●先行・関連研究を調べる

大体のテーマが決まったなら、今度は、そのテーマに関して、これまでどの
ような研究が行なわれてきたのかを知る必要があります。

卒業論文は、学術論文ですから、勉強のために書くレポートとは、その性格
が異なります。これまでの研究を踏まえたうえで、新しいことがらを、一つでも
そこに付け加える必要があります。

それでは、具体的には、どのようにして先行・関連研究を調べたらいいでしょう
か。

いや、その前に、「先行・関連研究」ってなんでしょうか。「先行研究」と「関連
研究」とは、どうちがうのでしょうか。例えば、現代語で「ようだ」と「みたいだ」の
違いを研究しようとします。この場合、先行研究は、ずばり「ようだ」と「みたいだ」
そのものを研究した論文、ということになります。例えば、それは、次のような
ものです。

○比況・現代語 ようだ,永野 賢,[国文学]9-13,〈1964年10月〉3,
○「〜みたようだ」から「〜みたいだ」への漸移相,宮地 幸一,[国語国文学
  (東京学芸大)]3,〈1968年 7月〉9,
○特集・日本語の助動詞の役割 比況(ごとし・ようだ),春日 和男,[解釈と
  鑑賞]33-12,〈1968年10月〉9,
○「ようだ」「みたいだ」の転用について,内田 賢徳,[国語国文]46-5,
  〈1977年 5月〉11,

○「聖家族」における「…やうだ」の考察―学内発表会要旨―,仁田 祥男,[国
  語教育研究(広島大教育学部)]10,〈1965年 4月〉3,
○研究ノート(2) 「ようだ」による表現,西出 郁代,[日本語・日本文化]3,
  〈1972年 3月〉11,
○漱石文学初期の文体研究―助動詞「ようだ」を中心に,鈴木 二三雄,[島田
  勇雄先生古稀記念 ことばの論文集],〈1982年11月〉15,

これを眺めると、中でも、内田賢徳氏の論文は、必読だということが推測され
ます。しかも、もしかしたら、この論文で自分が考えそうなことは尽されている
かもしれません。けれども、「転用について」とあるのが気にもかかります。も
しかしたら、自分が何か発言する部分が残っているのかもしれない…、という
感じで、どきどきしながら図書館に行くということになります。

関連研究ということになると、もう少し広く、例えば「比況表現」あるいは「推量
表現」に関する研究ということになりましょう。ずばり論じてあるものがない場
合は、それを参考にしながら、研究を工夫していくことになります。

ところで、これはどのようにして調べたのでしょうか。実は、これは、国立国語
研究所のホームページにある「国語学研究文献総索引データの公開」から、
『国語年鑑』1954年版〜1991年版に搭載された雑誌論文ならびに単行本所
収論文等をあわせた、約12万件のデータベースをダウンロードして検索した
ものです。

http://www2.kokken.go.jp/kokugokw/bunkenkw.html  (利用上の注意をよく
                                     読んで下さい)

これは、まっさきに検索すべきデータでしょう。ただ、これでも、1992年以降の
10年分は知ることができませんから、それは、『国語年鑑』を検索する必要が
あることになります。図書館の検索システムで調べて見て下さい。

なお、上記のデータベースの利用は、少々コンピュータに関する知識が必要と
なります(具体的には、圧縮ファイルを解凍するソフトの利用なのですが―初
めて聞くと、なにか呪文みたいですね)。もしよく分からないという場合は、ご
相談下さい。