日本人編 ２
マックァーサー司令部殿 秘親展 名古屋駅前萬屋一時止宿
拝啓
貴指令部ノ誤リヲ申上ゲテ速ニ御処 置御指令アランコトヲ願上升
（甲）保護観察所、（乙）監督総括として次のような書状
右甲ヲ解体シテ所長、補導官兼務検事専属保護士等重要ポストノ役職員ヲ全部退散サセナカラ彼等ニ弁護士ヲ許シ又ハ右乙団体ノ重要職位ニ就カシメ且甲解体ニ伴フ多額ノ慰労金ヲ乙ノ大功ナル寄付金ヨリ獲得セントシツヽアル現況ナリ（甲ト乙トハ同身一体ニシテ兼務職多シ）
然ルニ彼等ハ皆軍国的又ハ悪質官僚ノ代表者ナル如キ人物ナルノミナル故（検事及特高員ヨリモ悪シ）
（一） 従来人権ヲ蹂リンシ置キナカラ急ニ弁護士トナル奇怪
（二） 日本弁護会ノ民主的改進ニ大ナル障害トナリ
（三） 更ニ又司法保護事業ノ真ノ民主的社会事業性ノ甚邪魔ヲナス
ヲ以テ如何ナル地位名義ニ拘ハラズ彼等ヲ乙会ニ入ラシメ又ハ止マラシムルコトヲ禁シ且退職金ニツキ優遇的支給ヲ禁ジ当寄附ニ因ル大功ナル財産ヲ温用セシメサルヤウ速ニ且厳重ナル御指令必要ナリ
以上
マッカァサァ元帥閣下 必親展
□□区□□□町一二〇番
嘆願書
一 要旨
東條内閣ノ御用議員即チ翼賛議員
三百七拾余名ニ対シ別紙ノ反省ヲ促シタルモ
彼等ニ政治的良心ナク立候補セントス故ニ之レヲ
禁止スル様且ツ右ノ内ニ岸大臣ヨリ重ヲ受ケシ
者百五十余名ニ 之レヲ御調査ノ上同然ナシ
賜ハランコトヲ請フノ件
二 理由
(イ) 私ハ名モナキ貧乏詩人ナルモ憂国ノ至情アリ
衆議院議員ノ指導ニ別紙ノ如キ一文ヲ寄セタルモ
彼等ハサシテ聞キ入レサレハ禁止令ヲ発セラレンコトヲ切望ス
(ロ) 別紙ヲ全国ノ各新聞紙上ニ掲載シ輿論ヲ醸成
セラレンコトヲ請フ
(ハ) 岸信介ヲ調ヘテ百五十余名ノ御処分ヲ乞フ
我司直ハ之レワナササレハ閣下ノ力ニ
縋ルノ止ムナキニ至ル 以上
｢死一等ヲ減スルノ忠告書｣
東條内閣ニ推薦サレテ立候補シ、不法ナル選挙干渉ノ恩典ノ下ニ当選セル議員三百七十余名ハ、上 陛下ニ、下ハ忠誠ナル国民ニ、遠クハ皇祖皇宗並ニ諸卿ノ御先祖様ニ、クハ忠烈武勲赫々タル数十万ノ忠霊及ヒ百有余万ノ傷将兵方ニ対シ衷心ヨリ謹慎ノ意ヲ表シ、須ラク大日本国史ノ前ニ恐懼陳謝ナスヘキ事ヲ、余ハ八千万ノ同胞ニ代リテ茲ニ忠告ス
全国五百万被圧迫部落民関東代表責任者 □□□□ 1945年12月24日
歎願 日本警察部ノ被圧迫部落民弾圧ニ関スル件
右駐屯軍所属ノ某兵士ハ被圧迫部落民タル右地区ノ窮状ニ同情セル故カ兵営内ニアリシ日本米ヲ片手ニ持チテ「ライス
」ト呼称シ来リタルヲ以テ食事事情ニ関シテハ一般日本国民ノ想像シ得サルコト能ハサル惨状ニアル両地区民ハ此ノ滋養的奇（異体字）特兵士ノ厚意ニ感激シ以テ昭和二十年十月二三日ヨリ二五日ニ至ル其ノ間両地区民ニ日本米五十四俵ヲ贈與セラレタリ
此ノ絶大ナル進駐軍兵士ノ厚意ニ感謝ノ意ヲ表スル為メ両地区民ハ一俵ニ付金三百円乃至金七百円ノ寸志ヲ夫々呈上シタリ
然ル処十月二十五日午後七時三十分所轄川越署員ニ探知セラレ右署員ノ本署ヘノ報告ニ依リ牛山警部補以下数名ノ署員来リ
□□□町々内会長□□□□ニ対シ臨時組長常会ヲ開カシメ其ノ席上ニ於イテ牛山警部補曰ク贈與セラレタル米ヲ返還致セバ呈上シタル寸志ハ返却シ戴クニヨリ猶本件ハ穏便ニ取計フニ依リ各組長ハ所属組員ニ対シ贈與ヲ受ケタル者ハ直ニ返却致スヨウ慫慂シタリ
依ツテ各組長ハ組員タル両地区部落民ニ対シ此ノ旨申シ渡シタル所組員ハ贈與ヲ受ケタル米ヲ全部返却シタリ
然ルニ川越警察署ニ於テハ此ノ公約ヲ裏切リ以テ賍物故買ノ罪名ヲ捏造シ一件書類ヲ川越区裁判検事局ニ送付セリ右ハ日本警察部殊ニ川越警察署ノ吾等被圧迫部落民ニ対スル伝統的ノ弾圧政策ヲ遺憾ナク発揮セルモノニシテ吾等全国五百万被圧迫部落民ノ最モ憤激惜ク能ハサルモノナリ
川越裁判所 一九四五年一二月二二日 検事の求刑
一俵の贈与を受けた者 懲役六カ月、罰金一〇〇円
二俵の贈与を受けた者 懲役八カ月、罰金一五〇円
五俵の贈与を受けた者 懲役十カ月、罰金二五〇円
十俵の贈与を受けた者 懲役一カ年、罰金五〇〇円
マックアーサー元帥閣下
□□□□ 高知県□□町 「各論」としての憲法草案
日本人ハ今日マデ、特権階級制度ノ下ニ、秘密政策圧迫政治ト云フ、一ツノ箱ノ中ニ□□□サレ、之レヨリ出ントスル者ハ、容赦ナク□鉄槌ヲ以テ打タレタ。即チ言論著述ノ絶対的自由無ク、之レニ反スレバ或ハ処罰ヤヽモスレバ□□ヲモ失ハナケレバ□□如キ状態デアツタ。然ルニ之レヲ今日貴□為メニ誠ニ感謝ニ堪ヘナイ次第デアリマス。
今次戦争ノ責任ハ、日本政府日本軍首脳部及之レニ関聯スル者ニアルハ論ヲ俟タズ。然シ之レ等ヲ除ク他ノ日本国民全体ニ於ケル責任ナルモノニ於テハ前者ト大イニ之レヲ異ニスルモノガアルト思フ、即チ前者ハ其ノ局□□テ、何□□□□□居ル何筈ニモ不拘、何故□□適的ノ戦争ヲ敢テ惹起セシメ、彼等ハ盲目デアッタカ。或ハ一時期ノ精神錯乱者デアツタカ、或ハ自己ノ栄爵ト富ミヲ□□カ。私腹ヲ肥ヤサンガ為メニハ貴□□□物資ノ□行ク事ハ岸ノ□ト見タデハナイカ□□ヒタクナル。
然ルニ一般国民ハ如何デアル、今日迄ノ箱入圧迫秘密政策ノ為メ、何事ニモ其ノ真相ヲ知ルヲ得ズ嫌ヤ応ナシニ、只強制的ニ之レニ命令サレ、其ノ上ニ□懲□サレ奉仕トカ云ツ□、強制圧迫的ニ自己ノ職業ヲ休止シテ、命ゼラルヽノ侭ニ、他ヘ経営ノ仕事ニ従事シ、以テ之レヲ益セシメネバナラナカッタ而シテ強制的ニ国債ヲ買ハサレ、生活ハ□□ニ困窮ニ陥ツテ行ツタ、然ルニ彼等ニ於テハ如何デアツタカ。筆ヲ進ムルニ従ツテ□□□タイト思フ。
戦争終結直前ノ時ニ於ケル首相ノ「ラヂオ」放送ノ如キニ至ッテハ、何時迄モ何処迄モ、「国民ヲ欺キ愚弄セシカ。今日ニ至リ其ノ真相ヲ初メテ知リ、実ニ永イ間、吾□□ニ□ガサレテ□タノデアル、然シ過去ハ最早□無キコト、吾人ハ彼等非人道的人間ノ行為ニ□ツテ生ゼシ、深ク□車輪ノ跡ヲ可及的急速ニ、□易シ□地トナス□責任ヲ背ハネバナラナイ、其ノ昔、貴国ペルリ提督ガ浦賀ニ来朝シ、之レヲ作ツテ我日本ハ救ハレタ、其ノ恩恵ヲ怠レ、又□ニ至ツテハ、只新日本政策ト□□□□□ノ如クニスルノミニテ、其ノ実ヲ挙ゲス、ト云フ如キ過去ヲ□□□□ノ行動ニ□□スル□、之レヲ委ベキモノラス、宜シク貴官ノ□ヲ以テ連呼断行以我人ハ一日モ早ク、□□自由ニ真ノ平和ノ□□□□□□得ル様、御助力ヲ願ハンガ為メ、以下ノ□□□□□□ノ意見ヲ陳述スル次第デアリマス。
各論
一、天皇制
国民ノ自由投票ニスルカ又ハ各町村民大会ニ於テ其ノ輿論ノ以テ取リ答申スル。
二、首相ハ国民ノ選挙ニ依テ任期ヲ切スルコト
三、官公吏
今日迄官公吏ハ其ノ多クハ、所謂、官□□ニテ今日迄其ノ職ニ在リタル経験者ヲ、只其ノ椅子ヲ替ヘタルノミニテハ、到底自由ノ実ヲ挙グル望ミ無シ、依ツテ現職ハ勿論其ノ経験者ニシテ官僚式ナル者（殊ニ小官ニ多シ例ヘバ府県ニ於ケル課長級以下）ハ爾後其ノ職ニ絶対任ゼザルコト
四、議員
国会、府県会、町村会ニ至ルマデ、彼等ハ只其ノ地位ヲ用シテ、私腹ヲ肥ヤスニ汲々トシ、真ノ議員タルノ義務ヲ無視スル感アリタル者多□思ハシム、依ツテ□ノ種経験者ハ老獪ニシテ、改選スルモ、其ノ効ノ顕著ナラザルヲ慮フ、故ニ□如斯キハ絶対選挙及被選挙権ヲ與ヘザルコト。
五、恩給
恩給ナルモノハ□□□□□□□□□□□□□□□□ニノミ與ヘラレ、然ラザル止 ニ幾十年精励スルモ之ﾚｦ與ヘラレズ、如何ナル職業ト雖モ、直接間接ヲ問ハズ其ノ国ニ居住スル者ノ為メナラズヤ、然ルニ、吾々ノミ之レヲ與ヘ他ニ之レヲ與ヘズ、然モ與ヘラレザル者ハ之レガ為メニ却テ其ノ負担ニ重キヲ加ヘラル、
如斯遍在行為ハ、之レ特権□□、封建式ノ然ラシムル処ニアラズヤ、殊ニ其ノ非人道的戦争至乃ハ其ノ演習ニ於テオヤ、思フニ如何ナル職業ニ従事スルモ、□人其ノ意志ニ従フ処ニシテ、生計ノ思慮亦勿論其ノ中ニ存スルヤ明ナリ、然ラバ、何故如斯□□ヲ設ケ以テ徒ニ国民ノ負担ヲ加 セントスルカ、如斯悪政ハ即時廃止シ、以テ爾今之レガ支払ヲ停止シ、国民ノ費ヲ軽減セシメヨ、
六、位勲
公職ニ或期間存スレバ例ヘ居眠リ状態ニ終ルトモ、順次之レヲ與ヘラレ地位ヲ獲得ス、之レ何ンノ為メナリヤ、即封建式ナラズヤ、
如斯ハ廃止シテ何等惜ム処ナシ、若シ是非之レガ必要アリトセバ、真ニ世界ノ人類ノ為メニ、一大効顕ノアリシメル者ニ限ルベシ
七、栄爵
其ノ□□□ナリシガ故ニ或ハ文明破壊又ハ平和撹乱ノ指導者乃至ハ指揮ヲナセシ為メニ、之レカ授ケラレ或ハ世襲セル者アリ、之レ何ンノ価値アリヤ、如斯ハ即時返上シ以テ其ノ当 真ニ人類ノ為メニ著効アリタル者ニ限ルベシ
八、隣保班組織ノ撤廃
遺感（ﾏﾏ）乍ラ日本国民ノ教養ハ未ダ一般ニ低級ニシテ然モ甚ダ凹凸不平切ナルニ、之レヲ温存シテ組織セル隣保班ナルモノ真価ニ至リテハ、只率シテ物資ノ配給路タルニ過ギザルノ感甚ダ深シ、例言スレバ、高低不同ノ脚ヲ有スル□ノ如クシテ、面ニ数 不同ノ斜面ヲ有シ、行困難ニシテ、漸ク水湧ルヽコトナク渡河シ得ルモ、斜面ニ於テ動モスレバ転倒セシ虞レアリテ然モ其ノ即要時間ノ無駄ナル、即チ一見円滑ニ運用サルヽ如キ観アル隣保組織モ、幾多ノ不祥事ヲ出シ、或ハ論ノ争化セントスル如キモ故ナキニ非ズ、依テ如斯ハ撤廃シ、以テ各人ノ道義心ノ涵養ニ務ムベキナリ。
九、財閥関係
国家的財閥ハ貴官ニ依テ□□サレタルモ尚其ノ一家生計ニ支障無キ程度ニ残シ残余ハ国家ニ没収スルコト、而シテ国家的財閥ニ対シテ、地方的財閥アリ、唯国家ト地方□□アルノミ、故ニ宜シク之レガ陶治ヲ望ム
十、戦後ノ国民財産ニ関スル件
或ハ以下即チ現時局トシテ、生計ヲ得ル程度ノ小数資産ヲ有スル者以下ニハ、目下日本政府ノ立案中ナル財産或ハ戦時利得税ヲ課セズ、以テ□トシテ国民ノ負担ヲ軽減シ、何等慮フル処ナク、渾身ノ力ヲ自己ノ職業ニ打チ込ミ得ル様ナサシメ、以テ現在苦境ノ国民ヲ救ヒ、大ニ増産□□的ナラシムルガ現時ノ一方策カト思慮ス、何トナレバ、生活ノ驚異ヲ受クル者ハ其ノ脳力鈍ル、脳力鈍ル者ハ其ノ職、能率的ナラズ。
然ルニ軍閥、官僚ヤ軍需ニ関係セル者ニアリテハ、只容易ニ国民ノ血液ヲ搾取シ、或ハ官権ノ ヲ以テ、奉仕又ハ懲傭当ノ名ノ下ニ極低廉ナル労銀ヲ支払ヒ、以テ多大ナル収益ヲナシ、或ハ□ノ行為ヲ敢テナシ、以テ私腹ヲ肥セル者ニ至リテハ、其ノ全資産ヲ国家没収スルコト。
十一、軍需品ノ回収利用
終戦直後ニ於テ軍及軍需品関係会社工場等ニ於テ将、兵、重役ヲ問ハズ、甚□ニ至リテハ軍関係ノ学校生徒ニ至ルマデ、食料、食糧、薬品、衛生材料、器械、器具、及現金等ヲ分配着服セルノ事実判然タリ、之レ等物資及現金ハ日本津々浦々漁リ其ノ量ノ夥シキヲ思フ、如斯ハ徹底的ニ調査シ、以テ一一ヲ残セズ厳密ニ回収シ、而シテ彼等非人道者ノ楯トサレ、犠牲トナリタル可憐ナル戦災者ノ救復ニ充当ナスベキモノナリト思フ。
十二、土地問題
自ラ土地ヲ耕作セズシテ耕作地ヲ所存スル必用何辺ニ有リヤ、之レモ封建制度ノ残留物ノ一ナリ
依テ如斯ハ強制的ニ一度国家ニ買ヒ上ゲ、而シテ耕作ヲ希望スル国民ニ所有セシメヨ。然ルニ既農家ト雖モ、真ニ一人ニテ耕作シ得ル平均反別ハ約ニ乃至三反ト思考ス、故ニノ比重ヲ以テ自作農ニ所有セシメ、又一定職業ヲ有スル者ト雖モ其ノ余暇ヲ利用シ、家人ニ協力シテ耕作セント欲スル者ニハ、其ノ能力ニ応ジテ、之レヲ所有セシムルコト
十三、食糧問題
（イ） 配給機構ノ改善
現今ハ米及甘藷ヲ合シ米ニ換算シテ一日一人二合 、然モ年令ニ依リ其ノ□□増減アリ、然ルニ其量ノ少キ老幼ニ至リテハ、人ヨリモ実際上ニ於テ、其ノ食スル量ノ多ハ事実ナリ、又副食物ニ至リテハ、当地等ニ於テハ一ケ年ヲ通ジ配給ヲ見ズ、過般京大ニ於テ、其ノカロリーヲ計算セルニ、一人一日九百カロリーナリシト聞ク、如斯状態ニテ我人ハ生存シ得ルヤ、処ニ於テ一日モ早ク、之レヲ打開セザルベカラズ、其方法トシテ
日本政府ハ之レヲ不可能ト主張スルモ、余ハ之レヲ可能ト思考ス、其ノ理由トシテ、政府ノ発表ニ依ル昨年ノ米産高ヲ六千五百万石、日本国民七千万人ト見做スニ、一日一人均等二合五勺ヲ算出ス然ルニ実際上ニ於テハ尚之レガ約五〇〇即チ三千万石ガ、生産者ノ手元ニ計算外トシテ残留サレ居ルモノト思フ、之レニ対シ例言スレバ、余一昔ノ語ル処ヲ聞クニ、其ノ農家ハ昨年家族九人ニテ弐町歩ニ□耕作ヲナシ、使用人ヲ合計シテ、一ケ月三俵ヲ食糧トシ、参拾俵ノ供出ヲナセリト。
処ニ於テ、一ケ年ノ食糧ヲ約二十俵ト仮定スルニ昨年ハ反当約四乃至五俵ノ実収ヲ確実ナリシト思フ、然ラバ其ノ実収高ハ八十乃至百俵ニシテ、自家食糧量ノ残高ノ約五〇％ヲ供出セシニ過ギズ、然ラバ何故如斯誤算ヲ生ズルカ、
ソハ米収穫ノ予想ニ際シ、各部落共耕作者中ヨリ調査員ヲ選ビ以テ予想セシム、其処ニ於テ各員自己ノ実際予想ハ約六割程度ヲ以テ、其ノ予想高トシテ報告スルト聞ク、之レ故ナキニアラズ、此処ニ於テ米ハ尚一人当リ、一日一合余ヲ得テ、優ニ一日一人均等三合五勺ノ配合可能トナル、然ルニ今日ノ配給ノ如キハ一日未九勺ノ割合ニテ、残余ハ甘藷ヲ以テ充当セリ、其ノ上ニ配給ノ方法タルヤ、其ノ一ヶ月分ノ米二升七合ノミヲ一五日分トシテ配給シ、其ノ後ハ甘藷ノミヲ配給スルト云フ如キ、遍在ノ方法ヲ取ルニ至リテハ其指導者タル者、好ンデ国民ノ栄養障碍ニ陥ルルノ方法ト食糧ノ無販ヲ敢テナス、何トナレバ、既発表ノ六千五百万石ノミヲ以テスルニ、一日一人二合五勺ノ均等配給可能ナルヲ九勺ノ配給トハ何事ナルヤ然ルニ終戦後ノ今日ニ於テハ軍隊ノ横暴□□、兵員其他軍需工場ニ対スル特配ト称スルモノ無キニ至リ其ノ節約ノ大ナルヲ思ハシム、之レヲ加ヘテ、日本酒ノ米ヲ以テスル醸造ヲ禁止セバ、米ノミヲ以テ一日四合ノ配給可能ナルヲモ思ハシム
又老獪ナル村長ニアリテハ実収高ノ約五分ノ一ヲ供出セシメタリ、ト云フヲ聞クニ至テハ、実ニ米ヲ売テ自己ヲ肥ヤス、ト云フカ、斯ク思ヒ来レバ、三合均等配給ハ易々トシテ且ツ相当量ノ残余米ヲ生ズルニアラズヤヲ思ハシム。尚其ノ他ニ麦及甘藷ヲ合シ一ヶ年ノ産高ヲ米ニ換算シテ約三千五百ト仮定センカ、一日一人平均一合二勺強トナル、且ツ之ノ外ニキビ、栗、ヒエ、トオモロコシ、馬鈴薯、豆等アリ一日一人三合均等配給ハ米ノミヲ以テ実際上可能ニシテ且ツ余裕アルモノト思考サル、而シテ配給残余ハ自由販売トナスベキナリ。
（ロ） 副食物及調味料等ハ自由販売タルベキナリ。
（ハ） 主食物供出方法ノ改善
生産者ハ実際上ノ一ヶ年食糧ノミヲ残シ他ノ全部ヲ供出ナサシムル方法ヲ採ルベキデアル。之ノ方法トシテハ供出後ノ米ハ売買ハ勿論、恵與又ハ交換ヲ許サズ、万一之レニ違反スル者ハ厳罰ニ処シ、其ノ所有スル耕作地ニ之ヲ没収スルモノトス。
現在ノ日本人ハ生ヲ継続センガ為メニ、「食」殊ニ主食物ヲ求メントセザル者一人ニ無シ、ト云フモ敢テ過言ニ非ズ、之レ思フニ事実上生存シ得ザル食糧ノ配給ヲナセルコトノ証左ニハアラズヤ、従ツテ罪人ノ培養ヲナセルニハアラズヤノ感ナキニシモアラズ。其処ニ於テ闇ナルモノハ皆「食」ナルモノニ其ノ根源ヲ有スト看做シテ差シヘナシト思フ。故ニ一日一人均等最低三合ノ確実配給ヲ実施シ、加フルニ自由経済即チ自由販売ノ範囲ヲ拡大セバ、総ベテノ闇問題ハ一掃サレ、其ノ上ニ「インフレーシヨン」ヲ防ギ得テ、自由ノ天下ニ帰復シ得ルモノト思考ス。
十五、衛生及医療ニ関スル件
現在国民ノ衛生知識ノ低級ナル、吾人其ノ職ニ在ル者ハ常ニ痛感スル処ナリ。余嘗テ之レガ普及ヲ計ラント、予防医学ノ必要ヲ論ジ、県当局及各町村ニ毎月衛生講話ノ奉仕ヲ申込ミタルモ何等ノ反響ナシ、又医師ニシテモ、思ヒ其処ニ至ル者ノ少キヲ嘆カザルヲ得ズ故ニ爾今医師ニ対シ、衛生講話ノ義務ヲ負ハシメ当局ニ対シテモ、勿論之レガ責任ヲ バシメ、而シテ各府県ノ衛生課ハ少クトモ課長以下二乃至三人ハ必ズ医師ヲ以テ任ズベキナリ
現今日本ノ医療ニ社会保険診療ト一般診療ノ二種アリ、何故保険診療ノ如キ低廉ナル報酬ヲ以テ医師ニ診療ヲ強イ、又之レニ関スル事務ノ繁雑ナル、如斯医師ニ時間ト労力及経費ノ空費ヲナサシメズ、之レラヲ其ノ者ノ修得セル 高ノ学及術ヲ以テ施スベキニ充当サスベキナリ、故ニ診療ハ自由診療ト施療診療ノ二種トナシ、自由診療ハ医師個人ノ経費トシ、施療診療ハ政府ノ経費トナシ、自由診療ハ其ノ一式ヲ自由トシ国民ハ其ノ階級ノ如何ヲ問ハズ、二者何レノ診療ヲ受クルモ自由タラシメ、而シテ、一方予防医学ト衛生知識ノ普及ニ努力スベキナリ。
十六、教育機関ノ改革
（イ） 中等学校入学ニ国民学校長ノ内申書ヲ必要トスルガ如キ、如斯情実ノ結晶タル虚偽ノ多シ手段ヲ廃止スルコト
（ロ） 国民学校教員タル訓導ノ学識及人格ノ向上ヲ計ルコト、
（ハ） 各校ノ入試ハ学校ノ階級的ニ依ラズ何人ニテモ其ノ入試ニ合格セル者ハ入学セシメ以テ真ノ人材ノミヲ採用スルコト
（ニ） 最高学府ヲ開放シ以テ其ノ脳力アル聴講希望者ニ之レヲ許シ、且ツ其ノ能力ヲ有スル者ニハ其ノ研究機関ノ利用ヲ許スベシ
十七、仮称怠惰税ノ設定
元来日本人ニハ幼少ノ頃ヨリ独立心ヲ欠クノ嫌イアル者多ク、人ヲ頼ミ、他人ヲ羨ミ、正道ヲ無軌道トシテ解セズ、若シ人賞賛スレバ正道ニ非ズト知ルモ之レヲ賞シ、若シ人讃嘆セズバ例ヘ正道ト知ルモ之レヲ破棄シ、以テ他人ノ迷惑ヲ顧ズ、徒ニ我田引水ノ説ヲ唱ヘ、職ニ在ルモ懸命ニ且ツ真面目ニ其ノ職ニ尽スナク、事務ノ渋滞スルヲモ止常ノ如ク考ヘ、或ハ数日働キテハ、其ノ金ヲ以テ数日酒色ニ耽リ、以テ貧ナリト称シテ、自己ノ義務ヲ怠リ、他人ニ之レヲ転嫁セントシ、又官庁ニ職スル者ニアリテモ、徒ラニ登庁シ遅レ、退庁ヲ急グノ弊ナシトセズ、而シテ二乃至三人ニテモ成シ得ベキヲ十人位ニテ遊戯的ノ執務振リ（ヲ）ナシ、以テ事務ノ渋滞スルモ平然タルモノニテ、甚シキハ時間中酒気ヲ帯ブル者アリテ、徒ラニ封建式官僚式ノ思想ヲ抱キ唯自己ノ椅子ヲ保持センガ為メノ外□□汲々タル者アリ、
思フニ如斯者ニハ所謂共産思想ヲ抱ク分子ノ多キ感ナキニアラズ、故ニ如斯輩ニ対シテハ所謂怠惰税ナルモノヲ課シ、若シ之レヲ怠ル時ハ、労役ニ処シ以テ怠惰心ヲ有スル国民ノ一掃ヲ計ラントス。
結論
封建式ノ根源ヲ一掃シ正道公平ナル政治ヲ施シ得ル日本トナシ今日マデ存在セル所謂「閥」ナルモノヲ払拭シテ、機会ノ均等ヲ計リ真ノ人材ヲ登用シ国民ノ知識ノ向上ト衛生ノ普及ニ務メ、目下ノ急務トシテ一日一人三合乃至三合五勺均等ノ「米」配給ヲナシ以テ、国民思想ノ安定ヲ計ルト□□、自由販売ノ範囲ヲ拡大シテ、自由競争ト各自ノ自覚ニ訴ヘナバ平和ニシテ自由ナル明朗ノ新日本ヲ構成スルニハアラズモノト考へ此処ニ謹ンデ嘆願スル次第デアリマス
マックアーサー元帥閣下
□□□□ 国政に関する見解 １９４５年１２月１９日
A View on the Present Position of Japanese Politics
国会手段に依りて日本にデモクラシーを実現することは殆ど不可能と存じます（I
think it is almost impossible to realize democracy in Japan）
其理由は日本人民はデモクラシーの何物たるを知らず、祖先代ゝ奴隷道徳（slave morality）に鍛練されて来た。建国の当初より封建政治を続け今日に至るまで根本的変化を見ない。衆議院の選挙に際し、候補者は選挙人買収を以つて当選の手段にし、選挙人買収せらるヽにあらざれば、棄権するを常とす。候補者は財閥その他より運動資金を集め、之を選挙区により撒くのである。故に今まで選挙権を拡大する、財閥官僚の為めの台、政党、衆議院である。
無条件降伏といふも、貴族、官僚、財閥、その他戦敗の為めに没落する運命にあるものは、有ゆる手段を講じて其位地を維持せんとしつヽあり。皇室制天皇制の存廃は日本人民の自由意志に依つているも、近次行はるヽ総選挙は、インフレーションの結果、貨幣価格が著るしく下落した□□為めに、何十万或は万を要すべく、この運動資金は唯旧位置を維持し現状を維持（status-quo）せんとするもののみが調達し得るもの故、心 にデモクラシーを実現せんとする候補者は尽く落選せざるを得ない。この議会に於いて天皇制を維持するを民意ありとするに相違ない。天皇を貴族、官僚、財閥より引離さす方法があれば、然らずんば天皇制の維持は宮廷□の維持となり貴族制の維持となり、官僚政府の維持となり、財閥の維持となる。これはデモクラシーの仮面を被ぶりて、戦敗以前の状態を維持するものであり□□□。
彼等をして没落せしむるには自然の作用のあることを忘れるにわけには行かない。それは食糧の欠乏である。若シ農民が供出を拒み、都会は未其他の生活必要品を送り出さなければ、都会は忽ち没落の運命に会するであろう。これは貴族官僚財閥其他を絶滅せしむるものでありとするも、国を挙げて混沌、混乱に陥らしむるものである。そして共産党は之に乗ずるに相違ない。
共産党は全体主義であり統制主義であるから、実は権力中心主義で、ミリタリズムに到達 □□は已むない。そして貴族、官僚、財閥その他の旧勢力を統一して、デモクラシーの名の下に、全然デモクラシーに反対したものを造りあげるであらう。
食糧を外国から輸入する見返り品を提出し得るものは、皇室であり貴族であり財閥である。人民の飢餓を救ふの名の下に、全国民を糾合し、農民国民の間に統制主義を実行すれば、デモクラシーの芽生へ来る余地さへななくなるわけである。
日本は□□米国のTutorage ― protutionの下に、デモクラシーを実現すべき強固なる賢人政府を組織せねばならぬと確信する。神も賢者を要す（God
needs wise men）といふ。西洋歴史の背景の□□□デモクラシーを実現せんとすれば、将来しき議会を造るが為めに、憲法を廃止シ社会制度を中止せねばならぬ（Japanese
needs a strong wise men’s government with the definite purpose in realizing
democracy）
代議政治は地方自治を根底とす。地方自治は各個の自首自治自活を根底とす。然し人の乏しき日本は人間の合理生活（Azyrouselition）はあるが、それが有機的社会（Organie
whole）をなしてゐない。戦敗、人口過剰、食糧欠乏は□烈なる生存競争を惹き起し、貴族官僚財閥の頼むべからざるを知って、人は始めて自衛の精神を発揮して来たる。人民の間にデモクラシーの精神を扶植する好機会到着せりといふを妨げず。我らはこの好機会を逃してはならぬ。
今の官僚に任かして置けは、内閣の更迭はたら盥廻し内閣（Rotation government）を造るに過ぎない。戦争責任者がゐるとかゐないとか問題にはならぬ。日本の諺にいふところの同じ穴の狸に過ぎない。将来内閣を組織し、デモクラシーを実現し得べき人物を求むれば、官僚の間には勝田
（Kazuye Shoda）は其一人で、首相として大蔵長官として適任者であらう。この人は一度大蔵大臣を勉めたことがあるが他の官僚より排斥されて今日に至る。
澤田牛麿（Ushimaro Sawada）も亦其一人で、之もその硬骨なるを以つて、他の官僚より排斥されて今日に至る。
長野朗（Akira Nagano）この人は全くの民間人にして、農学の事に精通して居り、最初から戦争に反対した人である。文学者とか哲学者とかいうものは、軽薄の人間が多く、
国家の 、今一人信夫淳平（Junpei Shinobu, Dr.law）あり、国際の情勢に明かにして、支那事変から今日を予見した人である。
日本には西洋生活の原理を総合し、生の哲学（philosophy of life）を以つて死の哲学（philosophy
of Death）に代へ、新しき教育の根本原理を確立し、日本人をして平和勤労の民たらしむるには、自画自賛のであるが、私一人より外にはあるまいと考へます。これは今度茂雄氏（Iwanami
book-publishers,South jinbocho,kanda ku,Tokyo）に送りし小著「日本人民の誕生（the
Birth of a Japanese People）」を御閲覧になれば判ること 存じます。
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