草芸芸。 | テイゼン チョウ まいて くさ ウンウン。 |
措書伸体憐啼鳥、 | ショを おき からだを のべて テイチョウを あわれみ、 |
休筆展眉仰暮雲。 | ふでを やめ まゆを のべて ボウンを あおぐ。 |
但恨参商難会面、 | ただ うらむらくは シンショウ カイメン かたく、 |
遥思駒場復思君。 | はるかに こまばを おもい また きみを おもう。 |
1982秋「偶成」 | 「グウセイ」 |
書肆連軒雑酒亭。 | ショシ のきを つらねて シュテイを まじう。 |
都城不夜茗渓青。 | トジョウは フヤにして メイケイ あおし。 |
群楼影動霓灯点、 | グンロウ かげ うごきて ゲイトウ テンじ、 |
独客襟寒半夢醒。 | ドッカク えり さむくして ハンム さむ。 |
聖哲橋高思聖哲、 | ひじりばし たかくして ひじりを おもい、 |
幽霊坂急念幽霊。 | ゆうれいざか キュウにして ゆうれいを おもう。 |
江湖潦倒誰相似? | コウコ ロウトウ たれか あいにたる? |
失纜孤舟一隕星! | シツランのコシュウ イチインセイ。 |
1982秋「偶成」 | 「グウセイ」 |
蓬窓聴蟋蟀、 | ホウソウ シッシュツを きく、 |
疑是促吾鳴。 | うたごうらくは われを うながして なくかと。 |
露落花初謝、 | つゆ おちて はな はじめて シャし、 |
風吹月更明。 | かぜ ふきて つき さらに あきらかなり。 |
1982秋「偶成」 | 「グウセイ」 |
虫声帯露草中深。 | チュウセイ つゆを おびて ソウチュウに ふかし。 |
双杵空郊似谷音。 | ソウショ クウコウに コクインに にたり。 |
一路遥看青湿処、 | イチロ はるかに あおの しめれる ところを みれば、 |
月浮雲海照松林。 | つき ウンカイに うかびて ショウリンを てらす。 |
1987.9「七夕」 | 「たなばた」 |
哀怨詩家所訴陳。 | アイエンは シカの ソチンする ところ。 |
銀河[王崔][王+(燦−火)]鵲橋新。 | ギンガ サイサンと |
して ジャクキョウ あらたなり。 | |
未知夜夜[糸+(仞−イ)]針意 | いまだ しらず ヤヤ はりを ジンするの イ、 |
却憫寿張百忍人。 | かえって あわれむ ジュチョウ ヒャクニンの ひと。 |
1987冬「憐菊詩」 | 「キクを あわれむの シ」 |
景物入冬孰最哀? | ケイブツ ふゆに いりて いずれか もっとも かなしき? |
残黄凛冽守庭栽。 | ザンコウ リンレツとして にわを まもりて うわる。 |
紫茎自直有人折、 | シケイは おのずから なおければ ひとの おる あらんも、 |
金粟猶香無蝶来! | キンゾク なお かんばしきも チョウの くる なからん。 |
殷地羽声風到陌、 | チに どよもせる ウセイ かぜ ハクに いたり、 |
満天余[日英]日沈台。 | マンテンの ヨエイ ひは ダイに しずむ。 |
憐君内美堪為殿、 | きみを あわれむ ダイビの しんがりと なるに たえ、 |
不与蘭桃一処開。 | ラントウと イッショには ひらかざるを。 |
1990.9「憶江南 円明園灯会」 | 「オクコウナン エンメイエントウカイ」 |
遊福海、 | フクカイに あそべば、 |
夜夜賽元宵。 | ヤヤ ゲンショウに くらぶ。 |
[口劉][口亮]絃歌環海遠、 | リュウリョウたる ゲンカ うみを めぐりて とおく、 |
輝煌噴水射天高。 | てりかがやける フンスイ テンを いて たかし。 |
金碧[任/心]多驕。 | キンペキ なんぞ かくも おごりやかなる。 |
1990.9「如夢令 人民英雄紀念碑」 | 「ジョボウレイ ジンミン エイユウ キネンヒ」 |
佳節遊観人衆、 | カセツ ユウカンの ひと おおく、 |
国慶菊為鸞鳳。 | コッケイ キクもて ランポウを つくる。 |
驟雨灑黄昏、 | シュウウ コウコンに そそげば、 |
花潤満場紅重。 | はな うるおいて マンジョウに くれない おもし。 |
如夢、如夢。 | ゆめの ごとし、ゆめの ごとし。 |
血涙与伊相供! | ケツルイ なれに あいそなう。 |
1991.4「草堂」 | 「ソウドウ」 |
草堂穀雨我来尋。 | ソウドウ コクウ われ きたり たずぬ。 |
花洗青潭水愈深。 | はな セイタンに あらわれ みず いよいよ ふかし。 |
剥落金泥遺古額、 | ハクラクせる コンデイ コガクを のこし、 |
朦朧樹色潤人襟。 | モウロウたる ジュショク ひとの えりを うるおす。 |
無辺竹葉指風顫、 | ムヘンの チクヨウ かぜを さして ふるえ、 |
不尽新蝉伝世吟。 | フジンの シンセン よを つたえて ギンず。 |
男子蓋棺情未朽、 | ダンシ カンを おおいて ジョウ いまだ くちず、 |
杜詩千戴待知音。 | トシ センザイ チインを まつ。 |
2002.11「題拙著『京劇』書後」 | 「セッチョ『キョウゲキ』ショゴに ダイす」 |
沈酔皮簧二十年。 | ヒコウに チンスイして ニジュウネン。 |
[金堅][金将]鑼鼓九根絃。 | コウソウたる ラコ、キュウコンの ゲン。 |
曲終寂寞鬼門道、 | キョク おわれば セキバクたり キモンドウ、 |
好録群優万古伝。 | よし グンユウを ロクして バンコに つたえん。 |
2003.5「詠我児」 | 「わがこを エイず」 |
飄飄征宇宙、 | ヒョウヒョウとして ウチュウを ゆけば、 |
九点碧煙吹。 | キュウテン ヘキエン ふく。 |
欲暫遊塵世、 | しばし ジンセイに あそばんと ほっし、 |
[草/遽]然作我児。 | キョゼンとして わが こ と なる。 |
*[草/遽]はクサカンムリの下に「遽」、音「キョ」。 |