3.3.5 デジタル・デバイド

 次の指摘も当事者でなければ知ることのないインターネットの重要な補完性である。

 「一番困るのは、聴覚障害者との交信ができなくなることでしょう。彼等は電話が使えません。FAXでやりとりしてきましたが、最近はメールです。一本送ると、多くの仲間に転送してくれます。また私関心ありそうなメールはすぐに転送してくれます。日本全国、瞬時に、彼等の仲間と交信できてしまいます。FAXは、家族に健聴者がいると、深夜に送信したらうるさいだろうとか、いろいろ考えて送付できないこともありますし、やりとりした内容も管理が大変です。一枚の用紙を多くの障害者宛てに何回も送付するのは、用紙がもちません」。

 しかし、これには障害者に対して情報教育をどのようにして普及させるのかという問題が前提にある。この問題は放置されれば格差は拡大する一方であるのに対し、格差是正の措置が取られた場合には、さらに新たな可能性が開けるのである。世代間のデジタル・デバイドからこのことについて二つつの方向性が見えてきた。

 一つは、「地域の高齢者はやはり議会だよりの配布を待ち望んでいるのを見ますと、基本は変わらないと思っています」、「地方の高齢議員は困惑しています。または、ITを相手にしていません」といった高齢世代の格差の問題である。有権者の高齢者層をどう取り込むかは、ITと政治における大きな課題である。これについては自治体の主宰による講習会などに高齢者を優遇する措置を設け少しづつ解決をしてゆくしかないだろう。議員自らがそのような講習会を地域活動の一環として行っているケースも見られる。これは議員にとっては効果的な地域活動でもある。

 第二の方向性とはHPを開設している高齢議員にとってインターネットが若い世代を知る大切な手段となっている点である。これについては意見の紹介をしよう。

 「若い層の方よりメールが頻繁にくるようになり、幅広い層の意見が聞けることも特筆の一つ」、「私は59才、メール交信者の多くは若い人で、日常的に疎通にかけるので、大きなメリットになる。(彼等には、街中などで、議会報告を配っても、拒否されることが多い。)」、「私は68歳の議員ですが、どうしても私と同じ年齢層に限られた方との意見交換になりますが、町内の方に300人程に、議会の情報のメール出前を連絡いたしました(中略)若い方の考え方も少しは理解できるようになりましたし、私の町は今村づくり事業に取り組んでいますが、若い方の考えを取り入れやすくなりましたが、時には矛盾を感じる事もあります。特に教育問題に関しては考え方にギャップを感じる時がありますが、私はインターネットがなかったら、若い方との交流はなかったと思います」

 これらのコメントに直接書かれてはいないが、ここで高齢者の議員と接した若い世代の有権者は、逆に高齢者の考え、気持ちというものが以前よりも分かるようになったのではないだろうか。あるいは、分かるように努力する気持ちが出来たのではないだろうか。本稿の趣旨から離れるが、障害者の場合においても同様なことが期待できると思う。