●参考文献の挙げ方

論文中で参考文献を挙げる場合には、いくつかの方法があります。

まず、本文の中に、そのまま書き込むという方法があります。これは、例えば、

 本来「位相」とは、「様相論」と「様式論」とに分かれていた(菊沢季生『国語位
 相論』昭和8年、明治書院)
のであるが、

のようにするものです。ただ、こうすると、本文が分断されてしまって読みづらくな
るという憾みがあります。そこで、このようなものは、注を利用して、

 本来「位相」とは、「様相論」と「様式論」とに分かれていた
(注1)のであるが、

として、注に、

 【注】
  (1)菊沢季生『国語位相論』(昭和8年、明治書院)参照。

などと書く方法もあります。これだと、本文の分断が短くてすみます。ただ、これだ
と、注を読むまで、どのような情報が記されているのかがわからないという憾みも
また残ります。

そこで、参考文献欄を、

植垣 節也(1967a)「校訂・家伝下(武智麻呂伝)」(『続日本紀研究』136、1967.
             09)
―――― (1967b)「家伝下の本文批評」(『続日本紀研究』136、1967.09)
柏谷 嘉弘(1987)『日本漢語の系譜―その摂取と表現―』(1987.7、東苑社)
菊沢 季生(1933)『国語位相論』(1933.07、明治書院)
白藤 禮幸(1987)『奈良時代の国語』(1987.05、東京堂出版)
―――― (1995)「続日本紀の字彙」(『新日本古典文学大系15 続日本紀四』、
            1995.07、岩波書店)

のように表記しておいて、本文では、

本来「位相」とは、「様相論」と「様式論」とに分かれていた(菊沢1933参照)のであ
るが…この
菊沢(1933)によれば

のようにすると、参考文献に言及していることがわかり、なおかつ短くて済むという
ことになりますし、「菊沢(1933)によれば」というような書き方が可能となり、極め
て便利です。

なお、上掲のごとく、筆者50音順で、同一筆者は発表順(その場合、―をつなげて、
同じ名前を表記はしない)、同一年に複数ある場合には、abc…を付して区別、単行
本・雑誌は『 』、雑誌論文は「 」、単行本は、出版元も書き込むというようなやり方
になります。上掲のサンプルを利用しながら、掲出のしかたを研究してみて下さい。

なお、これは、注の示しかたについても共通することなのですが、唯一正しい参考
文献の示しかたというものはありません
。したがって、各自で、もっともやりやすい
示しかたをすればいいのですが、その場合、全体で統一した参考文献の示しかた
になる必要があります。章ごとに違ったりしてはならないということです。統一さえ
とれていれば、かなり突飛な挙げかたでなければ、許されると考えていいでしょう。