▼アニミズム animism (有霊観)
霊的存在への信仰として、人類学者タイラー Tylor が提唱。animaはラテン語で霊魂という意味
人間だけでなく、動植物や無生物にも霊魂が宿っていて、物体から離れても独立して存在しうるという観念
特定の事物に特別な霊的存在が宿るという考えは呪物 fetish 崇拝(fetishism)
霊魂は日本語ではタマ tama (霊魂が宿る球形の石)、カム・カミ kamï (畏れの対象、上方を意味する kamiとは別語源)など
宗教の起源の研究の中で、アニミズム→多神教→一神教、という進化主義的モデルの一種として提唱されたが、このモデル自体は否定されている
しかし、近代的文明社会にもアニミズムは存在する。アニミズム自体が科学的に根拠がないことが証明されたわけでもない
▼シャーマニズム shamanism (巫術、巫俗)
語源はツングース語・マンシュー(満州)語の saman(知る人)。サンスクリット語のśramaṇa(沙門)起源という説もあり
シャーマン shaman (巫師、巫者)という職能者が、トランス状態という、一種の変性意識状態に入って、霊的、超自然的存在と直接接触し、 儀礼を行う
古代日本語ではミコ(貴い人)で、これが漢字の巫女に対応させられた。民間巫者としてはイタコ(北東北)ユタ、カンカカリャー(琉球)など
脱魂型シャーマン
脱魂 ecstasy によって他界を訪問する。狭義のシャーマン。狩猟・採集社会、南北アメリカ先住民社会に多い。男性が多い
憑霊型シャーマン
憑依・憑霊 possession によって他界的存在を呼び寄せる。霊媒 medium としてシャーマンとは区別されることもある。旧世界の農耕・牧畜社会に多い。女性が多い
進化主義的な説が正しいかどうかはともかく、世界宗教(仏教、キリスト教、イスラームなど)が広まった地域(おもにユーラシア大陸)では、周縁化されていることが多い
日本(とくに琉球)は仏教の影響が大陸よりも弱く、民族宗教である神道も含めて、アニミズム、シャーマニズムの文化が根強い
▼シャーマン(と呪術師、占い師など)の仕事
病気の原因を探す、病気を治療する
薬草などによる治療
「気」のような作用による治療?
プラセボ効果 placebo effect
自然治癒の因果関係の誤認によって治ったように感じられる?
呪いをかける、かけられた呪いを解く
呪いの社会的説明→平等主義的な社会では呪いが社会的平等を実現しているという側面もある
死者の霊を呼ぶ・神や精霊を呼ぶ
霊魂仮説、ESP仮説、演技あるいは思いこみ仮説
未来を予言する、その他人生相談
人間に予知能力はあるのか?(決定論と自由意志の問題)
バーナム効果 Barnum effect とコールドリーディング cold reading
2007/2550-10-10 改訂 蛭川立