日本人編 ３
謹呈 私は□□興信所といふ名称のもとに調査機関を多年経営して居る者であります。近時 考しまするに貴部に於かせられ政治界、教育界、実業界等 他の職域の人々に対し種々調査せらるヽ必要ありと存じます元より貴部に完全なる調査機関を有せらるる事は承知のことでありまするが、又吾々多年民間従業者に於きましては官公所に於かれては手の届き兼ねるような点に特別の持ち味を以て貢献する事が出来得る自信があります。実は去る五月の戦禍に遇ひ目下再建に励み居りますが一層の事貴部に一□を□□して全力を尽さむやと存じて居ります幸ひ御採用の光栄を頂度く存じ失礼ながら一筆をする次第御候承願上げます。
敬具
昭和二十一年一月九日
□□区□□□町□□
曩ニ御命令ニ依リ提出ヲ命セラレ候日本刀ハ早速御命令ニ基キ所轄警察署ヲ通シ提出仕候
其ノ内吾々個人ニ於テ祖先伝来ヨリノ家宝トシテ代々保存シ来リタルモノ有之候ニ付テハ是等家宝的ノ所謂名刀ニ該当スルモノニ対シテハ御審査ノ上其ノ所持保存ヲ御許可相賜度候
而シテ御許可ノ暁ハ之ヲ家宝トシテ苟モ使用スルガ如キコトハ断シテ無之コトヲ誓約仕ルヘクモノニ有之候ニ付テハ特別ノ御詮議ヲ以テ日本刀ノ所持保存ヲ御許可賜リ度伏シテ此段請願候也
頓首
一九四六年一月四日日本政府ニ対シ反民主的勢力ヲ徹底□□スベキ指令ニ対シ吾等ハ満□ノ感謝ト敬意ヲ表シマス
乍而彼ノ程度ノ指令デハ真ノ民主々義日本ハ建設サレルトハ考ヘマセン更ニ竿頭一歩ヲ進メテ日本ノ封建的軍国的帝国主義的思想ヲ駆逐スルニハ相□グ指令ヲ□セラレ一而戦争犯罪者ノ範囲ヲ拡大シテ徹底的ニ□□□セラレ、吾々国民ヲ一日モ早ク弾圧政治カラ救ハレンコトヲ切望シテ止ミマセン。此荒療法ニハ右記ヲ対照□シテ下サイ。
一、 何千年トナル軍国主義思想ヲ伝統トセル軍人ノ奴等ハ表面ノ姿ハ消シテモ地下ニ残存シテ居ルコトハ炳デアリマス。依テ少ナクトモ彼等行動ノ如何ヲ不問部隊長以上ノ奴ハ全部犯罪者トシテ取扱フナリ又ハ之レニ類スル方法ヲ採ルコト
一、 終戦当時ノ混乱ニ乗ジ何百億円ノ□軍費ヲ横領セルモノ或ハ各軍官衛其他飛行機部隊各種学校□□□蓄積セル莫大ノ軍需品ヲ民家ニ或ハ自宅ニ運搬隠匿シテ之レヲ資本ニ各方面ニ闇ノ仕事ヲ（同類結合シテ）為シヌハ為サントシテ計画中ノ幾多アルヲ御存知ノ□□。之等奴等ノ検 ハ何人モ手ヲ付ケズ之即其責任之アル官僚ガ反民主々義思想ノ抱懷者タル実証ナリ。
又此ノ調査ヲ為スト云フ奴等ハ悉ク軍関係者ニ依テ委員会ヲ組織シテ居ル。斯クノ如キハ取リモ直サズ□□マ元帥閣下ヲ馬鹿ニシタ態度ト云フベシ
一、 マ元帥閣下ハ日本国民ノ窮状ヲ洞察セラレ或ル程度迄軍需品ヲ民需ニ切替フベク指令セラレタニモ不拘、日本□社並ニ官僚之レニ□□セル市町村長更ニ之等ノ指揮下ニアル各町会長□□□ガ□サニ不拘横領シ居ルコト
依テ今後民主々義ヲ徹底セシメ吾々日本国民モ貴国民同様世界ノ平和ニ一日モ早ク馴致スルニハ
イ 各省官吏ノ首脳部ハ勿論中堅層迄一斉ニ罷免スルコト中堅官吏モ戦争熱ヲ極端ニ煽リ国民ヲ煽動シタル罪ニ依ル
ロ 日本全国ノ市長町長村長町会長部落会長ヲ一斉ニ罷免スルコト。之等ノ奴ハ戦争中ハ凡ユル不正ヲ働キ酒ト女ニ浸ミタリ罪人□□戦争熱ヲ極端ニ煽リ生活難ノ国民ニ対シ戦時公債戦時貯蓄ヲ強行シテ国民ヲ生活苦ノドン底ニ陥シ入レタル奴
ハ 末端ノ奴ダガ全国町会長部落会長ハ戦争熱ヲ煽ルコト人一倍而シテ戦災者ニ対スル励□□シ横領セ□□□□□レズ。然ルニ東京都内ハ本年一月一斉ニ町会長ノ改選アリタルガ町民デ選出ノ機会ヲ與ヘズ綜テ馴レ会ヒノ組長ト謀リ何時ノ間ニカ依然トシテ町会長ヲ名乗リ為レリ□民主々義□□ノ末端阻止□此処ニ始マル
ニ 日本警察ノ□□ハ之レ位ノ指令ニテハ□一歩ニ不遇現在ノ署長警部補中ニハ専ラ思想運動ニ対シ極端ナル弾圧ヲ加ヘ其ノ功労ニ依ツテ進級シタ奴ガ現□ニ止リ居ルコト日本警察中何万人居ルト思ヒマスカ之レ等カ罷免セラレサル限リ直接国民ヲ指導取締ル上ニ民主々義実現ヲ如何ニ阻止スルカ説明スル迄モナイ
ホ 日本警察ノ帯刀ヲ禁止スルコト如何ニ軍国主義ノ表徴□□□日本ハ火消ノ消防警察ニ迄帯刀セシメ居レリ国民中極悪ナル犯罪者取締ニ必要トアラバ貴国ノ如クピストル携帯トスベシ□□□ナレド民主々義建設ヲ妨害トナル者累々山ヲナス□□民主々義即チデモクラシー主義国民ニアラサレバ真ノ平和ハ望ミ難シサレバ是レカ建設ヲ妨害□□□ベキ一斉ヲ駆逐セラレタシ
配給品ヲ胡麻化シ或ハ闇ヲナシ甚シキハ呑食ノ□□□ト包紙ヲ取ツテ生産ヲ故意ニ□□□報告スル奴ハ悉ク帝国主義軍国主義ナリ本年日本本土ノ産米高ハ吾々ハ五千万石ニ近イト推参シテ居ルガ政府ノ供米ハ漸次減産シテ四千二十万石前後トセリ斯ル現象ハ農林者関係ノ各県ノ査定官ガ各村役場デ出□ヲ査定ト取扱□□シ□□村民ヲ役場ニ集メ村長助役共ニ□□□先ツ御馳走ヲ要求シテ包紙ヲ貰ヒ村民ノ主張ヲ□□□□ルノデアル
村民モ之レニ依ツテヨリ多クノ手持米ヲ秘蔵シテ供出ヲヨリ少クスル都会民ハ配給少ク飢餓ヲ免カレントシテ買出スル此処大キナ闇ガ生レ軍閥官僚金持其他公的ノ□□アル者丈ガ満腹然トナリ末端行政迄押付ケラレ民主々義実現ハ□□モ認メラレヌ
之レ即チ竿頭一歩ヲ進メ更ニ□荒療治ヲ切望スル処デアリマス
日本国民ヲ民主々義ヲ実現スル国家国民ヲ建設スル能力ナケレバ之レ迄元帥閣下ガ直接統治セラルヽ様切望シマス
経済取締モ不正国民ノ取締モ貴国ＭＰニ於テ□□□□□様願ヒマス
繰リ返シテ御願シマス更ニ々々御指令ヲ待ツコト切ナリ
以上
立川住民 松本茂
マ元帥閣下
謹賀新年
希望滋キ新年ノ元旦ニ当リ天皇陛下並ニマツカーサー元帥ノ万歳ヲ寿ギ奉ル
天皇陛下ニ於カセラレテハ幾度カノ御前会議ニ於テ真ニ前後唯一回ノ御親裁タリシナラン「終戦」ノ敢行セラレ吾等国民ヲ九死ヨリ救ヒ賜ハリタル事ニ対シ感泣スルト共ニマツカーサー元帥ニ対シテ軍閥財閥ヲ除キテ庶民更生ノ基盤ヲ確立セラレタル事ヲ感激感謝スル次第デアリマス
近ク行ハレントスル衆議院議員総選挙ニ対スル適切ナル御指示ヲ頂キタイト国民大衆ノタメ心カラ御願ヒスル次第デアリマス
＜中略＞
日本ニハ従来ヨリ「三バン」ト申シ鞄、地盤、看板ガ揃ハナイト当選出来ナイトシテ居リマス殊ニ軍需工業或ハ下請工場主ガ戦時ニ大利得ヲナシ之ヲ以ツテ自分自身モ立候補シ或ハ他ノ人ニ多額ノ金□ヲ贈與シテ立候補セシムルト云フ傾向ハ日ヲ逐ツテ甚ダシキモノガアリ心カラ国民ノ憤激ヲ招イテ居リマスカツテハ国民ニ対シ戦争ハ痛マシキモノ儲カラヌモノト云フ感念ヲ與エズ却ツテ一部国民ニ戦争はヨイモノダト云フ感念ヲ與ヘ頗ル棄権ナル思想ヲ培養スルモノト考ヘマス実ハ国民自身ノ判断ニヨツテカヽル候補者ニハ投票スベキデナイノデアリマスガ前述ノ次第デアリマスカラ国民ノ判断ハ自己ノ無智ナルタメ或ハ候補者ノ好言及ビ金力ニヨツテ誤マラレ不正ナル人物ヲ選ブ危険ガ非常ニ多イト考ヘマスカラ何卒総司令部ニ於テ之等不徳漢ノ立候補ハ全面的ニ禁止下サイマス様国民大衆ノタメ民主主義新日本建設ノタメ心カラ御願ヒ申上ゲマス
マツクァーサー元帥閣下に謹んで本書捧げ奉る
敗戦の結果奈落の深渕に沈淪し断末魔に苦吟彷徨する日本が九死に一生を得て亡国一歩ノ前から再起し将来強く逞しく生き抜く為の唯一の途は新生民主主義国家に日本を根底から建直すにあるは一部の有識具眼の国民は既に自覚認識せる所なるも其大部分に於ては上下虜を通し依然として封建軍国主義・思想の迷夢から未だ覚醒せず
敗戦４ヶ月余を経過せし今も□□□として其□緒すらつかざるのみか徒らに旧弊を墨守糊塗し或は時局に便乗し追随し不正不義不徳を敢行し自己の功利追求に専念自己保身に蠢動狂奔する等社会を混乱に陥れ人心を 不安に導き世相を悪化 激増せしめ民主国家の建設を不可能たらしむるのみならず□い□□を破滅に頻せしむるが如現状にあるは洵に奇怪千万にして遺憾の極みなり。
日本の軍国的侵略主義思想を徹底的に根絶せしむる為には憲法其他の法規の改廃諸制度機構□□□□に於ける癌的悪質分子の断乎たる外科的大手術により排撃除去□□に進んで其局に当る凡ゆる指導者並に指導を受ける全国民の魂の建直し民主主義的国民精神の昂揚即ち自己を犠牲に供し社会人類の平和国民幸福の為奉仕する□□と真理に合致せる精神を国民に体得堅持せしむる事から絶対に緊要不可欠にして□に誤つた優越感迷信的□科学的思想を払拭する為には□しき教育宗教により教示善導に俟つ外はなく政治も亦尊い道徳と宗教の上に樹立すべきである。
かヽる見地から来るべき総選挙は実に我々日本の民主主義確立の上に甚大なる影響を及ぼすべき□鑑み総選挙に先立ち予の□□なる注意と準備の下に慎重にして□□を□□し諸事□□整備完了の上で総選挙に望むべく
国民大衆は政治に関しては□□水準低く寧ろ無知蒙昧の域を脱せざる現状にあり
先決問題として□□に民主的法の性格を□質と知悉せしむる□□を以て教育し指導する事が肝要なりと思□す。
依って速成的に□□なる方策を以て政治に関する予備教育講座を設置し国民の教養を向上せしめ政治意識を昂揚せしむべく□□の努力を致すべきであり。かヽる見地から凡ゆる機関を総動員し□□限度三ヶ月□□□を実施し選挙の完璧を期すべし
随って総選挙期日□□□□□春１２月頃を以て□□なりとなすものなり。
事を急ぎ失敗に陥らざらん事を□念□□す次第なり。
日本を双肩に担って□□つべき民主議会の代表たるべき□□□□立候補者の□□進出を□□ならしめる為即□□一般大衆の出馬に対し機会均等促進せしむる目的にて選挙費用の軽減更に進んで□□支□弁を理想なりとすべきを提言するものなり。
以上進言す
２１、１、７
京都 松原秀一