■ HIP HOPとイスラーム ■

 



まず、重要なキーパーソン13人(グループも有り)を挙げたいと思う。
(以下「ego trip's book of raps rists」1999 ego trip publicationsのProminent Five Percent Rappersの項を参照した)

 

1. Big Daddy Kane (ビッグ ダディー ケイン)

2. Brand Nubian (ブランド ヌビアン)

3. Busta Rhymes (バスタ ライムス)

4. Divine Styler (ディバイン スタイラー)

5. King Sun (キング サン)

6. K.M.D. (ケー・エム・ディー)

7. Knowledge (ノウレッジ)

8. Movement Ex (ムーブメント エックス)

9. Poor Righteous Teachers (プアー ライチャス ティーチャ−ズ)

10. Rakim (ラキム)

11. Sir Ibu (サー イブ)

12. The World Famous Supreme Team (ザ ワールド フェイマス シュプリーム チーム)

13. Wu-Tang Clan (ウータン クラン)

 

このうち、1、2,3、6、10、13などはアーティストとしても最高峰であると断言できる。日本盤のCDも出ているので、興味のある方は対訳を読んでみてください。彼らのメッセージがきっと伝わるはずです。

 


 

イスラームの影響下にあると思われるラッパー、グループ

 

1. Divine Styler (ディヴァイン・スタイラー)
 
NYはブルックリン生まれのラッパー。現在はLAを活動の拠点としている。99年に発表した3rdアルバム「World Power2」は、前2作に比べ、彼自身のイスラーム精神に深みが増している。ファーストシングルは、メッカ巡礼以前の男の心境を綴った「Before Mecca」で、そのジャケットにはカーバ神殿があしらわれている。さらに、本アルバムでは指導者イマームによる神への絶対の帰依を唱えるアザーン(礼拝の呼びかけ)により幕をあける。彼いわく、アメリカという国で黒人として生まれ、公民権運動が新たな闘争を生み出す社会で育ち、そんな中で両親でも警察、刑務所でもなく、イスラームだけが彼を満たし、鎮め<ヒューマニズム>に触れさせてくれた、という。

 

2. Lakim Shabazz (ラキム・シャバズ)

 

名前やジャケットの衣装などから、多分ムスリムであると思われる宗教家ラッパー。80年代の後半、メッセージ性の強いラップと力強い声で脚光を浴びる。現在は、マイナーアーティストのプロデュースなどで細々と活躍中とのこと。祈復活!

 

3. Paris (パリス)
 
地元はサンフランシスコ。西海岸では珍しいムスリムラッパー。セカンドシングル「Break The Grip Of Shame」(89年)で注目を浴びる。なお、このジャケットにも描かれている彼のロゴマークにはブラック・パンサーの影響が伺われる。

 

4. A Tribe Called Quest (ア・トライブ・コールド・クエスト)
 
Q-Tip(キュー・ティップ)Ali Shaheed Muhammad(アリ・シャヒード・ムハンマド)Phife(ファイフ)の3人によるグループ。90年代を代表するグループだが、98年に惜しまれつつ解散。現在は3人とも、ソロとして活躍中。97年のインタヴューによると、Phifeは以前ムスリムだったが、当時すでに脱退。残りの2人はムスリムで、特にAliは敬虔なムスリム。とても、真面目な人らしい。また、Q-Tipがメッカで行われる集会に参加する為、来日が延期されたこともある。

 

5. Rakim (ラキム)
 
86年にEric B & Rakimとしてデビュー。その声や韻の踏み方、深いテーマなどが熱狂的に支持され、多くのラッパーに影響を与えている。現在はソロで活躍中。マイクの“帝王”。彼いわく、「85年にムスリムになった。Rakimという名前は、ムスリムでRaはゴッド、kimはエジプトの別名だよ。エジプトは昔、キメットと呼ばれていたんだ。」ちなみに、長男はタメル・ラキム、長女がディステニー・タニージャ、次男がジャバール・シャバズという名前らしい。

 

6. Tragedy Khadafi (トラジェディ・カダフィ)
 
NYはクイーンズ出身のラッパー。またの名を、Intelligent Hoodlum(インテリジェント・フードラム)。代表曲は、ストリートの掟を謳った「Street Lifeや、無くなった同胞たちを称える「Grand Groove」等。90年に発表したシングル「Black Is Proud」には、ルイス・ファラカーンの名前も出てくる。同じく、クイーンズ出身のMobb Deep(モブ・ディープ/ハヴォックとプロディジーの2人組)Capone & Noreage(カポネ・アンド・ノリエガ)らとも親交が深い。

 

7. Black Star (ブラック・スター)
 
Mos Def(モス・デフ)Talib Kweli(タリブ・クウェリ)の2人によるユニット。ユニット名は、1900年代初期のマーカス・カーヴェイ・ムーブメントからの影響。タリブ・クウェリは宗教に関して否定的だが、モス・デフは95年からムスリムに。彼が、あるインタビューで、酒や煙草、お祈りに関して聞かれた際、「ムスリムは毎日5回祈るべきなんだけど、実際、みんなやってるわけではない。ただ、できる限りベストを尽くすことが大切なんだ。我々は、西洋社会に住んでいるから周りには気を惑わすものが多い。自分は、パーフェクトから程遠いから努力してるよ。マリファナは吸わない。しかし、煙草は止めようとしているところなんだ。煙草は、体に悪いけど中毒性が高いから、止めるのが難しいよ(笑)。」と言っていたのが興味深い。ちなみに、モス・デフの弟のユニットはMedina Green(メディナ・グリーン)。モス・デフとタリブ・クウェリは98年に出したアルバム「Mos Def & Talib Kweli are BlackStar」の為の限定的なユニットらしいが、その後も、お互い精力的に活動し、2000年には、2人が中心となり、NYで警官から41発もの銃弾を浴び死亡したギニア移民、アマドュ・ディアロ青年(1999年2月4日のアマドュ・ディアロ事件)を偲んで「Hip Hop For Respect」というコンピレーションアルバムを制作。現在、最も注目を浴びるラッパー達である。

 

8. Brand Nubian (ブランド・ヌビアン)
 
グランド・プーバ・マックスウェル、ロード・ジャマール、サダト・X、DJ・アラモの4人組グループ。デビューアルバムは「One For All」(90年)で、これは名盤。全員ムスリムで、ラップにもその思想が伺われる。一時、音楽性の相違から解散していたが、最近復活!今後の活躍が期待されている。余談だが、「Allah U Akbar」という、いかにもなシングル曲あり。興味のある方は是非!