方言の定義
まず、方言使用には主に次の3つの型がある。
A、無意識顕在化型
自分の母方言が普通に人前で出せるタイプ。確かに移住地の言葉は母方言と違うという 意識はあるが、だからといってその土地の言葉に無理に合わせたりすることは意識的にや らない。出身がどこであるか分かっても、一向にかまわない。
B、意識的顕在化型
Aタイプと違うのは、意識して方言を出しているという部分である。しかし、人前で方 言を話すのは普通Aタイプであると考えられるので、Bタイプというのは存在しないかも しれない。
C、無意識潜在化型
方言を隠そうとはしていないけれど、いつのまにか出なくなっているタイプ。恥ずかし いというような思いはないが、まわりが使う言葉に自然に順応してしまうのだろう。
D、意識的潜在化型
意識して母方言を出すまいとしているタイプ。出身を見破られたくない、方言を出すの が恥ずかしい、方言で言っても通じないから出さないといったような理由が見受けられる。
Aタイプの無意識顕在化型は、関西弁を話す人によく見られる。関西方言は漫才ブーム を通じて、広く全国に知られていて、東京弁と並んで「全国通用語」とも呼べるぐらいで ある。関西弁を話す人は無理に合わせるというよりも、関西弁に誇りを持っていて関西 弁を話すことになんの引け目も感じることはないのだろう。 そして、博多弁を話す人はDタイプが多いと思う。それは、関西弁と博多弁の大きな違 いとして、みんなにどれくらい知られているかいないかということがあるからだ。聞き慣 れていたら、何もなかったように聞き流すことができる。でも、博多弁は聞いたことのな い人が結構いる。聞いたことがあったとしても、誤解されている部分がかなりある。例え ば、「たい」を使うことは知っていても、それは男だけしか使わないと思っている人もい る。「〜でごわす」とか「おいどんは」とか鹿児島の方の方言と間違えている人もいる。 聞いたことのない方言は誰でも興味深く聞きたくなるだろう。そして、自分達が普段使わ ない言葉を使っていたら、なんとなく面白いなと思って、笑ってしまうかもしれない。そ ういうわけで、博多弁を話す人と関西弁を話す人が東京に住むことになった場合に、博多 弁を話す人のほうがDタイプになりやすいのである。