[概要]
倒産予測や上場廃止予測において重要なことは,財務指標の選択と予測モデルの構築である.多くの従来手法では,指標選択とモデル構築が別々に行われており,両者を含めた処理全体での識別精度の最適性が保証されない.本研究では,指標選択と予測モデルの構築を一貫した枠組みの中で行うことができるAdaBoostアルゴリズムを利用して上場廃止予測を行う.AdaBoostでは,逐次的に財務指標が選択されるが,選出される指標によって誤識別される学習サンプルの重みが後段では大きくなる.そのために相補的に働く指標の組み合わせが自然と選択される.150社ずつの上場廃止企業,継続企業の貸借対照表および損益計算書から生成される財務比率を候補として,指標選択を行ったところ,1)純資産合計÷資本金,2)その他有価証券評価差額金÷資本金,3)その他利益剰余金÷流動資産,4)関係会社有価証券÷資本金,5)支払利息÷負債合計,が選出された.AdaBoostでは,選出した財務指標を用いて予測モデルの構築まで扱うことができ,従来法との比較を通してその識別精度の高さが示された.