99年度奨学論文インタビュー

以下は、デジキューブ班(中村武史、黒田裕樹、相川毅)と若林先生でデジキューブ本社にインタビューに行ったとき録音したものを打ち直したものです。内容は忠実に再現してあるので、これから論文のために企業訪問をする人たちに雰囲気が伝わるといいと思います。オフレコの部分もそのまま入っています。


デジキューブ本社訪問記録
場所:恵比寿イーストビル8F(株)デジキューブ応接室
日時:1999年7月30日 14時3分?15時42分

まずインベスター向けビデオを見る
その後、広報立川泰志氏とのインタビュー

立川(以下T)
「というわけで、今見ていただいた数字関係の資料はホームページにも載っています。あと7月からPCソフト、それからDVDソフトの販売をはじめたというのがこのビデオにはない内容です。ただスキーム自体はつまり物を運ぶということに関してはビデオなどと同じような物流の仕組みです。」
若林(以下W)
「はい。それで内容はですねこのものどもご連絡を差し上げておりましていよいよ論文を書くということになりまして今まで調査してきた事項をもとにホームページにあるデータなんかを加工しながら総括という形でこれについて具体的にいろいろとお伺いしたいということで今日はお願いします。」

「そうしましたらもう質問という形で。」

「そうですね。とりあえず、これは毎年商学部の論文集という形でゼミ単位で論文を書いたものを集めて出しているものなんですけれども、(商学論文を見せる)ぼくたちがインタビューを含めて作ろうと思っているのがこれに載せるための論文で、例年たとえばパチンコ業界だったりスポーツ用品業界だったりする中で、今年はそれでデジキューブという流通企業を取り上げてみようかなと思いまして。それでだいたい大筋のストーリーを決めながら調べてこさせていただいたんですけど。」

「はい。(論文集をぱらぱらと見てみる)あ、これはなんかエクセルのグラフのやつ使ってるんですね。」

「あ、はい。」

「そうですね。まあせいぜい学生の」

「うちも実はまあ分析はエクセルでやってますから。さっき言った店舗別の偏差値つけて、それでなにが売れるゲームかっていうのは当然回帰分析でやっていかなきゃ出ませんから。だから別に使っているのはエクセルで。」

「充分ですね。」

「そうですね。あれで充分ですからね。もう統計系だけじゃなくてもたとえば建築系のこととか、まあ私は建築系とか理科系のことはよくわからないですが、そうとうできそうですよね。ほとんど式入ってますから。
 私学生のころはこういう統計学とかって関数電卓ぽこぽこたたいてたんで、今はもう忘れましたね。その、もとの式とか、どうしてこうなるのかとか。」

「あー、学生にですね?、その四年生とかに…」

「数列とかもやらなくても数値打ちこめば結果出ますからね。」

「ほんとエクセルがいやだって言うとどうしようもなくてねぇ。」

「ブラックボックスになっちゃってますからねぇ。だんだん私も年取ってきちゃいましたから。」

「まあ、あのほんとにマクロなんかも、その、あとでこちらで加工したデータなんかも見ていただくとして、学生のストーリーにのっとった形で質問を受け付けていただくということで。」

「そうですね。一応ホームページご覧になったといううえで、私が改めてお話はする必要はないと思いますよ。一応このコーポレイトストーリーお渡ししているんで、これについてざっと5分ぐらいで。あと質問にあてたほうがいいと思うんで。
 会社概要は4ページ目で。まあうちは何をやってるかといったら、今はあくまで物流的な話をしているんですけど、お見合い業なんですね。結果的には。でたまたま、エンドユーザーの人との接点で、ライトユーザーっていう今までエンターテインメント商品をやらなかった人たち、を取りこむツールとして、まあツールと言ったら彼らに失礼なんですけれどもコンビニエンスストアさんを利用させていただいているっていうだけなんですね。だからまあもともとデジキューブっていうのは何をやったかといえば、音楽が欲しい人っていうのは音楽専門店に行くし、ゲームが欲しい人っていうのはやっぱり積極的な人だからゲーム専門店に行きますよね。これはテレビの視聴者で言えば、パーフェクTVとかケーブルテレビを設置する人って極めて潜在的に、その、あれもエンターテインメントですから、積極的にいく人ですから。それに対して、フジテレビとかTBSをなんとなく見る人は家に帰ってニュースステーションやニュース23を見ている人たちっていうのは、ただ単にスイッチ入れてみているだけなんですね。デジキューブってどういうことかっていうと、まさにそのニュース23とかニュースステーションをなんとなくニュースみたいという人が今までゲームとか音楽を買える場所がなかったんですね。なんとなく買いたいんだけどわざわざ専門店まで行ってっていう、パターンで言えばプル型の人たちにとってはWebを見に行くようなものですよ。それに対してメールってプッシュできますよね。見ざるを得ないですから。来ちゃうから。簡単に言えば、プッシュ型じゃなきゃ情報を取らない人たちにも、ゲームとか音楽とかそういったエンターテインメントを楽しんでもらいたいという、セッティングをしてあげるわけですね。彼らに対して。で、その一番いい場所としてコンビニという場所がベストだから、コンビニ計画を組ませていただいてソフトメーカーさんでいえばプラスアルファですよね。もともと専門店でしか売れなかったのがコンビニでプラス20%売れているわけですから。まあシェアはだいたい20%くらいなんですね。日本ステーションアイとかデジキューブのシェアっていうのは。単純計算で20%、メーカーさんも売上が増えたし、コンビニさんから見れば当然新しい商売が増えたわけですから。ということなんですね。
 でつぎの5ページ目を見てみると、ときどきコンビニとソフトメーカーが各社直接つながればデジキューブはいらないじゃないかって言われるんですが、問屋としての機能、効率だけでなく、オペレーション、モニターシステムなどといった点で売り場が死んでいくんですね。ああいう機能はコンビニさんにはないし、ソフトメーカーもコンビニがどういうオペレーションをしているのかわからないですから、そのギャップを埋めるのがデジキューブなんです。
 強みは商品選定の力で、コンビニはジュースの売り上げなどにはスゴイノウハウ持ってますが、まあ、一般的にコンビニから見ればゲームって水物ですよね。エンターテインメント自体。だから勘で発注せざるを得ないと。でもうちに頼めば、全部今みたいな配布、店舗ごとにどれだけゲームが売れるかっていうことをオペレーションしてくれると。
 で、あとはツール2で解説しているんですけど、モニターシステムっていって年間約1000タイトルくらいある中から最終的に100タイトルくらいに絞り込むということで、モニターシステムでは評価シートに「統一的な評価項目(回答は多項目選択)」をマークすることで客観的な評価を行なうということで、要は多項目選択でマークしてもらったのを加重平均とか取っていって、最終的に点数化していくと。それで、単純にいうと過去の同じジャンルの例えばRPGで70点、でそのあいだに相関性が出てきますから、回帰分析で、モニターにかけて、それでモニター結果に基づくと何万本売れるでしょうと。日本全国で30万、ってなったら今デジキューブって20%のシェアを取ってるから、30万本のうちの6万本売れるだろうと。で6万本売れますよと。なら全部で1万8千店舗あるから、そこはただ店舗数で割るんじゃなくて今度は店舗ごとにどれだけ売れるかとそっちを分析しなきゃいけないんですね。でそういったことをできるところっていうのは、できなくはないんだろうけどいろいろノウハウが必要だから、でこの中の回帰分析の計算式っていうのは絶対うちもディスクロージャーしないですから。それがノウハウですから。あとこの多項目選択っていう回答項目自体も外には出していないです。
 で8番がうちの強みの2番目なんですけど、スカイパーフェクTVっていうのを、まあ普通スカイパーフェクTVの放送免許を持っている会社が、いろいろありますよねESPMとかファミリー劇場とかあれは視聴料で

コーポレート・ストーリーに沿った説明。(中略)
 

170

T:デジキューブの立川さん
W:若林先生
N:中村武史
A:相川毅
K:黒田裕樹


「ざっとうちの会社がどういう会社かっていうと今お話したような感じなんですが、それじゃ質問ということで、質問するときにちょろっと紹介を入れる感じで。」

「明治大学3年の中村です。何度かメールで連絡させていただいていました。よろしくお願いします。

N ネットワーク配信に関してのセキュリティ技術などは自社でも開発しているのか?
T 基本的にそういう要素技術というものは自社では扱っていない。そのための力もないし強みではないので。既存のNTTや富士通などが開発するであろう要素技術を利用させてもらう。
N つまりデジキューブが作るのはシステムであると?
T そう、資料4pのスキームのようなものが自社の意味。逆に例えば富士通が配信技術を作っても、それは例えば車が走るために道路を作るようなもので、コンテンツがのっかるもの、道路を作るだけでは車がないとダメなのと同じで、いいコンテンツを探してくるのがデジキューブの役回り。それをどうやって探してきてコンシューマーに売るのかが問題。ただ売るだけなら今でも自分でコンピューターをつないでMP3をダウンロードしてきたり、ソニーミュージックの配信するパーフェクTVで音楽を事実上ダウンロードできるようになっているのでやっている人もいる。まだ機会は高いけど。そういう人たちはいわゆるプル型なので放っておいても自分で積極的に動く。悪い言い方をすればマニアックな人たち。そしてその人たちはまったくデジのターゲットではない。デジキューブの強みは、ただ口をあけて情報を待っている人たちの口にコンテンツを放りこむシステムを持っていること。そういうプッシュ型のマジョリティの人は、コンピュータをつないだりインストールやら何やらをしたり、スカイパーフェクTVにしてもいろいろモジュラージャックをつないだりするのが面倒だと感じる。その人たちが気楽に情報と触れられる場を作るという意味でのお見合いをセッティングするのがデジキューブ。
N 最終的な目標は、ゲームはコンビニだけで買うような状態であると聞いたのだが。
T それはだいぶ前のこと。
N コンセプト自体も変わったのか?
T コンセプトは変わっていない。ただ、たまたま今の最高の流通形態はコンビニなので、そのコンビニの客層がさっきのようなプッシュ型コンシューマと同じなので。ただ流通形態は昔から変わってきて、デパートからスーパーになり、スーパーからコンビニになってというようになっている。でも流通はいつまでも続くものではないので、コンビニ自体が変化すれば別だがコンビニでなくなってしまうかもしれないので、だからコンビニが最高の形態でなくなってしまう可能性がある。ただデジキューブとしては今後2年間は最低でもコンビニが最高の形態だろうと考えている。5年後はわからないので。
N では、今はコンビニゲーム流通の目標は60%などに下がったのか?
T 今はもう目標に達成したと考えている。とりあえずゲームは。今のシェアは20%なのだが、これを30%にするのは不可能ではないが大変。例えば週間少年ジャンプは45%がコンビニでの売上。あれは価格差がないし再販性が守られているから朝早く買えるコンビニのほうがいいのだが、いろいろなコンビニ商品があるけれど、やはりシェアはだいたい20%。すごい数字ではあるがやはり亜流。なんでも専門店がメインだという事実。ジュースもコカコーラなどやはり20%コンビニだが80%は自販機やスーパーなど。道半ばという意味では音楽ソフトがまだ7%なのでまだ上げられると考えている。ビデオが8?9%でこれもまだ上がるだろう。音楽で苦戦しているのは商品供給がまだ完璧にスムーズではないから。それから同じ駅前でもゲームショップは路地裏だが、レコードショップはいい場所にある。利便性がよい。老舗は大きいし強い。ゲームに関して言えば、コンビニでは値引きをしないのになぜ買ってくれるかといえば、利便性がいいから。学生はコンビニでなく、ゲームはヨドバシカメラなどで買う。500円安いから。デジのターゲットは学生時代はゲームをやっていたが今はやっていない、所得はあるけど時間のない大人。
N ではやはりデジキューブの商品としては音楽CDよりも、プレステやPCのゲームソフトのほうが有効なのか?
T 有効とは限らない。音楽に関してはまだまだ改善の余地がある。有効でないとはぜんぜん思っていない。PCに関してはまったくコンセプトが違う。もともとPCのゲームを日本でやっていた人たちはコアの人たちだけ。おたくだけ。だからまだパブリックなマーケットになっていない。アメリカが特殊なのかもしれないが、アメリカではPCゲームがかなりパブリック。日本ではゲームにおいてはやはり任天堂がマーケットを作ったから、テレビゲームがメインになって、PCゲームはおたくとかヘビーユーザー向けになった。なぜデジキューブが7月からコンビニでPCソフトを立ち上げたかというと、秋葉原や多さか日本橋に行かないと手に入らなかったソフトを近くで買えるようにするため。なぜ今かといえば、パソコンの一般家庭での普及率が30%を越えたから。飾ってあるだけで稼動していないぶんも稼動させてあげるためにコンビニでのソフト販売を行なう。またそういった人たち向けなので、グラフィックボードなどの増設の必要がないソフトを売る。簡単に言えば、ペンティアム?の133メガヘルツで動くやつっていうのが基準でセレクションする。それも下のフロアでやってる。
N わかりました。質問の量が多いのだが、今日質問しきれなかった分は、後日メールで聞くことはできるか?
T メールはきつい。時間がないので。電話にしてもらえるか?
N はい。
W そうじゃなくて、せっかく時間を取ってもらったんだから、今日のうちに凝縮して聞いて、もらさないようにその努力をするように。
N はい。
K 明大3年の黒田です。商品の選別はモニタールームでやっているとのことだが、音楽CDに関してはどうしているのか?
T 音楽CDは、ゲームと同じように30人くらい並んで聞いていても意味がないので異なった選び方をしている。音楽は曲の良さよりも、プロモーションによって売上が決まる。曲の良し悪しが感性に訴えかけることも確かに重要だが、電通とか博報堂など、宣伝をする広告代理店があって、だいたいのTVCMを作っているのだが、それによってCMに取り上げられた曲、ドラマ・番組で使われた曲、すでに有名な歌手の曲というのが売れる曲。そこらへんはだいたいわかるので。だからそういう環境のような動向を察知することに力を入れる。CMなどの投入で、東京地区、大阪地区、中部地区などにどれだけCMを打っていくかを電通とか博報堂から仕入れる。情報収集が大事。ゲームの場合は、モニターシステムでゲーム自体の質が70%、10%がメーカーブランド、これは同じクオリティのゲームならメーカーがコナミやカプコンなどの有名な会社のもののほうが売れるということ。そして次の10%がどれだけ雑誌やTVCMに取り上げられるかというパブリシティ力、最後の10%はどれだけ宣伝に力を入れているかということ。それに対して音楽は、曲自体の良さは20?30%のパラメータで、80%はCMなどのタイアップやどんなプロモーションプランを立てているかによる。
W ビデオソフトは?
T ビデオはモニターはほとんど要らない。極論を言えば、映画の興行収入がそのままビデオの売上に跳ね返ってくる。DVDももちろんそう。一回見れば充分なものとリピートしてみたいものの差はもちろんあるが。
 そのうえ返品という点で違う。音楽やゲームは返品が100%できるわけでなく返品枠がある。玩具流通は買い取り制だったのだが、返品を認めさせたのはうちの力。
W 創立時から返品を認めさせたのか?
T そう、それでめちゃくちゃけんかした。音楽も。それで、ビデオに関しては返品はすべて可能。逆にいえば、返品枠がある商品はモニターを一生懸命やらないといけない。あまったら損してしまう。会計上では特別損失を出していかなければならない。だから死活問題だが、ビデオは多少ダブらせていても平気。つまりモニターシステムはうちの収益にそのまま跳ね返ってくる生命線。努力しなくてはいけない点であり、独自の武器。
W ついでにPCソフトについても聞いておきたい。
T 今は結局秋葉原などで買う人はまったくターゲットにしていない。一太郎ライトのような、一回ヒットしちゃったもののライト版、例えば20面のうち最後の5面がやたら難しいシューティングなら、それをなくしてパッケージングして出す。そう、PCソフトに関してはうちはメーカーとしてパッケージングまでするという特殊な売り方をしている。もちろんロイヤリティはオリジナルに払うが。ブランド名はデジキューボックス、じゃなかったデジキューブPCというブランドにしたのだが、そう、この前商標取ったから、たぶん大丈夫だと思うのだが。なんかいろいろ大変だったんですよ。名前が重なっていたり。っていう感じですね。
W 立川さんがそういうブランド名も考えなきゃいけないのか?
T そうです。今私はなんの仕事をしてるかというと、広報でしょ…、それから
W だけじゃないですよね。
T だけじゃなくて(笑)会社の規模からするとしょうがないのだが、パブリックリレーション、インベスターズリレーション、渉外、今日はこれに該当するのだが、それから特許でしょ、それから、法務関係、むかし契約書もやらされていたのだが、さすがに解放してもらって、それは違う人間が今やっている。そんな感じで、昔通信販売もやらされてたし。実はうちのコンビニって、鳥取と島根になくて、そういうこともあって売上の1%くらいが実は通販。これはたまたまローソンと組めなかったから鳥取と島根にないだけで。
W 当然セブンイレブンは網羅していなくて。
T 二十数県でしょ。確かに優良県なのだが。でサークルKと提携してないから名古屋もない。
W あのー、インベスターズリレーションのホームページもひょっとして立川さんの仕事?
T そうっすよ。あれも私の仕事です。
一同 (笑)
T 全部原稿は私です。
W ほんとに素晴らしいページで。それとあれだけこまめに更新ができるのは見習うように>学生
T あ、でもHTMLにおとすのは業者に頼んでいる。だから物理的には触れてないのだけど。FTPで転送もしたりしてないし。(笑) じゃあ時間もないので次へ。
A 3年商学部相川です。ゲーム販売開始のときは「FF?」、CDのときは「プレジャー」というようにすごいソフトが出るときと同じだったように感じるが、新分野開拓のタイミングというのは?
T あ、もうすごい重要ですよ。鋭い話です。おっしゃるとおりです。当然やってた。それは。
A そういうのはどういう感じで決めたのか?
T ホームページのポイントオブセールスを見るとわかるが、月次によって売れ行きが上下している。コンビニにいうと怒られるが、ゲームとか音楽などエンターテインメントの売上を決めるのは、商品力と販売力どちらかといったら絶対商品力。コンビニの販売力で売っているわけではない。新しい分野をはじめるときはキラーコンテンツを出さないと売り場として定着しない。コンビニは厳しいところで、コンビニに物をおいたら一流企業といわれる。あらゆる分野合わせて3000アイテムしかおいていないのだから。カップ麺も雑誌も。コンビニにおかれる雑誌というのは20万部以上出ているもののみ。コンテンツがすべてなのでそれにあわせて立ち上げる。ビデオならもののけとタイタニック。で、コンビニではどうしてそういうふうにしないといけないかというと、今市場で10%、20%とってると言っても、徐々にそれだけ伸ばしてもだめ。これは、雑誌とかもうちのライバルだから、狭い場所の取り合いで勝つにはいっきに行かなきゃダメ。コンビニは。そのためのキラーコンテンツ。だからなにかうちが新しいことやるときにはその背景にはキラーコンテンツ。
N たとえばDVDだったら、直接的にはアルマゲドンじゃなくてその背後のプレステ2?
T そうそう、だからDVDははじめたといっても実験的な意味合いが強い。さっきの言葉と矛盾するけど、コンビニにもそれは言っているが、プレステ2のときのための売り方とかを調べるための準備、前哨戦。でもゲーム自体のROMはDVDだが、実は映像が見られるとはソニーからまだ言ってこない。つまり映画のソフトが見られるとは言ってない。みんな映像が見られると信じてるけどなんの発表もまだない。うちとしては映像もやっている会社だから見られなかったら困るわけ。ただ、じつはソニーの中でもゲームを作っているゲームセクターのような部門があって、これは重要な話なのだが、彼らはプレステ2で映像が見られると困る。一人1日24時間のうち、エンターテインメントに使える時間が適当に言って7時間だとして、7×一億人で7億時間、これをエンターテインメント企業が取り合っている。居酒屋、アミューズメントパーク、携帯電話、そう、携帯は通信機器じゃなくてエンターテインメントでしょ?人と人がコミュニケーションするのは最高のエンターテインメント。それからテレビ、だからFFがでたあとは実際に視聴率が落ちている。そして音楽、映画、ゲーム。7億時間をこれらが取り合う。
 だからゲーム部門としては映像が見られるゲーム機は困った存在だが、大企業では全社的な判断をするので利益率とかいろいろ判断して決めると思う。この点は非常に重要。
N ところで、あるメディアのあるビックタイトルがコンビニで出たら、今まで買ってくれなかった。ほかのメディアのソフトもそのとき買ってくれるというような事はあるのか?
T まったくそれは分析しようと何度もトライしたが無理。ぜんぜんわからない。ただ男女比はもらっていて、ゲームに関してはコンビニでは8:2なのが専門店では9:1だから、ゲームではけっこう女性ユーザーが増えているなというのがわかる。20から30の男性が一番買っている。デジキューブの最大の功績は、ゲームを昔はやっていたけど卒業した、という人を学校にたとえれば留年させつづけているということ。本人にとっていいかは知らないけれど。よけいバカになるのかもしれないけれど。まあ、ゲームをするとバカになるかは知らないけれど。私もやるからなんとも言えないけれど。
W あと何年留年が可能かっていうのもありますしね。
T はい。で、音楽に関しては売れ方がぜんぜん違う。男女比が専門店は4:6で女性が多いのに、コンビニでは7:3で男性が多い。どうも買っている客層が違うようで、売れている時間が昼休みと夜の11時から2時くらいにピークが来ている。POSデータから。ってことは、買っている人の種類がぜんぜん違った。だからレコード店で買う人とはぜんぜん違うカテゴリーの人たち。かといってどういう人かグラフにしろっていわれてもそこまではまだわからないが。
N 実は論文に中枢に据えようと思っているデジキューブの業績の伸び方のモデルがあって、キラーコンテンツで、ある新分野がぽーんとのびて、安定するか下がるかするときに、
T ああ、去年は悪かったから。
N まあそれでそのままじゃダメだから、また新分野を投入して、というものなのだが?
T だからさっきの資料のつみあげの概念図みたいに。去年は恐ろしいほどいいソフトがなかったのだが、そういう資料はホームページの「社長からのメッセージ」にのってるのだが、Javaで、重いので変えようと思ってるのだが。
W (図を示して)つまりこういうように山型を積み重ねた業績の伸ばし方をするという仮説をこの者たちは立てているのだが。
T そうですね。それは正しいと思いますよ。
W なかなか大変ですねこれも。ここまでいったらまた新分野、そしてまた新分野、というようにしていかなきゃならない。
T それは宿命だと思っている。それで、それは新卒を採用できない理由でもあるのだが、例えば音楽をはじめるときはまったく新しい分野なので音楽の専門化を引き抜かなくてはいけない。だいたい30代くらいで。つまり中途採用。ビデオも選定できる人が必要だし、だから新卒を採用しても役に立たない。ライフサイクルで言えばうちは一番ずるい会社。
N それじゃ、もう市場で消えていくメディアの専門家は。
T そういう人は辞めてもらうしかない。
W つまり熟練生成は企業側はあまりやらないと。
T はい。かってに成長してもらうというか。評価制度はちゃんとあるが。まあちゃんとしているかどうかはわからないけれど。
W (笑)。ここはオフレコで。
T いや、でも人事で完璧な会社って世界中捜してもたぶんないと思う。みんな問題あって、実力主義とか言ってもまだ年功序列とか不平等。マスコミの論調は、年功序列から実力主義に代わっているとか言っているが、今後1年くらいはまだそうならない。
N で、この話をもう一回。わりとこの伸び方って、この下がっている部分が面白いと思うのだが。
T いや、だから下がっているんじゃなくて、これはゲームが下がって、
W ゲームはこうなったね。だけどこれはちょっと異常な部分だっていう、過剰マーケットっていうのがあったと思うんだけど。
T FFがでたからこうなっちゃう。だってこのPOSデータでとんがってるのってFF?とFF?でしょ。例外のコンテンツだから、FFっていうのは逆に考えない方がいいかもしれない。
N っていうか、その分野にそんなに執着しないでとにかく新しい分野に重心を移していくみたいな形を考えているのだが。
T 重心は移していない。やっぱりうちはゲームで稼がないといけない会社だから。なにしろまずゲーム。
W 利益率の問題もあるね?
T いや利益率が一番いいのはね、あそうか、あれ持ってくりゃよかったか。一番いいのは書籍。ゲーム関連書籍。出版社もやってるから。
N それはアルティマニア?
T そう。あれが一番高い。利益は一番高いけど売上はそんなに多くないから絶対枠ではあれだけど。
N 扱っているのはスクウェアの書籍だけですね。
T そう、ゲームの書籍と音楽CD。あれがやっぱりロイヤリティとか払っても利益率は一番いい。
N ノウハウを活かしてほかの会社、例えばカプコンなどのゲームの書籍を今後扱うことはないのか?
T ああ、それは実は今交渉中。ディノクライシスの攻略本、アルティマニアで出そうとしたんですけど。あ、これオフレコで(笑)。断られました。けっこうやっぱおいしいビジネスだから。じゃあどこでやっぱり作るかっていうと、
N アスキー。
T そう、アスキーのファミ通で。さすがくわしいですね。それはまあカプコンから見ればファミ通に作らせた方がデジキューブに作らせるよりもよっぽどいい条件だから。だってファミ通に作らせればファミ通によく書いてもらえるから。やっぱ完全に中立なメディアってないし。
N ファミ通の存在はやはりゲーム業界の中では大きい?
T 実際私が広報マンとしてゲームに関しては軸になるのはファミ通と日本経済新聞。両方敵にしたくない。うん、広報活動の軸はその二つ。
N けっこうIRページの中でも数字的な資料にファミ通のものが使ってあったりするが。
T まああれは媚び売ってるわけじゃなくて、いろんな意見がある中で、例えば通産省のレジャー白書なんかはいい加減でまったく信用できないし、うちも裏取ってるから。あと業界団体でCOSAっていうComputer Software Entertainment Association っていうのがあるのだが、あの東京ゲームショーとかやってる、とは中古問題とかコピー問題を扱っている社団法人なのだが、あれとかはゲーム白書とかだしたばかりなのだが、あれらは出荷ベースなので、最近はなくなってきたが出荷はしようと思えばいくらでもできるのでつまらなくても出荷して売上立てることは可能。だからうちはIRページでもPOSで、出荷ベースで出してもしょうがないから実売で出している。で、客観的に見てやっぱりファミ通かなと。だから別に金も何ももらってない。まあもちろんネタを話したりとかはあるけど。だけどデータを使っていることに関してはまったく中立的。
N わかりました。あと、細かい質問だが、サターンが失脚したことで商品が絞られて選別が楽になったということはあるか?
T あまり関係ない。結局デバッキングステーションは30台ずつ用意しないといけないし。今だってドリームキャストのデバッキングステーションとか、デバッキングステーションってどういうのかというと、開発段階のソフトを動かせる特別なハード。ハードの見た目はあまり変わらないが、開発中のソフトはセキュリティがかかっていてコピーができないようになっていて、まあコピーが絶対できないようになっているわけではないが、たしtか慶應の理工学部とか聞いたことあるな、だけど一般的な市場ではできないようになっているから、プロテクトかかっているから。それにたいして、うちでは当然発売前にモニターしないといけないから、開発段階のものを1枚、CD?Rで借りてきて、メーカーの許諾を得て30枚、CD?Rで焼く。それは終わったら当然責任持って滅却して、流通したら大変なことになるから。だからめちゃくちゃモニタールームは厳しい。もう鍵とかかけて。だって1枚でも持ち出されたら取引停止になっちゃうから。で、結局物理的にはそれくらい。別にドリームキャストが減ったからって手間が減ることはない。
N モニターはどういうふうに選んでいるのか?
T モニターは、ファミ通に広告を出したりはしない。そうするとゲームマニアばっかり来ちゃうから。だからフロムA。メーカーのモニターとは違って、最終的にゲームをコンビニで買ってくれるためのモニターだから。スクウェアとかのモニターはゲームの質を上げるため、バグ取りとか。うちは逆に1000タイトルから絞り込まないといけないから意味が違う。だからゲームマニアではダメだけれど、かといってプレステを触ったこともない人でもだめ。そういったことで、フロムAに「ゲームができる人募集」と書いて出す。
W 時給は一般のバイトと同じくらいですね。
T 1000円弱。800円とか900円とか。モニターにはレポートとして文章を書かせるのでモニター自体を評価して、成績がいいと時給50円とか100円アップさせることで競争意識を起こさせる。で、当然しょっちゅう入れ替える。はじめから2ヶ月で契約しているから、ダメだったら入れ替える。で、履歴書だけだとすごい数が来てしまうから、ガードかけるために作文を書かせる。そこで文章力も見て、10人弱くらい採用して、2ヶ月ごとに入れ替えて、という形。
W このモニターシステムはその効果自体も評価しているのか?
T それで係数を出して、営業担当がコンビニの商品部に「こういう理由でこれは何万本売れます。」と持っていく。拒否されたことはない。例えば初回でデジキューブで10万本売れるであろうソフトならセブンイレブンには4.5?5万本、ファミリーマートには2.7万本というように、全加盟店で合わせて10万本になるように出荷する。で、なくなったらまたリピートで。CD?ROMならすぐ作れるから。
N CD?ROMとPOSというシステムだからできることですね。
T そう、だから基本的にCD?ROMじゃなかったらうちのこのビジネスは成り立たない。任天堂がダメなのはROMカセットだからすぐ作れない。
N むこうは予約販売ですね。
T そう、予約販売じゃないとできない。ローソンと任天堂のは。
N メリットを挙げれば返品がないことくらい?
T だけど機会損失が膨大。ユーザーは金曜日にゲームをやりたいのに手に入るのが日曜日の夜だったら困る。なんでうちが大掛かりな返品リスクを背負って、売れ残ったぶんは書籍と同じでうちに戻ってきちゃうのに、各店舗においているかといえば金曜日の夜に欲しい人がぱっと買えるように。100%買えるとは限らないが。で、1万8千店舗あるうち1位から100位くらいの店には潤沢に商品を置いて、下のほうにはすこし欠品が出るくらいにしておく。そうでないと商品管理ができないから。セブンイレブンだけじゃなくてファミリーマートなども含めて。全部結局「うちの店」だから。
N ampmは入っていないですね。
T そう、資料4ページにあるとおり。
N 今後も提携するつもりは。
T ああ、ampmもミニストップもそれから横浜の、なんだっけ、そう、スリーエフとかも、こちらの商品を扱いたいと何度か言ってきているし、社長も何度かその椅子使っているし、ローソンも前は断られたけど今は向こうが扱いたいといっているが、もうこっちの店舗カバー数は充分。1万8千店舗あるので。鳥取・島根はないけど、それぞれ100万人人口がいないし、平均年齢も高いから。たしかに関西圏は提携コンビニ数が少なくて完全なローソンが必要だけれど、いまうちの提携コンビニもどんどん進出してきているから。日経新聞流に言えば「デジキューブ連合本部」が。サークルKは中部圏に集中した進出のしかたで、中部圏なら負けない、という態勢でやっている。名古屋は新参者が入れないような市場だから。
N では、ローソン・任天堂コンビのうちローソンのことは別に必要としていないようだが任天堂に関しては?
T 任天堂は扱いたい。予約販売でも。ただ感情論の問題で、うちは仲が悪いから。
N デジキューブは読みが鋭いだけにポケモンブームに乗れないのは悔しいだろうと思うのだが。
T おっしゃるとおり。扱いたい。でもやはりデジキューブはスクウェアの子会社で、スクウェアは任天堂からFFをソニーに移してプレステを勝たせた会社だし。まあ、たしかにポケモンは扱いたい。死ぬほど。
N スクウェアの子会社という事実からは逃れられない?
T それはスクウェアの資本政策による。今後デジキューブの株は手放したいのかどうかとか。でもそれは私は社長じゃないので答えられない。
N やっぱり今は、スクウェアが出したソフトはすべてコンビニで見られると思うのだが。
T そうですね。逆にスクウェアの場合はほかと同じようにモニターにかけてダメだった商品はスクウェアに突き返している。発売してもどうせだめだから専門店にも出さない。良質なソフトで売っていく会社だから。販売中止にする。
N 最近スクウェアはゲームに体験版をつけるが、体験版がつくからとりあえずコンビニで扱おうというのはあるのか?
T 要するにぶっちゃけた話そんなにいいゲームじゃないんだけど、FFの体験版がつくとか。それはたしかにある。それはうちでなくスクウェアの話になっちゃうけど、政策としてそれはある。
N 別にそれはスクウェアとデジキューブの妥協点というわけでは?
T それはない。ただそれはスクウェアの売り方。そこからうちに流すか、ソニーコンピュータの流通に、あそこは流通網も持っているから、でそこからソフマップへ流れていくというようなことだけだから。
N スクウェアの出したソフトはすべておかなくてはいけないことになってはいない?
T それは逆。こっちに拒否権がある。向こうもこっちで落とされるソフトは出さない方がいい。
N ではコンビニにおいてあるスクウェアのソフトは良いものだけだと?
T これはコンビニでゲームを買うライトユーザーは年におそらく2?3本しかゲームを買わない人たちだから、良いものに絞らなくてはいけないから。
N それから、聞いた話で、音楽業界ではコンビニにおいてもらえるわずかなラインナップに選ばれるように、売れ線のベスト盤などの割合が増えてしまうのではないかということだが、やはりベスト盤のほうが選びやすいのか?
T でもメーカーにしても売れるから出しているから。コンビニを意識しているわけではない。
N せっかくコンビニ流通が伸びたなら音楽業界もそこで売れるものを作るのが当然だと思うのだが。
T でも間違いなくベスト盤はコンビニを意識して出しているわけではない。コンビニじゃなくても売れるから。たしかに結果論としてコンビニで扱う音楽CDの中でベスト盤が占める割合は大きい。これは、完全な新譜が音楽CDの場合、10万枚最終的に売れるものなら初日に5万枚売れてしまうものだから、例えばゲームCDでも売上の50%に達するのは発売して一週間後なのに、音楽CDは初日依存率が高い。なぜなら音楽ソフトの購入者のほうがマニア度が高いから。ライトユーザーは悲しいことにレンタルで借りてコピーしてしまう。実際にCDを買うのはパッケージが欲しいからだから、初日がすごい。だからコンビニは弱い。その点ベスト盤はクッションをおいてちょっと冷えているからコンビニ比率がすこし高い。メーカーはどちらにしてもベスト盤は売れるから出す。
W 版権は?
T メーカーは原版権は持ってない。持っているのはavexとかくらい。実際原版権を持っているのはプロダクション。
W だからプロダクションを移動したような人のベスト盤は出すだけ出してすごく儲かる。
T そうですね。
N ところでいまだに既存の流通業者とは仲が悪いのか?
T ゲーム?
N そう。
T ゲームは怒ってないんじゃないかな。もう。
N けっこう認められた?
T 認められたし、結局はじめてプレステ買う人はコンビニで買うけど、そのあとは専門店で買う。だから結果的に市場を拡大しているわけだから、そんなに怒っていないと思う。ただ、やっぱり音楽の場合は抵抗感が、まだ1年間くらいだから残っている。もっともタワーレコードとかHMVとか、大きなところは気にしていないから、気にしているのは努力していない駅前のパパママストア。そういうところが頭にきている。
N はじめはまさに四面楚歌で、セブンイレブンも自社での音楽CD販売に失敗したこともあって、不信感をいだいていたと思うのだが、評価は変わってきたか?
T セブンイレブンが失敗したのはうちのようなスキームがなかったから。全店にCDをばら撒いて、売れる店に欠品が出て売れない店で売れ残ってしまったから。告知も赤字覚悟でしたりしなかったから。
N セブンイレブンはもう、コンビニでCDなんて売れないとあきらめていたと思うのだが。
T セブンイレブンの本音としては、デジキューブにリスクを負わせてやれということ。だから失敗しても痛くも痒くもない。痒いくらい。ほかのものが置けないという機会損失の面だけ。
N で、ここまでデジキューブが結果を出してくれば、セブンイレブンの見る目は変わってこないか?
T 例えばセブンイレブンのお弁当業者「わらべやにちょう」とかはほとんど奴隷状態。つらい要求を飲まされている。まあ、うちも大変。セブンイレブンの商品部とうちの営業部のあいだではシビアな交渉がなされる。でもうちはそういうただの下請け業者とは違って要求をはいはいと受けるだけのところとは違う。だからもともと一目置いている。セブンイレブンも頭がいいから、デジキューブのノウハウがわかったうえで提携している。これだけスキームを持って、セブンイレブンだけでやろうと思ったら、金もかかるしノウハウも必要。デジキューブの社員全部を引き抜かなくてはいけない。
A 新分野の開拓や、携帯電話の11桁化に見られるような機動力の速さは、会社の規模によるものか?
T ドライな言い方をすれば社員が寝ないで働けるから。徹夜することをいとわない社員が多い。
A 社長が一種、プロデューサー的な役割を?
T 携帯電話に関して言えば、ドコモが直接各コンビニと組んでいたら、あれだけのスピードではできなくてもっと中途半端になっていたはず。ドコモショップでしか書き換えができなかったらたぶん社会的な混乱が起きていた。やくざっぽい人とか、かけたいのにかからないから、ドコモショップの窓ガラス割ったり、書き換えが長蛇の列になるはずだから列を乱したり、そういう人が絶対出ていた。だからあれは、一種の応用で、内は本来モノを売る会社だが、サービスの面でもやったということ。うちの鈴木会長と、ドコモのむかしの副社長が知りあいだったのでひょんなところからうちに話が回ってきて、もともとはPCの、番号書き換えソフトを売れないかということだった。でも考えてみたら、うちのユーザーはライトユーザーで面倒くさがり。そんな人たちはパソコンソフトでそんなことをするかといえばしない。だったらサービス化してしまえと。
N ちなみにああいうシステムは、一回使ったら廃棄してしまう?
T する。もう廃棄したはず。私は担当じゃないのでよくわからないが、法的にも問題がないように廃棄したはず。
N もったいない。
T たしかにもったいない。でもほかに使いようがないから。あれは中に入っているのは基本的にウィンドウズのプログラム。
N 番号を書きかえるだけの。
T そう。でも大変だった、しかし。寝られなかった、あのときは。
W 立川さんは最高でどのくらい徹夜を?
T いや、でも私は体力が持たないから最低3時間は寝ることにしている。徹夜するやつはいっぱいいたけど。営業とかシステム開発とか。(思い出し笑い)
 まあ私は忙しいのは楽しいからいいんだけど。うちも店頭公開とかすると、入ってくる人は店頭公開企業だと思って入ってくるからちょっとギャップがあるようだ。だから、一部上場とか二部上場の企業に入るというような、いわゆる「就社」の面は捨てきれないようだ。だけど、やっぱり私からすると、新卒の人は有名な一部上場企業に入る方がいいと思う。創業する人は別だけど、そういうのは誰でもできるわけではないから。銀行と証券だったら証券のほうが直接金融だから力がつくと思うけれど。競争しているから。だから、そこそこ競争している一部上場企業に、5年とか勤めてスキームを身につけて、いやになったらほかに移るようなのがいいと思う。個人的には。
W デジキューブはそういった教育制度は今後も持たない?
T うちは育てる余裕がない、育てるやつがいない。履歴書読むやつがいないから。人材は登録会社に頼んで、事実上の一次面接をやってもらってうちでは二次をやる。転職情報誌とかに載せたら履歴書が1000通とか来ちゃうから、ぜったい客観的に見られないし時間的なロスも大きい。
W 組織の規模もありますね。
T 大きい会社だと人事部を置いてしかもヒューマンリソースが合って、人材開発部があってちゃんと教育カリキュラムで育て上げると。そういう会社を否定する必要もないし、うちみたいな会社だけじゃなくて、そういう会社がないと成り立たない。人材が育たない。うちは一番ずるい会社で、28歳くらいまでつとめて、でも上司がバカでやりたいことができないから転職考えている人を連れてきて、裁量権は山のように与えられるから。もちろん責任も重くて。私も失敗するとしょっちゅうつめられてるから。だから新卒じゃ無理。私も新卒のころはてきとうな人間だったから。今もそうかもしれないけど。新卒じゃ責任感もないからやっぱり無理だと思う。
W ここに勤めてどれくらい?
T だいたいデジキューブの歴史と同じくらい。会社できてしばらくして、メディアに出るようになってから、広報がいないので広報キャリアで来た。だけどこういう会社だから、特許やれ、契約書もやれ、という話になった。
W そろそろ最後の質問ということで。
T そうですね。
N 今後の事業の展望という質問は抽象的過ぎる?
T それは資料の最後に書いてあったようなとおり。
A わかりました。今日はありがとうございました。