「感動」ある公教育実現のために
箸

 竹内氏が著書の中で”すぐにできる「教育改革」案”として挙げている事を紹介します。(著書P210〜212)

@大学入試問題の検討
−悪問・愚問を出題する大学に関して、大学名を挙げながら具体的に批判するとともに、良問のあり方を提言すべきです。予備校教師は大学の入試問題を熟知しています。入試制度改革はともかく、入試問題改革に対してならば、私たちの力を発揮できると思います。
A入試の情報開示
−もちろん入試情報は厳しく管理されなければなりませんが、入試終了後に出題意図と正解・採点基準を公表することに何らかの差し障りがあるとは思われません。(一部省略)現在の大学入試問題の現状は、およそ専門家でも答えられないようなクイズ的な問題、大学教官の不勉強に起因する出題ミス、教科書や専門書の文章をそのまま引用した横着で不誠実な出題が続出しています。こうした出題は、入試の情報開示で大幅に改善されるはずです。(一部省略)
B学力低下の実態調査
−本書では、予備校教師としての経験と現場感覚で学力低下を語ってきましたが、これを本当に客観的で正確な議論へと昇華させるためにも実態調査は欠かせません。(一部省略)
C授業作りの共同研究
−生徒に高校の学習内容を理解させるという点に関しては、高校教師と予備校教師は共通の土俵の上に立っているはずです。相互の授業公開と相互批判を含んだ建設的な検討会の実施ならば、「開かれた学校作り」の文脈で考えてみても問題ないと思います。(一部省略)
D生徒による教師評価の実施
−わたしたち予備校教師は常に学生から評価されており、そのため、「感動」させる「分かりやすい」授業を工夫せざるを得ません。子どもたちの「教育を受ける権利」を保障するという視点から生徒による評価制を導入するのであれば、その結果に基づいた授業検討は、まさに生徒の視点に立った意義あるものになるはずです。(一部省略)
E反面教師としての予備校
−CとDは、しかしながら、弊害を伴う可能性もあります。(一部省略)予備校の悪しき側面を反面教師としながらも、その一方に存在する良質な予備校教師との接点を作り上げていくわけにはいかないでしょうか。学校の教師が予備校の現実に接することで予備校の、あるいは予備校教師の実態を知り、予備校の授業に対する要求を出していただくようなことが可能となれば、いずれは予備校の愚劣な授業を淘汰するという効果ももたらすはずです。

 私は現在、予備校を卒業して大学生である。1浪して大学に入学したことによって現役で入っていれば見えてこなかったものがある。それは「なぜ、自分が大学生になろうとしたか」ということである。(ただし、このことは私の場合であって現役で大学に入るとそれを理解できないということではない)しかしながら、私の見解では高校の授業だけを受けてきた学生にとってはこのことが分かっていない学生も少なからずいるのではないかと思う。では、私は「なぜ、自分が大学生になろうとしたか」ということが分かったのだろうか。それは浪人時代に受けた予備校の授業のおかげに他ならない。勉強をして「分かった」という「感動」をあれほど鮮明に受けたのは小・中・高をいれても初めてのことだった。だからこそ、自分が大変興味を持っている学問分野でその「感動」が生まれたとするならば、大学受験の勉強の時のそれよりもはるかに大きな「感動」が得られるのではないだろうかと思う。高校までと違って自分の好きなことが思う存分勉強できる大学では意識次第で絶対にそれは可能である。
 そして、私は大学で自分が興味を抱く学問分野で「分かった!」という「感動」を得るための素地として高校までの学習が重大な意味を持ってくると思うのである。そこで「勉強とはつまらないものだ」という観念しか身につかなければ、辛い大学受験を乗り越えて大学に入った後では4年間を遊ぶことのみに費やしてしまうに違いない。しかしながら、高校の授業では先程検討したとおり「分かった!」といえる授業が殆ど実現されていないのが現状だ。これでは大学生の学力低下が指摘されるのも当然のことだろうと思う。
 従って、今こそ公教育を改革していかなければいけないと思う。そこで、私が浪人時代に得た「感動」を公教育が予備校から学んで欲しいのです。著書の中で掲げているものの中で早急にやってもらいたいのがCの「授業作りの共同研究」です。学校の先生が予備校の授業を参観することはたびたびあるようなのですが、逆のケースはほとんど行われていないのが現状のようです。学校の先生が予備校の良質な授業を学ぶことと同時に予備校の教師が学校で行われている授業に対して問題点を指摘してそれが愚劣な授業を淘汰する近道ではないかと私は考える。教師生活の長いベテラン教師たちは長年の教師生活で培ってきた自信やプライドなどもあいまってそういった予備校の公教育への介入には否定的な見解を示す人が必ずいると思う。しかし、今ささやかれてきている学生の学力低下の問題や勉強意欲の減退はかなり深刻な状況にきており問題解決の糸口を予備校の教育に求めていくこともきちんと検討していかなければいけない時期に来ていると考える。それができなければ、日本の教育は悪化の一途をたどることは間違いない。文部科学省の教育改革に今1度メスを!!(終)