Integrated Continuous-Time Filters Using Integrators

<H1> Integrated Continuous-Time Filters Using Integrators </H1>

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概要

連続時間系フィルタは通信システム,オーディオ・ビデオ機器などにおいて 必要不可欠な基本システムである. 特に集積化可能なフィルタは,機器の小型・軽量化の観点から有用性が高い. 集積化連続時間系フィルタは積分器のみを用いて構成でき, 従来,理想的な積分器の使用を仮定した設計がなされてきた. しかしながら,集積回路における素子値偏差や寄生素子のため理想的な積分器の実現は 不可能であることから,性能の高い積分器構成フィルタの構成が困難であった.

本論文では,積分器の回路構造を限定せずに,フィルタの様々な特性を 改善する設計手法を提案している. 前半では,諸特性の改善のために新たな積分器構成フィルタの回路構造を 導出している. まず,従来,一般的な考察がなされていなかった群遅延特性の解析を行なっている. 相対素子感度の絶対値総和で定義された最悪感度が下限値となるための条件を 示している. そして,特に直流において,低群遅延感度特性を有する積分器構成フィルタの 回路構造を導出している.また,最大平坦群遅延特性を 有する7次低域通過フィルタを例題に用いて,提案の回路構造は直流以外の帯域内の 周波数においても従来の構成法よりも群遅延感度が低くなることを示している. 次に,直流においてフィルタの等価入力換算雑音が最小となる回路構造を導いている. 任意の雑音源は積分器の入力換算雑音として表すことができるため, 状態変数方程式を用いてフィルタの雑音特性を解析するとともに, その最小化を行なっている.全極型3次低域通過フィルタ並びに6次 帯域通過フィルタに関してシミュレーションを行ない,提案の回路構造が 雑音を低減するのに有効であることを示している. 更に,寄生素子による積分器の特性劣化とフィルタの特性劣化の関係について考察し, 積分器の単位利得周波数の広がりを抑えることによりフィルタの特性劣化を 改善できることについて述べている. この考察を基に,実用的な時間内で広がりを評価できる間接的な評価尺度を 導入することにより広がりの小さい回路構造を求めるとともに, シミュレーションにより広がりの低減がフィルタ特性の改善に有効であることを 示している.

続いて後半では,従来法を含む任意のフィルタの回路構造に基づいた積分器構成 フィルタにおける積分器の寄生素子の影響を低減する手法を提案している. まず,自己帰還路を有する積分器の実現方法が無限に存在し,それらの回路の違いから 積分器に付随する寄生容量がフィルタに与える影響が異なることを指摘するとともに, 適切な実現方法を選択する手法を示している. 全ての実現方法を一つのパラメータを用いて一般的に表現し,そのパラメータを 用いた解析を通して最適な実現方法を求めることができる. 3次低域通過フィルタを例題に用いて,提案手法が寄生容量の影響の低減に 効果があることを明らかにしている. 次に,加算器や増幅器を含む積分器構成フィルタにおいて,能動素子の入出力抵抗が 理想的ではない場合でも,その影響が,自動的に調整可能である特性の周波数軸方向の 偏差として現れるように,フィルタの回路構造を修正する手法を提案している. 入出力抵抗の影響が理想的な減衰器の挿入で表され,さらに, これらの減衰器が積分器の単位利得周波数を偏差させることに着目し, フィルタ中の適当な箇所に単位利得バッファを加えることにより 全ての単位利得周波数の偏差量を等しくしている. 提案手法を有極3次低域通過型リープフログフィルタに適用し, 有効性を確認している. 更に,電子的に単位利得周波数が可変で,しかも同一の回路構造,同一の素子値を 有する積分器を用いれば,フィルタの回路構造を決定する前に, 積分器の理想特性からの偏差だけからフィルタの周波数特性を 前補償できる手法を提案している. 全ての積分器の特性偏差が一つの関数で表されるため,前補償のための計算が 容易となる. 例題として演算増幅器とMRCを用いた積分器によりフィルタを構成し, 提案の前補償方法の有効性をシミュレーションにより確認している. そして,この前補償における計算を集積回路上で実現することにより, フィルタ特性の自動調整システムを構成している. 従来から用いられている,積分器の単位利得周波数の偏差を自動調整するシステムを 2個用いることにより,単位利得周波数の偏差だけでなく位相偏差も考慮して, フィルタ特性を自動調整できる. 提案のシステムにより4次帯域通過型バイカッドフィルタの特性を 自動調整した場合についてシミュレーションを行ない, 理想に近い特性が得られることを示している.