町田竜馬 陶芸作品紹介

 

2000年春制作

処女作。灰皿。球形は作者の手の感覚のみを頼りにした作為の無いフォルムである。上部の穴は球の完成後破り取られたものであり、釉薬の色彩と共に、球と言う形に凹凸、完成後の偶然性を持たせている。灰で僅かに黒ずんだ現在のこの作品からは、自然そのものから取り出された土の一部として土の持つ、むせ返るような熱さや、しっとりとしたひんやりとした冷たさが匂い立つよう。すばらしい作品である。

2000年夏制作

花器。唯一であるが、単純な幾何学形体を組み合わせた作品。長方形の土の板を筒状に貼り合わせた。互い違いに連続する板の辺は一本の竹の節々を連想させる。母のために制作された作品であるが、僅かに撓り上へと伸びるその竹のようなしなやかさ、 力強さは、女手一つで家庭を支えてきた母の強さを表しているのかもしれない。また必然的な工程によって疑似の自然を表現することで、完全な自然の美へは到底到達できない人間のジレンマ、あるいはその自然への畏怖を感じる。すばらしい作品である。

2001年夏制作

コーヒーカップ。実際にコーヒーを入れコーヒーを飲むことを一番の念頭において制作された作品。陶器制作において素焼き、本焼きと通常二度の焼きがあるが、その工程の際、元の形から一割弱縮む。そして湿度、気温、空気の微妙な流れ方などでまた僅かにその値も変わってくる。そのことを踏まえ、何度も取っ手に指を出し入れし、計算し、使いやすい形を追い求めた。釉薬は中にコーヒー、無いしはコーヒーにミルクが入った時に最も映える色合いが出されている。その色はあるいはコーヒーという刺激物のもつ高揚感を気持ち良く消化させ、あるいはその香り、温かさ、落ちついた空間と安堵感を演出するのに申し分ない。作者自身、『あまりに持ち心地が良く自分でも驚いている』、と語る。『ホットで頼みます』と。すばらしい作品。

 


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