●とりあえず何をすればいい?
いきなり、さまざまな参考書を提示して、あれ読めこれ読めでは、せっか
くここにやってきたのに、すぐに逃げられてしまいそうです^^;; そこで、こ
こでは、2つのことにしぼって、とりあえずやれそうなことについて述べて
みます。
まず、日常的にやってみて、おそらく面白くなる(だろう)ことについて述
べます。それは、毎日、新聞の投書欄に必ず目を通すということです。
投書欄には、何日かには一度、必ず最近の言葉についての意見が載り
ます。最近目につく投書は、やはり、カタカナ言葉についての意見なので
はないかと思います。カタカナ言葉が多すぎるのではないかという意見
です。また、最近読んだものでは、高校生(女子)が、最近の歌謡曲の歌
詞に、ただノリのよさだけで実感を伴わない英語を使っているようなもの
が多いと思うけれども、どうだろうかというものが印象に残っています。
この新聞の投書欄の、最近の言葉についての意見を読んで、自分なら
どう思うかということを考えるだけで、かなりの言葉のトレーニングになる
はずです。その投書欄に述べられている言葉上の現象について、関心を
持たざるをえないからです。そうすると、自然、日々の言葉遣いに注意
を払う態度が身につくことでしょう。さらに、進んで、その言葉についての
意見を述べている人は男性なのか女性なのか、年齢はどうか、どんな仕
事についているのか、といったことにも注意してみましょう。そうすると、
性別・年齢別・職業別に、さまざまな意見があることに気づきますし、一
方では、だいたいこの世代だとこういう意見が多いかななどということに
も気づくのではないと思います。しかし、その前に、とりあえずは、意見の
多様性というものに目を向けて、実にいろいろな人が、さまざまな意見を
抱いているのだなあ、という実感を持ってほしいと思います。
次に、もう一つのことについて述べます。それは本の紹介です。明星大学
の柴田雅生(まさお)先生のホームページには、1000円以下で買える日
本語についてのさまざまな本の紹介があってたいへん参考になります。
http://homepage1.nifty.com/mshibata/refer-j.htm
ただ、それをずっと眺めてみると、意外に高校生の段階で読んで面白そ
うなものはこれだ! というものが見当たらないような気もしました。中で、
これはお勧めかなと思えたものを1冊挙げてみます。それは、新潮文庫
に入っている、松本修さんという人の書いた『全国アホ・バカ分布考』とい
う本です(ちょっとショッキングなタイトルなのですが)。これは、まず、関東
では「バカ」というところを関西では「アホ」というというところから始まって、
日本全国におけるそれを意味する言葉の分布を調査してまとめた本です。
関西の「アホ」が関東の「バカ」に移り変る地域はどこだろうと思って、関西
から車で東へ少しずつ走っては調査していくのですが、なんと彼らは、「ア
ホ」が途切れるところに「タワケ」圏があることに気づき驚きます。単純に、
アホ→バカとなっているのではなく、アホ→タワケ→バカとなっていること
が分かったのです。そう言えば、昔、フランキー堺という俳優がやっていた
「赤かぶ検事」というドラマを思いだすと、名古屋近辺では「タワケ」だった
なーと、私も妙に納得しました(赤かぶ検事の勤務地は飛騨高山です)。
そこで、さらに通信調査をすると、山口の萩のあたりでも「タワケ」がある
ことが分かります。さらに、北九州のあたりには、関東と同じように「バカ」
という地域があることがわかり、さらにその「バカ」の外側に、つまり東北
や南九州のあたりには「タクラダ」とか「タクランケ」といったような「タクラダ」
系があることもわかってきます。そうすると、日本列島は、
(西)タクラダ系−バカ−タワケ−アホ−タワケ−バカ−タクラダ系(東)
というふうに東西に向かって同じ言い方が層を作っていることがわかりま
す。これはいったいどうしたことでしょう。ということで、このあとは、ぜひ
この本を読んでほしいのですが、ややこしいところや難しいところは、すこ
しはしょって読んでも、その面白さは充分に了解できるのではないかと
思います。