●国語学論文の特性(その2)

国語学の論文の特性として、次に挙げうることは、データを分析して行く途
上で、いくらでも論の修正がきくことです。

例えば、若い人たちの外来語のアクセントが平板化しているという印象が
あったとして、実際、それがどれほどなのかを調査しようとしたとします。そし
て、若い世代ほど平板化が進んでいるだろうという予測をしたとします。で、
「ギター」「ドラマ」「ドラム」「レモン」「ミックス」「フォルダー」「ノート」…などと
実際に調べてみたところ、そんなには平板化が進んでいなかった、という結
果になり、それどころか、20代の方が10代よりも平板化率が高い、というよ
うな分析結果になったとします。

この時、これは自分の調査がおかしいとか、認識が間違っていたと、過度に
思い悩む必要はありません。正直に、「世代が若いほど平板化が進んでいる
と思っていたが、実際に調べてみたら、20代の方が平板化率が高かった」と
報告すればいいのです。

そして、それでは、なぜそのような結果になったのかについて考察を及ぼし
て行くことになります。例えば、調査した対象に偏りはなかったか(例えば、
マスコミでは話題になっていたとしても、それは一部の目立つところだけが
クローズアップされているだけで、大半はごく普通だったりします:一時、「チ
ョーmm」が女子高生なら誰でも使っているかのような言われかたがされま
したが、むしろ、話題を振ってみると、自分達が高校生の頃は使いもしなか
ったというように言われたりしたこともあります)、平板化が進んでいると話
題になることで、逆に、意識して平板化しないように努めている、などといった
ことはないか、また、調査が平板化の進み工合をはかるような内容であると
いうことに気づかれて警戒されたりしなかったか、など、考えるべき点は多々
あるはずです。そのようなことを充分考察し、今後の糧となるような結果を示
せばよいのです。