以下、クロード・レヴィ=ストロース『野生の思考』(大橋保夫訳、みすず書房、1976)より引用。
ブリコルールは多種多様の仕事をやることができる。しかしながらエンジニアとはちがって、 仕事の一つ一つについてその計画に即して考案された購入された材料や器具がなければ手を下せぬというようなことはない。 彼の使う資材の世界は閉じている。そして「もちあわせ」、すなわちそのときそのとき限られた道具と材料の集合で何とかするというのがゲームの規則である。 しかも、もちあわせの道具や材料は雑多でまとまりがない。なぜなら、「もちあわせ」の内容構成は、目下の計画にも、またいかなる特定の計画にも無関係で、 偶然の結果できたものだからである。 すなわち、いろいろな機会にストックが更新され増加し、また前のものを作ったり壊したりしたときの残りもので維持されているのである。 したがってブリコルールの使うものの集合は、ある一つの計画によって定義されるものではない。 (定義しうるとすれば、エンジニアの場合のように、少なくとも理論的には、計画の種類と同数の資材集合の存在が前提となるはずである。) ブリコルールの用いる資材集合は、単に資材性[潜在的有用性]のみによって定義される。 ブリコルール自身の言い方を借りて言い換えるならば、「まだなにかの役にたつ」という原則によって集められ保存された要素でできている。 |