●論文題名の付け方

 論文の題名は、論文の顔であり、極めて重要な意味を持つものです。
 論文題名の条件としてまず必要なものは、「短い」ということです。例え
 ば、
   『源氏物語』における形容語と『枕草子』における形容語を比較して、
   それぞれの特徴を点描する

 などというものは、確かに中身はよく分かりますが長たらしいのが欠点と
 なります(これでは、ほとんど論文の要約みたいなものですね)。これを、
   平安時代の形容語―『源氏物語』と『枕草子』の比較―
 とすれば、短くもなり、ぐっと論文題名らしくなります。

 しかし、短ければそれでいいかというと、例えば、
   形容語の研究
   外来語の研究

 とまでしてしまうと、あまりにも短すぎて、中身がよくわからないものにも
 なります(「外来語の研究」なんて、室町末期から説き起こして、何百頁
 にもなるような印象を受けます)。

 そこで次の基準として、「内容を端的に、過不足なく表わす」ということが
 必要になります。すなわち、例えば、単に「形容語の研究」だけだと、「過
 分」の題目となってしまうわけです。これが、「平安時代の形容語」となる
 と内容を正しく表わしていると言えましょう。けれども、それならいっその
 こと、
   『源氏物語』と『枕草子』の形容語の比較
 のほうが、正しいのではないか、これに「平安時代の形容語」の名を付
 けるのは、それこそ過分なのではないかという疑問も生じましょう。けれ
 ども、「『源氏物語』と『枕草子』の形容語の比較」ということですと、ただ
 それだけに興味を持って、それ以上の広がりを感じないのに対して、「
 安時代の形容語―『源氏物語』と『枕草子』の比較―
」となりますと、全
 体の構想としては、平安時代における形容語を研究し尽くそうというも
 のなのだけれども、時間的な制約で、今回は『源氏物語』と『枕草子』に
 しぼっているという印象を受けます。
 
 すなわち、
   平安時代の形容語―『源氏物語』と『枕草子』の比較―
   平安時代の形容語―和文日記作品を対象として―
   平安時代の形容語―勅撰集を対象として―
   平安時代の形容語―私家集を対象として―
   平安時代の形容語―作り物語を対象として―

 のように、シリーズとして続いていき、最後に集大成されるようなものに
 なるわけです。

 それから、「余分なものを付けない」、ということも、基準の中に入れてい
 いかもしれません。例えば、
   平安時代の形容語について
   平安時代の形容語の研究

 の「〜について」「〜の研究」が、場合によっては「余分なもの」になるこ
 とがあります。とってすっきりとした印象になると思えるなら、思い切って
 取ってみるのも一つの手でしょう。