●あと、何かある?

 最近の答案を見て、思ったことなのですが、漢字の字形(文字としての全体的な姿)
が、崩れさってしまって^^;; いるようなものを見かけます。漢字は、言うまでもなく、基
本的に四角い文字です。
ですから、曲がるところはきちんと、折れるように曲がってい
る必要があります。漢字をまるっこく書く個性をもっている人がいるのは、もちろん知っ
ていますが、答案のような正式な書類や文書を書くときには、少し注意したいものです。

なお、まだ試験期間中なので、「採点基準はどうなるの? きちんと曲がっていないと
×になるの?」と心配する人がいるかもしれませんが、漢字の採点基準は、実はかな
り甘めに設定してあります。はねているか、止めているか、実に微妙な文字を書くとい
う高度な技術を駆使してくる受験生がいますが、すべては受験生にもっとも有利なよう
に採点されます。「さんずい」を「にすい」で書く(またはその逆)、「木へん」と「手へん」
が明らかに違うというような、明快な間違いでなければ、少々の字形の崩れは甘めに
採点してもらえます。安心して下さい(といっても、これは明大文学部限定かもしれま
せんので、他の大学については必ずしも保証できませんので、あしからず)。

実は、私は小学校のとき、「女」という漢字の二画目(要するに「くノ一」の「ノ」の部分)
が、上の「一」のところから突き出るように書いて×をもらい、それからは、細心の注意
を払って「ノ」の部分が上に突き出さないように書き続けました。今でも、何の気なしに
書いても、絶対に突き抜けません^^;; しかし、これは「明朝体」という活字の字形は確
かにそうなのですが、「教科書体」や「楷書体」という活字では、上に抜けています。同
様に、「木へん」は明朝体では縦画が止まっていますが、楷書体でははねています(同
じく、私は「木へん」も絶対にはねずに書いてしまいます。小学校でしみついたことって
大きいですよね)。

そんな瑣末な細部にこだわるのは、たしかに問題でしょう。しかし、文字としての字の
形になっていない、というのはやはり問題のように思います。

その一方で、いまは、漢字検定の静かなブームなのだそうで、漢字検定の級位認定
が入試の成績に加算される大学もあるそうです。では、どうして、漢字の字形が変に
なっているのだろうか、と思います。

で、私の意見では、これは書道が軽んじられているからだと思います。書道は、漢字
をどのように書けば漢字らしくなるかを、理屈ではなく、技として教えてくれます。楷書
であれば、どう書けば楷書らしくなるのかを「上手な字」という点から教えてくれるので
す。

近年は、確かに手で書かなくても、ワープロを使えば、簡単に文字を記すことができま
す。実は、私も手書きの文字には自信がなく、「達筆すぎて読めない」という、お誉めの
ことばを頂くほどです。しかし、中学・高校、そして大学と、わずかの時間ですが、ずっと
書道を科目として取っていたおかげで、「ここ一番」というときには、まあまあ見られる
字が書けているのではないかと、勝手に思い込んでいます。また、年賀状は、すべて
自筆で書きます(自分の住所も)。何かを頂いた返事も、すべて自筆でお礼状を書き
ます。下手でも文字を書こうという気にさせてくれているのは、おそらく書道を科目と
してではあるけれども、取っていたおかげだと思っています(習い事としてはしません
でしたが)。

筆という、極めてコントロールしにくいものを使って字を構成していくということが脳の
発達にとって、きわめて有用な働きを持つ、というような説を、どなたか出してくれな
いかなあ、などと思う昨今です。

ん? で、何をしていたらいいんだ? 書いている私も、話があちこちに行ってしま
って、よく分からなくなってきました。ええと、書道教室に通いなさい、と短絡的なこ
とは言いません。ただ、漢字は四角く表現するのだ、ということを改めて確認してお
いてもらいたい、と思うのみなのです。