●「国語学会」改称について
いろいろと反対してきたのですが、残念ながら、「国語学会」は、2004
年1月1日をもって、「日本語学会」という名称に変わることになりました。
これによって、おそらく機関誌名も変わり、長い伝統を持つ『国語学』とい
う雑誌もなくなってしまいます。国語学会編の『国語学大辞典』なんかも、
変わらざるをえないのでしょう。日本語学会編の『国語学大辞典』では変
でしょうから。
また、これに伴って、学問の名前も「日本語学」というようになっていくの
かもしれません。ただ、私としては、自分のやっていることを「国語学」と呼
ぶことを変えるつもりはありません。
いろいろと話を聞いていると、例えば、「国語学の演習の時にある論文を
引いて行ったら、それは国語学の論文ではないから引用しないように、
と言われた。国語学って何て狭いんだろうと思った」などという経験談を聞
かされたりして、それは余りなことだとも思いました。確かに、そのような
経験をしていれば、「日本語学ばんざい」ということになるのでしょう。
ただ、私が教わった「国語学」は、そんなに狭いものではありませんでし
たし(大学2年の時に、ソシュールとパウルを読まされました)、現に今、
大学院の特論で読んでいるものも、ドイツのルーディ・ケラーの書いた『言
語変化』という本です。ロマーン・ヤーコブソンの言葉に「私は言語学者で
あり、言葉に関わるもので私に無関係なものはない」というものがありま
すが、日本語を解明するために必要な知識であれば、国語学だろうが何
学だろうが必要なものは必要だということだと思います。
というわけで、意地でもなんでもなく、「国語学」という呼び名を変える必
要を感じないわけです。
また、「日本語学会」という名称に変わったからといって、脱会するという
こともないと思います。「日本語学会」に変わると、例えば、歴史的研究が
ないがしろにされるのではないかというような観測もあるようですが、まさ
にもしそうならば、なおいっそうのこと、会にとどまって歴史的研究を推し
進め、その必要性をアピールしていく必要があると思うのです。
(2003.07.18)